第150回 ROOF TOP 2010年10月号掲載
おじさんの眼
「いつまで続くこの猛暑……」

どうなる温暖化まっしぐらの破滅的地球

 9月も終わろうとしてるのに猛暑、熱帯夜の日は続く。ここまで暑い夏は、60数年生きてきた私にとっても記憶がない。暑い、今日も暑い。そして明日も暑い。
 この夏、地球規模の猛暑と同時に、世界中のいたるところで洪水、大規模な山火事、地震なども起こった。地球は奇跡的なほど微妙なバランスで成り立っているのだ、と感じた。これも現代社会が、多くの環境学者の警告を無視して対策を怠り、人々はそれぞれが裕福になり資本家はただ儲かればいい、と突っ走った結果に過ぎない、と私は思う。
 急速なグローバル化によって、資本主義社会の宿命といわれる富へのあくなき追求は、国境を越え世界中で貧富の格差を助長して、弱肉強食の世界を作り上げた。そこには地球環境への配慮はほとんど存在しない。経済成長最優先なのだ。
 アメリカのオバマ大統領が核廃絶宣言をやろうとも、鳩山前首相が二酸化炭素排出量25%削減の空文句(?)を言おうと、「そんな無理をしたら日本の企業は立ちゆかない」と阻む資本側。企業の存続と地球の滅亡を秤にかけることには、もう私は意味が解らなくなってくる。地球が存在しなければ、企業もクソもないのは、子どもでもわかる理屈だろう……。「もう地球はスゴイ速度で破滅に向かっていて、救えない状態まできている」という、悲観的な環境学者だっているのだ。
 そして、相変わらずの相互不信の象徴である「軍拡競争」もまた、歯止めがきかない。軍拡論者は「中国が、北朝鮮が攻めてくる」と、もう50年も前から言い続けている。


沖縄・辺野古の海にて。政府はアメリカの言いなりになって、この珊瑚とジュゴンの棲む蒼い海に軍事基地を作れるのか?

官僚支配を脱する政権交代が行われたのだが……

 私たち中高年は、生まれたときからずっと、自民党保守政治の中で育ってきた。「政治三流、経済一流、日本の国際的地位は世界一優秀な官僚で成り立っている」とは、何回も聞いた言葉だった。
 50数年に及ぶ官僚におんぶにだっこの自民党政権は、いいように官僚に操られることになった。官僚は自分たちに都合のいい法案を次々自民党議員を通じて成立させ、長い時間をかけてこの鉄壁な天下りシステムを完成させた。政治家は選挙という洗礼があって何かに失敗すれば落選という責任を取らされるが、官僚には責任という言葉がない。この自民党独裁政権の時代が長く続いた。この事態にさすがに国民もあきれはてた。その結果が昨年の、民主党による政権奪取につながったわけだが……。


軍事基地建設に反対する辺野古団結テント。もう10年近くもここで頑張っている

あの事業仕分けのパーフォマンスは何だったのか?

 確かに、民主党が自民党を破り政権交代をはたしたのは画期的なことだった。だから多くの有権者は民主党に期待した。昨年の鳩山首相の就任演説には、私ですら泣けた。あの事業仕分けにも、最初は感動すらした。
 しかし結果的には、まるで“やるやる詐欺”に等しい事業仕分けだった。民主党は選挙時のマニフェストでは、国の総予算207兆円の全面組み替え、税金の無駄遣いと高級公務員の天下りの根絶で年17兆円を捻出できる、と主張していた。政権交代は、この天下り根絶、無駄遣いの洗い出しに国民が期待したからこそ、できたのだ。
 だが、事業仕分けで捻出できたのは、ほんの2兆円にも満たなかった。さらには事業仕分けの最大の課題、ダム建設の廃止はほとんど進んでいない。あれだけ世間の注目を浴びた八ツ場ダムも、事業仕分けの「廃止」宣告にもめげず工事は続いており、事業仕分けには法的拘束力がないことを理由に、予算はどんどん復活している。この官僚のしたたかさに、現首相・菅直人が何もできていないのがもどかしい。


戸川純と後藤まりこのいる風景

 9月20日。昨日まで結構つらい鬱状態にいた。季節の変わり目はいつもそうだ。今日は秋の気配を感じた。夕刻、抗鬱剤を一錠飲んだ。
 気分が変わり、どうしてもパンクが聴きたくなった。66歳のじじいが……と思いながら、自転車で新宿LOFTに向かった。身体を秋の風が心地よく抜けた。
 途中でスコールに遭遇し、国道20号線沿いのマクドナルドに避難。意外と早くスコールは終わり、私は再び新宿へと急ぎペタルを漕いだ。
 新宿LOFTに着いた頃、ミドリのセッションバンドが最後の2曲をやっていた。聴きながら、やっぱり「ミドリはスゴイ!」と思った。フリージャズ風の激しいサウンドに、ボーカル&ギターの後藤まりこがまたがる。宙に浮く。このバンドの発するパンクは新鮮だった。まさしく新しいパンクだと思った。たった2曲しか聴けなかったけれど堪能した。
 そして次は、純正パンク(?)の戸川純だ。本当にちゃんとしたパンクだった。これも私には心地よかった。「そうなんだよな! これが正しいパンクなんだよな」って思いながら、いつの間にか身体が踊っていた。戸川純、いまだ健在なり、と思った。
 戸川純と後藤まりこ。新旧世代のパンク、何か闘っている感じでなくて共生している音楽を聴いた。
 ロックって、いつも闘っていて欲しい。そこから新しい音楽が生み出されていくんだ、って信じていた。しかし今夜、66歳の老いぼれの私は、闘いだけでなく共生(=お互い認め合う)の中にもいい音楽が生み出されるんだ、っていうことを知った。
 ライブ終了後、歌舞伎町で音楽ライターの吉留と酒を飲んだ。「僕ももうすぐ還暦を迎える。いつまでこうやって歌い続けられるのか?」という、昨年4月、中野サンプラザでの山下達郎のMCを思い出した。「いつまでこうやって狂った(?)パンクを聴き、楽しめるのだろうか?」という不安が脳裏をよぎった。


 文学少年時代からの癖か? 毎年、年二回の芥川賞と直木賞にこだわる自分がいる。しかし今回、芥川賞の『乙女の密告』(赤染晶子/新潮社/10年)は途中で投げ出し、直木賞『小さいおうち』(中島京子/文藝春秋/10年)はなんとか読破したが、全編載せていなくて消化不良。両者とも全然感動しないのは、私が年を取ったせいでついて行けていないのだろうか? なんだか悲しい。


今月の米子&オー君

すっかり夏バテの我が家のネコたち。米子(左・アメショー・4歳・メス)、オー君(右・スコティッシュ・6歳・オス)



『ROCK IS LOFT 1976-2006』
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ロフト席亭 平野 悠

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