ニートビーツ暦1970年、劇的進化を遂げ新境地へ離陸!!  
化けた! リーゼントからキツツキ・ヘアへ、スリム・パンツからフレアへ…とその風貌の変化もさることながら、クハラカズユキ+奥野真哉という才気溢れる腕っ節の加勢により、何よりその音楽性がより華麗で骨太な英吉利風情な肉感的ロックへと変貌を遂げたニートビーツ。2年5ヵ月振りとなるオリジナル・アルバム『ATTENTION PLEASE!!』は、これまで発表されてきたどの作品とも似ていないニートの新境地であり、重要な通 過点であり、彼らが愛してやまない60〜70年代ブリティッシュ・ロックの血が全編に脈打つ文句なしの傑作だ。変化を厭わぬ 彼らの大英断の真意を訊いた。(interview:椎名宗之)

時代の流れを汲みながらも常に変化し続けたい
──4月にリリースしたベスト盤でこれまでのニートビーツを総括した上で、全く真新しいアルバムが完成しましたが。
真鍋“MR. PAN”崇(Vo, Lead G)「そうですね。結果 的にそういう意味になってしまったというか。タイミング的にも良かったんじゃないかと思いますね」
──ニートビーツと言えば、タイトなスーツにリーゼントという風貌で60年代初期のブリティッシュ・ビートを掻き鳴らすイメージがあったので、この『ATTENTION PLEASE!!』で聴かれる70年代ブリティッシュ・ロックに根差した骨太なサウンドの変化にはかなりの衝撃を受けたんですけれども、これは自然な流れだったんですか?
真鍋「一応、7年かけてこうなったことになってるんですが…事実ほんの2ヵ月で自然な流れになったっていうか(笑)」
──今年が“ニートビーツ暦 1970年”(バンド結成の1997年は“ニートビーツ暦 1963年”)っていうのも何か関係があるんでしょうか? 1970年はビートルズも解散して、英米ではロックの新しい流れが巻き起こる胎動期ですよね。
真鍋「それは後から勝手に付けたんですけどね(笑)。説明の仕方として、無理矢理こうしようかなぁって(笑)」
土佐“MR. LAWDY”和也(Vo, 2nd G)「現実的なところで言うと、リーゼントにするのにも明らかに髪が長かったんですよ(笑)」
三浦“MR. ROYAL”誓山(Vo, B)「そう、永ちゃんばりに伸びきってて(笑)」
真鍋「要はね、ないとこないとこへ行きたかったんですよ。リーゼントも、僕らがバンドをやり始めた時はそないやるヤツいなかったんです。スーツ着てリーゼントでライヴをやり始めた頃は『何それ、冠婚葬祭?』って周りから言われたくらいで(笑)。それが、“リーゼントにスーツ=ニートビーツ”という図式が余りに定型化してしまって、僕らが本来アプローチしようとしていた“ヘンテコな音”が薄れてきたんですよ。それは面 白くないなと思って」
──それに伴って、真鍋さんのヘアスタイルもフェイセズ時代のロッド・スチュワート的キツツキ・ヘアになり(笑)。
真鍋「徐々にライヴで変化してたら唐突じゃないけど、ライヴである日突然そうしましたからね」
三浦「『その派手なスーツ、何!?』みたいな(笑)」
真鍋「今のこのスタイルで初めてライヴをやった時に、客席がざわめいてましたから(笑)。『ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと……!』みたいな(笑)。そういうのは初体験やったし、凄く新鮮でしたよ」
──さっき仰った“ほんの2ヵ月”の間に、一体何があったんですか?
真鍋「メンバーも抜けて、新しいレーベルでやって行くことになった時に、これまでの継続をやるつもりは全くなかったんですよ。今年の春のツアーにキュウちゃん(クハラカズユキ/Ds)や奥野(真哉/key)君を誘うことになって、これまでと同じことをやるのは興味が持てなかった。時代の流れを汲みながらも変化し続けたい、っていうのが常にあるんですよ。ただ、それが今回は余りに急な話だったっていうだけで(笑)」
──クハラさんと奥野さんという外部の強力な血を注入することで、バンドのなかで新陳代謝が進んだことも大きいでしょうね。
真鍋「そうですね。キーボードがフルに入ることで音楽的な幅が広がったのは勿論なんですけど、何よりバンドとしての自由度が増したんですよね。これまでのニートビーツなら1曲=2〜3分の枠組みのなかでキッチリ決めるところを、それが6〜7分になったことで各々のパートがより自在に、より好き勝手にやれるようになった。そういうルーズ感を得たことは大きいですよね」
──このアルバムで言えば、「BIG RED PARTNER」のライヴ・ヴァージョンはニートビーツ流「Midnight Rambler」(ローリング・ストーンズの'69年発表のナンバー)と呼べる趣で、そんなルーズ感が存分に楽しめますよね。「黒いジャンパー」のような小気味良いビート・ナンバーを期待するファンには心地よい裏切りだと思いますけど、文句なしに恰好いい。
真鍋「今までのファンには予想外でしょうね。ただ、『黒いジャンパー』はバンドとしては名曲なんで、今もライヴでやってますけど、それはストーンズが今もなお『Satisfaction』をやるのと近いニュアンスなんでしょうね。まぁ、懐メロにするにはまだ早いけど(笑)」
土佐「『BIG RED PARTNER』はミックスし終わったらトータル・タイムが8分もあって、自分達でもビックリしたんです。ただ、演奏してるほうは凄く気持ちいい曲なんですよね。シングルで録った時以上にライヴでやると気持ちいいし、そのグルーヴ感を残したいので敢えてこの長さで収録したんですよ。ヘンな固定観念に縛られずに思い切りやる、そんなところも自由度が増したなぁって思いますね。だから今、バンドとして凄く充実してますよ」

ニートは本来面白くてユーモアのあるバンド
──タイトルの『ATTENTION PLEASE!!』は、新たな地平へと離陸する今のニートビーツには相応しいですね。
真鍋「イメージとしては、来日バンドなんですよ。日本へやって来た外人のバンドというか。70年代のバンドって、飛行機で移動してるイメージがあるじゃないですか? だからジャケットでわざわざ記者会見を開いているわけです(笑)」
──ビートルズを筆頭に、ディープ・パープルとかデヴィッド・ボウイとか、昔の洋楽アーティストは来日すると東京ヒルトンホテル(現・キャピトル東急ホテル)の真珠の間とかで必ず記者会見をやりましたからね。
真鍋「結構大変だったんですよ。ブックレットでは全員スチュワーデスの恰好までしてますから(笑)」
──そこまで自由度が増しましたか(笑)。「真空パック」や「SPEED WHITE」に顕著ですが、エレピやキーボードを効果 的に配したナンバーがニートビーツの新機軸としてとりわけスリリングですね。 土佐「『イアン・マクレガン(スモール・フェイセズ、フェイセズのキーボーディスト)が好きで…』みたいな話を奥野さんとしてて、そこから急速に親しくなったんです。そういう共通 点があると、ライヴやるにもレコーディングするにも話が早いんですよね」
真鍋「僕らが好きなオルガンの音と奥野君の出す音がピッタリ来てたしね。と同時に、他の楽器もよりパワフルになったし、それは顕著に出てますね」
──「HI-FI LADY」やキンクスの「David Watts」を彷彿とさせる「とってもスター」(ライヴ音源)など、往年のニート節が炸裂したナンバーも健在で。
真鍋「僕らがルーツとしていたマージー・ビートとかの音楽を聴いてる人は、本来ブリティッシュ・ロック好きやと思うんですよ。いわゆるキンクスとかフー、モッズ・ビートの流れですよね。そういうコアなファンのハートを掴むような音にはなってると思いますね。それプラス、バンドの音として他にはないサウンドやと思うし。モノラルからステレオへ、モノクロからカラーへというような変化はあると思うけど、そんなに枠をもの凄く外れたっていう意識もないんです。あくまで、ごく自然な流れだから。だから俺、スティーヴ・マリオットの気持ちがよく判るよね(笑)。スモール・フェイセズでの音楽的変遷、それ以降のハンブル・パイまでの流れとか」
土佐「逆に、ニートビーツを全然知らないような人には間口が広がったアルバムになってると思いますよ」
真鍋「そう、僕らのことを全く知らない人がこのアルバムを聴いたら面 白いと思うよね。そこから昔の音源を遡っていった時に、『エ〜ッ、これ同じバンド!?』ってかなり驚くだろうしね。そこまで変化を遂げたバンドってなかなかいないだろうから。60〜70年代のロックって、バンドが1年ごとにもの凄く変化していってるでしょう? 今そういうバンドがいてない気がするんですよ。どんどん変化していくバンドを周りが面 白がって付き合うようなことが少なくなってきてる気がして」
──確かに。「スカーレット」「ピーナッツ・ギャラリー」には、ボブ・ディランの『欲望』『ローリング・サンダー・レヴュー』に参加しているヴァイオリニスト、スカーレット・リベラがサポートしてますね。
三浦「ええ。ヴァイオリンを曲のなかに入れたいって話になって。もの凄く感性の鋭い人やったね」
真鍋「元々、繋がりは何もなかったんですよ。ただこっちからコラボレートしたい旨を伝えて、たまたま彼女が日本に来る予定もあって、幸運にも実現できたんです。3月にやったライヴにも飛び入りで出てもらって。その時にディランの『HURRICANE』をカヴァーでやって、『ボブ・ディランの次に良かった』って言われたんですよ」
──凄いじゃないですか。
真鍋「でも、『ボブ・ディランより良かったでしょ?』って訊いたら、『いや、そんなことはない』って(笑)。ビートルズでもストーンズでも、ボブ・ディランからの影響って強いじゃないですか? ニートビーツは特にハンブルグ時代のビートルズっぽい固定のイメージを持たれがちだったから、そういうディラン的要素を出すのが難しかったんですよ。でも、さっき話した2ヵ月という時間を経て、ここまでやったら何やってもええやろうと思って」 土佐「最近のライヴをビデオで見ていて感心するのは、真鍋君のムダな動きの多さ(笑)。それが凄く70年代のロックっぽい。バラードでもメッチャはっちゃけてるしね(笑)」
──でも、ムダとかトゥーマッチな感じっていうのはロックの重要なファクターですよね。
真鍋「確かに。70年代のバンドってムダに走ってるイメージがありますからね」
──この『ATTENTION PLEASE!!』で劇的進化を遂げたニートビーツがこの先どう変わり続けていくのか、いよいよ楽しみになってきましたね。
真鍋「このアルバムで“離陸”したんで、どう着地しようかな? って思ってるんですよね(笑)。オペラ的なロック・ムーヴィーをいつか作りたいとは思ってますけど。間にコントを挟むようなね(笑)。そのサントラとしてアルバムを作るとか。ニートビーツは、世間一般 の人が思うような恰好いいバンドじゃないんですよ、絶対に。面白くてユーモアがあるほうがいいと常に思ってるんですよね。だから楽しんでバンドを続けていきたいんです。俺がこのヘア・スタイルにして、客席にキツツキ・ヘアが増えたら面 白いじゃないですか? …実際、まだ見たことはないですけど(笑)」


Release info.

ATTENTION PLEASE!!

BMG FUNHOUSE
BVCR-14016 3,000yen (tax in)
IN STORES NOW

Live info.
<ATTENTION PLEASE!! TOUR>
10月27日(水)千葉LOOK/11月1日(月)心斎橋CLUB QUATTRO/11月4日(木)岡山ペパーランド/11月5日(金)広島ナミキジャンクション/11月8日(月)福岡ビブレホール/11月20日(土)F.A.D YOKOHAMA/11月23日(火)宇都宮VOGUE/11月24日(水)SENDAI CLUB JUNK BOX/11月26日(金)秋田Club SWINDLE/11月28日(日)新潟CLUB JUNK BOX/12月1日(水)名古屋ell.FITS ALL/12月3日(金)京都磔磔/12月4日(土)神戸STARCLUB/12月7日(火)LIQUIDROOM ebisu <EVENT> 11月6日(土)熊本BATTLE-STAGE/11月10日(水)和田山HIGH/GAIN/11月11日(木)和歌山OLD TIME/11月29日(月)長野CLUB JUNK BOX
*全ての公演はTHE NEATBEATS+クハラカズユキ+奥野真哉の出演で行われます

THE NEATBEATS OFFICIAL WEB SITE http://www.neatbeats.net/

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