放送作家に手柄はないと思いますよ。だから女子高生が番組の噂してるのを聞くとチンポが立つほど嬉しいんです(笑)。
  古館プロジェクトの放送作家が講師を勤める無料セミナー「アングル」がこの度1周年を記念して特別 イベント「アングルINVITATION〜放送作家だらけのトークショー」を開催する。今をときめく放送作家8人が一同に会するというこのイベント、正直盛り上がらないわけがないのだが、まずは前哨戦として古館プロ所属の放送作家・樋口卓司、鮫肌文殊、山名宏和の3人にいろいろお話を聞いてみました。(Interview:加藤梅造)

脳の筋トレ
──そもそもセミナー「アングル」はどういう目的で始まったんですか?
樋口:放送作家という言葉は今では一般 的になりましたが、言葉だけが雑誌などで一人歩きしている感じがあるんです。僕らも放送作家になってはじめてわかったことが多いので、そういう世間のイメージとは違った放送作家の姿を、放送作家に興味がある人、あるいはモノを作ることに興味がある人達に伝えたいなと。「アングル」という言葉は、文字通 りカメラのアングルのことで、カメラの向きをちょっと変えて見るとつまんなかったことが楽しくなったり、真面 目なことがふざけて見えたり、いろんな見方があるんだよってことでこのタイトルをつけました。
──参加費は無料なんですよね。
樋口:僕らも先輩からタダでいろいろ教わってきたから、アングルも無料でいこうと。
──例えば、専門学校などのそういうコースでは結構高い授業料がかかりますが。
鮫肌:伝え聞くところによると、授業料を払って1年間いろいろ教わっても、その後ハイさよならみたいな所も多いらしいんで。
樋口:その後の仕事先をきちんと用意できるならいいけど、必ずしもそれは保証できないじゃないですか。それがない限りお金もとれんだろうと。 鮫肌:まあ形式はセミナーですが、僕らもみんなと一緒に楽しもうという動機が大きいです。それこそバカなことをテーマにブレストしたり。
山名:でも、中には絶対に放送作家になってやろうっていう人もいますから、手強い場面 もありますよ。
樋口:女子アナ希望もいましたね。
鮫肌:後に新聞記者になった人もいました。
──放送作家に限らずもっと広くマスコミ全般に興味がある人が対象って感じですか。
山名:放送作家の実際のスキルっていうのは現場でやってみないとわからないものだと思うから、その部分で教えられることはあまりないんです。それよりはものの見方とか、考え方や発想の仕方という土台の部分を大切にしようと。
鮫肌:セミナーでは、例えば「ある番組のコーナータイトルを考える」とか「サザエさんを別 の番組名にしてみる」といった問題を次から次へと2時間出していくんですよ。脳みそ千本ノックって言ってるんですが、普段使わない脳みそを使うからみんなヒーヒー言ってやってますよ。

フリーターの楽しみ
──ところで、みなさんはそれぞれどういうきっかけで放送作家になったんですか。
樋口:僕はこの古館プロジェクトに入って初めて放送作家になったんですが、それまではこういう職種があることすら知りませんでした。まだFAXが出始めた時代ですが、先輩に原稿を届けに行くだけの仕事も楽しんでやってました。
鮫肌:俺は20歳の時に、当時大阪でやってた中島らもさんの番組にブレーンとして呼ばれたのが、今思えば最初ですね。本格的にやり始めたのは25歳の時、キッチュ(松尾貴史)さんから「放送作家やってみない? 3日で食えるから」って言われて、「えっ!やるやる!」って(笑)。でも当時はバブルだったからホントに3日で食えたんですよ。
山名:僕は1年間サラリーマンをやってたんです。で、会社をやめようと思ってた時、レコード会社のプロモーターをやっていた友達が「ラジオ局の放送作家に君みたいなのがよくいるんだよね。向いてるんじゃないの?」って言われて、それで知識も全然なかったのになったんです。それまではあまりテレビ見てなかったんですけどね。
──今や放送作家と言えばあこがれの職業だと言われてますが、本人はどんな感じですか?
樋口:そう言われることはすごくいいことだと思うんです。いろんな人にもっと目指して欲しいと思うし。
山名:中には時々、西麻布にマンション買いたい!みたいな人もいますけどね。放送作家になりたいんじゃなくて「有名」放送作家になりたいっていう。
鮫肌:いきなり結果が欲しい人ね(笑)。俺、高校の時読んだ雑誌に、まだダンカンさんが放送作家だった頃のインタビューが載っていて、そこで「明日なくなって誰も困らない職業が放送作家だ」って言ってたのをずっと憶えてるんですが、それがすごいトラウマで、いまだに胸張って放送作家って言えないですけどね。だから憧れとか言われてもピンとこないなあ。
──みんなが思うほど華やかでもない?
鮫肌:むちゃくちゃ地味ですよ。家でナレーション原稿書いてる時なんか死ぬ ほど地味ですもん。
山名:印税もないから、一本書いたらいくらみたいな仕事ですよ。夏場ナイターが入って番組とんだら、収入なくなりますから。
樋口:バイトを何本もかけもちしてるようなもんですよ(笑)。
──でも楽しい? 山名:だからフリーターの楽しみです(笑)。
樋口:そこがあんまり知られてない所ですよね。ものを考えて作って世に出す楽しみ。
鮫肌:電車に乗ってて、例えば女子高生が自分がやってる番組の噂をしてたりしたら、むちゃくちゃ気持ちいいんですよ。
──僕は子供の頃、テレビ番組に台本があるって知らなかったから、テレビで喋ってることは全部そのタレントが考えてることだと思ってました。
樋口:でもそこが僕らの仕事がいまいち胸張れない所で、必ずしも台本通 りに番組ができてるわけでもないんです。ドラマの脚本だったら一字一句自分の書いたセリフかもしれないけど、バラエティは面 白い方に転がっていけば、台本はあとかたもなくなっていいぐらいな潔さがあります。
山名:だから台本は作品じゃないんです。地図みたいなもので。
樋口:もちろん僕らが作ったたたき台があったから面 白くなったんだという自負はあります。ゼロからはそこまでいかないだろうと。100%のものを作ったらそれを120%にしてくれる芸人さんもいるし、その方が断然面 白いです。
鮫肌:逆に、台本通りに絶対やらないタレントもいますしね。
──自分の思い通りにいかなくてもみんなが楽しければいいじゃんって感じですか。
樋口:放送作家に手柄はないと思いますよ。だから女子高生が番組の噂してるのを聞くとチンポが立つほど嬉しいんです(笑)。

野望(検討中)
──そして4月2日に行われるイベント「アングルINVITATION〜放送作家だらけのトークショー」についてですが、これはどんなものなんですか?
鮫肌:まあ単純にアングル1周年記念でお祭りしようかなと。で、どうせお祭りするんだったら僕ら3人以外に、今僕らの世代で一番輝いてる放送作家5人を招待して、普段聞けないことをここで聞いちゃおうかと。
樋口:あと40歳近くのおじさん連中がなんでこんなに楽しくやってるんだろうっていうのを見てもらうことで放送作家の表面 だけじゃない部分が伝わるんじゃないかな。
山名:今回招待した5人の作家もそれぞれ全然タイプが違うんで、いろんな人がいるんだなって思ってくれるといいですね。
鮫肌:僕ら3人を入れると、8通りの違ったテレビ屋が見れる。
樋口:雑誌とかで紹介される放送作家のイメージがだいぶ変わると思います。
鮫肌:だってこの人(樋口さん)、『an an』とかで恋愛とか語っちゃってますからね。何すましてんだこの野郎! 普段酔っぱらってチンポ出してるくせに(笑)。
──チンポ出すのは鮫肌さんだけじゃなかったんだ。
鮫肌:古館プロジェクトは、別名「フルチンプロジェクト」って呼ばれてますから(笑)。
山名:それ、あんたら2人だけだよ!
──そう言えばアングルが本になったんですよね。
鮫肌:僕ら普段の仕事は感覚的にやっていることが多いから、1年間アングルをやってみて改めて自分の考え方を言語化できたんです。それをまとめたのがこの本ですね。
山名:『アングル2004・望郷』?
鮫肌:『遺言』でもいいんだけど(笑)。まあ、春から新しいシリーズが始まるんで、また新たな発見もあると思うんです。あと、ここでは言えないような我々のすごい野望もありますから…。
樋口:野望…まだ内容聞いてませんけどね。
山名:ビックリしたー。何言い出すかと思った。
鮫肌:いや、最後にそういうこと言ってみるのもいいかと思って(笑)。

◆PROFILE
●樋口卓司(ヒグチ タクジ) 主な担当番組「笑っていいとも!」「学校へ行こう!」「中居正広の金曜日のスマたちへ」「爆笑問題のバク天!」「ぶっちゃけ!99」「さんまのスーパーからくりテレビ」「水10!ココリコミラクルタイプ」「みなさんのおかげでした」「もしもツアーズ」他。
●鮫肌文殊(サメハダ モンジュ) 主な担当番組「さんまのスーパーからくりテレビ」「ぐるぐるナインティナイン」「メレンゲの気持ち」「爆笑問題のバク天」「ジャンクSPORTS」他。主著に『ニッポンの少数民族』『空気の壁』(共に鮫肌・山名共著)。
●山名宏和(ヤマナ ヒロカズ) 主な担当番組「ダウンタウンDX」「ぶっちゃけ!99」「ザ!鉄腕!DASH!!」「最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学」「浜ちゃんと!」「アフリカのツメ」他。主著に『ニッポンの少数民族』『空気の壁』(共に鮫肌・山名共著)。
◆BOOK INFO.

脳の筋トレ〜考え上手になるための練習帳〜

KKベストセラーズ
著者:古舘プロジェクトブレーン集団

◆EVENT info.

4月2日(土)LOFT/PLUS ONE
『アングルINVITATION〜放送作家だらけのトークショー』

放送作家がその手の内を明かすかも!? な180分
【キャスト】樋口卓冶、鮫肌文殊、山名宏和(古舘プロジェクト所属放送作家)
【ゲスト】都築浩、鈴木おさむ、高須光聖、そーたに、中野俊成

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