第三回「異形の批評を読む」開催にあたって
芸術は私たちに見たこともない世界を見せてくれます。とりわけ色や形によって表現をする美術の場合、それらを過剰に用いたり、異形として描き出すことは洋の東西を問わず途切れることなく実践されてきました。人やモノが奇妙に集合するマニエリスム絵画や、おどろおどろしい妖怪が描かれた浮世絵など、例をあげればきりがありません。ポップカルチャーに目を移しても異形の表現、例えば怪物や魔術などは現在進行形で人々を魅了し続けています。
そうした創作物に対して、批評家たちはどのように応答してきたのでしょうか。仮に批評がオルタナティブを求める止みがたい衝動であるならば、これらの表象はそれに応える絶好の対象と言えるでしょう。
およそ1年2ヶ月ぶりに「シリーズ:美術批評を読む」の第三回として開催される「異形の批評を読む」では、そうした表現の想像力を、批評によって賦活され続けてきた後藤護さん、春木晶子さんをお招きし、それぞれ関心を持つ論者についてレクチャーしていただき、討議をします。
芸術が持つ「現実を超現実に変えるマニエラ」についての議論を通じ、それらを巡る批評の系譜や、そうしたイメージが私たち人間に何をもたらしているのかを探ります。
開催概要
今日ほど批評がない時代はないと言われます。しかしいつの時代も批評家は絶滅危惧種であり、いつの時代も批評はそれ自身の存在証明を繰り返してきました。批評は存在しているにもかかわらず、自分たちを危機的な状況であると認識することで延命してきた言説のジャンルと言ってもいいかもしれません。
危機とは何か?それは関心の欠落から生まれます。言説は孤独で作り上げられるものではないからです。たとえ直接言及されていなかったとしても、ある批評文は過去の批評的言説のネットワークのなかにいくつかの参照項を見つけることができます。そうした繋がりを隠れた紐帯と呼んでみましょう。その繋がりは、批評家自身にとっても自覚されていないことがあります。けれど見えないことは、存在しないことを意味しません。このレクチャーシリーズでは、こうした歴史の紐帯を見えるようにしたいと思っています。
私たちはそれぞれがあるひとりの論者について批評することで、自分自身を含む歴史が織りなす批評のネットワークを辿り直します。先人たちの言葉を吟味し、思考することで、いまという時空間のなかで生成しうる、批評の地図を制作します。そしてこの地図は、常にまた遅れてやってくる者たちによって書き換えられ、更新されていくことでしょう。
本レクチャーでは、様々なプレーヤーたちが自らが参照する、もしくは批判対象とする論者について検討することで、歴史的な繋がりを明らかにします。見えなくなった批評の系譜を辿り直すことで、自ずと同時代の批評の姿も見えるようになるでしょう。当日は各登壇者がひとりの論者についてレクチャーをしたのち、全体討議をします。
登壇者/レクチャー内容
後藤護/種村季弘論
春木晶子/辻惟雄論 ※調整中
塚田優(司会)
※レクチャー内容につきましては、変更になる場合もございます。予めご了承ください。
★登壇者プロフィール
後藤護
暗黒綺想家。『黒人音楽史 奇想の宇宙』(中央公論新社)で第1回音楽本大賞「個人賞」を受賞。その他の著書に『悪魔のいる漫画史』(blueprint)、『ゴシック・カルチャー入門』(Pヴァイン)。『博覧狂気の怪物誌』(柏書房)、『日本戦後黒眼鏡サブカルチャー史』(国書刊行会)を準備中。
春木晶子 ※調整中
1986年北海道生まれ。北海道博物館勤務後、2017年より江戸東京博物館学芸員。日本美術史専門。著書に『江戸パンク! 国芳・芳年の幻想劇画』『異能力者の日本美術-ダークファンタジーの系譜-』(パイ インターナショナル、2021、2024)ほか。
塚田優
批評家。1988年生まれ。共著に『グラフィックデザイン・ブックガイド』(グラフィック社、2022)などがある。
南島興
批評家。東京藝術大学大学院美術研究科博士課程中退(2021年)、横浜美術館学芸員(2021年-2025年6月)を経て、現在は執筆、講座、イベント企画に取り組む。2025年にはアート系Youtubeチャンネル「美術どうでしょう」を開設。全国の常設展をレビューするプロジェクト「これぽーと」主宰。
- TICKET
- [配信チケット]
¥1,000
※アーカイブは2025/11/16(日) 22:00まで購入可
2025/11/16(日)23:59まで視聴可能!!
※チケットはツイキャスにて販売中!
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[会場チケット]
前売チケット¥1,500
当日チケット¥2,000
※共に飲食代別 / 要1オーダー¥500以上
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