俺らがロックンロールの真髄を示していくしかない
 ロックンロールの真髄とは何か? MURDER STYLEはその問いに全身全霊を傾けて対峙し、一切の妥協をせずに体現し続ける唯一無二のロックンロール・バンドである。イカサマで薄っぺらいロック・バンドが跋扈するなかで、その飽くなきロックへの真摯な姿勢ゆえに異色のバンドとして逆に浮き立って見えてしまうのは不幸なことだ。彼らが如何に特異な存在であるかは、結成から12年を経ても明確なフォロワーが現れないことからもよく判る。「適当っていうのを許さへんから、絶対に。適当っていうのがロックンロールや言うんやったら、俺はそんなロックンロールなんて要らんから」と喝破するMURDER STYLEのブレイン、KAZUNARIにニュー・マキシ・シングル『ROSE』と新宿ロフトでのワンマンについて話を訊いた。(interview:椎名宗之)

俺らはロックンロールしか知らへんし、聴かへんし、しいひん
──昨年の3月にリリースしたファースト・アルバム『ROOT CONNECTION』以来の音源となるマキシ・シングル『ROSE』が発表されたわけですが、去年1年間は曲作りに専念していたんですか?
「うん、ずっと曲を作ってた。まぁ、曲は毎日のように作ってるんやけど……この12〜13年間はツアーばかり繰り返しやってきたんで、たまにはツアーもサボったろと思って(笑)。ずっとツアーしてるバンドやから、たまに休んでも誰も怒らへんやろ? って」
──今回のマキシ・シングルに収められた曲は、その曲作りのなかの一部なわけですね。
「ほんの一部。ほんの一部やけど、いくらこっちが“俺達ロックンロールだぜ!”言うても伝わらへんから、もう。だからこっちから垣根をなくしてアプローチしようかな思うて。俺らにしてみれば冒険してみようかな、って」
──MURDER STYLEを妙な固定観念で見ている人が驚く程のポップでキャッチーな曲が揃いましたね。
「元々ポップでキャッチーなバンドなんやわ。そやけど、どういう訳かイメージ先行で凄いおっかな恐いバンドみたいに思われてるけど、純粋なMURDERのファンの子とか俺達のことをよく知ってる人達はこういうバンドだってことを判ってるから、誰も文句言わへんと思うんやけどな」
──そもそも、ルーツとしてあるのがHANOI ROCKSとかNEW YORK DOLLSとかですもんね。
「HANOI ROCKSっちゅうのは俺にとっては青春やし、MURDER STYLEはそういう音楽が好きで始めたバンドやからね。ただ、関西でMURDERをやり始めた当時は受け皿がなかったから…どうしても人間がこうやから(笑)、過激な行動とかでイメージが先行してしまったと思うけど。別 にそれに対しては何とも思ってないし、まぁ、身に覚えはあるけどな(笑)」
──今回のシングルではプロデューサーとして元はちみつぱいの和田博巳さんを迎えて制作されましたが、和田さんとは元々交流があったんですか?
「いや、知り合いではなかったんやけど、レーベルの方や関係者が和田さんにやってもらおうって話になって」
──和田さんとのコラボレーションは如何でしたか?
「向こうはプロフェッショナルやからね。レコーディングは面白かったよ」
──1曲目の「TOKYO ROSE」は、東京という“流れ者の街”で生き抜く生活者の迷いや葛藤を赤裸々に唄ったナンバーですね。
「そういう捉え方をしてもらってもええと思うんやけど、『TOKYO ROSE』と『現実』の2曲は“やっぱ東京って大変やな”っていうか(笑)。特に俺みたいな関西人にとってはね。でもそれを否定せんと、東京へ来て1年やそこらで潰れていく人が多いなかで、関西でずっと一線でやって来て、東京へ来ても常に一線でやってる俺ら生き証人から見た東京っちゅうのを唄ってるつもりなんやけど」
──“目一杯羽ばたきたいだけ”“私は生き抜いてみせる”というフレーズに一縷の希望がありますね。
「まぁ、好き勝手に生きたいしな。悔いを残したくないから。ただ勿論、好き勝手生きる上でのリスクも背負ってるよ」
──2曲目の「現実」は、夢と現の狭間で藻掻きながらも前へ向いていこうとするハードな曲ですね。
「『TOKYO ROSE』も『現実』も、同じ時期に書いた曲なんやわ。だからテーマは似てるかもしれん。これも俺らのロックンロールのほんの一部やけどな。勿論、作品を発表するいうことはそういうことなんやけど。この2曲を背負っていく気はあるよ。だからこそシングルとして出したし、自信ある曲やし。今までのファンの子だけやなくて、MURDERに興味を持ってくれてる子にも強く訴えかけていけると思うてるから。俺らはロックンロールしか知らへんし、ロックンロールしか聴かへんし、ロックンロールしかしいひんし」
──3曲目のRONETTESのカヴァー「BE MY BABY」は意外な選曲だと思ったんですが。
「和田さんの薦めでね。意外に思われるかもしれへんけど、この曲は俺らが結成当時からやってる曲なんやわ。『BE MY BABY』をカヴァーしてるアーティストって多いやん? そやけど、MIIKOがカヴァーやったらホンマに誰もかなわへんで。あいつはとにかく凄いヴォーカリストやからね」
──ええ、まさにロニー・スペクターを彷彿とさせますよね。しかも、アレンジはあくまで原曲に忠実で。
「『BE MY BABY』のテンポを早くするとか、ゴチャゴチャさせるっていうのは、俺らから言うたら邪道も邪道、冒涜に近い。あの“ダッ、ダ、ダ、ダッ”てテンポでロニー・スペクターが唄うから…勿論そこにはプロデューサーのフィル・スペクターもいて、だからこそああいうマジックが起きて、世界の人が救われてると思うからね。それに、『BE MY BABY』の気に入ったカヴァーをしてるミュージシャンがこれまでいいひんかったっていうのがあった。ここでやっぱり俺らが示しといたろか? っていう」

俺らがナンバーワンのロックンロール・バンドやから
──ところで、『ROSE』というタイトルは、ベット・ミドラーがジャニス・ジョプリンをモデルにして熱演を振るった同名映画にインスパイアされていますか?
「うん。MIIKOがMURDERに入る前、ヴォーカリストを目指しとった時からジャニスやベット・ミドラーの大ファンで。聴いてもろうたら判ると思うけど、あの唄い方っちゅうのは完全にジャニス直系やと思うねんな。そこからMURDERに入ってパンクとかロックンロールに触れて、いろいろ学んでいって。何度も言うけど、MIIKOはホンマ凄いヴォーカリストやと思うよ。完全なロッカー・タイプやから。実際には、あいつが“Mr. MURDER STYLE”で、俺が“Miss MURDER STYLE”やからね、バンドのバランスとしては(笑)」
──(笑)MIIKOさんの歌声はジャニスよりも艶があって伸びやかで、その存在感たるや凄まじいものがありますよね。まさに歌を唄う為だけに生まれてきたかのような肉感的な声というか。
「俺はMIIKOがヴォーカルじゃなかったらバンドはやらへんわ。それくらい凄いよ。初めてあの声を聴いた時に、俺がずっと探し求めてきたヴォーカルやと一発で思った。“こいつで決まりや!”って」
──そんなMIIKOさんの歌声やKAZUNARIさんのプレイをもっと音源として聴きたいという飢えたファンも多いと思うんですよ。12年という長きに亘る活動歴のなかで、MURDER STYLEの単独作は驚く程少ないじゃないですか。
「まぁ、音源に関してはずっと小出しにしてやってるけど、それでもずっと応援してくれるファンの子というか変わりモンが多いから(笑)有り難いね。MURDERを好きな子っていうのは何かに飢えてる子なんやけど、作品の量 を求めてるんじゃないと思うねんわ。曲が出来ひんかってずっとアルバムを出さへんかったわけやないし、音源として形にしてない曲はホンマに一杯あるからな。今度のワンマンでも未発表の曲をやるし、レパートリーだけやったら凄い量 になるし、さっきも言うたように俺は毎日のように曲を書き続けてるし。それは俺にとって日常生活におけるごく普通 のことやからね。これだけ曲があるんやったら俺のソロ・アルバムでも作ってみたい気分やけど(笑)」
──MURDER STYLEが追い求めているロックンロールのスタイルというのは?
「追い求めるっていうのは、とっくの昔にもうやめた。それまではニューヨークのパンク・ロッカーやHANOI ROCKSを目指して追い求めてやってきたし、英語詞の曲もあった。そんな時期もあったけど、今は俺らがナンバーワンのロックンロール・バンドやから。だから追い求めるものはないけど、突き放してばっかりでそう言うててもしょうがない話やから、このマキシ・シングルを媒体にいろいろ考えてもろうたらいいと思う。もう海外のミュージシャンを追い求めたってしゃあないもん。そういう評価はある程度もうされたし。今はホンマに、一人でも聴いてくれる人がいる限り、どんな形であれMURDERの作品を発表していこうと思うてる」
──ただ、これは語弊がある言い方かもしれませんが、聴いてくれる人の為に音楽を続けているわけではないですよね?
「ないよ。俺がMURDER STYLEを続けるいうことは、凄く精神的な問題であって、自分との闘いであって、MURDER STYLEっちゅうのは自分そのものやねんわ。人生を懸けてやってるよ。自分らを安く売らへんいうのは一貫してずっとやってきたことやし、MURDER STYLEは“ロックンロールとは何か?”というのを一切の妥協をせずに体現してきたバンドやねん。それは断言できる。突き放すだけがロックじゃないけど、かと言ってどっかのバンドと仲良し小良しするつもりも全然ない。そういう観点がMIIKOと俺にはないねんわ。今はチャラチャラしたバンドが多すぎる。“誰かに付いといたら…”みたいな感じで。この十何年間“俺ら以外にロックンロールはできひんで!”って言うてずっと走り続けてきて、ふと後ろを振り向いたら誰もいいへんからな(笑)。だからもう何とでも言うて下さい、変態でも変わりモンでもキチガイでも(笑)。本来ロックンロールはキチガイのやる音楽やから。もうとにかく…俺らこそがロックンロールやからな、他のことは知らんわ。自分達の音楽以外、何の興味もない」
──『ROSE』のリリースを記念して、新宿ロフトで待望のワンマンが11月7日に行われますね。
「ロフトも久々やね。関西時代からレコ発の時とか、小滝橋通りにあった頃のロフトでようさんやらしてもろうてるし。今度のワンマンは俺らにとっては通 過点やけど、じっくりやらせてもらうわ。DJも付けへんし、ゲスト・ミュージシャンも何もせんと、もう俺らだけ。それだけで勝負したい。もうそんな飾り付けすんのんてイヤやねんわ、大袈裟やし。“MURDERのライヴはいつも恐い人がいる”とか“MURDER好きやけどライヴは恐くて行けない”ってよう言われんねんや、ファンの子は大人しい子が多いから。でも、ワンマンやったら来やすいやろ? ロックンロールを長年やってきて、俺ら自身が何のギミックもなしでその真髄を示していくものと思うてるから。ロックンロールが好きな人は絶対来てくれ! ちゅうより、来い!(笑) もし何かに飢えていたり、何かを探したいと思うてんねんやったら、俺らを観てくれたらきっと判ると思う」


★Release Info.

NEW MAXI SINGLE
『ROSE』

1. TOKYO ROSE / 2. 現実 / 3. BE MY BABY (original by THE RONETTES)

BEAT PHONIC 002 / 1,200yen (tax in)
IN STORES NOW

★Live info.
<〜IT'S COLD OUTSIDE vol.13〜 New Maxi Single『ROSE』発売記念 MURDER STYLE ワンマン>
11月7日(日)新宿LOFT
MURDER STYLE (ONE-MAN)
OPEN 18:00 / START 19:00
PRICE: advance-2,300yen / door-2,800yen(共にDRINK代別)
【info.】shinjuku LOFT:03-5272-0382

MURDER STYLE OFFICIAL BBS http://6531.teacup.com/murderstyle/bbs

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