KEITAROとKUNIAKIの音楽的ルーツを探る!

 前号のカヴァー・インタビューで誌面を飾ってくれたFULL MONTY、先月リリースされた意欲作『PxBxR』については存分に語ってもらったので、今月号では彼らの音楽的ルーツを探ってみたいと思う。パンク/ロックを主体に独自のホーン・アレンジを加味した剥き出しのサウンド・メイクがFULL MONTY最大の持ち味だが、その音楽的背景にあるものは一体何なのか? ヴォーカル&ギターのKEITAROとベースのKUNIAKIが多大な影響を受けたアルバムをそれぞれ3枚ずつ持ち寄ってもらい、愉しく音楽談義に花を咲かせた。(interview:椎名宗之)

「LIVE HOUSEの夜」には自分の音楽的ルーツがよく出ている(KEITARO)
──バンドを始める以前に多大な影響を受けた音楽というのは?
KEITARO:僕個人としては、オールディーズやロックンロール、ロカビリーとかでしたね。そういう音楽を聴くきっかけとなったのは、やっぱりエルヴィス(・プレスリー)でした。ウチの親が好きだったんで、そこから興味を持ち始めて。そんな類の音楽に影響を受けてるのは、FULL MONTYの中でも僕くらいですね。
──ホーンを採り入れたバンドをやろうと思い立ったのも、“ロック”というよりは“ロックンロール”っぽい音楽が好きだったからですかね?
KEITARO:そうですね。ロックンロールやオールディーズをきっかけとして、その延長でブルースとかスウィング・ジャズとかも聴くようになって、ラッパの音色がいいなと思って。それで、自分でやるバンドにはホーンを入れてみようと。FULL MONTYを結成した頃には、すでにスカ・パンクというジャンルは存在してましたけど、僕はその存在を当時全く知らなかったんですよ。ほとんど洋楽一辺倒だったし、単純に“ロック・バンドにホーン入れようぜ”っていうことでしかなかったですから。
KUNIAKI:僕が音楽を聴くようになったのは、友達からの影響が一番大きいですね。一番最初に買ったCDも、それこそB'zとか(笑)。いわゆるJ-POPと呼ばれるものを入口として聴いてましたね。
──今回リリースされた『PxBxR』の制作中によく聴いて感化されて、実際のサウンドにも反映されているような音楽って何かありますか?
KEITARO:自分の個人的な嗜好が出たかなと思うのは、『パンクロック・バトルロイヤル2』にも収録した「LIVE HOUSEの夜」のバンジョーやマンドリンを採り入れたヴァージョンですね。あの曲は僕の音楽的ルーツがよく出てると思います。曲はいつもアコースティック・ギターを弾きながら作るので、『PxBxR』に収録したヴァージョンは本来の形に近いんですよ。あと、ちょっとめんたいロックっぽい感じは「ハキダシテ」とか「花一輪」という曲にも出てると思いますね。
──めんたいロックっていうのも、KEITAROさんの世代的にはシブイところ突いてますよね。
KEITARO:そうですね。モッズであったりルースターズであったり、ウチのバンドでいくと僕より年齢が下のメンバーはその辺の音楽をほとんど知らないですけどね。僕らの代がギリギリじゃないですかね。
──それで、今日はお2人が影響を受けたアルバムを洋邦問わずでお持ち頂いたわけですが。
KEITARO:僕のはベタベタなチョイスですけどね(笑)。じゃあ、1枚ずつ紹介していきましょうか。

楽曲を常に旬の状態でオーディエンスに披露したい(KEITARO)
──より身近な場所に視点を向けて、対バンでの共演を通じて影響を受けたバンドはいますか?
KUNIAKI:対バンした人達とは、その後も結構付き合いが続いたりしてますよ。ウチらと全然違うジャンルのバンドでも、イイなと思えるバンドは多いですし。
KEITARO:日本のバンドになると…友達のバンドの音楽ももちろん好きですけど、個人的にはモッズやARB、ロッカーズ、ルースターズなんかがやっぱり別 格ですよね。僕は福岡の出身なので、そういうバンドの音楽がDNAに擦り込まれてると思うんです。自然と身体に染み込んでいるものなんですよ、そういう骨っぽいロックというものが。例えば同じ福岡出身のヴィジュアル系バンドでも、他の土地のヴィジュアル系バンドとちょっと違いますからね。何と言うか、凄く男くさいところがあるんです。
KUNIAKI:そうだね。福岡出身のバンドって、流行りものに対する反骨心が凄くあるんですよ。
KEITARO:うん、そういうのが絶対あるね。ひとつのことを成し遂げるにしても、他の人と同じことは絶対にやりたくないという気風があるんですよ。
──結成から今年でもう7年ですから、そろそろ影響を受ける側から与える側へと変化しつつあるんじゃないですか?
KUNIAKI:そうなればいいですけど…(笑)。
KEITARO:FULL MONTYはホーン・セクションも入ってるし、ちょっと特殊なバンドですからね。単純に3ピースのバンドを聴くのと僕らの音楽を聴くのとでは、やっぱり勝手が違うと思うんですよ。FULL MONTYみたいな音楽をやってみようと思う人は少ないんじゃないかって。純然たるスカでも、純然たるパンクでもないですから。手を出すにしても、なかなか難しいと思うんです。
KUNIAKI:バランスが難しいしね(笑)。
KEITARO:そう。ヴォーカルがピンで、ギター、ベース、ドラムにホーンが2本とかだったら普通 にやりやすいんだろうけど、そこをウチの場合は僕がギターとヴォーカルを兼任してますからね。
──KEITAROさんが敬愛するジョー・ストラマーも、ブライアン・セッツァーも、大江慎也も、みなギターを抱えて唱ってますよね。
KUNIAKI:そうですよね。やっぱりこのギター&ヴォーカルのスタイルは崩したくないですね。ギターも持たずにピンで唄ったら、所在なさげになって困りますからね。何度かセッションに誘われて歌だけで参加したこともあるんですけど、もう何をやっていいのかさっぱり判らなかったですから(苦笑)。でも、ギター1本で参加するのもあまり出しゃばれないから逆に難しいんですよね。
──今の編成は少数精鋭、必要最小限の凄腕メンツによるオーケストラだし、小回りが効いて魅力的だと思いますけれど。
KEITARO:ありがとうございます。でもまぁ、機材車に載る限界もありますしね(笑)。
──レコ発のツアーもすでに始まってますけど、FULL MONTYの真髄はやはりライヴにあるので必見ですね。
KEITARO:1人でも多くの人に観に来てほしいですね。僕らの場合、レコーディングをした後にライヴを重ねていく上で絶対にアレンジが変わっていくんですよ。だからツアーの最初と終わり頃だと曲のフレーズがだいぶ変わるんです。その時々の旬の状態で楽曲をオーディエンスに披露したいっていうか。
──ボブ・ディランも元のアレンジを一切無視してライヴで唄ってますからね(笑)。曲はナマモノだし、成長していくものですから。
KEITARO:そうですね。全くの完成形でレコーディングしようと思うといつまで経ってもレコーディングに入れないし、そこは難しいところなんですけど。
──KUNIAKIさんにはこのツアーでジャコ・パストリアスのような超絶プレイを期待して(笑)。
KUNIAKI:…やりますよ!(笑)
KEITARO:おッ、言ったな(笑)。でもホント、極端な話ですけど嫌いでもいいから一度は是非観てほしい。そこで好みと合わなければ、それは自分達の力不足で仕方のないことですし。きっちりと自分の目で確かめてから判断してほしいですね。今度のツアーはすでに自分達でも手応えを充分に感じていますし、必ず満足できるステージをお見せできると思うんで、近くのライヴハウスに行った時には是非足を運んでほしいです!

KEITARO's favorite
THE CLASH / LONDON CALLING  EPICレコード ESCA-7811 / 1,785yen (tax in)
  CLASHといえば、やっぱりこのアルバムか『WHITE RIOT』ですよね。CLASHで一番最初に聴いたアルバムもこれです。好きなアーティストに関しては、僕は嫌いなアルバムとかはないんですよ。CLASHでいえばジョー・ストラマーが唄ってるんだからそれだけでいいじゃん、って思う。メロディ・ラインとかアレンジの仕方、構成の組み立て方、そして何よりあのビート感に影響を受けましたね。このアルバムでは「REVOLUTION ROCK」や「BRAND NEW CADILLAC」なんかが好きかな。特に「JIMMY JAZZ」は自分達の曲にも大きな影響を受けてます。
THE POGUES / THE VERY BEST OF... WEA WPCR-10941 / 2,520yen (tax in)

 POGUESを聴くきっかけになったのはもちろんジョー・ストラマーです。「あいつらは天才だ」ってジョーが何かのインタビューで答えてて、実際に聴いてみたらホントに凄かったですね。曲作りの才能にしても、そのライヴ・パフォーマンスにしても、もう天才としか言い様がないですよ。今もいろんなアイリッシュ・パンク・バンドが出てきてますけど、やっぱりPOGUESには敵わないですよ。一番影響を受けた点は、シェイン・マガウアンのしゃがれた唄い方ですかね。どれだけPOGUESをカヴァーしようとしても、あの独特な唄い方だけは絶対に真似できないです。

STRAY CATS / STRAY CATS アリスタ BVCM-37460 / 1,890yen (tax in)

 STRAY CATSは、今までに僕が一番多くカヴァーしたバンドですね。このバンドを知ったのはまだ10代の時で英語の歌詞もよく判らなかったけど、ライヴの映像を観て単純にギターのリフが恰好良かったり、凄くいいなぁと思ってのめり込みましたね。誰にでも受け入れられる、普遍性のある間口の広い音楽というか。今聴いても凄く新鮮に聴けますしね、ここに挙げた3枚のアルバムはどれも。3組ともオリジナリティが強烈だし。自分でもバンドをやってレコーディングを何度も経験すると、こういうシンプルだけど力強いサウンドを作るのが本当に凄いと思うんですよ。

KUNIAKI's favorite
LUNA SEA / EDEN MCA MVCD-6 / 3,059yen (tax in)
 僕はKEITAROが挙げたような洋楽は今もあまり聴かないんですよ、パンク・バンドやってるのに(笑)。これは中1の時に聴き込んでたアルバムですね。当時、バンドをやってた先輩がLUNA SEAを聴いてて、それがきっかけでしたね。その影響で僕もコピー・バンドをやるようになって。文化祭でLUNA SEAのコピーもやりましたよ、ちゃんとお化粧して(笑)。今聴くと、みんな何か人と違うことをやろうっていうのが窺えて、ひねくれてる感じがよく出てるんですよ。そこが凄いと思う。まぁ、当時は情報も少なかったし、こういう音楽しか知らなかったんですよね。
THE MAD CAPSULE MARKETS / DIGIDOGHEADLOCK スピードスター VICL-60072 / 3,045yen (tax in)
 マッドは高校の時に友達に教えてもらって。このアルバムが初めて買ったやつかな。LUNA SEAからこういう音楽へ行くのも急激な変化ですけど…何ででしょうね…友達が変わったからじゃないですか?(笑) 今も自分から率先して新しい音楽を見つけようとするタイプじゃないんで。マッドも、他のバンドとは何か違う、普通 じゃないことをやってやろうというのが垣間見えて好きでした。ちょっとベースを歪ませてみるとか。単純に音も恰好いいですし。今のベース・プレイにも影響を受けてると思いますね。僕も常にひねくれた感じでありたいと思ってますからね。
JACO PASTORIUS / PUNK JAZZ ライノ WPCR-11608 / 3,990yen (tax in)
 これは事務所の社長から教えてもらいました。伝説のベーシストと言われる人ですね。最初は音を聴いてもピンとこなかったんですけど、ヴィジュアルから惹き付けられたんですよ。ジョニ・ミッチェルのバックでベースを弾いてるビデオを観て、これは文句なしに凄い! と思った。今はもちろん音も大好きだし、文字通り“PUNK JAZZ”な人ですよね。この人も、いきなりファズのエフェクターを使ったり、ベースを投げてみたり、ジャズという枠の中で何か違うことをやってやろうとする姿勢が好きなんです。そういう部分はLUNA SEAにもマッドにも共通してますね。
■Release info.

PxBxR

GENEON ENTERTAINMENT
GNCL-1021
2,415yen (tax in)
IN STORES NOW

Live info.

NEW ALBUM『PxBxR』レコ発ツアー“Around The PxBxR”
3月4日(金)福島:郡山#9/3月5日(土)岩手:盛岡 CLUB CHANGE/3月6日(日)宮城:仙台 MACANA/3月11日(金)長野:長野 JUNK BOX again/3月12日(土)新潟:新潟 JUNK BOX/3月13日(日)山梨:甲府 KAZOO HALL/3月17日(木)東京:高田馬場 CLUB PHASE/3月18日(金)埼玉:熊谷 VOGUE/3月19日(土)群馬:高崎 CLUB FLEEZ/3月20日(日)神奈川:横浜F.A.D./3月25日(金)愛知:名古屋 ZION/3月26日(土)京都:京都MOJO/3月29日(火)兵庫:神戸 BRATH/3月30日(水)徳島:徳島 JITTER BUG 4月1日(金)高知:高知 CARAVAN SARY/4月2日(土)愛媛:松山 SALON KITTY/4月3日(日)広島:広島 CAVE BE/4月5日(火)宮崎:宮崎 ZETTON/4月6日(水)鹿児島:鹿児島 SR HALL/4月8日(金)佐賀:佐賀 GEILS/4月9日(土)福岡:直方 BOOTH/4月10日(日)福岡:久留米 GEILS/4月16日(土)茨城:水戸 LIGHT HOUSE/4月17日(日)栃木:宇都宮 HARD ROCK HOUSE/4月29日(金)山形:酒田 MUSIC FACTORY/4月30日(土)秋田:秋田 LIVE SPOT 2000 5月1日(日)青森:弘前 Mag-Net/5月13日(金)京都:京都 MOJO/5月14日(土)大阪:心斎橋 DROP/5月15日(日)兵庫:神戸 STAR CLUB/5月20日(金)大分:大分 TOPS/5月21日(土)熊本:熊本 DRUM Be-9/5月22日(日)長崎:長崎 DRUM Be-7/5月23日(月)福岡:福岡 DRUM SON/5月28日(土)東京:新宿 ANTINOCK 6月4日(土)愛知:名古屋 SONSET STRIP/6月5日(日)大阪:福島 2nd LINE/6月18日(土)東京:高田馬場 CLUB PHAS

E FULL MONTY OFFICIAL WEB SITE【PC&MOBILE】 http://www.fullmonty.jp

LOFT PROJECTトップへ戻る←→ROOF TOPトップへ戻る