THE TURN-TABLESのギャラを精算中のISHIKAWA氏。

レコードショップとして生を受けて、その後レーベルとしての活動も開始。幅広くジャンルを超えて様々な個性的&濃いバンドをリリースし続けているタイガーホール。そんなタイガーホールも今年で10周年! …ということで、それを記念したツアーを敢行するらしいです。今回は、その辺も含めてタイガーホールの10年史(?)を、名物プロデューサーISHIKAWA氏に訊いてきました。 (interview : 北村ヂン)

──タイガーホール10周年っていう事ですけど、これはいつから数えて10周年なんですか。
ISHIKAWA あ、それはタイガーホールっていう物が出来てから10周年ですね。
──レーベルのですか?
ISHIKAWA イヤ、店ですよ。レコード店としてタイガーホールが生まれてからの10周年ですね。レーベルを始めたのはその二、三年後なんじゃないかな。
──最初は下北沢にあったんですよね。レーベル始めたのは新宿に移ってからなんですか。
ISHIKAWA まだ下北の時だね。一番最初にリリースしたのがTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTとJIGHEADのスプリットだったんだけど、それが98年リリースだから。それでその一年後にオムニバスの「PUNK UP THE VOLUME」が出たんですよ。
──ISHIKAWAさんはそもそもどういう経緯でレコード屋をやることになったんですか。
ISHIKAWA ロフト(当時)の平野実生くんからのお誘いですね。そして、タイガーホールっていう名前は西村茂樹くんがつけたんですよ。一応オレなりに色々な名前を考えてたんですけど、それは全部却下されましたね。
──どんな名前を考えてたんですか。
ISHIKAWA 今となってはタイガーホールっていうのが定着しちゃったんで恥ずかしいんだけど…「33rpm」とか。やっぱりイメージ違うもんな。…やっぱりタイガーホールでよかったね。
──それまでは何をやってたんですか。
ISHIKAWA ライブハウスに勤めたり、レコード屋に勤めたり、プロダクションもやったし…音楽業界を一通 り渡り歩いてきたんだけど、どれもままならず(笑)
──そういう意味ではタイガーホールで10年続いてるっていうのはすごいですね。
ISHIKAWA そうだね。今も続いてるしね。
──もともと、レコード屋として始まったタイガーホールが、レーベルをやるようになったきっかけって何だったんですか。 ISHIKAWA 当時から周りのショップがレーベルをやっていて、楽しそうだなって思っていたのもあるし、レコード屋っていってもただ物を売買しているだけでは厳しいかなっていう思いもあったんだよね。
──まあ、今やタイガーホールと言えばレーベルっていう感じになってますけど。
ISHIKAWA うん。働いている人間も少ないし、それで力が分散しちゃうんだったらどっちかに力を入れて行った方がいいんじゃないかっていうのがあって、結局去年からレーベルの方に集中することにしたんですよ。ショップの方も一応ウェブでの販売とかは続けてはいるものの、実質レーベルメインになってるね。
──最初はスプリットやオムニバスから始まって、いわゆるタイガーホールのアーティストっていう扱いでのリリースっていうとLINKが最初ですよね。
ISHIKAWA そうですね。レーベルを最初にやるに当たって、いきなり単体での勝負っていうのはまだ怖かったんで、まずさっき言った「PUNK UP THE VOLUME」っていうオムニバスを出したんですよ。その中にLINKも入ってたんだけど。
──まだすごい若かった頃ですよね。
ISHIKAWA 18か19とかだよね。「PUNK UP THE VOLUME」では、当時既に活躍していたDUCK MISSILE、PENPALSっていう二バンドに協力してもらいつつ、他の四バンドはデモテープの中から自分で選んだんだけど、ぶっちゃけ最初はライブでどれくらい人気があるかとか全然わからないまま決めたんですよね。
──その中でもLINKは特に目立ってたんですか。
ISHIKAWA そうだね。オレは基本的に歌が好きなんですよ。パンクとか言われているようなバンドの中でも、しっかり歌があるバンドが好きなのね。そういう意味でLINKはそのオムニバスの中で一番秀でてたよね。それでLINKをまず単体で出して、それから協力してもらったバンド以外の他の三バンドも順次出して行こうかなって思ってたんだけど、そうこうしている内に活動停止しちゃったバンドとかもあって。それからCream Cheese Cookieとか出して…。
──その中で最初にLINKを選んだっていうのは成功だったんじゃないですか。
ISHIKAWA 成長著しいからね。彼らは一番最初に「どんなバンドが好きなの」って聴いた時に「日本ではブルーハーツ、海外ではクラッシュ」って答えたんだよ。それは、もうオレのモロジャストだったんで、いいなって思いましたね。それにコーラスワークは当時からすごく上手かったな。
──そうですね。歌声という面では抜群だったんじゃないですか。
ISHIKAWA そうだね。それから、LINKからのつながりで横浜のFROTRIPを出したんだけど、それも歌で決めましたね。…それから、順番は多少前後しちゃうかもしれないけどNOT REBOUNDですね。
──NOT REBOUNDは名古屋のバンドですけど、どうやって見つけてきたんですか。
ISHIKAWA 実は彼らがまだ東京で活動している時にライブを観たことがあるんだよね。まあ、当時は自分がレーベルをやるなんて思ってなかったんで、頭の底にしか残ってなかったけど…。で、彼らがやっぱり名古屋で勝負してやって行こうっていう事で、名古屋に戻った頃、LINKかFROTRIPのツアーの時に再会して…。そこの打ち上げで、…ものすごく打ち解けた訳ですよ(笑)
──打ち解けそうですよね(笑)
ISHIKAWA これも決め手は歌でしたね。まあ、最初はイキオイ先行だったんだけど、やっぱり彼らも歌が好きなんで、どんどんバンドン殻が剥けて行って変わっていく過程でのやりたい方向っていうのがオレと同じ方向だったんで、未だに関係が続いてるんですよね。これが違う方向に行っちゃったら、オレもイヤイヤ出すっていう事はしたくないですからね。それは、LINKにしても他のバンドにしても全部当てはまりますね
──やっぱり出すバンドの基準は「歌」っていう所なんですね。
ISHIKAWA 岐阜のSTAB 4 REASONみたいな激しいバンドとかも出したことがあるけど、これもハードコアでありながら、ボーカルが歌が好きだったっていうのが決め手だったよね。ホントにがなってるだけのハードコアが好きなんだったら、他のレーベルでもいいと思うし。
──結構ジャンル的には色んなバンドを出してると思いますけど、そういう所で統一感を持っているんですね。
ISHIKAWA そうだね。ここ最近は、何かとスケジュールも忙しくって、レコーディングがあっても、ちょっと全日程にはつきあえないっていう事もあるんだけど、そういう時でも少なくとも歌入れにだけは行くようにしていますね。
──ISHIKAWAさんがレコーディングに来ると「いいんじゃない、これで」みたいな感じで進めてく…とよく色んなバンドから聞きますけど。
ISHIKAWA まあ、言い方の問題なんだけど(笑)。これも今までレコーディングとか携わってきての経験上、100回録り直して100回目でいいテイクが録れるっていう事は一回もないんで。三回やってその中から一番良い物を選ぶ、くらいがいいと思うんだよね。人間、何回も同じ事繰り返してるとわけわかんなくなっちゃうじゃない。だから良い言い方で言えばオレなりに指揮してるんだよね。もちろん「ここを間違ったんですよ」っていう明確な理由があるんだったら何回でもやり直した方がいいし、そこで「もう時間ないから」っていうのはナシでしょ。でも「…もうちょっと良く出来そうな気が…」くらいの理由だったらやらなくてもいいと思うよ。
──自分自身でもわかんなくなっちゃいますからね。
ISHIKAWA その辺のジャッジっていうのは運命共同体でやってる気持ちはあるよね。
──ISHIKAWA流プロデュース術の秘密ですね!
ISHIKAWA まあプロデュースって言っても、多少アドバイスしたりアイディア出したりするくらいだけどね。
──自分の手で色々いじくっちゃうというよりは、方向性を示してあげるっていう感じなんですね。
ISHIKAWA あんまりそういうのはしたくないからね。だって、ギター何が出来るって言われても、オレ、チューニングくらいしか出来ないもん(笑)
──今回の10周年ツアーでいうと、LINKとNOT REBOUNDと、あとBeehive、One for allが参加してますが。
ISHIKAWA Beehiveも最初はデモテープからですね。最初は割と緊急リリースみたいな感じで、前に彼らがレコーディングしていた音源に、新録をプラスしてリリースっていう感じだったんですけど。まあ第二作目は初っぱなから一緒にやらせてもらって。あとはOne for all。One for all自体はSET YOU FREEの千葉くんが「良いバンドがいるから是非観てくれ」って言われていて、メンバーもタイガーホールから出したいって言ってくれたんで。それでライブを観たら格好良かったんで、やろうって感じでしたね。
──この四バンドの組み合わせっていうのはなかなかないですよね。
ISHIKAWA 四バンドがみんな仲良しバンドっていうわけではないからね。でも、あんまりなあなあになられてもしょうがないから。常にこの中ではオレたちがトップだよっていう意識でやってもらいたいし、各所で出るゲストも食うくらいの覚悟でやってもらわないと。そういう意味ではバランス的にはいいんじゃないですかね。
──タイガーホールならではの組み合わせっていう感じですね。各地のゲストのバンドっていうのはどういう感じで選んだんですか。
ISHIKAWA まず、東名阪で三つライブをやるにあたって、それぞれ細かく分けてちょっとジャンルの違うバンドを入れたかったんだよね。あんまり一つの色にしたくなかったというか、あんまりかっちりパンクっていう形で決めたくなかったんだよね。タイガーホール自体、ドDOG’GIE DOGGみたいなラスティック・カウパンクみたいなバンドもやってるし、Rockin'Ichiroのソロみたいなアコースティックなヤツを出したり、LONESOME DOVE WOODROWSみたいなロックンロールを出したりとか色々やってるんで。もちろんみんなパンクスピリッツを持ってる人たちには違いないんだけど、…なんとなくわかるでしょ? で、今回のゲストバンドを選ぶにあたって色々考えてたんだけど、ショップだったりレーベルだったりと関連性のあったバンドを入れようと思っていて、まあそうは言ってもなかなかスケジュールの都合とか色々あるんで、出れるバンドの中での三バンドって感じですね。SAに関してはもうウェブショップでの販売なんかでも貢献してもらってるし、普段からイベントやる時とかにもすごく友情として出てもらってるし。
──7インチも出したことありますしね。
ISHIKAWA Robinとのスプリットでね。STANCE PUNKSはオレのやってる対決シリーズイベントとかに出てくれたりとかしてるし、PEALOUTはホントにアナログリリースとか、イベントでも付き合いも長いしね。まあ結果 的に上手い組み合わせで、色が出せて良かったかなって思いますね。
──ライブ会場でCDプレゼントがあるらしいですけど、それは今までの音源を編集したヤツなんですか。
ISHIKAWA イヤ、今年の一月五日にロフトでやったイベントをライブレコーディングしたヤツですね。思ったよりもすごい良い感じのクオリティーになったと思いますよ。…まあ、予算の都合でCD-Rになっちゃいましたけど(笑)。それも、ライブに対してがっついてる人にもらって欲しいんで、各箇所100枚限定にしたりして。…もらえない人がいてもいいんじゃないかと(笑)。最近、ライブハウスに来るお客さんも慣れてきちゃってて「このメンツだったらすぐ売り切れたりしないだろう」とか、当日も開演ギリギリまで来なかったりするんで、早めにチケット取ったり、早めにライブハウスに足運んでくれたりっていう人が得するようにしたかったのね。オープン前に2、30人くらい入り口前に集まってる…みたいな昔のライブハウスっぽいノリがあった方が活気づくじゃないですか。
──レーベルだからCDだけ売ってりゃいいっていう考えではないっていう事ですよね。
ISHIKAWA そうだね。
──今後はどんな感じでレーベル運営していこうと思っていますか。
ISHIKAWA うーん、今後は…。バンドに対する感情移入っていうのはもちろんアリで、その上でビジネスっていう部分も考えながらやっていきたいですね。「いい物はいい」って思ってる自分と、こういう事を仕事にしている部分とをバランス良くやった上で、アーティストと二人三脚のリリースはして行きたいんで。そのバランスが崩れちゃうと、一方通 行のレーベルになっちゃうからね。それでいて自然に盛り上がって行ければいいんじゃないかなって思いますね。

★LIVE INFO★
TIGER DRIVER '05 〜TIGER HOLE 10th Anniversary Tours〜
-LIVE-
LINK / NOT REBOUND / Beehive / ONE FOR ALL
-DJ- ISHIKAWA(TIGER HOLE)
3/13(sun) 新宿ロフト 
-GUEST LIVE-
SA
3/19(sat) 名古屋アポロシアター
-GUEST LIVE-
STANCE PUNKS
3/20(sun) 大阪セカンドライン
-GUEST LIVE- PEALOUT

※各所先着100名にツアー4バンド収録のライブCD-Rをプレゼント!
18:30 open/19:00 start 前売¥2000/当日¥2500

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