1999.2のINTERVIEW
bloodthirsty butchers
走られたらいいだろうし。
歩いてるんだけど、走ってる。

今年ブレイク間違いないと言われているバンドの一つが、このbloodthirsty butchersである。トリオという最小編成から生まれるバンドアンサンブルは、アグレッシブかつ繊細で、ギター、ベース、ドラムの一音一音までもが、胸の奥に響き渡る。そして漂流感ただよう吉村秀樹のボーカルは、その美しい日本語の叙情詩とあいまって、いっそう深く胸に突き刺さってくる。かつてフィッツジェラルドは「努力のむなしさと奮闘の必要」と書いたが、不器用に同じところをぐるぐる回りながらも、決してあきらめず、確実に進歩している存在、そんなバンドがbloodthirsty buthcersではないだろうか。ミニアルバム「△」をリリースしたブッチャーズの3人にお話を伺ってみた。
(interview:加藤梅造)


普通のバンドが3年ぐらいでやることを、俺達10年かかってるから
──今度発売されるミニアルバム「△」は、DISK UNION/TIME BOMB/TIGER HOLEの3店限定発売とのことですが、ちょっともったいない感じもしますね
小松(以下K) そのもったいない感じがいいかなあ、と
──市場の飢餓感をあおるみたいな
射守矢(以下I) そういっちゃうと作為的でいやだなあ
K 実は何にも考えてないっす。夜、枕元におばあちゃんが立って、そうしなさいって(笑)
──ブッチャーズは、もう10年以上活動されてて、評価も非常に高いんですけど、なかなか大ブレイクに至らないという印象がありますよね
I 本人達があまり意欲的に活動してないので・・・
K 普通のバンドが3年ぐらいでやることを、俺達10年かかってるから(笑)
──慎重派、それとも単にめんどくさがり屋?
K よく言って、めんどくさがり屋ですかね(笑)
──曲を作るのに時間がかかります?
I そうですね。やりかけて、いやだなと思ったら後回しにしちゃうんで。それでまた忘れた頃にそういえばこんなのあったなって、なんかぐるぐる回ってるんで。1曲ずつきっちり仕上げるのが苦手ですね
──ブッチャーズの曲って、一見シンプルに聴こえるけど、実は結構練られてると思うんです。だから時間をかけて作ってるのかな、と
I かかっちゃうんですよね
──やってるうちにいろいろとアイデアが出てくるんですか
I アイデアというよりも瞬発的に誰かが何かをやったりして、突拍子もないところから違う方向にいっちゃたりしますね
K 曲を作る時は、こうしようと話合ったりしないで、何もない所からつくっていくんで、最初は3人の思ってることが全然違うんです。その違いがよくぶつかればいいんだけど、悪い方向にいくとちりぢりになっちゃう
──バンド形態がトリオってところも大きいですね
K そうですね。音数も少ないので、普通にベースとドラムでリズムを作った後に、一人で歌ってギター弾くとつまんない曲になりますよね
I そんなことやってる自分が嫌いになりますね(笑)
K やってる方はつまんないよね

僕ら3人ともアピールするのがあんまり得意じゃないんです
──音数が少ないってところでいうと、ブッチャーズは特にすき間を大切にしてるような気がします
I すき間って埋めたくなるんですけど、なるべくがまんしてます。昔はすき間があるとガーって感じで埋めてたけど
──そう言われれば、昔よりも余裕が出てきたような感じもしますが
K 聴いてるほうはそう感じるのかもしれないけど、やってる方は全然余裕ないですよ(笑)
──たぶん3人ともすごい自己主張があると思うんです。でもブッチャーズの曲を聴くと、3人の自己主張が激しくぶつかってる感じはしなくて、それぞれが静かに主張しているという感じを受けるんです。
K 僕ら3人ともアピールするのがあんまり得意じゃないんです。イエー!って感じじゃないから
I 主張はするんですよ。だけど、引くところは引くというか、あいつ何かいいたそうだから聞いてやろうとか、あいつが前に出るときは引いてやって、別のところでは俺が前に出るとか、そういうバランスをとってますね。全員がガーっと前にいっちゃったら、いいものはできないです。それは自然にやってますね
──全員がそういうタイプだからか、バンドの野心みたいなのがあまり感じられないですね
K 野心はめっちゃめちゃありますよ(笑)
──そういうのがギャグにしか聞こえないですから(笑)。自分達の曲を聴け!みたいな押し付けもあまりしないでしょう。
I 前は、聴きたきゃ聴けば、観たきゃ来いや、っていう気持ちだったんですよ。でも最近は、やっぱり作品にしてもライブにしても自分達の中ではよくなってるなという意識もあるから、これ聴かないでどうするんだっていう押し付けがましいところもありますね。はったりでもいいから、そういうふうにしようと心がけてます(笑)

言葉の先のもの─それが自分の言いたいことだから
(ここで吉村氏登場)
──さっきも話してたんですけど、ブッチャーズの音楽って、剥きだしの自己主張みたいなのはないけど、3人が静かに自己主張しているところが、逆に確かな力強さを感じさせるところであると思うんですよ
吉村(以下Y) 音楽ってものが、なんとなく、そういうはっきりしたものとは、自分では言ってるつもりのところもあるんだけど、やっぱりそういう、形容詞じゃないけど、そんな感じで、それなんですよ、やっぱり(笑)
──あの・・(理解不能)
Y ちょっと慌ててるかな、俺
I 自己主張がうまい人はいいんだけど。主張はあるけど、それを伝えるのが苦手な人っているじゃない。それが音にも現われるというか。
Y でもやっぱり歌詞があるってことは、うん、吐き出してるというか、それには違いないんだけど、それがどうしたこうしたっていうのは、うん、単なる言い訳であって、そっから先はどう考えようと自由だし、言わなくてもわかるだろうし、あとは音楽があるだろうし。なんていうのかな、曲でもそうなんだけど、最後にギター掻きむしって終わる、つまり何も言わずに終わる、それが音楽の持つパワーっていうか、言葉の先のものというか。それが自分の言いたいことだから
──吉村さんは、前に掛け持ちでコーパス(グラインダーズ)をやってたじゃないですか。で、コーパスでギターを弾く吉村さんと、ブチャーズで歌う吉村さんって、ちょっと別人みたいなところがあって。まあコーパスはギターに徹してたからかもしれないけど
Y ああ、結局今はやってないんですけど、自分の立場がわかるぶん、人の立場もわかるというか、ギターを弾いてても、うまくやれてるようでやれてなかったり、そういうところが嫌といえば嫌だったんだけど、そのままいくしかないなってところがあった。自分の幸せは、ギター弾いてることだから、好きなバンドで好きな仲間と。だからブッチャーズもコーパスも関係なく
──前に射守矢さんは、ギタリストとしての吉村秀樹が一番好きだっておっしゃってましたよね
I うん、でもヴォーカルとしての吉村秀樹を認めてないってわけじゃないですよ。じゃなくて、一番好きなギタリストって意味で。あんまりこれ、はっきり言っちゃうと恥ずかしいものがあるよね(笑)
K 妙な関係になっちゃうよね(笑)
Y それは、まあバンドの音に現われてる、不思議な、組み合わせっていうか。(バンドの音も)独特だと思うから、一人一人違うように。うん、この3人じゃないと普通には出せない音だろうし

あたりまえに、必要以上に汚れるだろうし。それを拭いきれるような器用な性格ではないし
──歌詞は曲ができた後で考えるそうですね
Y だいたいそうですね。まあ曲を作ってるときには浮かんでるんだけど。そういうのはあんまり変わんないから、最後まで。まあ最後にどんづまりになってやるんだけど、書いては捨て、書いては捨て。こういこう、ああいこうっていうのは、そこからもうすべて形容詞というか。本当に言ってることはひとつしかないような気がして、自分でも歌詞をみてて。同じじゃないかって
──ひとつのこと?
Y ひとつのことっていうか、うん、テーマは無題っていうか。もちろんタイトルはあるんだけど、そこからひっぱっていくと結局、無題に近いんじゃないかな。俺の独り言というか。
──そういえば前作『kokorono』は、曲名が2月、3月、4月というぐあいに12月までつけられてて、無題に近いものなのかなって
Y ただ単に斬新に考えて、いろいろコンセプトを考えないと自分で組み立てられないし、でも、かといってテーマなんてないっていうか、つまり無題で。でもロックだったら、コンセプトがあったほうがいいだろうと。結局、1時、2時、3時でも同じだろうけど、1年で12曲にしようと。
──ブッチャーズの歌って、すごく虚しさとか諦めとかがありつつも、それをなんとかしなくちゃいけないし、続けなければいけないという・・
Y だから、ポジティブとかネガティブとか言いかえるじゃないですか。とりあえずは、ネガティブもポジティブのためにあるというか。それがないとポジティブもありえないと思うし。時間も進んでるように自分も進んでるというか
──今作では、『ハシル』という曲にそういう面が出てますね。ブッチャーズの今の姿というか
Y 一つ考えるとすれば、答えが出るのは、走られたらいいだろうし。歩いてるんだけど、走ってる。自分では進んでるってこと
──あと2曲目の『ファウスト』についてですが、非常に興味深いタイトルですね
Y これは手塚治虫のトリビュートアルバムの企画に参加した時、何にしようか考えてて、俺だったら『ファウスト』かなと。それで(ゲーテの)『ファウスト』を初めて読んで
──悪魔とかそういうものについても考えたりしたんですか
Y 自分が悪だって感じ。善ではないし、うん。悪い人
──人間そのものが?
Y 誰がどうのこうのじゃなくて、自分が。悪のほうが好きだというか。
──一旦自分を悪だと認めて、それでどうするかだと思うんですけど
Y 逆に言えば、ダメなことはないというか。人は人を裁けないというか、そういうことを考えてて。よく漫画に出て来るような、小さな悪魔と天使が自分の頭の上にでてきて、戦ってるというか、一方的にいじめてるというか
──『襟がゆれてる』の歌詞に「流れるように僕は汚れた」とありますが
Y あたりまえに、必要以上に汚れるだろうし。それを拭いきれるような器用な性格ではないし、そのままでもいいやって、隠す必要もないし。正しいことは何もないし、悪いことも何もない。判断する言葉がイメージするところで、間違って伝わることもあるだろうけど、音楽とかだと、いいようにも悪いようにもとれるから
──ブッチャーズの音楽って、正しいか間違ってるかじゃなくて、純粋さに向かっているんじゃないでしょうか
Y 作ってる音楽がたまたまそういうところだったんじゃないですか。3人だけが音を出してひとつのものを作って、それを聴いた人が感じたものが、たまたまそこだったというか。でもそれはそれで、そう思ってくれて、すごい嬉しいです。

bloodthirsty butchers are:
吉村秀樹(vo.G)、射守矢雄(B)、小松正宏(Dr)