<Message Shuttle Vol.3>
NO NUKES, NO WAR 持続可能な世界へ向けて

■これでいいの?  原発大国・日本
 1986年、旧ソ連で起こったチェルノブイリ原子力発電所(以下、原発)の事故は旧ソ連以外の周辺諸国へ深刻な被害をもたらし、改めて全世界に核の恐怖を認識させました。これをきっかけに、日本を含む多くの国で反原発運動が盛り上がり、主にヨーロッパを中心に原子力エネルギーから自然エネルギーへのシフトチェンジが起こりましたが、残念ながら日本では原発の開発は縮小するどころか、むしろ増えているのが現状です。
 広島、長崎と、唯一の被爆国である日本が原発天国になっているというのは、なんとも皮肉な話ですが、それを支えてきたのは、国と電力会社が巨額の税金を使って宣伝する「安全性」と「平和利用」という神話です。しかしその神話にも今や大きな翳りが出てきました。
 きっかけは1999年に起こった東海村臨海事故(作業員一人が死亡、住民が多数被爆)で、原子力に対する国民の不信感が一気に高まりました。そして昨年、東京電力が数十年に渡り、ひび割れや摩耗等の損傷を隠蔽していたことが判明、続いて他の電力会社でもトラブル隠蔽が相次ぎ、原発の安全性が「トラブル隠蔽」という情報操作によるものだったことが明らかになったのです。そもそも原発の安全性は論理的な計算上の安全性であり、実際の建設上の手抜き、老朽化、保守作業での人為的ミスなどを全く考慮に入れていません。特に、地震に対する安全性についてはかなり危うく、阪神大震災で設計上安全だと言われていた高速道路や新幹線が崩壊したことを考えると、原発の耐震性には大きな疑念が持たれています。
 今、ひび割れなどのトラブルで停止している浜岡原発で、いつきてもおかしくないと言われる東海沖地震が起こった場合、チェルノブイリ以上(つまり世界的な規模)の事故になると予想されています。にもかかわらず早期運転再開を急ぐ国と電力会社は、こうなった場合の責任をどうとるつもりなのでしょうか?
 また「平和利用」についても大きな疑問が持たれています。高速増殖炉「もんじゅ」の事故、関西電力のデータねつ造発覚によるプルサーマル計画延期など、プルトニウム利用を前提とした「核燃料サイクル」構想は現在暗礁 に乗り上げ、原発廃棄物である劣化ウランが、使い道のないまま蓄積され続けています。この劣化ウラン(また、そこから生成されるプルトニウム)は、原子爆弾、水素爆弾の原料になるばかりか、湾岸戦争で使用され大きな放射能被害を出した「劣化ウラン弾」として使用されるおそれもあります。「日本も核武装すべきだ」と発言する石原都知事の例を出すまでもなく、イージス艦派遣、はては戦略ミサイル構想までが議論され急速に軍国化している今の日本は、他国から核開発の疑惑を持たれかねない状況になっています。

■持続可能なエネルギーとは?
 原発を推進する最大の理由として言われるのは「日本は天然資源がないから」というものですが、それは本当でしょうか? 原発はウランを原料に動いていますが、そのウランは石油よりも早く枯渇すると言われています。つまり、核廃棄物(劣化ウラン)をプルトニウムとして再利用できない限り原発は無用の長物となり、事実、頼みの「核燃料サイクル」構想も一向に実現する気配はありません。
 しかし、資源がないと思われがちな日本は、実は、理想的な次世代エネルギーである自然エネルギーは豊富なのです。山や川、そして雨に恵まれている日本は、ダムを必要としない小規模な水力発電に適していますし、全国で温泉が沸くことから地熱発電も可能であると考えられています。しかし、政府が次世代エネルギーに投資する予算の90%以上が原発で、自然エネルギーへの取り組みは他の国から比べると大幅に遅れているのが現状です。日本のエネルギー産業構造が原発至上主義になっている状況で、大きな利権である原発をすぐに止めることはできないのです。
 環境問題の深刻化で、今、大企業さえもが自然保護を考えなくてはならない時代に、一瞬で地球を死滅させる能力を持つ原発を進める事は果 たして正しいことなのでしょうか?

■VOL.3のテーマは「NO NUKES, NO WAR」
 今や多くの市民は、原発に対して不安を抱えています。しかし、民意が政治に直接反映されない日本の政治機構において、原発に対する反対運動はなかなか大きな力になっていない状況です。しかし、昨年、長野県で脱ダムを主張する田中県知事が再選されたり、吉野川の稼働堰建設が住民投票で反対可決されたりと、住民主導で政治が変わることが不可能でない例はいくつもあります。日本の国策となっている原子力開発を止めることは容易なことではありませんが、世界中で脱原発の流れができつつある今、日本でも「脱原発」の声をあげることは非常に重要なことではないでしょうか。かつて、チェルノブイリ事故後、多くのロック・ミュージシャンが反原発の声をあげたように。
 そこで、私達は2003年4月15日に「NO NUKES, NO WAR」と題したチャリティライブを開催します。私たちの命を奪い、環境を破壊し、戦争を引き起こすあらゆる原子力開発(NUKES)に対して明確なNOを発したい。テレビをはじめとするマスメディアが原発タブーで口を封じられている状況を、音楽による力で風穴を開けたい。そして、政治の主役は国や財界ではなく、私たち一人一人の人間だということを確認したいと思います。
 また、このライブは世界的な環境保護イベントである「アースデイ」(註)の一環として行い、核エネルギー開発が地球の自然環境にとっていかに不自然で危険なものであるかを同時に考えていきたいと思います。
 一人でも多くの参加を願って止みません。
 是非あなたの意見をお聞かせ下さい。

  ロフトプロジェクト 小林茂明