RとLのスピーカーから放たれる一撃必殺の虹色メロディ  

ウニ(=URCHIN)の外観は刺々しいが、中身はトロトロしていてしかも美味、海の幸としては最高級の食材である。その上、人によっては好みも分かれる。そんな二律背反なヒネクレ具合と反則的なまでのポップ感に充ち満ちた刺激的なバンド、URCHIN FARM。「いいメロディを作らせたら絶対に負けない」というMORO(G, Cho)の言葉は今秋全国発売される『RainbowL+1』が実証している。偉大なるアマチュアリズムと天性のポップ・センスを兼ね備えたこの脅威の新進気鋭バンド、かなり高水準なポップ・ソングのストックもすでに大量 にあるそうなので、今後の活躍が掛け値なしに楽しみだ。(interview:椎名宗之)

“メロの良さ”だけは絶対に外せない
──“URCHIN FARM”の由来を改めて訊かせて下さい。
矢沢壮太(SOTA:Vo, G)「URCHIN=ウニ、FARM=養殖で、一言で言えば“ウニの養殖”っていう(笑)。大学のサークルで初めてライヴに出る時に、バンド名を付けなきゃいけないって話になって決めたんですよ。“パンクっぽい動物がイイよなぁ”と思ってて、辞書を片手に刺々しい動物をいろいろ考えて…それで“ウニ”にしようと」
──“ハリネズミ”とかは候補になかったですか?
SOTA「その時はもう、CAPTAIN HEDGEHOGが先にいましたから。最初は“バフンウニ”にしようと思って辞書を調べたら“horse shit urchin”って書いてあって、これはシマらないなぁと(笑)。その頃は楽器を始めて未だ間がなくて、バンド名を考えるなんてさっぱり頭になかったんですよ」
──プロフィールによると、「'99年4月16日、それぞれが初めて楽器を手にした夜に結成」ってことですから、音楽を始めたのは割と遅咲きなほうですよね。
師崎洋平(MORO:G, Cho)「中高時代はサッカーに全エネルギーを使ってましたからね。特に僕はレギュラーだったんで(笑)。ドラムの(森下)哲也['01年に初代ドラマーに替わり加入]以外は皆そんな感じなんですよ。音楽は勿論好きで聴いてましたけど、まさか自分自身がやるなんて思いもつかなかったですから」
SOTA「元々大学でハイスタ(Hi-STANDARD)のコピーがやりたいと思って音楽サークルに入ったんですけど、そのサークルのテーマが作詞・作曲だったんですよ(笑)。入って1年間くらいはコピーをやり続けて、徐々にオリジナルを書き溜めていった感じですね」
MORO「大学2年の時に、『オリジナルをやらないとライヴに出させないぞ!』って先輩から言われるようになって(苦笑)。だから最初は、強制的にオリジナル曲を作らされたんですよね」
SOTA「それから都内のライヴハウスを中心にライヴを徐々にやるようになって、デモテープを物販で売ったり、下北のハイラインレコーズにちょっと置かせてもらったりして」
──それが昨年、初のフル音源『RainbowL』を渋谷タワーレコーズ、熊谷モルタルレコード、下北沢ハイラインレコーズで限定リリースして、渋谷のタワーではいきなりインディーズ・チャートの6位 を記録するヒットとなって。今回そのリミックス盤が『RainbowL+1』として全国発売されるわけですけど、バンドを始めて僅か4年で、ここまでポップの核を衝いた極上のメロディを幾つも生み出したのがとにかく脅威ですよね。
SOTA「皆が唄ってくれて、なおかつ自分達も楽しい歌を…っていうのが初めから念頭にありましたからね」
MORO「高校の時はマニアックな音楽は聴かずに、ヒットチャートの上位 を占めるような曲を追っかけてるようなところがあって。歌がきっちり通っていて、いわゆる名曲と呼ばれるような歌が大好きだったんです。入口がそこですから、自分達でオリジナルを作るようになった時点から“メロがいい”っていうのをまず第一に考えてるんですよ。そこだけは絶対に外せませんね。『RainbowL+1』に収めた曲には大学2年の時に作ったのもありますけど、ベースがちょっと入ったり、スピードが早くなっていたり、微妙に変化してるんです」
──曲は生き物だから、ライヴでやっていくうちに余分なものが徐々に削ぎ落とされてもいくでしょうし。
MORO「そうですね。ただ、絶対にアレンジは変えないっていうこだわりがあるんですよ。初めて曲を作った時は、得体も知れない、訳も判らない勢いがその曲には宿ってるじゃないですか? それは時間を経て今の自分達には出せない部分もあるので、曲を生み出した時の初期衝動とか、そういうところは大事にしてますね」
──この『RainbowL+1』を聴いていると、“ポップでキャッチー”という常套句はまさにURCHIN FARMの為にあると断言したくなりますね。冒頭の「Candy」からPVにもなった「Melody」、「I wish」…XTCじゃないけど、“THIS IS POP”と言う他ない一撃必殺のナンバーがこれでもか!とばかりに凝縮されていて。
MORO「このアルバムに入ってる曲は、とにかく自分達が作っていいと思ったものだけを集めた感じなんですよ。ピッチャーに喩えて言えば、ストライクを狙い澄ましたわけではないけれど、ガーッと投げたら一番投げたいところにボールがキャッチャーミットにガッチリ届いたっていうか。自分が生まれて初めて書いた曲とかも入っていて…でも今振り返ると、“作曲なんてまるでやったことのない人間がよくこんなフレーズを思い付いたなぁ”と自分でも思いますね(笑)」
SOTA「最初に『RainbowL』として完成した時は“イイのが出来たぞ!”って思ってたんですけど、よく聴き直すと、本来抱いていた曲のイメージと実際の音の違いを大きく感じるようになって。で、全国発売が決まった時に、リミックス盤として自分達が納得する作品に仕上げたいと思ったんです」

5年間のすべてが凝縮された『RainbowL+1』
──リミックスに際して気に留めたところは?
SOTA「アルバムを作った時にあった勢いをどう取り戻すか、っていうか。元の『RainbowL』はキレイな感じにまとまりすぎちゃってたんで、もっと荒々しくてギターの勢いがガーッと出てて、でも歌がしっかりと伝わるようにしたかったんですよ」
──元の録り音は直しようがないから、お色直しをするにもちゃんと意図を理解してくれるエンジニアがいないと難しい作業ですよね。
MORO「そうですね。『RainbowL』を出してからほぼ1年間聴き続けてきて、その1年の間に得たものが凄く大きかったんですよ。初めてツアーも廻ったし、自主企画のライヴもあったり、大きい会場でやる機会も増えて…バンドとしても個人としても、凄く意味のある経験を一杯させてもらって、そんな頃に自分達の音源についてより真剣に考えることが多くなって。周りの意見を聞いても、“普通 だよね”っていうのが多かったんです。“悪くはないんだけど、いい部分がうまく出し切れてない”とか。だから今回は早い曲ならギターをガンガン前面 に出して、アタックが命! みたいな感じにしたり。元の『RainbowL』は収録した7曲がどれも同じようなイメージだったんですけど、今回のリミックスでは1曲ごとにバランスを多少変えたり、微妙なニュアンスの違いを込めることができたと思いますね。その結果 、緩急の付いた、本当に納得の行く1枚になりました」
──今回の『RainbowL+1』にはボーナス・トラックとして77曲目に(笑)「Past Time」という曲が収められていて、遊び心も充分にあり。
SOTA「前に作ったデモ盤にあった曲を引っ張ってきて、さらにリミックスしたんです。元は録り音もミックスも全然違うんですけど、『RainbowL』の7曲に巧く合うような音作りで…ってエンジニアさんに難しいお願いをして(笑)」
MORO「録り音は直しようもないっていう、ある意味通 常のレコーディングよりも困難な作業だったんですけど、この『RainbowL+1』に関しては凄く貴重な経験をさせてもらったと思ってるんです。4年前に作った曲も収録されてるし、音自体は去年録ったものだし、ボーナス・トラックの『Past Time』は一昨年録ったもので、リミックスは今の自分達の感性まで反映できているし…これまでのURCHIN FARMの変遷がすべて凝縮された、集大成的なものに仕上がってますからね」
──ジャケットのアートワークも、URCHIN FARMの奏でる7色のポップ・ソングに相応しいイラストに彩 られて。
SOTA「ジャケットを含めて、いい意味で一新していきたいっていうのがあったんで。MOROがデザイナーの本みたいなのをパラパラめくってたら“この人がイイ!”って目に留まって。イラストレーターの山田ノブオさんとは全く面 識がなくて、オッケーが出るとは最初全然思わなかったんですけど、お願いしたら快諾してもらって、ラッキーでしたね。僕達の音楽も気に入ってもらったし」
MORO「山田さんの描くイラストは、凄く今っぽいカラフルさなんですよ。一癖も二癖もあるような暗い色を使ってるんだけど、見た目が凄く明るい。外見は刺々しいけど中身はトロッとしてるウニ…つまりURCHIN FARMのテイストに凄く近いものを感じたんですよね。かなり満足してますね」
──いろんなものが一新されるなかで、アー写も随分と小綺麗になりましたよね(笑)。
MORO「真実はライヴにしかないですから!(笑) ライヴではあんな小綺麗な恰好もまずしてないし、とにかくライヴに来てくれよ! と(笑)」
──URCHIN FARMのライヴは音源同様にポップでカラフルで楽しくて、見応えありますよね。お客さんが本当にイイ顔して弾けていて、そんなお客さん以上にメンバーも凄く楽しんでプレイしていて。
MORO「ライヴを観に行って、ステージに立ってる人達が一番楽しんでるだろうなぁって思うようなバンドが自分達は好きなんですよ。僕らも、お客さん以上にまず自分達が楽しまないとお客さんも絶対楽しくないだろうと思ってて、とにかくメンバー4人が楽しむ…その4人以上に自分自身が楽しむっていうのをライヴでは心懸けていますね」
SOTA「単純に、自分達がイイと思ってる曲をデカイ音で出してるだけで凄く楽しいんですよね、ホントに」
MORO「僕らは、圧倒的なエネルギーでお客さんを薙ぎ倒すようなバンドではないんですよ。そんな薙ぎ倒すだけの力もないし(笑)、お客さんとかなり近い目線で演奏している意識がありますから。真剣にやろうと思えば誰にでもできるようなことしかやってないつもりなんです。それを皆の前で堂々と立ってやるかやらないかの違いだけで。だから、“俺達、スゲエだろ!?”って誇示するよりも“皆だってできるんだよ!”みたいな部分を伝えられたらイイなと思ってますね」
──そんなURCHIN FARMですが、新宿ロフトで行われる『BEATSONIGHT! vol.2』を皮切りに、下北沢屋根裏でのワンマンまで全国17ヵ所でレコ発ツアーが控えております。
MORO「この『RainbowL』に関しては、最初に都内だけで廻って、夏のツアーがあって、これでもう3度目のツアーになりますからね(笑)。これでやっとファイナル・ツアーを迎えることができるし、ツアーの最中に旗を持って行って『RainbowL』に関わった人達にサインをしてもらってるんですけど、それも完成できるし、今までの流れのピリオドがようやく打てるから気合いは充分ですよ。曲も死ぬ ほど演奏してきてますからね。曲が熟成して一番美味しいところをバンバン見せられると思うし。特に、ワンマンは是非観に来てほしいですね。今までとこれからの僕らを一遍にお見せできる筈ですから」
──じゃあ今が一番、熟れたウニ(=URCHIN)の美味しい季節ってことですね。
SOTA「そうですね。ウニが刈り取られる直前、みたいな(笑)。間延びした生活のなかで、僕らの音楽がちょっとしたスパイスになれば嬉しいですね」

■Release info.

RainbowL+1

BEATSORECORDS
EFCN-91002 2,000yen (tax in)
IN STORES NOW


■Live info.
<『RainbowL+1』RELEASE TOUR>
11月4日(木)新宿LOFT『BEATSONIGHT! vol.2』/11月6日(土)札幌COLONY/11月9日(火)名古屋SONSET STRIP/11月11日(木)仙台RIPPLE/11月12日(金)郡山#9/11月13日(土)宇都宮HELLO DOLLY/11月15日(月)大阪2nd LINE/11月16日(火)京都WHOOPEE'S/11月18日(木)大阪BAY SIDE JENNY/11月20日(土)磐田FM STAGE/11月21日(日)横浜F.A.D/11月23日(火)伊那GRAM HOUSE/11月25日(木)甲府KAZOO HALL/11月27日(土)新潟CLUB JUNK BOX/11月30日(火)熊谷VOGUE/12月2日(木)北浦和KYARA/12月11日(土)下北沢屋根裏【TOUR FINAL ONEMAN】

URCHIN FARM OFFICIAL WEB SITE http://www.e-r-f.com/urchinfarm/

URCHIN FARMの皆様から素敵なプレゼントがあります!

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