極上のメロディを最大限引き出した総天然色サウンド

 一撃必殺の虹色メロディを身上とするURCHIN FARMが、昨年秋に発表した『RainbowL+1』に続き初のシングル「MONOchrome」を発表する。プロデューサーにあの佐久間正英を迎えて生み出されたこのシングル、彼らの持ち味である上質なポップ・センスはさらに研ぎ澄まされ、最大の武器である極上のメロディを極限まで引き出した至上の作品に仕上がっている。純粋な感性の赴くがままに独自のポップ・センスを頑なに信じ、完膚無きまでロックの覇道を突き進む彼らの“3P”=“Power Pop Punk”が、日本のロックの新たなスタンダードとなる日も近いかもしれない。(interview:椎名宗之)


モノクロな日常をカラフルに変えていこう
──待望のファースト・シングル「MONOchrome」がリリースとなりますが、すでにライヴでは核となるお馴染みのナンバーでもありますね。
師崎洋平(以下 MORO/g, cho):そうですね。「MONOchrome」は結構前に作った曲で、ずっと温めて機が熟すのを待っていた感じなんです。
斎藤 孝(以下 SHITTY/b, cho):初めてロフトのステージに立った“BOφWY'S BE AMBITIOUS!!! 〜BEAT RESPECT 3 DAYS〜”(2004年2月)でやったよね。
矢沢壮太(以下 SOTA/vo, g)そうそう、ロフトで初めてやったんだ。最初は「odds & ends」っていうタイトルで、歌詞もちょっと違ったんだよね。
MORO:曲を作ってる時から今までにはない感じだったし、バンドの沸点が一気に上がる曲だったんですよ。イントロの頭でドーンと入るところから温度が上がるのが自分たちでも判るくらいの手応えだったんで。だから凄く大事に作ったんですけど、意外とすんなり完成して。SOTAが書いてきた歌詞も、自分たちが今一番言いたいことをコンセプトに仕上げることができたし、“今やりたいのはコレだ!”というのを充分納得してできましたね。
──SOTA君が「MONOchrome」の歌詞に込めようとした想いというのは?
SOTA:「MONOchrome」というタイトルがまず自然発生的に自分のなかで降りてきて、MOROに「こういうタイトル、どうだろう?」って訊いたら「イイね」って言ってくれて。“monochrome”=白黒なんだけど、曲は華やかにカラフルで行こうと。つまらない日常をモノクロに喩えて、それをカラフルに変えていこうよっていう前向きな歌詞にしたいと思いました。
SHITTY:ライヴで初めてやった時から周囲の評判が良かったし、そんな曲をこうしてファースト・シングルとして音源化することができて良かったと思ってます。 森下哲也(以下 TETSUYA/ds, cho):自分たちでやってても凄く楽しい曲なんで、シングルで切れるのは嬉しいですよ。
──昨年リリースした『RainbowL+1』は、既発の『RainbowL』をリミックスして1曲(「Past Time」)追加した作品だったから、何曲もまとめてレコーディングするのは随分と久しぶりだったんじゃないですか?
MORO
:そうですね。『RainbowL』を録ったのも、もうかれこれ一昨年の話ですから。
SHITTY
:あとは『BOφWY Respect』に参加した「ホンキー・トンキー・クレイジー」くらいですからね。
──そんなBOφWYやTHE BLUE HEARTSなどを手掛けた御大・佐久間正英さんを今回プロデューサーに迎えて制作されたわけですが、URCHIN FARMとの相性はバッチリでしたね。まさに適材適所というか。
MORO:ええ、結果的には。でも、最初はろくに口も利けなかったよね?
SOTA
:うん。もともと四人囃子やプラスティックスで活躍されていた凄い経歴の持ち主だし、こっちも完全に萎縮してました。佐久間さんの前で初めて音を出した時も、まずはチューニングを直すように指摘されて…。
MORO:ちょっとやそっとのことじゃ取り乱さない、シティ・ボーイ風な人でしたよ(笑)。ウチのレーベルの社長(BEATSORECORDS主宰、土屋 浩氏)の紹介を受けて、佐久間さんに「胸を貸して下さい!」って飛び込んで、最後はホントにドンピシャの相性だったなと思いましたね。
──あのBOφWYも、サード・アルバムをレコーディングしている時に松井常松さんが佐久間さんからベースの弾き方を徹底的に叩き込まれたという有名なエピソードが残ってますよね。
MORO
:まさに同じような場面が多々ありましたよ(苦笑)。佐久間さんの前でレコーディングをやるにあたって、今まで以上にちゃんとやろうとまず思ったんですよ。たくさん練習して、ミスのないように心懸けて。でも、途中からそれだけじゃうまく行かなくなって悩んでいた時に、佐久間さんから「ちゃんと弾くことよりも、この瞬間に4人で一緒に音を出してることが一番大事なんだよ」って教わったことが凄く大きかったですね。ちゃんとやることはもちろん大事なことなんだけど、一番大事なことではないというか。
──佐久間さんがプロデュースしたことによってURCHIN FARMのレインボー・サウンドが再構築されて、より万人に受け容れられるものにビルドアップした印象を受けたんですよ。
MORO:そうですね。今までは楽器からアンプ、音のチョイスに至るまで自分たちの好きな音っていうのを勝手に決めていたんですけど、今回のレコーディングを通 して、ギターも、ベースも、ドラムも、歌も含めて全部そうですけど、佐久間さんに自分たちの音の方向性を決めてもらった感じなんです。“あ、この方向に向かえば正しいんだな”っていうのが判った。
SHITTY
:自分で判断に迷うところでも、佐久間さんが冷静に俺の資質を見抜いてジャッジしてくれたから、凄く安心感をもってレコーディングに臨めましたね。 TETSUYA:自分たちの力量を瞬時に見抜かれたというか。「もっとできるんじゃないの?」みたいに無理なことは要求しないし、凄くリラックスしてできましたよ。セッションの時に佐久間さんがベースを弾いて、一緒にプレイできたことも自分にとって貴重な経験になったし、そこでリズム隊の方向がガッチリと固まって整頓されましたから。
──しかも、皆さんがカヴァーしたBOφWYのファースト・シングル「ホンキー・トンキー・クレイジー」が発売された丁度20年後の6月1日に、URCHIN FARMのファースト・シングル「MONOchrome」が発売されるなんて、全く奇妙な縁ですよね。どちらの曲もファースト・シングルで、佐久間さんのプロデュースであり、この「MONOchrome」はBOφWYのマネージャーを務めていた土屋氏のレーベル発でもあるわけで。
MORO:すべて全くの偶然なんですよ。凄いミラクルだし、それを知った時は鳥肌が立ちましたね。

ライヴは常に“ロック”であること
──カップリングも非常にイイ曲が揃いましたね。これまたライヴでもお馴染みな「Clover」という曲は、URCHIN FARMならではの甘く切ない秒殺キラー・チューンですが。
SOTA
:自分の実体験を元に完成させました。まだ僕らが学生だった頃に歌詞を書いて、最初に作ったデモ音源に入っていた古い曲なんです。
MORO:どの曲もそうですけど、そのなかでも特にこの「Clover」は演奏してると自分たちでもグッと気持ちが入り込んじゃう曲ですね。
SHITTY
:バンドで言えば二枚目路線の曲なんで、ライヴでやる時は心持ち男前な顔でプレイしてます(笑)。
──「SIGNAL」はコーラスが美しいミディアム調の曲で、切なくも軽快な心地よい仕上がりですね。
SOTA
:これは、それまでの英語詞から僕が初めて日本語詞で書き上げた曲なんです。
SHITTY:テンポも最初はもっと遅かったんだよね。
MORO:僕のなかではレコーディングで化けた曲ですね。自分がレコーディング前にイメージしていた「SIGNAL」はもっとヘヴィな感じだったんですけど、佐久間さんは切ないポップな解釈だった。とことんまで悲しくしちゃうというか、音の入れ方も少ないからこそ際立つようにシンプルにして、結果 としては音にメリハリも付いて凄く良かったですよ。
──まさに“佐久マジック”の面目躍如ですね。
SOTA:ホントに(笑)。今回シングルに収めた3曲はどれも日本語詞なんですよね。歌を唄うことを突き詰めていくと、英語の高い壁に突き当たるんです。それで今までの英語詞の歌をやめるってわけじゃなく、それはそれでイイんですけどね。でも、特に英語詞にこだわり続けてきたわけでもないんです。メロ回しが英語っぽいなら英語詞にするし、そのへんは柔軟に。
──「MONOchrome」に収められた3曲に関しては、日本語詞のほうがお化粧ノリも良かったってことなんでしょうね。
MORO:そうですね。今回は3曲ともポップに仕上げることができて凄く満足してますよ。ジャケットのアートワークも含めて大ポップですからね。『RainbowL』の時は「ひと暴れしてこいッ!」というか、とにかくやってみないと判らないことがたくさんあったんですけど、そこで経験したイイ部分、悪い部分を踏まえて徐々にバンド・サウンドが整理・整頓されてきたと思いますね。
──それと、SOTA君のヴォーカルがより表情豊かになったのも大きな変化ですね。
SOTA:歌入れの最初のほうで、自分が巧く唄えたと思ってもなかなか佐久間さんがOKを出してくれなかったんです。そこで結構悩んだんですけど、ある時フッと肩の力を抜いて唄ったらOKが出て。要するに、“こういうふうに唄おう”とか余計なことを一切考えずに、自然に出てきた瞬間の歌を佐久間さんは摘み取ろうとしていたんですよ。最後の最後は歌入れも順調に進んだし、ヴォーカリストとして変わっていくチャンスを与えてくれた佐久間さんには凄く感謝してますね。
──佐久間さんとのレコーディングを経験して、その後のライヴに向かう意識も変わりましたか?
MORO:凄く変わりましたよ。ただ、表現方法の面 でできることが多くなったぶん、ライヴでこの4人に戻った時にやれることが限られているなかでどこをチョイスするか? という部分で悩みましたけどね。でも、レコーディングのなかで正しいことは何なのかを学べたし、判断材料も多かったから、「これは要らないな」「あれはやったほうがイイな」という見極めがしやすくなりました。シングルで録った曲をライヴでどう再現するか一瞬悩んで、エフェクターも新たに購入したりもしたんです。それによって他の曲にもまた別 の味が出てきたところもあるし、結果的にはすべてがうまい具合に運びましたね。やっぱりそれも…“佐久マジック”効果 なんですよ(笑)。
──今、ライヴをやる上で一番心懸けているのはどんな部分ですか?
MORO:“ロック”であること、ですね。ポップな曲でも、静かな感じの曲でも、とにかく「うぉりゃ〜ッ!」と大木を薙ぎ倒すかの如く“ロック”であり続けるようにしてますね。
──一言に“ロック”と言っても解釈は千差万別だと思うんですけど、URCHIN FARMが志向する“ロック”の定義というのは?
SOTA
:ヘンな固定概念がないってことだと思うんです。長く音楽をやり続けている人は、「これが俺の“ロック”だ!」って一本筋が入っていると思うんですけど、僕らにはイイ意味でそれがない。何をやるにも常に自由なんです。“ロック”って本来、凄く自由な表現形態だと思いますから。
──そもそもURCHIN FARMが奏でる音楽を語る際に多用される“ポップ”という言葉自体、あらゆる音楽のジャンルを内包する懐の深い言葉ですからね。
MORO
:そうですね。SOTAが言う“定義のなさ”っていうのは、うまく言い当てているかもしれないですね。ライヴで言えば、“ああ、今やりきった!”って思ったその瞬間が“ロック”なんだと思います。
──レコ発ツアーも新宿ロフトを皮切りにスタートしますが、タイトルの“3P5 TOUR”は、何かいかがわしい意味と関係があるんですか?(笑)
MORO:関係あったりもなかったりも、あったりするのかもしれませんね(笑)。僕らなりの言葉遊びなんですよ。“3P”は“P.P.P.”、僕らが標榜している“Power Pop Punk”の略なんです。“5”は“Let's Go!”の“Go!”ですね。今どき正面 切って“Let's Go!”って言うヤツも少ないし(笑)、無闇に過剰な勢いを出して行こうぜ! っていうことで。シングル・ツアーなんで、「MONOchrome」を雑念ナシでガチコン! と聴かせられたらイイですね。今のURCHIN FARM、とにかくクソ気合い入ってるんで、ライヴを見逃すと絶対に後で後悔しますよ! 8月にはこの勢いを駆ってフル・アルバムも出すんで、僕らも悔いのないツアーをやってイイ形でアルバムに繋げたいと思ってます。期待していて下さい!

★Live Info.

BEATSONIGHT!vol.4
6月6日(月)新宿LOFT

w/ wash? / DAMNDOG / ready for act: ナミノネ
OPEN 18:00 / START 19:00
TICKET: advance-2,000yen / door-2,500yen(共にDRINK代別)
【info.】shinjuku LOFT:03-5272-0382

3P5 TOUR
6月10日(金)熊谷VOGUE/6月12日(日)宇都宮HELLO DOLLY/6月16日(木)さいたま新都心VOGUE/6月20日(月)高崎club FLEEZ/6月25日(土)愛知万博内[Ding Dong Dang]/6月28日(火)横浜F.A.D/6月29日(水)大阪OSAKA MUSE/7月9日(土)仙台RIPPLE/7月10日(日)福島club SONIC IWAKI/7月15日(金)高田馬場club PHASE/7月16日(土)横浜F.A.D/7月23日(土)千葉LOOK/7月28日(木)高崎club FLEEZ and more...

URCHIN FARM OFFICIAL WEB SITE http://www.e-r-f.com/urchinfarm

★Release Info.

1st Single MONOchrome

1.MONOchrome
2.Clover
3.SIGNAL

BEATSORECORDS
EFCN-92001 1,000yen (tax in)
6.01 IN STORES NOW

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