“パンクの7インチ”感を目指した2005年型New Music
 BANDWAGONがまたやってくれた。ファースト・アルバム『The Equipment!!!』から14ヵ月のインターバルを経て届けられたミニ・アルバム『New Music Machine Extended Play!!!』は、我々三十路街道爆走中のオッサン連中には徹頭徹尾とにかくグッとくるニュー・ウェイヴな質感でひねくれメロディは満載、思わず快哉を叫びたくなる文句なしの傑作と断言できる。スレッカラシの音楽インポをも必ずや勃たせるであろうこの驚異の音盤バイアグラ開発に成功したヴォーカル&ギターのナベカワミツヨシに話を訊く。(interview:椎名宗之)

周りからどう思われようが構わない、僕達は僕達でしかないんだ
──前作『The Equipment!!!』とはまた趣の異なるミニ・アルバムが完成しましたが…お世辞抜きで傑作ですよ、これ。
「ありがとうございます。実際問題として、去年アルバムを出した時点で持ち曲が一切なかったんですよ。全て出し切った感がありまして、このままバンドを解散してもいいかな? くらいに思ってて(笑)。ヘンな諦めではなくて曲作りの自分の限界を判ってたつもりだったんですけど、今回のミニ・アルバムという目標設定に向かっていったらどんどんと新たに曲を作れてしまった自分がいて。僕ら自身の“今こういう音楽を作りたいんだ”っていうマインドが凄くフレッシュなまま出てると思いますね。あと、これは前のアルバムを出した時にも思ったんですけど、みんなもう30を超えていい歳なんだから(笑)、きちんと自分達の音楽的ルーツと向かい合おうと」
──三十路を過ぎると、いい意味で開き直れますからね(笑)。
「そうなんです。だから今度のレコーディングはただただ単純に楽しく終わった感じなんですよ。前回のアルバムを作った時に、ある程度のレコーディングにまつわるエトセトラを体得したのも大きかったですね。そうした技術的な面 を余り気にしなくなったぶん、他のことをより考えられるようになったんです。もっとメロディを立たせるためにはどうしよう? とか、より客観的に自分達のことを見られるようになったというか。以前に比べて肩の力を抜いて楽しめるようになりましたね」
──3テイク以上はテンションが落ちるのでやらなかったとか。
「ええ。それも前回のレコーディングで学んだ部分ですね」
──その割には、どの曲も緻密なアレンジが施されていて、より手間が掛かっている印象を受けますけど。
「難しいことを難しくやることって、実は簡単なことなんだと気づいたんですよ。奥が深いものを相手に判りやすく伝えるためにはどうしよう? っていうのがテーマとしてあったんで、曲作りに関しては前よりももっと考えるようになりましたね」
──アルバム・タイトルにある“New Music Machine”の意味するところは?
「一昔前は“J-POP”っていう言葉はなくて、“ニュー・ミュージック”って呼んでたじゃないですか? 山下達郎とかユーミンとか。その“ニュー・ミュージック”って言葉を復権させたいっていうのと(笑)、自分は“新曲を生み出せるマシーン”のようだなと。前回のレコーディングで枯れてしまったと思ってた自分も、まだまだ曲が作れるじゃないかっていう。それと、僕のなかではこのミニ・アルバムをEP(Extended Play)=シングルっていう捉え方をしていて、EPって言葉も最近はなかなか聞かないですよね。タイトルをパッと見た感じのダサカッコ良さって言うんですかね? そういう部分を敢えて若いリスナーに提示したかったし、逆に昔の音楽を知ってる世代には懐かしく感じるだろうし。“シングル感”みたいなものを今回は強く出したいと思ったんですよね」
──そうしたシングル感のあるコンパクトさに加えて収録曲がどれも粒揃いだから、何度も繰り返し聴きたくなる作品に仕上がってますよね。
「このミニ・アルバムでバンドの世界観を完結させるんじゃなくて、次の作品に繋げたいんですよね。前のアルバムを聴いて僕らのイメージを固めて持った人には、今度のミニ・アルバムは結構違和感があるんじゃないかと思いますよ。6曲収められてますけど、聴き終わった時に“これはとても恰好いいシングルだ”っていう感じを持ってくれたらいいなぁって」
──THE CLASHの「Rock The Casbah」のカヴァーっていうのも、余りに豪直球で意外と言えば意外でしたが。
「僕の洋楽体験はCLASHから始まったし、いつかは自分のバンドでやりたいと思ってたんです。ちょっと前に、ライヴ会場限定リリースで『TWO COVER SONGS.』っていうカヴァー2曲入りのCD-Rを作ったんですよ。その時にCLASHの『Rock The Casbah』とDURAN DURANの『Ordinary World』を録ったんです。言い出しっぺはCLASHを全く通 ってないギターのイケダで、彼が“『Rock The Casbah』イイじゃん、カヴァーしようよ”と。僕が言い出すのと彼が言い出すのとではベクトルが全く違うと思うんですよ。その全く違うベクトルから出たものだから、これは逆に面 白いものになるんじゃないかと」
──それこそ、「Rock The Casbah」が収められてるCLASHの『COMBAT ROCK』に近い質感がアルバムの根底にあると思うんですよ。『SANDINISTA!』でレゲエやダブにまで取り組んだCLASHが、シンプルでストレートなロックに立ち返った感じというか。
「そうですね。ルーツ・サウンドからの影響は自ずと出てると思いますよ。まだ20代だったら恥ずかしくてできなかったことが、今回は全部できた気がするんです。周りからどう思われようが構わない、僕達は僕達でしかないんだっていうか」
──2曲目の「P+E=M Not Us.」にある曲名の頭文字は何の略なんですか?
「頭文字の数式にしたのは、リスナーに好きなように判断してほしかったからなんです。一応、意味としては“Political+Enter=Minority Not Us”(政治に参加する=少数派、でも我々は違う)っていう。“P”は“President”(大統領)でもいいんですけど。何でもいいんですよ。好きなように取ってほしいんです。政治的なステイトメント云々を誰かに伝えたいってわけでもなくて、何かの引っ掛かりになって掘り下げてくれればいいなと。それこそCLASHとかは政治にも直接関わっていきましたけど、日常生活のなかで食事をするのと同じレヴェルで自然と政治に関心を持つものだと思うんですよね。それによって世の中を変えようってわけじゃなくて、自分を取り囲む社会っていうのは常に隣にあるものだし、こうしてCDを出せるのも社会との関わりのひとつでもありますからね」

かっこいいことはなんてかっこ悪いんだろう
──XTCやTALKING HEADSみたいなニュー・ウェイヴ系バンド特有のひねくれたメロディや転調が随所に聴かれて、アルバムの最後を飾る「Kill My Dance, At Heavy Metal Disco!!!」っていう曲もその典型ですけど…また凄まじくストレートな曲名ですね(笑)。
「このタイトルを思い付いた時は“オレって才能あるなぁ…”って独りほくそ笑みましたけど(笑)。ドラムのツジとギターのイケダは結構ヘヴィ・メタルに影響を受けてる世代で、僕とベースのアキモトは逆にパンクしか聴いてこなかったんです。だからメタルは憎悪の対象であり、また憧れの対象でもあるんですよ。ウチの姉がヘヴィ・メタルのバンドをやってて『ロッキンf』世代だったんで(笑)、自分がパンクに行ったのはそれに対する反発もあったと思うんです。『Kill My Dance,〜』に関しては、WinkとかC-C-Bとかの質感を出したいと思ったんですよ(笑)。曲の途中のDメロなんて、もろにWinkを意識してますからね(笑)。僕らにとって本当の意味での“ニュー・ウェイヴ”っていうのは、イギリスのパンクの後に出てきた本流のそれではなくて、実は小室哲哉以前の日本のポップスみたいなものじゃないかと思うんですよ」
──ああ、「0909〈ワクワク〉させて」の本田恭章とかね(笑)。
「そうそう(笑)、その辺が凄く生々しいんですよ。C-C-Bも、あのカラフルなヘアスタイルはFUN BOY THREE経由だったんだなって後になってみると判るんですけど(笑)。今の若い子が純然たるニュー・ウェイヴを聴くと真新しいって思うのかもしれないですけど、僕らにしてみれば結構ダサいものだったりするんです。ただそれを普通 に聴いてきちゃったので、前科は前科として素直に白状しようと(笑)。レコーディングの時に“ダッセェなこの曲!”なんて言ってみんなでゲラゲラ笑いながらも、そのダサい曲を如何にして恰好いい曲に昇華させるかっていうのが大事だったりして。早川義夫じゃないけど“かっこいいことはなんてかっこ悪いんだろう”っていう、恰好いいものは恰好悪いし、その逆もまた然りっていう価値観の逆転的発想が今回常に頭の片隅にありましたね」
──同時発売されるアナログ7インチの「Rock The Casbah」は、BANDWAGON初の“フロア対応”という(笑)。
「スイマセン、そう言ってみたかっただけなんです(笑)」
──B面のL?K?Oさんによる同曲のリミックス・ヴァージョンはもの凄い破壊力で、ナベカワさんが仰るようにこれは最早ひとつのスプリット作品ですね。
「そうなんです。何度も繰り返して聴くと“あ、こんなところにも音を使ってる”って発見が随所にあるんですけど、一聴すると誰しもが必ず“ある部分”で大笑いするんですよ(笑)。とある世界的に有名な曲のフレーズが聴こえてきますから。これはL?K?O氏なりに僕らが今回提示したかったことを理解してくれたんじゃないかと思ってます」
──事前にL?K?Oさんと打ち合わせをされたわけでもなく。
「ええ。特に話し合ったわけじゃないですから、うまくシンクロしたんですね。結局、すべてのことはタイミングなのかなって思いますね。すべての条件が自然と合う時が必ずあるんですよ。カヴァー自体はこれからも自分達が必要性を感じたらやると思います」
──このミニ・アルバムで目指した“シングル感のある作品”というのと7インチを切ることは関連性がありますよね。
「はい。人間には帰巣本能があるって何かで読んだんですよ。歳を取って生まれ育った場所へと帰るように、最初にパンクに感銘を受けた人は巡り巡ってまたパンクに戻るというか。僕もその入口に立つ年齢なのかなと。今回僕が凄く意識したのは“パンクの7インチ”なんです。パンクの7インチって、出だしがもの凄く恰好いいじゃないですか? 針を落とした瞬間が一番恰好いい。曲が終わる頃に若干その感想も変わってきたりする曲もありますけどね(笑)。でも、曲の始まりが最高に恰好いいことは間違いない。そういうレコードを作りたかったんですよね。最初の一音がドカン! と来るレコードを。そうやって惹き付けてから曲の深さとか他の部分に耳をどんどんシフトしていってくれたらいいなと。自分がリスナーの立場になって考えると、試聴機で頭の1曲目に鷲掴みにされるかどうかでそのアルバムを買うかどうか結構左右されますからね」
──なるほど。そんなナベカワさんの思惑通りの罠に我々はまんまとハマったわけですね(笑)。
「(笑)一見判りやすそうに見えて、前回以上に曲のなかで常習性を促す仕掛けが一杯あるんですよ。そういうトラップが一杯ある音楽ほど楽しいし、長く聴けますからね。今回は曲の核だけを表出させようとして、例えばムダな間奏とかはどんどん削ぎ落としていったんですよ。その表現の一番恰好いい部分を押さえたら、曲自体が冗長になることもないですから。そういう部分も今回目指したシングル感に繋がってると思います」
──BANDWAGONの活動はかなりマイペースですけど、生活と音楽を巧く両立させていますよね。
「多分、どっちかが欠けても曲作りに影響するでしょうね。好きな音楽をずっとやり続ける以上、そこで楽して生きてちゃいけないと思うんです。ちゃんと厭なこともやらないと。音楽活動だけならきっと毎日楽しくて仕方ないんでしょうけど、そうなると人間っぽくなくなるんじゃないかと思うし。自分の背丈以上のことを目指すよりも、身の程をわきまえて、せめて1年後に1センチ背が伸びていればいいかなくらいに思ってるんですよ

■Release info.

New Music Machine Extended Play!!!

LASTRUM corporation
LACD-0074
1,680yen (tax in)
2005.1.19 IN STORES

Rock The Casbah [7inch single]
SIDE-A: Rock The Casbah (original by The Clash)
SIDE-B: Rock The Casbah (remixed by L?K?O)
LASTRUM corporation LAEP-1003 840yen (tax in) / limited 1000 copies
2005.1.19 IN STORES
Live info.

<bandwagon* presents. "department#3" 〜"New Machine Music Extended Play!!!" Mini Album Release "ONEMAN" Show @ERA〜>
2005年2月19日(土)下北沢ERA
OPEN 18:30 / START 19:00
PRICE: advance-1,800yen / door-2,300yen(共にDRINK別)
【info.】shimokitazawa ERA:03-5465-6568

BANDWAGON OFFICIAL WEB SITE http://www.mywordsgoingnowheremusic.net/


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