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音楽ライター兼ALLNUDEマネージャー兼イベント企画屋高木敦子

ヴィジュアル系のバンドは、漫画でロフトに憧れた!?

私が初めて行ったライブハウスってロフトなんですよ。中1の時で、すっごいドキドキした。トランス系(注1)とか、パーソンズ、YBO2、デルジヘッドとかがオールナイトした。それでデルジ関係とかと知り合いになったりしてね。私、その頃中学生でしたのでロフトのトイレから”こんにちわっ!”って入ってました。80%はそこから出入りしていました、ごめんなさいっ。途中で工事しちゃって、工事に次の日かなんかに行って、当たり前のようにドア開けようと思ったら開かないんですよ(笑)。悲しかったですねぇ。

その憧れのロフトで高校卒業して19歳の頃からイベントやるようになって。ハムレット・マシーンとかラピュータが東京でやりたいっていうので、私が企画をやって仕切りをたむたむスコープの斎藤さん(注2)にお願いして、ラピュータとピラステューパっていうデルジのハルさんのバンドとハムレット・マシーンの3バンドでやったのが最初かな。ラピュータとかラルクとか大阪、名古屋のバンドって東京のライブハウスって他は全然知らないけどロフトは知っている、ロフトで演りたいって言ってくるので、じゃあロフトを押さえようかって。ヴィジュアル系の子達って上條淳士さんの『TOY』とか楠本マキさんの『Kiss』っていう漫画の影響があって憧れているんだと思う。『TOY』の中にもロフトって出てくるの、入り口も同じ感じで、ペニシリンとかはそれを見て凄い憧れてたと思うよ。

印象に残っているライブは、私が手伝っていたローゼンクロイツの解散ライブ。ローゼンがロフトで初めて演った時お客さん70人前後ですごくさみしかったの。で、ゲストでルナシーとか呼んだりして、100人超えるようになっていって。ローゼンはロフトメインでずっとやってたのね。で、解散ライブもロフトで、その時はお客さんがいっぱいで私でさえ入れなかったの。嬉しいんだけど、凄い悲しくて大泣きしてたら、メンバーが過呼吸症になっちゃって、メンバー担いで車に乗せて、病院に連れて行ったの(笑)。かなり感慨深かったよ、病院の待合室で。病院に担がれるようなバンドに最後はなれたんだって(笑)。ロフトで始まって、ロフトで終わったバンド。でもいいんだ、その頃ロフト満タンっていうのが凄いカッコ良かったから。

イベントやっていた頃、斎藤さんたちとかも全然儲けとか考えないで、保坂さんとか小林さん(当時の店長たち)も企画が面白そうだったら、じゃあOKって。よく考えたら一銭も貰ってなかったですね(笑)。最後にロフトから貰ったギャラをバンドにそのまま渡して、”はい、おつかれさまでした”って。”あ〜なんか疲れたな”で終わってましたから(笑)。私ってお母さんなんよ(笑)。

ロフトのイベントはすごい楽しかった。今は、わざとロフトから離れてってるのね。それは、他の小屋だと100人ぐらいで様になるんだけど、ロフトで100人だと凄い心が痛いのね。300人入って、自分が企画してるけどステージが見られないっていうのがいいんです。”ロフト”って言葉が凄いプレッシャーになる。だから演るバンドは、知名度があるってのもそうだけど、実力があるバンドがロフトで出来る気がする。チャチなバンドとか出てると凄いむかつくもん。どうして、お前がロフトで演ってるんだって。

ライブハウスにイベントの企画書を書いたのってロフトにしかない。「ロックとは〜」、とかそういう書き出しで(笑)。今度は、ロフトが儲かるようなイベントを演りたいです(笑)。何か面白いイベントをやらせてもらいたいですね。もう一回”企画書の書き方”って本を買って勉強して書いて持って行きますので宜しくお願いします(笑)。

(注1)トランス系
“変圧器”のことではなく、トランス・レコードまわりの諸々の事をこう呼ぶ。YBO2を主軸とし、ZOAやASYLUMがその代表バンド。ファンの女の子達をトランス・ギャルと呼んだりする。神秘的なルックスのバンドと、黒を基調としたゾロゾロっとしたファッションのファンの女性達、それはヴィジュアル系の先駆者と言える。

(注2)たむたむスコープの斎藤さん
横浜、川崎あたりを中心にコンサートやイベントを企画する会社。最初は地元のコンサート企画だけだったのが、次第にバンドとの付き合い方が深くなり、関東近郊のツアーの面倒も見るようになった。パンク系のライブが新宿ロフトであると、打ち上げの仕切を斎藤さんが手伝ってくれるようになって、編集担当の国枝はずいぶんラクになったものだった。当時流行っていたゲーム「スーパーマリオ」のマリオのような髪型とヒゲの、面倒見のいい斎藤さん。今回この企画ページにご登場願おうと予定していた矢先の4月3日に亡くなられたと連絡をもらった。斎藤さんのご冥福を祈り、この企画ページを終了したい。