TIGER HOLE10周年! 強烈コンピレーション完成!

 シーンの中でも一際異彩を放ち、ジャンルを超えた個性的なリリースを続けているTIGER HOLE。そのTIGER HOLEがレーベル設立時からリリースし続け、現在までに15タイトルがリリースされているスプリット7インチシリーズ。限定生産、さらにレコードプレイヤーがないと聴けなかったこのシリーズをCDまとめた強烈コンピレーション「TIGER HOLE RANGE」。第一弾がリリースされた際も強力な収録アーティストで話題を呼んだが、今回、それに勝るとも劣らないラインナップでの第二弾が完成!  (interview : 北村ヂン)

──今回の「TIGER HOLE RANGE2」ですが、前作と同じく、アナログでリリースされていたスプリット7インチシリーズをまとめた形でのオムニバスアルバムとなっていますが。
ISHIKAWA そうですね。前作は、キリが良いところで10タイトル出した所でCD化しても面 白いかなっていうのを思いついたんですけど、10タイトルっていったらかなりのスパンかかっちゃうじゃないですか。今回の「2」に関しても、本当は同じ10タイトルっていうボリュームでやりたかったんだけど、なかなか最近はカップリングのインスピレーションっていうのも含めて、自分の中でアイディアが不足していて。かと言って「2」の中で一番最初の「THE RYDERS/POTSHOT」をリリースしたタイミングからあんまり離したくなかったっていうのもあったんで、キリがいい所で5タイトル10曲にしました。
──タイガーホールっていうレーベル自体が、このスプリット7インチシリーズから始まってるんですよね。メンツを見ていくと全然単体でも有りな人たちだと思うんですが、そもそも何故最初にスプリットをやろうと思ったんですか。
ISHIKAWA もちろん単体もいいんだけど「このバンドと一緒に出せるんだったら面 白そうだな」みたいなアーティスト心理ってあるじゃないですか、その辺はくすぐりたいなっていうのはありますね。あとは、単体で出すってなると、二つ返事でオッケーな人もいれば、レコード会社とか絡んできてめんどくさくなっちゃう人もいるから、なるべくアーティスト側の意向に沿った形で出そうっていう一環としてこういうスプリットっていう形になったんですよね。じゃなかったら4バンドとかでもいいでしょ、7インチでも4バンドくらいは入れられるから。でもそうなっちゃうとオムニバスになっちゃうからね。カップリングくらいがちょうどいいんじゃないかな。
──ライブの方でも「TIGER HOLE COLLOSSEUM」っていう対決シリーズみたいなイベントをやってますけど、そういう感覚なんですか。
ISHIKAWA そうそう。まあ最近は、ライブの方は色んな所が対決シリーズってやっちゃってるんで、もうやってないけど。当初の考えとしてはそうですよね。
──スプリットに誘うバンドっていうのはみんなISHIKAWAさんと交流があるバンドなんですよね。
ISHIKAWA そうですね。さすがに交流なくて一からっていう事になると、逆にカップリングっていうのは失礼なのかなって思うし。一からやるんだったら単体になるんじゃないかな。まあ、カップリングしたバンド同士がすごい深い知り合いかって言ったらそうとも限らないけど。例えばTHE RYDERSとPOTSHOTはお互いに知ってはいたんだけど、それ程昔から深い知り合い仲とは思えないし。
──そこをタイガーホールがくっつけてスプリットを実現したっていう感じなんですか。
ISHIKAWA イヤ、もちろん無理にくっつけてっていうのは全然ないんだけどね。POTSHOTもTHE RYDERSの事は先輩としてっていうのも含めてすごくリスペクトしているし、THE RYDERSもPOTSHOTの事は好きだし。まあスプリットの組み合わせを考える時って色んな要素を総合して緻密に計算して…って考えてる訳じゃなくて、ほとんどインスピレーションだから。
──じゃあ「今回は若手と大御所を組ませて…」みたいな戦略的な考えがあったわけではないんですか。
ISHIKAWA まあ頭の片隅にはあったんだと思うけどね。LAUGHIN'NOSE/GELUGUGUなんかも、うちが長い間スプリット7インチシリーズを出してきてる中で「GELUGUGUは誰とやりたい?」ってメンバーに聞いた時に「LAUGHIN'NOSEとかとやりたいですね」っていう話になったんで、それじゃあっていう事でラフィンに聞いたら「GELUGUGU、知ってる知ってる」っていうんで実現したっていう、そういう感じですね。まあこの二つ(THE RYDERS/POTSHOT、LAUGHIN'NOSE/GELUGUGU)に関しては、それぞれ直系っていう訳ではないけど、キャリアで言ったら先輩後輩っていう組み合わせですね。
──それぞれリスペクトしててっていう感じですよね。
ISHIKAWA そうですね。GELUGUGUなんか、この収録曲の最後で「GET THE GLORY」のフレーズになってフェードアウトしていったりしてるし「好きなんだなー」って感じだよね。

自己満足ながら鼻が高い
──対してSA/ROBIN、LONESOME DOVE WOODROWS/SWITCH TROUT、RADIO CARO-LINE/THE TURN-TABLESという、この辺は「仲間」っていう組み合わせっていう感じですよね。
ISHIKAWA SAとROBINに関しては、まあその時のインスピレーションで決めたっていうのもあるんだけど、大きな理由としてはSAが復活して、色々と音源を出してるんだけど何故かアナログを出してなかったんで、SAみたいな感じのバンドがどうしてアナログ盤を出さないんだろうってずっと思ってて。同じくROBINも当時はアナログ出してなかったんで、どうしてだろうって思ってたし。それじゃあこの「TIGER HOLE RANGE」っていうシリーズで各アーティスト一曲づつなんだけどアナログ化出来たらいいかなって思って、この話を持って行ったらSAもROBINもすごい喜んでくれたんで、だから良い時期にやれたんじゃないかな。自己満足ながら鼻が高いっていう感じですよね(笑)。
──LONESOME DOVE WOODROWS/SWITCH TROUTという組み合わせはどういうきっかけだったんですか。
ISHIKAWA 当時、SWITCH TROUTは、もう前々から海外盤やK.O.G.A盤も含めて、いっぱいアナログ盤が出てたんだけど、LONESOMEの方はアナログどころか、オフィシャルでリリースしてるCDすらなかったんだよね…まあ今、レーベルの中で一緒にやれてるんで嬉しいけど。で、ある時あるイベントの楽屋でこの二バンドがいて、双方とも仲がいいっていうのもあって「スプリットやりたいね」みたいな話になったんですよ。でもCDでのスプリット化はちょっと難しいかなって思ったんで、7インチでやってみようかっていう感じで…オレの中では即決っていう感じですね。
──LONESOMEとの付き合いは結構長いんですか。
ISHIKAWA そんなにすごく長くもないですよ。六年くらいかな?
──まあ、LONESOMEに関してはスプリット7インチと共に、その後CDのアルバムもタイガーホールからリリースしてますけど、それを決めたのは7インチの話が出て来たのとタイミング的には同時期なんですか。
ISHIKAWA イヤ、そういう訳ではないんですよね。まず、その楽屋の話の流れで7インチは7インチでやろうっていうのは決まってたんですよ。で、メインでやってるTIGER HOLEレーベルの部分に関しては、オレの中で別の脳みそなんで、その時は何も考えてなかったんですけど、それからしばらくしてからLONESOMEを単体でアルバム出すっていうのも有りかなっていうアイディアが出て来て。そこで仕事的な発想になったんだけど、だったら7インチも同じような時期にリリースした方がいいのかなって思って。実はSWITCH TROUTの音源はかなり早い時期から出来てたんですけど、リリース自体はLONESOMEのアルバムのリリース時期に合わせてもらったっていう感じですね。
──今までのシリーズの流れでいうと、わりともうリリースもいっぱいしてて名前もあるようなバンドの組み合わせって言う感じでしたけど、そこにLONESOMEを入れてきたっていうのはなんでだったんですか。
ISHIKAWA …うーん、別にオレの頭の中では特にそういう括りはないんだけどね。例えば一番最初に出したTHEE MICHELLE GUN ELEPHANT/JIGHEADなんかでも、まあミッシェルはキャリアの中でもう沢山リリースしてたけど、JIGHEADはまだそんなにたくさんリリースしてたわけじゃないし。「1」の方に入ってるヤツだと海外のバンドが入ってたり、STAB4REASONっていうバンドなんかも、当時はまだリリースなんてほとんどなかったからね。「2」の方はたまたまそういう感じになってるけど、特にそういうノリで選んでいるっていう訳ではないですね。
──こうやってまとめて見るとすごく豪華なメンバーだし、いかにも売れそうなメンツだな、みたいな見られ方もしそうですけど、別 に名前で選んでるっていう訳じゃないんですね。
ISHIKAWA 名前で選ぶっていう事は全然ないですね。もちろん、出すからには売れて欲しいとは思ってるし、ここに入ってるバンドだって、別 に売れなくてもいいなんて思ってる人は一人もいないと思うから、売れそうなメンツだって言ってくれるのは嬉しいけど。
──それじゃ、最後のRADIO CAROLINE/THE TURN-TABLESですけど。
ISHIKAWA ああ、これはもう単純にユニット同士が最高かなっていう感じですね。もちろん、RADIO CAROLINEの方は、今やしっかりしたバンドになってるけど、始まりの部分ではTHEE MICHELLE GUN ELEPHANT、THE NEATBEATS、GYOGUN REND'Sという組み合わせのユニットみたいなもんだったからね。で、THE TURN-TABLESも、別にRADIO CAROLINEを見習ったわけじゃないんだけどもPEALOUT、JIGHEAD、LONESOME DOVE WOODROWSっていうユニットだから。…まあJIGHEADのRYOTAは「O.P.KINGみたいにやろうよ」って言ってたけど(笑)。まあ、この二バンドは仲もいいし、この組み合わせはいいんじゃないかなって思いましたね。
──曲も、二バンドともカバーですしね。
ISHIKAWA これはRADIO CAROLINEの方が「THE TURN-TABLESってカバーをガンガンやってるんでしょ? ウチらもカバーやりたいな」って言ってくれて、わざわざやってくれたんだよね。7インチっていうのが出るって言うことに対して、すごく積極的に動いてくれたんで嬉しかったです。
──今、単体でアナログを出すバンドって少ないですからね、バンド的にもアナログが出せるっていうのは嬉しいんでしょうね。

全アーティスト聴いて欲しい
ISHIKAWA やっぱり商業的に考えるとアナログを出すのって厳しいでしょうからね。アナログ盤出して儲けようって思ってる人なんていないと思いますよ。まあ、自分たちで持っててもいいし、ロックDJの子たちがアイテムとして持っててもいいし…っていうくらいのノリであって。一時期はそこで変なプレミアとか付いたりしちゃって、イヤだったんだけど、最近ではアナログの世界もマイノリティな感じに落ち着いて来てると思いますね。その中で最低限赤字にならない程度でやりたいっていう感じですよ。
──そういうプレミア対策っていう意味でCDにまとめて出したっていうのもあるんじゃないですか。
ISHIKAWA そうですね。まあ、この7インチのために曲を書いてくれたバンドもいるから、それをレコードプレーヤーを持っている人しか聴けないっていうのもね。実際問題、今時レコードプレーヤーを持ってない人もいっぱいいる訳だから。周りからも「これはCDにならないのか」「自分の家にプレーヤーなくって、レコードは持ってるんだけど友達の家に行かないと聴けないんですよ」っていう声が聞こえてきてたんで。そうなってくると、CDにしてあげたいな、とも思うんですけど、7インチのを一枚一枚それぞれCDにしていくっていうのはさすがに難しいんで。まとめた形にはなってしまうんだけど、それで聴かず嫌いの人もついでに他のアーティストのも聴いてくれればいいんじゃないかと思いますね。まあ、オムニバスを作ってる人だったら、誰でも収録されている全アーティスト聴いて欲しいと思ってるでしょう。
──今回のオムニバスの曲順って、リリースされた年代順なんですよね。
ISHIKAWA これは「1」でもそうだったんですけど、全部出した順で収録していますね。まあスプリット7インチは両A面 なんで、その中でどっちが先なのかっていうのは選ばしてもらいましたけど。一作品として見れば「THE RYDERS/POTSHOT」っていうタイトルでもいいし「POTSHOT/THE RYDERS」っていうタイトルでもよかったんで、その辺はファンの人たちの優先順位 で考えてもらっていいんじゃないですかね。
──コンセプト的には、オムニバスアルバムを作る…というよりは、今まで出してきた7インチのアーカイブ的な位 置付けっていう感じなんですか。
IISHIKAWA そうですね、ヒストリーとして一枚にまとめたかったっていうのがそもそもの発想ですね。ただ、あくまでこのスプリット7インチシリーズっていうのは、アナログの7インチを出すっていうのが大前提なんで、「1」を出そうと思った時から、7インチからCDにするっていうのに対して、1バンドでもイヤだって言ったらやめようと思ってましたからね。たまたま前回も今回もみんながオッケーしてくれたから出しているんであって、スプリットの話が出た段階から「これはいずれCD化もされますんで…」みたいな誘い方はしていないですからね。あくまでも7インチは7インチとして出して、CD化っていうのは二の次なんで。もし、CDをさあ出そうかなって思った時に、例えばLONESOMEだけがイヤだって言ったら出すのをやめてましたよ。
──そこでLONESOMEだけ抜いて…みたいな形でのリリースはないと。
ISHIKAWA それはありえないですね、そこは絶対に譲れない所から。そうなっちゃうとコンセプトが変わっちゃうからね。そういう意味では参加してくれたバンドたちには本当に感謝していますよ。

みんなで喜びたい
──さっきスプリット7インチシリーズは通常のレーベルからのリリースとは脳みそが違うって言ってましたけど、どういう風に違うんですか。
ISHIKAWA 通常の方…というか、CDでのリリースっていう部分になると、これはもうボクらの食いぶちにかかってくるんで、綿密に計算してやってますからね。逆に7インチのスプリットを出すっていう事に関しては、そういうのは一切関係なしにやってるんで。
──トントンくらいで行けばいいかなくらいの。
ISHIKAWA そうそう、それで充分ですね。もちろん一生懸命宣伝して、沢山の人に買って欲しいっていう気持ちは同じなんだけど、ものすごいバカ売れするとはちょっと思えないし…。極論で言っちゃえば、仕事と趣味っていう違いかな。レーベルでCD出すとなったら、やっぱり仕事っていう感覚にならざるを得ないし。スプリット7インチの方は、趣味に近いですよ。アナログも売れるもんなら売れて欲しいけど、やっぱり世間の状況として、そんなに売れるもんでもないからね。
──沢山売ろうとするならCDで出した方がいいですもんね。
ISHIKAWA もちろん、どっちにしても、いい加減な気持ちで出してるわけじゃないですよ。CDの方をものすごいタイトにやってるっていう訳でもないけど、そこまで必死に7インチを売るっていうのは難しいんで。まあ、バンドにも、お客さんにも喜んで欲しいし、オレも喜びたいしっていうのをメインに考えてやってますね。
──それじゃ今後もそういったスタンスでスプリット7インチシリーズは続いていく訳ですね。
ISHIKAWA もちろんやって行きますよ!別にCD化したからってこれで終わりじゃないですから。当然これからもまた7インチからスタートして、もしかしたらそれがある程度たまった時にCD化されるのかもしれないし…。もちろん今までCDのオムニバスとして「1」「2」って作ってきた実績がある訳なんで、頭の中ではCD化っていうのは出て来るんだけど、7インチにするっていうのが当然大前提なんで、最初の段階ではCDの話はナシですね。…あとは、今まで15タイトルスプリットを出してきて、1バンドもかぶってないんで、そこはがんばってピックアップしようかなって思いますね。
──15タイトル、30バンドですからね。これからが結構大変ですよね。
ISHIKAWA かぶらないってなると、なかなか知り合いのバンドも少なくなってきてるんで(笑)。まあこれからやるのが、ビッグネームのバンドになるのか、ニューカマーの新人になるのか全然考えてないですけど、これを面 白がって「いいね」って言ってやってくれるアーティストがいれば、相談の上で是非一緒にやりたいですね。

■Release info.

V.A.
TIGER HOLE RANGE

THCA-045
1,890yen(tax in)
2005.6.22 OUT

収録アーティスト
THE RYDERS
LAUGHIN' NOSE
SA
LONESOME DOVE WQOODROWS
Radio Caroline
POTSHOT
GELUGUGU
ROBIN
SWITCH TROUT
THE TURN-TABLES

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