KRB(Keith Ragtime Band)

KEITH自ら“最後のバンド”と語る、ARBの楽曲を伝承していくバンドが待望の本格始動

元気なうちにARBの楽曲を伝えていくために熱い漢たちと新バンドを作り全国を周りたいと決意した

社会の底辺で生き、日々の労働に従事する人々の葛藤や苦悩を赤裸々に描いた、気骨ある“WORK SONGS”が絶大な支持を得たARB(Alexander Ragtime Band)が活動休止となったのは2006年3月のことだった。


それから20年ものあいだ、ARBが残した不朽の名曲はKEITHの芸能生活40周年記念ライブ(2013年)やバンドのデビュー40周年記念ライブ(2018年)、2025年以降に毎年行なわれているKEITHの生誕祭ライブなど折々に息を吹き返すことがあったものの、継続的に演奏される機会には恵まれなかった。


唯一のオリジナルメンバーとしてARBの楽曲を後世へ伝えることを自身の使命とし、ずっと待ち続けてくれるARB KIDSのことを常に第一に考えてきたKEITHとしては実に口惜しい歳月だったはずだが、ついに機は熟したと言っていいだろう。WOLF & THE GOODFELLASのWOLF(vo)とシズヲ(gt)、4-STiCKSの柳沼宏孝(ba)、そしてKEITH(ds)から成る“Keith Ragtime Band”=“KRB”の結成である。


彼らの実質的な活動開始宣言となるこのインタビューでは、KEITHの悲願だったバンド結成に懸ける思いとそれに応えるメンバーの心意気が語られている。ARBの屋号を頑なに守り抜いてきた男が至高の“ARB SONGS”を蘇生するに相応しいと認めた無二の面子、彼らの奏でる“WORK SONGS”の最新形にぜひ期待していただきたい。(Interview:椎名宗之)

ARBの楽曲を本来の形のままやりたい、そのまま残したい

──WOLFさんとシズヲさんが遅れていますが、先に始めましょう。今年の6月11日にKEITHさんがX(旧Twitter)で「元気なウチにARBの楽曲を伝えていく為に熱い漢達と新バンドを作り全国を周りたいと決意しました」と宣言し、その動向が注目を集めていますが、ついに正式な発表を伝える準備ができたということで。


KEITH ようやくね。パーマネントのバンドをやりたいとずっと思ってたし、残された時間もあまりないから。今までセッションはいろいろとやってきたけど、自分が本当にやりたいバンドをどうしても作りたかった。


──ARB第3期のギタリストだった白浜久さんがさる7月18日に亡くなったこともありましたし……。


KEITH とても残念だった。サンちゃん(シンコーミュージック独立後から第2期前半までのベーシスト、野中“サンジ”良浩)もそうだし、時間が限られているのを意識せざるを得ない。抜けた人たちもそれぞれARBの曲をやってるけど、俺からすると、今の自分の解釈でやりたいようにやってるように見える。俺はARBの楽曲を本来の形のままやりたいし、そのまま残したい。


──柳沼さんはKEITHさんから新バンドの構想を受けて、二つ返事で応えたんですか。


柳沼 いや、最初は丁重にお断りしました。あまりに畏れ多いし、荷が重いですから。


KEITH だけど『MINAINO ROCK FESTIVAL』や自分の生誕ライブでここ数年ずっと一緒にやってきてるし、俺としてはヤギちゃん以外に考えられなかった。


柳沼 そう言っていただけてとても光栄ですが、その場限りで終わるセッションと継続していくバンドは違うじゃないですか。


──今年の『MINAINO ROCK FESTIVAL』が終わった直後にKEITHさんから連絡があったとか。


柳沼 「バンド名を考えてよ」とKEITHさんが言うので「何のバンドですか?」と聞いたら、新しいバンドを組むと。メンバーを尋ねたら「ヤギちゃんと……」って言われて、ちょっと待ってくださいと(笑)。そこからKEITHさんが構想するバンドの話を聞いたんです。

──ARB唯一のオリジナルメンバーであり、バンドの屋号を背負い続けてきたKEITHさんからご指名を受けるなんて、とても名誉なことじゃないですか。


柳沼 だからこそなんですよ。KEITHさんと共にARBの楽曲を守り継いでいきたい“自称ARB”はいっぱいいらっしゃるし、その人たちから僕は罵声を浴びることになるので(笑)。


KEITH でももう何度も共演してるし、こっちの気持ちもわかるじゃない? 阿吽の呼吸というかさ。


柳沼 まあ、5、6年はご一緒してますからね。


KEITH もちろん誰でもいいってわけじゃないし、自分にとって最後のバンドは気持ちが合う人と一緒にやりたい。もう悩むのはイヤなんだよ。ARBの楽曲を本来の形で残したいという俺の気持ちに納得してくれる人じゃないとダメだし、楽曲に対する理解もないとダメ。面白いのは、同じARBの曲をやるにも弾く人によってニュアンスが変わるし、全く同じにはならない。それを去年と今年の『MINAINO ROCK FESTIVAL』で確認できたから、このまま同じメンバーでバンドを続けていきたいと思ったわけ。


──こうして新たな形で不朽のARBナンバーを届けることに異を唱える人たちがいるかもしれないけど、KEITHさんとしてはそうした意見も甘んじて受け入れますと?


KEITH うん。やめたメンバーもいろいろ思うところがあるだろうけど、ARBの曲を伝えていくのが俺の使命だから。


──なるほど。KEITHさん、WOLFさん、シズヲさん、柳沼さんという、去年と今年の『MINAINO ROCK FESTIVAL』におけるKEITHバンドを経ての新バンド結成なわけですね。


KEITH そうだね。曲に対するアプローチも各自わかってくれてるし、これでもうバンドを続けていける、このメンバーしかないと思った。去年はちょっとぎこちないところもあったけど、今年はばっちりだった。WOLFもシズヲちゃんもただ取り組むだけじゃなく、純粋にARBの曲が好きでやってくれるし、何回も一緒にやってるうちにその思いが伝わってくる。曲に込めるそれぞれの熱い思いがね。

ずっと待ち続けてくれたARB KIDSのために

──柳沼さんからすると、WOLFさんは大先輩ですよね。


柳沼 僕が18の頃から知ってます。WOLFさんはMACHIN-GANが終わってZETTが始まる頃かな。初めて観たのは西新宿LOFTでG.D.FLICKERSのオープニングアクトをZETTがやったときですね。シズヲは向こうが1個上なんだけど、バンド歴はこっちが上。西新宿LOFTという名の小滝橋大学出身で僕がずっと一番の末っ子なんです(笑)。


──バンド名は決まったんですか。


柳沼 一度、この4人で集まったんですよ。そこでいま聞いてもらったような質問をKEITHさんにしたんです。なぜ僕らが選ばれたんでしょう? みたいなことを。いくらKEITHさんという御大がいても、罵声を浴びるのは僕らなんですよ、って(笑)。でもKEITHさんから新バンドの構想を聞き、そこまで言っていただけるのは光栄なことだし、ここはお引き受けしようと全会一致で決まりまして。バンド名についてはその後、WOLFさんが一晩考えてから連絡をくれたんです。「ヤギ、“KRB”(Keith Ragtime Band)でどうだ?」って。KEITHさんはオリジナルメンバーだけど、僕らはARBをリスペクトする立場だから、“Respect ARB”みたいな感じがいいんじゃないかと僕は思ってたんですよ。UP-BEATの楽曲を演奏するバンドとして、広石(武彦)さんが“Respect UP-BEAT”と名乗ってるみたいに。でもWOLFさんの言うKRBというネーミングを聞いたときに、ドンピシャだなと思って。それが一番わかりやすいと感じたし。


──KEITHさんもKRBに異存はないと。


KEITH 俺は正直、名前は何でもいいのよ。ただ俺の名前を全面に出すのはちょっと恥ずかしい。あくまでバンドだし、バンドというのは4人で一つの集合体だから、俺一人が前に出るのは違和感がある。

──KEITHさんらしいですね。今回の新バンド結成も、「朗報!! 今まで支えてくれたARB KIDSの皆さんへ」と真っ先にARB KIDSへ向けて報告をしていたのが常にファンのことを第一に考えるKEITHさんらしいと思ったんです。


KEITH ずっとARBを支え続けて、待ち望んでくれてるわけだからね。脱退したメンバーもARBの曲をライブでやってるけど、俺は正統派って言うとおかしいかもしれないけど、楽曲本来の形で次の世代へ手渡ししたい。よく元のアレンジを変えて演奏されることがあるけど、ファンの人たちが望んでるのはそういう形じゃないと思う。そのままのイントロを奏でれば大きな歓声もあがるしさ。ローリング・ストーンズだってずっと同じアレンジでやってるでしょ? そういう俺の発想に共感してくれるメンバーをずっと探してた。


──リハーサルでスタジオに入ったりは?


柳沼 これからです。


KEITH ステージは二度やってるし、持ち曲もあるから何の心配もない。


柳沼 確かにしっくりきたというか、グルーヴが確立してきてるのは自分でも感じたんですよ。


KEITH 今年の『MINAINO ROCK FESTIVAL』を観た人が「去年と変わってしっくりきた」と言ってくれたし、俺自身もそう感じた。これならいけると思ったし、俺自身がもうこれ以上待てないって感じだった(笑)。新しくバンドをやるのは俺の夢だったから。


柳沼 僕もARB KIDSの皆さんから身に余る言葉をかけていただいたんですよ。「自分のベースはオマケみたいなものです」と自虐的に言ったら「そんなこと言わないでください」とARB KIDSの方にお叱りを受けて、今のKEITHさんとのリズムセクションを誉めていただきまして。KEITHさんが常に大事にしてきた、ARBを待ち続けてきた人たちから言われたことって一番重要だし、響きますよね。

自分の個性を思いきり出さないとARBに立ち向かえない

──二度の『MINAINO ROCK FESTIVAL』ではあくまでセッションでしたけど、永続的なバンドとなるとわけが違うじゃないですか。気持ちの入り方、向き合い方も自ずと変わると思いますが。


柳沼 もうそのモードにしてますね。だからプレベ(プレシジョンベース)は弾きません。それだとサンジさんのコピーになっちゃうし、パーマネントのバンドをやる以上は自分の個性を出せるサンダーバードを弾くつもりです。それくらいの気構えじゃないとARBに立ち向かえませんから。そもそもサンジさんのプレイは完コピ不可能なので(笑)。


──バンマスというか、バンドのリーダーは?


KEITH ヤギちゃんに任せてる。


柳沼 荷が重いですよ(笑)。


KEITH バンドって分担作業だからね。ずっとARBをやってきた俺ばかりが目立つっていうのはイヤだし。自分では不向きな渉外みたいな部分はヤギちゃんに任せるのが一番。


──ライブは決まっているんですか。


柳沼 目下、調整中です。


KEITH 呼んでくれるところがあればどこにでも行くよ。ありがたいことに、けっこう引きがあるんだよね。


柳沼 御大がXに投稿してからザワついてますから(笑)。


──ARBの楽曲が封印から解かれるのはKEITHさんのバースデイライブで年に一度でしたが、今後は継続的に楽曲が息を吹き返すわけで、そんな事態はバンドが活動停止して以降、20年ぶりですしね。


柳沼 その意味でもプレッシャーは全員大きいし、それが良い緊張感をもたらすはずですけどね。


──KEITHさんのやりたい曲と、3人のやりたい曲が微妙に違ったりするのでは?


KEITH そこはまた話し合って決めていけばいい。3人はお客さんの立場でARBのライブを観たことがあるし、その視点もまた大事なんだよね。こういう曲が聴きたいんだなと参考になることが多いし。自分としては、時代に合わせた曲をやっていきたい。こういうインタビューでよく引き合いに出すけど、「ラ・ラの女」みたいにライブで盛り上がる人気曲でも、今の時代的には詞が幼いよね。それよりもたとえば「ボート・ピープル」のような社会性を帯びた曲をやりたい。戦禍で国を追われ、船で異国へ逃げ出す人たちをテーマにした曲をね。あるいは、故郷に思いを馳せた「淋しい街から」とか。そういう曲を大事にしていきたい。今の時代に即した曲というのがあるし、ただ騒ぐだけのライブをやっても仕方ないからね。

──そうした社会性やメッセージ色の強い硬派な曲を唄う上でもWOLFさんが適任だったということでしょうか。


柳沼 僕はちょっと意外だったんです。KEITHさんがWOLFさんを指名したことが。でもあれくらい個性の強い人じゃないと、ARBの楽曲に太刀打ちできないのかな? と思ったりもして。


KEITH 去年の『MINAINO ROCK FESTIVAL』は、WOLFの歌に力が入りすぎてたね。ああいうごまかしの利かない人間だから(笑)。でも俺と2人で「さらば相棒」をやってみたり、何度も練習を重ねていくうちに馴染んできた。


柳沼 今年の『MINAINO ROCK FESTIVAL』は「もう少し力を抜いてください」と僕からも言いました。WOLFさんの歌声はインパクトが強烈だから、ちょっと力を抜くくらいでちょうどいいですよと僭越ながら伝えさせてもらって。


KEITH 俺もいろんなセッションをしてきたから、ベースでもギターでも自分なりの尺度で見てる。もちろんボーカルもね。器用にこなすけど気持ちがこもってないなとか、そういうのはどうしてもシビアに見てしまう。今年の『MINAINO ROCK FESTIVAL』のWOLFは一緒にやっててしっくりきた。


──シズヲさんもそうしたシビアな視点をクリアできたわけですね。


柳沼 シズヲとは去年の『MINAINO ROCK FESTIVAL』で一緒にやったのが初めてで、そのときから凄いなと感じたし、いいギターを弾くなと思いました。今年一緒にやったときも同じ印象で、要するに上手いだけじゃないんです。KEITHさんを始め僕らと呼吸が合う、気持ちがマッチすることが大事。


KEITH そうそう。テクニックの話だけじゃないから。そのニュアンスはヤギちゃんもわかってくれると思う。

東京でのデビューライブは来年のKEITHの生誕祭

──こうしてパーマネントのバンドが結成されたということは、毎年恒例のKEITHさんのバースデイライブは来年どうなるんですか。


柳沼 もちろんやりますよ。2月6日に。


KEITH それが東京でのデビューライブになると思う。


柳沼 年内に都内でライブをやることも考えたんですけど、そこは裏方根性が出てしまいまして。生誕祭が東京でのお披露目だと美しいと思ったし、リハも充分できるかなと。生誕祭はぜひ期待していただきたいですね。われわれのライブもあるし、セッションではKEITHさんがビッグな方々を招聘してくださるので。


KEITH 昔のメンバーを一人呼ぶつもり。あと、著名なベーシスト。


柳沼 もの凄い人たちなんですよ。来年もまた、ステージに立つよりもフロアで観たい面子が揃うことになりそうです。


──KRBのレパートリーとセッション陣の選曲が被るようなことはありませんか。


柳沼 そこはKEITHさんが上手く考えてくれます。


KEITH 何とでもなるよ。ただ、例年と比べてあまり多く人を呼ばないと思う。俺たちのバンドの曲を多くやりたいから。一つのセクションが4曲なら、俺たちは7曲くらいの比率でバランス良くやりたい。

──来年(2027年)は図らずもARBの結成50周年にあたりますね。


KEITH ああ、本当?


──ご本人としてはそういう感覚なんですね(笑)。


KEITH あまり意識してないね。でも半世紀ものあいだARBの存在が忘れ去られていないのは、やっぱり楽曲の持つ力なんだと思う。


柳沼 「War Is Over!」のように、今の時代にこそ聴かれるべき曲がARBにはたくさんありますからね。それに、500人いれば500通りのARBに対する憧れ、思い、愛情があるんです。2018年にLOFTで行なわれたARBのデビュー40周年記念ライブで、ウチの中尾(In the Soup、4-STiCKSの中尾諭介)が「Heavy Days」を唄う前に満席のフロアへ向けて「ここには500人分のARBへの思いがある」と話すのを聞いて、僕は思わずうるっときたんですよ。


──では、東京でのお披露目ライブ以降はツアーの開催も期待していいですか。


KEITH そうだね。俺の新しいバンドに関心のある人たちから「来てくれ」という声をすでにいくつか貰ってるし。


(※ここでWOLFが到着)


WOLF 遅くなってすいません。


──お待ちしていました。WOLFさんはKEITHさんから招集されて、最初はどう感じたんですか。


WOLF 『MINAINO ROCK FESTIVAL』に二度ほど参加させてもらって、尻上がりに良くなったという評価を受けた直後のことで、KEITHから正式に声をかけてもらってついに来たかと思ったし、純粋に嬉しかった。去年、「いつかこの面子でツアーをやれたらいいね」なんて話もちょっとしてたから。プレッシャーよりも光栄に感じるほうが先に来たし、俺で良ければとすぐに返事しました。


──KRBというバンド名はWOLFさんが発案したそうですね。


WOLF “Keith Band”っていうのもありきたりだしね。自分たちも参加するにあたって何かないかなと考えていたところに、“Keith Ragtime Band”=“KRB”がいいんじゃないか? と思いついた。ARBをあえて名乗らないのならKRB、KEITHのラグタイム・バンド。みんなも似たようなことを考えてるんじゃないかと思ったけど、提案してみたら「いいんじゃない?」って感じですんなり通った。KEITHが中心となってARBの楽曲を伝えていくバンドだし、それが一番しっくりくるかなと。だけどコピーバンドではないというところが大事なポイントだね。


──コピーバンドとして、凌さんのような記名性の高いボーカルを真似したほうがずっとラクでしょうね。


WOLF 唄い回しや言葉尻をARBらしくしようとすると、どうしても石橋凌という傑出したボーカリストの存在を意識してしまう。そして、ちゃんと意味があってあの唄い方になっていることに気づく。その事実を自分なりに噛み締めはするけど、歌をそのままコピーすることはしない。それは僕の中で大きなチャレンジだね。よく言われる“WOLF節”もいい塩梅で出せればいいと思う。


──がらっぱちな“WOLF節”を出せるからこそ、安直なコピーにはならないのでは?


WOLF そうあってほしいし、おそらくKEITHはそこを見抜いた上で誘ってくれたんだと思う。

みんなのARBの歌をもう一度全国へ届けに行く

──WOLFさんにとってARBとはどんなバンドですか。


WOLF 目標とするビッグバンド、自分の足でちゃんと歩いてる格好いい大人って言うのかな。新宿LOFTを起点としてここまで登り詰めたバンドなんだなと思ってた。あるとき新宿LOFTでARBの大きな打ち上げがあって、僕らもたまたまその日に東京でライブがあったので、当時のLOFTの店長に誘われて打ち上げに参加させてもらったのが最初の出会い。KEITHや凌とちゃんと喋れた最初の日。その後、ARBが関西へ来たときにお礼を言いに楽屋へ押しかけた(笑)。上京してからはARBのライブをよく観させてもらったり、KEITHと一緒に酒を飲みながら人生の侘び寂びを教わったり(笑)。


──日本がバブル経済へ向けて突き進む時代に、あえて“WORK SONGS”という労働者の生き様を描いた楽曲を発表し続けたのがARBの凄さですよね。


WOLF うん。あの言葉の強さには影響を受けた。僕は高校もろくに出てないし、早い時期に社会に出たからARBの歌詞がストレートに入ってきた。16、7でアルバイトしながらバンドをやってたし、東京に出て荒波に揉まれるたびに凌の歌が身に染みた。ああいう歌ってなかなか書けないよね。辛いことやしんどいことは本来隠すものだし、それをストレートに歌にするARBの存在に当時は凄く励まされた。


──KRBのボーカリストとしてARBの楽曲を次世代へ継承していくことにプレッシャーはありませんか。


WOLF 僕ができることで少しでも役に立てることがあれば……って感じだけど、どこまでできるかね? 自分ごときがおこがましすぎるけど、やるからには待ってくれてるARB KIDSと一緒になって全力で唄っていきたい。「これは君らの歌だよ」ってことを伝えたいし、みんなのARBの歌をもう一度届けに行くよ、って気持ちが強いかな。KEITHを待ち続けてる人たちが全国にたくさんいるし、その人たちと真剣に向き合いながらいいステージにしたい。KEITHは根っからのバンドマンで、彼がやりたいのはやっぱりバンドで旅することなんだよ。その気持ちは凄くよくわかるし、それがやっと実現できそうで嬉しい。「一緒にバンドをやろうよ。お前たちと一緒ならできるよ」とKEITHが言ってくれたことを誇りに思うし、取り組む価値は大いにある。僕はKEITHという男に惚れ込んでいるので。


(※ここでシズヲが到着)


シズヲ すみません、遅くなりました。


──滑り込みセーフです(笑)。シズヲさんはKEITHさんからバンド結成に誘われて、率直なところどう感じましたか。


シズヲ ちゃんとやらなきゃな、って。


──シズヲさん自身はARB KIDSというわけでもなかったんですか。


シズヲ いや、めちゃくちゃ聴いてました。ただ異常にマニアックな人たちには全然敵わないって感じです。


──歴代のARBのギタリストでとりわけ影響を受けたのはどなたですか。


シズヲ ギターという楽器だけを抜き出して聴いたときに曲として完成されてると思ったのは、(斉藤)光浩さんの時期ですかね。曲はどの時期もいいものがあるけど、単純にギター弾きとして聴いて影響を受けたのは光浩さんです。もちろん(田中)一郎さん、白浜さんからも影響を受けているので、その上でという話なんですが。


──シズヲさん在籍時のニューロティカは第4期ARBと対バンしていますが、そのときの印象は?


シズヲ 音が凄くシャープだなと。昔の曲でも時代的なものやブランクを感じさせないというか。KEITHさんとはニューロティカ時代からちょこちょこ遊んでもらっていたんですけど。

──コピーバンドではなく、各自の個性を出しながら原曲に忠実であることの難しさについてはどう感じていますか。


シズヲ 各自かなり長いキャリアがあるし、同じフレーズを弾いても個性は自ずと出るんじゃないですかね。ヘンなエゴもないし、気負いなくやれると思います。


KEITH この4人で叩くとまた全然違う。それがバンドサウンドの面白さだし、レコードの音そのままを求めてるわけじゃないからね。あくまでバンドとしてこの4人で一つの音を出すことに意味がある。それぞれ個性の違う4人が一緒に音を出すからこそ面白い。


シズヲ 好きなギタリストのこのフレーズをライブで聴きたいっていうのが自分でもあるので、そこは外さないようにしようと思ってます。それも単なるコピーではなく、自分の色もちゃんと出せるように。


WOLF 練習はしっかりしないとね。コピーバンドを黙らすくらいのことをサラッとやれるレベルまで行かないと、なんだよこんなもんかよ!? って絶対に言われるから。


柳沼 その部分も含めて、このバンドに関しては僕の中では全てが闘いでしかないんですよ。


──まさに「闘い抜くんだ!(Fight It Out!)」ですね(笑)。


WOLF このバンドに関わった以上、そのテーマから逃れられないよね。やっぱり貫くべきキーワードは“闘い”なんじゃないの? これからARBという偉大なバンドやARB KIDSの期待と対峙する闘いが始まるし、この4人で音を出すようになればその中でも闘いが始まるだろうし。でも何か面白いことが生まれそうな気もする。


KEITH まずはこのメンバーで全国のARB KIDSへARBの曲を届けたい。待ってくれてる人たちがたくさんいるからね。その後にこのバンドでもLOFTでワンマンをやれるくらいになりたい。それが差し当たっての目標かな。

INTERVIEW LIST
LOFT
TADANORI YOKOO