Monthly Free Magazine for Youth Culture
ROOFTOP 9月号
THE ROOSTERS RE・BIRTH II

 2004年、奇蹟の復活&ラストライブを行ったルースターズ、その模様を完全収録したDVDが『RE・BIRTH II』としてリリースされた。日本のロック史において最も貴重なドキュメンタリーであることは間違いない!(文:加藤梅造/文中敬称略)

 2003年6月に発売されたROCK'N'ROLL GYPSIESのアルバム『I』。そのアルバムジャケットにはバンドメンバー──花田裕之、池畑潤二、井上富雄、下山淳の後ろ姿だけが写っている。4人の背中が何を語っているかはわからない。もっとも、寡黙な彼らが饒舌に何かを語ることなどないだろう。ただ、いま改めてこの写真を眺めていると、彼ら4人がある1人の人物を待っているように見えてくる。それはもちろん、かつてルースターズというバンドで共に活動し、このアルバムに歌詞提供という形で十数年ぶりに音楽シーンに戻ってきた大江慎也のことだ。

 『I』リリース後の展開はまさしく驚きの連続だった。ROCK'N'ROLL GYPSIESのライブに大江慎也が突然飛び入りしたこと、大江が元ロッカーズの鶴川仁美らと新バンドUNを結成しライブ活動を始めたこと。これだけでも大江の復帰を半ばあきらめかけていた多くのルースターズ・ファンを驚喜させるには十分だったが、さらに信じられないような事件が起こる。そう、昨年、ロックシーンを震撼させた、フジロック2004でのルースターズLAST LIVEだ。

 大江、花田、井上、池畑からなるオリジナル・ルースターズが演奏するのは実に約22年ぶり(1982年11月以来)のことだった。このLAST LIVEという場を準備したのは、長年ルースターズを支えてきた元マネージャーの石飛智紹、朋友・スマイリー原島、そして安藤広一、仲田剛といった影のルースターズ軍団だ。もちろん、音楽業界の有志やミュージシャン仲間、そして多くのルースターズ・ファン達(もちろん僕もその一人)の大きな願いがあったのは言うまでもない。長年の見果てぬ夢が、現実となった瞬間があのフジロックでのLAST LIVEだったのだ。

 それからほぼ1年。あの忘れられないライブが一編の作品となってリリースされた。それが今回紹介するDVD『RE・BIRTH II』だ。監督はもちろん石井聰亙。映画『爆裂都市』でルースターズと出会い、その後ずっとルースターズを撮り続けてきた石井にとって、今回の作品は「久しぶりにエンジンに火がついた」ものだった。

 2004年7月8日、石井はカメラ片手に単身福岡に飛んだ。ここでフジロックに向けての初回リハーサルが行われたのだ。正に22年ぶりに4人が音を出す瞬間。ほとんど何も喋らないままに「Hey Girl」の演奏が始まる。とても完璧とは言えない演奏だが、確かに何かが生まれる瞬間をカメラの映像は伝えている。ルースターズがReBirthした瞬間を、だ。 「これがどうなるか全くわからなかった。撮りたい!という気持ちだけがあった」と、石井はこの時の心境を振り返る。来年には監督活動30周年を迎え、今や日本を代表する監督となった石井聰亙にとっても、このプロジェクトは大きな賭であり希望だったのだ。

 DVD2枚組、3時間半にも及ぶこのドキュメンタリーで山場となるライブシーンは2つある。1つは7月26日、古巣・新宿ロフトで急遽ウォーミングアップLIVEとして行われた演奏、もう1つは、もちろん7月30日フジロックでのLAST LIVEだ。

 新宿ロフトでのLIVEの頃には、メンバーの間にいい感じのグルーヴがきているのが伝わってくる。わずか2週間ちょっとの期間でルースターズはおそるべき成長を遂げ勢いに乗っていた。井上が「大江慎也を核に演奏がまとまってきた。不安はない」と発言しているのもうなずける。あとはフジロックへ向けて一直線だった。

 そして迎えた7月30日。観客がグリーンステージエリアを埋め尽くす様は、かつてライブハウスを拠点に活動していた4人にとっても嬉しい光景だっただろう。そして「Wipe Out」のSEの後、立て続けに演奏された16曲のステージングはルースターズのライブ史上でもベストアクトの一つと呼べる素晴らしいものとなった。観客、スタッフ、メンバーの誰もがこの奇蹟の時間に酔いしれた。ロックの女神が苗場の空で微笑んでいた。

 それから1年。このロック史上に残る、ルースターズ・サーガとでも呼ぶべきドキュメンタリーが私たちに届けられた。当初は諸事情で演奏シーンを全部収録できないと言われていたが、幸運にもすべての演奏が完全収録されてのリリースだ。この発売を記念し、さる8月22日にロフトプラスワンでトークイベント「RESPECTABLE ROOSTERS」が開催されたが、この場にゲストとして石井聰亙と大江慎也が登場してくれた。この夜、大江も石井も絶好調。後半には下山淳も駆けつけ、急遽、大江と下山の即興ライブが行われるなど、集まったファン達との祝いの宴が深夜まで続いた。

 最後に、このイベントのために大江慎也がリーディングしたメッセージを載録し、この短い文を締めたいと思う。ありがとう、ルースターズ!


<大江慎也からのメッセージ(載録)>

若い才能を、持て余している人に言いたい。自分たちが、音楽をしたい様にしたいと思う事が、多分知っている通り大切だろうと。
俺はこれからも、音楽を作り、演奏し続ける。例え、クレイジーである時があっても、来ても。
俺たちは、若くもあり、年齢も重ねている。
迷い、判断、行動、思索そしてCD、ステージが、いつまでも、何よりも楽しく、面白いものである様に、望んでいるが、自分のプライベートな時は、プライベートな時として、過ごせる様に、したいといつも思っている。プライベートな時まで、かき乱されるのは、自分としては、困ると思う気持ちが、非常に強い。
俺はロックンロールアーティストだと思っているが、いわゆる過去から、一般的なロックンロールアーチストだとは、思われたくない自分がいるのは、確かである。
シド・バレットや、ブライアン・ジョーンズと一緒にされるのは、いつもどうかと思う。
彼らの才能、素晴らしい良い点は、わかる様な気もする。
結果的に彼らは、ああいった形でとらわれているのを、残念に思うとともに、俺とは違うという事を、強調したい。
ロックンロールが続き、音楽がいつの時代でもある様に、ポップミュージックがあり続け、そしてそれによる商業形態がある様に、それよりもっと音楽が楽しいものである様に、俺は願っている。
君達が、君達を愛している様に、俺は、俺を信じ、愛している。
俺の歌い、奏でる音楽により、解放されることを願っている。
音楽により、すべての事象が、変わるとは思わないし、音楽がすべてを超えるとは、思ってはいないけれど、俺は音楽が、何より好きだ。
例え人々が、俺の音楽に、何を感じ、何を想うかは、俺の自由ではない。
俺は、ソロアルバムを創る。(※ここで会場から大歓声が起こる)

既に、予定、及び準備は入っている。
音楽が辿ってきた歴史を追うつもりはないと、思う気持ちもない事はないが、俺は相変わらず、自分の歴史を創って行く。

皆さんが、幸せでありますように。

RE・BIRTH II

RE・BIRTH II

Columbia Music Entertainment/TRIAD COBA-50867〜8
8,000yen (tax in)
DVD 2枚組+52Pフォトブック付
IN STORES NOW
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 FUJI ROCK FESTIVAL'04で実現した“オリジナル・ルースターズ”による22年振りの(ラスト)ライヴ。このライヴに至るまでのすべてのリハーサル、新宿ロフトでのシークレット・ライヴ、メンバーへのインタビューなどを記録した3時間半に及ぶドキュメンタリー。監督は石井聰亙。

THE ROOSTERS OFFICIAL WEB SITE
http://columbia.jp/roosters/

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