Monthly Free Magazine for Youth Culture
ROOFTOP 2006年1月号
OGRE YOU ASSHOLE

松本発名古屋経由US行き!
余りにスリリングかつオルタナティヴな感性で鳴らされる新世代型ギター・サウンド!

 その一見コワモテな名前とは裏腹に、練り上げられたアンサンブルでしなやかなギター・ロックを奏でるOGRE YOU ASSHOLE〈オウガ・ユー・アスホール〉。現在名古屋をベースに活動し、54-71、モールス、二階堂和美、toddleといった国内勢のみならず、the evens、ザ・マジック・マジシャンズ、タラ・ジェイン・オニール、ハー・スペース・ホリディら海外勢に至るまでクセ者揃いの共演者リストは絶賛増加中。高校時代に地元長野で目撃し、バンド結成にあたって強いインパクトを受けたモデスト・マウスら偉大な先達からの影響を嫌みなく消化しきった待望のデビュー・アルバム発売にあたり、メンバー4人に話を聞いた。(interview:斉藤耕治)

出身は“日本のウッドストック”原村

──まずは、これから嫌になるほど訊かれると思うんだけど、バンド名の由来を教えて下さい。

出戸学(vo, g):もう嫌になりかけてる(笑)。

──この名前って、最初自分で読めたんですか?

出戸:読めなかったです(笑)。高校生の時にモデスト・マウスの松本公演を観に行って、ベースのエリックに「サインをくれ」って言ったら、その時にアラタ(現在病気療養中のオリジナル・ドラマー、西新太)の腕に“OGRE YOU ASSHOLE”って書かれて。その時は意味も判らないし読めなかったんだけど、モデスト・マウスが書いてることだしカッコいいんだろうなって。ノリでそのままバンド名にしちゃいました。

──高校生って何年前だっけ? こないだの来日になるの?

出戸:そう、一番最後の来日。4年前ですね。高3の時です。

──その時はもうバンド組んでたの?

出戸:まだライヴハウスには出てなくて、曲とか作り始めてる頃でまだ3人だった。

──3人というのは?

出戸:俺と、ノリ(平出)と、アラタ。

──じゃ、とりあえず練習だけやってたんだ。練習はどこで?

出戸:僕の自宅。

──えー、自宅っていうのはどこでしたっけ?(笑)

出戸:原村(はらむら)。

──原村ってどこ?(笑)

出戸:(笑)長野県の諏訪地方の山奥の原村。そのさらに山の中。周りに家とかないから、親さえ許してくれればどんだけ大きい音出してもよかった。

──日本のウッドストックだからね(笑)。3人とも原村なの?

出戸:3人ともそう。

──馬淵君は違うんだ。

馬淵啓(g):そう。

──ライヴを始めたのは?

出戸:4年前。初めてのライヴはクレリズ(長野県松本の企画「クレイジー・リズム」)で、シック・オブ・レコーダーと一緒にやった時。

──牧野さん(クレイジー・リズム主宰。オウガ・スタッフ)とはそれがきっかけなの?

出戸:牧野さんがやってるCD屋にしょっちゅう遊びに行ってて知り合ってて。クレリズ観に行った時に「おもしろい企画だな」って思って。実際ライヴハウスでライヴを観るってことがその時が初めてで、「俺達も出たいんですけどどうしたらいいですか?」って牧野さんに訊いたら、「デモテープ持ってきて」って言われて、渡したら出ることになったんです。

──じゃあ、3人で始めて、馬淵君はいつ加入したの?

馬淵:大学2年の時だから、それから2年後。2年前ですね。

──それまでは3人でやってたの?

出戸:3人でやってたんだけど、俺が地元で浪人してたから1年間活動が出来なくて。だからバンド自体ストップしてたんだけど、大学入学して名古屋に来たからもう一回始めようっていう時に「ギターもう一本入れたい」って俺が言い出して、名古屋に来てた馬淵が入った。

馬淵:出戸が浪人中に俺とノリとアラタで別でバンドやってたんですよ。

平出規人(b):そうです。アラタと3人でやってたんだけど、アラタが「もうやめたい」って言ってて、2人でやってマナブ(出戸)が来たから合体したって感じですね。

──じゃあそれがマジック・マジシャンズの来日公演の前座やる前くらいかな?

馬淵:マジック・マジシャンズとやったのは僕が加入して初めてのライヴですね。

──その時は勝浦君はまだいなくて…。

馬淵:でも観に来てたんだよね、打ち上げも来てて(笑)。その時に初めて勝浦さんと喋った。

勝浦隆嗣(ds):そうそう、打ち上げで初めて話したんだよね。

出戸:俺らの初めての4人のライヴはちゃんと観てたっていう。

──勝浦君はもうその頃は名古屋にいたんだよね?

勝浦:そうです。もう名古屋にいて。

馬淵:で、いろんな名古屋のバンド知ってたから、教えてもらったりして仲良くなって。

──もともとは、大学が長野だったんだよね?

勝浦:そうです。松本です。

出戸:クレリズはそもそも勝浦さんが大学生の時にやってたバンドと企画をやりたくて牧野さんが始めたんです。

──マジック・マジシャンズの時はなんで松本まで観に来たの?

勝浦:その頃、久しぶりに松本に来始めていて、牧野さんからオウガっていう面白いバンドがいるって聞いてて名古屋から観に来たんです。

出戸:名古屋からわざわざバイクで。

──アラタ君はいつ倒れたんだっけ?

馬淵:俺が入って1年後ですね。

勝浦:去年の7月?

出戸:で、倒れて、最初「バンド終わったな」って思ってて。でも「まだやりたいよね」って言って。誰かいないかなって時に勝浦さんがいるじゃん、って。でもその時別のバンドやってたから「掛け持ちでいいからお願いします」って頼んで。

馬淵:アラタが倒れて2週間過ぎくらいからだから、8月から練習に入ったんだよね。

──ライヴの予定は結構入ってたの?

平出:結構キャンセルしましたね。

馬淵:そう、で何とかアーロン・ブースの来日の時までには間に合わせようって練習しました。

──名古屋デビューはいつだったの?

馬淵:勝浦さんのacousticsが出るライヴに誘ってもらって。

──なんだ、勝浦君がそんな幅利かせてるんだ?

一同:(笑)

──3人はモデスト・マウス好きでってのはよく知ってるけど、勝浦君は後から入って、歳の離れた他3人のメンバーとは聴いてた曲も違うと思うんだけど、どんな音楽を聴いてきたの?

勝浦:学生の頃、組んでたバンドのメンバーの影響もあってネオアコ…時代的に盛り上がってた時期なんで。その後にはプライマルとかのUKインディーズの方に行って。その後トータスとかの音響系に一気にどっぷり…。まぁ裏の王道、というか。

──それ、もう一回言って(笑)。

勝浦:裏の王道。

一同:(笑)

勝浦:その後クラフトワークとかジャーマン・プログレとか。まぁそれも音響系の流れで当時流行ってた。

──実に真っ当な音楽ファンだね。

勝浦:そうなんですよ、辿っていく感じで。で、それ以降彼らからモデスト・マウス以降とかのを聴かされて。その辺はぽっかり穴の開いてた部分って感じでした。


目指すのは自分達の気持ちいい絡み

──最初どうだったの。この3人に「こうやれ」って注文されて。「何言ってんの」っていうのはなかった?

勝浦:いやいや。でも最初やたら「ドラムで転換つけろ」って言われて。アラタ君がそういうタイプだったから。ギターもベースもそんなに変わらなくて、ドラムがきっかけになって転換するみたいな。凄くアラタ君との曲がそう作ってあって。僕はCANみたいな繰り返す感じのが好きだから、難しくて。

──実際ドラマーが変わると、かなり全体の雰囲気が変わると思うんだけどどうでした?

馬淵:最初は難しかった、なかなか曲が出来なくて。最近またポンポン出てくるんだけど。

出戸:1年経って、ようやくお互い判り合えてきて。

──曲作りっていうのは、みんなでスタジオ入って作るの?

出戸:そうですね、セッションから作り上げていく感じ。

──じゃあ詞が完全に後?

出戸:詞は完全に後。

──で、このメンツで2004年の夏から再始動して。アルバムを録り始めたのはいつになるんだっけ?

出戸:今年(2005年)の3月ですね。2週間でミックスまで一気に。

馬淵:で、マスタリングが半年後。

──録ってから1年近く経ったんだけど、今自分で聴いてどう?

出戸:「いいな」って思う時もあるし、「もっとこうしたかったな」って思うこともあります。

馬淵:音はやっぱり「もっとこうしたかった」って思うところは山ほどあります。

──具体的に足りないと思うのは、音質的な部分やサウンド面でひねりを加えたかったってこと?

出戸:うーん、うん。

──ただ、このアルバムに関しては、シンプルでいいよ、って考え方もあると思うんだよね。デビュー作で気張って作り込んで、後にはもう何もありません、っていうよりも。

出戸:ああ…。

──プレーンな状態で出したから、これを聴いてこれからライヴを観る人は楽しいと思うよ。よくある「ライヴを観て良かったけど、CD聴いてこりゃダメだ」っていうのでもないし。

出戸:あ、そうですか。

平出:良かった。

──だから、狙ってあの音にしたのかな? とも思ってたんだけど。

馬淵:まだ狙うっていうレベルまでは行けてなかったですね。

出戸:でも派手な、と言うか如何にもメジャーっぽい音っていうのは避けたくて、それを優先したっていうのはあります。

──次に音源を作るとしたらどういう路線で行きたい? 例えば、音を増やす方向とかもあるけど。

勝浦:音数は少なくして行きたいですね。

──オウガは結構ギター・バンドじゃない、リズムがしっかり土台作った上をギター2本が絡んでっていうアンサンブル重視の。だから音数を増やすと逆にブレる可能性はある。

馬淵:それは…やっぱりストレートに行きたいです。

──ハードコアな感じに(笑)。

一同:(笑)

──ハードコアといっても、フガジじゃないけど芯をブラさずに音楽的に成長していくっていうハードコアさもあるしね。

一同:なるほど。

──ギターが2本入ってると音圧を増す方向で行きがちじゃない? 前面にギターが出て塗り潰していくという。オウガのアプローチはそれとは違うけど、それは意図的なものなの?

出戸:最後にグシャってなっちゃうけど、まぁ…下手だから。

──いやいや。でもミックスでそういう感じを押し出したい、ってバンドもいるじゃない?

馬淵:あんまり音がグシャってなってるのは好きじゃないんです、何やってるか判らないとかは。

出戸:ギターが塗り潰すような音はあんまり…。

──じゃあ、自分達自身ではオウガの音楽で何を一番見せたいと考えてますか?

出戸:やっぱり俺は、ギターの絡みとベースラインとドラムの絡みと。まぁ、楽曲の絡みかな?

馬淵:ベースラインとドラムで土台が出来ていて、かっこいいって思った曲は大体かっこいい曲に仕上がるよね、やっぱり。

──てことは、純粋に音楽の絡み?

出戸:自分達の気持ちいい絡み。

──そこを目指したい?

出戸:うん…そうですね。

──新曲はもうあるんだっけ?

馬淵:あります。出来上がってるのは5曲ほど。

出戸:ライヴでやってない曲も合わせれば、アルバムも作れるくらいの数はあります。

──新ラインナップで作った曲なの?

出戸:全部そう、新ラインナップで。

──じゃあ、新ラインナップの新曲もあり…。

出戸:そうですね。今日(12月16日)レコ発なのに、ライヴでやる曲はアルバムの曲と新曲、半々なんですよね。

──では最後に定番っぽく。フェイヴァリット・アルバム3枚もしくはアーティストを3組挙げて下さい。

馬淵:モデスト・マウスの『The Lonesome Crowded West』、メイク・アップの『Save Yourself』。あとテレヴイジョンの『マーキームーン』。あのギターは凄い。

出戸:モデスト・マウスの1stと、一昨日買ったデヴェンドラ・バンハートの『Oh Me Oh My...』。凄い良かった。あと、スティヴン・マルクマスの一番新しいやつ(『フェイス・ザ・トゥルース』)。

平出:俺はナンバーガールの『シブヤROCK TRANSFORMED状態』。最近はパニックスマイル。もう一つは……。あっそうだ、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン。1st派ですね。

勝浦:クラフトワークとレイハラカミと何だろ、もう一つ…。

──メタルは誰も通ってないの?

馬淵:聴いたことないですね。

勝浦:僕は中学の時にメガデスとか。

──じゃあ勝浦君がもう一つ好きなのはメガデスってことでまとめておきますよ。

一同:ええっ!!!(爆笑)

1st ALBUM 『OGRE YOU ASSHOLE』

1st ALBUM 『OGRE YOU ASSHOLE』

OYA / R and C Ltd. OYA-1002
2,300yen (tax in)
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Live info.

1月9日(月・祝)渋谷LUSH【共演:uri gagarn、YO-MA、SIGH】
1月16日(月)今池得三【共演:MAKE BELIEVE (from U.S.A.)、THE ACT WE ACT】
1月21日(土)長野NEONHALL【共演:slowlie、tvdinner】
2月2日(木)渋谷O-NEST【共演:LOVES.、toddle】
2月25日(土)今池得三【共演:JEFF HANSON (from U.S.A.)、トクマルシューゴ】
【total info.】FISHY COMPANY:03-3358-0742

OGRE YOU ASSHOLE OFFICIAL WEB SITE
http://www.ogreyouasshole.com/

写真提供:B-PASS

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