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きっかけは1本の電話から
輸入CDが買えなくなる。そんな情報を耳にしたのは4月頃だっただろうか? うちの社内でもその問題について聞いたことはあったが、頭の片隅に残っている程度でしかなかった、その時は。
それから何日か経って、プラスワンで1本の電話を受けた。その電話の主は音楽評論家の高橋健太郎氏だった。輸入CD規制問題のシンポジウムを開くための会場を探しているとのこと。時期が時期だけに急を要している感じは十分に伝わってきたし、高橋さん、ピーター・バラカンさんの「この状況を少しでも多くの人に知ってもらわなくてはいけない」という意志に賛同したプラスワンは5/4のシンポジウムの開催を受けた。4月も下旬に入った頃だった。
この問題がいったいどうなっているのか?
「知るため」のシンポジウム開催
5/4、前日からの問い合わせ数から相当の人数は予想していたが、それを確実に上回る人数がこのイベントに興味を持って、新宿・歌舞伎町に来ていた。準備のために10:30に会場に入った私よりも先に、入場を希望する人たちが並んでいる。会場は当日の模様をネットで生中継するためのスタッフから、今日の模様を放送したいという放送関係者、雑誌の取材、多くのマスコミ関係者でごった返す。オープン準備を進めている最中にはすでに開場待ちの人が地上に溢れ出しているという状況にもなり、高橋さんとの相談の上、開場時間を少し早め、入場整理したものの場内はあっという間に満員。席もなく、立ち見が多数で入り口まで人が溢れかえった。それでも入場できずお帰りいただいたお客さんも多数。一般
の方はもちろん、音楽関係者も多くが入場できずにいたそうだ。
入場規制をかけて、ようやくイベントがスタート。司会は高橋さんとともにこのイベントを主催するピーター・バラカン氏がつとめ、パネラーとして、川内博史氏(民主党・衆議院議員)、スティーヴ・マックルーア氏(ビルボード誌アジア支局長)、石川真一氏(輸入盤ディストリビューター・「リバーブ」副社長)、佐々木敦氏(HEADS代表)、中原昌也氏(音楽家)、野田努氏(「REMIIX」スーパーバイザー)、高見一樹氏(イースト・ワークス・エンタテインメント)と高橋健太郎氏がステージに揃った。タイトルにあるように、今回は「選択肢を保護しよう!! 著作権法改正でCD輸入が規制される?! 実態を知るためのシンポジウム」という「知る」ことが第一の目的とされているシンポジウム。バラカン氏の進行の元、川内氏より、この法案がいつ頃からどのような状況で立ち上がり、文化庁から国会に提出されたのか、また、どのような流れで「アジア盤環流防止」だけでなく「輸入盤規制」に関わっていったのが報告される。その後、今回のシンポジウムに協力として参加している藤川毅氏よりスライド形式でわかりやすく詳細に解説された。会場に来た人も、同時刻にこの状況をネットで聞いていた人も、だんだん事の重大さを理解していく。専門用語も飛び出し、音楽業界関係者でなければ通
じないことに関してはバラカン氏が補足していく。この内容、ここだけで全部把握するにはちょっと難しい感がなきにしもあらずだとは思ったが、それでも場内に漂う危機感は様々な意見となって会場を飛び交っていた。輸入規制に始まり、CCCD、再販制度、並行輸入などこの問題に関わる様々な話題が上がり続ける。ただでさえ、満員の場内。いつもより若干低く設定しているはずの空調でさえ全く意味をなさない位
、会場の温度は上がっていた。会場に集まった人の関心が手に取るように感じられるこの集中力、ここに共通
するものは音楽を愛好しているという事実だ。ディストリビューター、音楽ライター、編集者、メーカー、音楽家と音楽業界の様々なジャンル、そして会場にいた音楽関係者はもちろん、一般
の人も含めみんながこの問題をお互いで応答しながら理解していったというのがこのシンポジウム全体を見ての印象だった。急な開催決定だったり、夜のイベント準備の関係もあり、13時から始まったシンポジウムだったが、それでも予定の15時を30分ほど延長し「知るため」のシンポジウムは無事幕を閉じた。
そこで、音楽好きに何ができる?
この問題はもちろんこの場で解決する話ではなく、限られた時間の中で音楽を愛する人たちが、自分の好きな音楽の“自由”のためにどう動くか、どう動きたいかと思うことで、音楽の未来が左右されるかも知れないということだ。この日のシンポジウムは現在、ネット上での音声配信を始め、多くに人の手によって伝えられている。また、前頁にもあるように音楽関係者による声明文も発表されている。私自身もこの状況を知り始めてから、いろんな人に会うたびにこの話をするようになった。音楽に携わる環境によって反応はそれぞれだが、知らないことには何も始まらない。にわか、と言われるかも知れないが、何も知らないよりは少しでも知りたいと思うし、知ったら知ったで何が出来るのか考える。高橋氏のインタビューにもあったが、楽しいものじゃないと、音楽産業が廃れていってしまう。音楽の自由がなくなっては、想像力の幅さえも途絶えられてしまう。そんな未来には、したくない。
いちがいには言えないが、音楽愛好家がこれだけ集まって、国の規制に異論を唱えるのは珍しいことだと思う。そしてそういうことをかっこわるいと思う人も愛好家には多いはずだ。やれるだけのことをみんなで!ではなくとも、各自で出来ることを考えた方がきっと動きやすいんだから、各自で動き出してもいいんじゃないだろうか?各自の声も同じ目的なら一つになるだろう。
第159回国会(常会)は6月16日まで開催されている。
関連ホームページ
ご参考までに、今回のシンポジウムの模様を音声やテキストで公開しているHPや、署名、掲示板で情報を掲載しているHP、出演・関係者のHPを抜粋して掲載します。
〈シンポジウム関連のHP〉
【輸入権シンポジウムの音声を配布します】http://radio.gs/
■当日の模様が音声ファイルと動画ファイルで配布されています。
【輸入権問題シンポジウム発言書き起こし】http://ccfa.info/yunyuuken.txt
■当日の流れ、発言をすべて文字おこししてテキスト化されています。
〈輸入規制に関するHP〉
【海外盤CD輸入禁止に反対する】http://sound.jp/stop-rev-crlaw/
■問題提起から署名活動まで(署名集めは5月中に終了)
【海外盤CD輸入禁止反対署名地域別取りまとめオフBBS】http://jbbs.shitaraba.com/travel/3105/
署名を集めている店、オフ会情報など掲示板形式。 〈音楽関係者HP〉
【MEMORY LAB】http://www.ceres.dti.ne.jp/~donidoni/memorylab/
■高橋健太郎氏のHP
【newswave on line】http://onojima.txt-nifty.com/
■小野島大氏のHP
【Dubbrock's Dublog】http://blog.livedoor.jp/dubbrock/
■藤川毅氏のHP
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