より肉感あるバンド・サウンドへの有機的変移
 THE BACK HORNは今、大きな変化を迎えている。アルバム『イキルサイノウ』で構築された音像を極めた彼らは、ツアーとフェスを経て、“より肉体的なバンド・サウンド”へと移行しつつある。その最初の一撃が11月3日にリリースされるシングル「コバルトブルー」。流れるような疾走感と美しい情緒をたたえたこの曲は、今後のTHE BACK HORNの音楽をはっきりと映し出している。このシングルと同時発売される初のライヴDVD作品『爆音夢花火』も必見だ。(interview:森 朋之)

“もうちょっと熱くなりてぇな”っていうモードがあった
──「コバルトブルー」は、いつ作った曲なんですか?
山田将司(Vo)「いつだったっけ?」
松田晋二(Ds)「最近思い出したんだけど、CASSHERNで『レクイエム』を作ってる時に(THE BACK HORNは今年4月にリリースされた『CASSHERN』のオリジナル・サウンドトラック『OUR LAST DAY CASSHERN OFFICIAL ALBUM』に書き下ろしの新曲『レクイエム』を提供している)、ギターのリフがあったんだよね、この曲の。で、“これは結構、恰好良くなりそうだね”って言ってたんだけど、結局その時はそれほど広がらなくて、保留になって」
菅波栄純(Gtr)「あ、そうか。で、ちゃんとバンドで演奏できる曲になったのは、合宿(今年の春先に行われた曲作りのための合宿)の後くらいかな。(7月にリリースされたシングル)『夢の花』を録った後だから…」
松田「夏前には出来てたよね」
──疾走感があって、ライヴでガツンとやると盛り上がりそうな曲ですよね。
菅波「そうっすね。今回は結構、合宿をやってる時から、ライヴでやってる絵が浮かびやすい曲が多くて。リフが前に出てる曲だったり、テンポ感のある曲だったり、そういう曲が無意識のうちにいっぱい出てきた。『コバルトブルー』も、リフが出てきた時に“ライヴでガツンとやれる曲にしてぇな”って思ったんですよ。なんていうか、“もうちょっと熱くなりてぇな”っていうモードがあって」
──熱くなりてぇ、っていうのはバンド全体が共有している気分だったんですか?
松田「『イキルサイノウ』っていうアルバムは組み立て方式……っていったら何かヘンですけど、その曲に必要な部品を集めて構築していくっていう作り方をした、究極形だったと思うんですよ。で、もう1回同じやり方を続けるよりは、もっと肉体的というか、ガーッと盛り上がるような曲をやりたいなっていう。そういうことは、4人で話したような気がしますね。『イキルサイノウ』を作って、ツアーをやって、自然とそういう気分になった。『コバルトブルー』は、その気分が暗黙のうちに曲になったり、言葉になったりしたんじゃないかな、と」
──なるほど。確かに歌詞もいつになくストレートですよね。「だけど俺達泣く為だけに産まれた訳じゃなかったはずさ」っていう…。こういう歌詞に説得力を持たせられるのは凄いなって思いますが。
菅波「……この歌詞を書くきっかけになったのは、去年のツアーの時に、鹿児島で特攻隊の基地の跡にある展示館に行ったことなんですよ。そこで激しく衝撃が走りまして。なんていうか、燃え上がってるんだけど、キレイな風景に溶けていくような曲が書きたいなって思ったんですよね。ガーッと突き進んでるだけじゃなくて、どこか情緒的なところもある、というか」
──うん、聴後感が爽やかなんですよね。
松田「あー、なるほど。判ります」
──ヴォーカルもいい意味でリラックスしてる感じがしました。肩の力は抜けてるけど、急速は150km、みたいな。
山田「ここまで速い曲って、実は初めてなんですよ。唄い方としては、基本的にはサビでガーンといく感じ。Aメロ、Bメロについては、風をドババババって受けてるんじゃなくて、大きめのストライドで“ポーン、ポーン”って進んでいく感じ。ガーッと力を入れても、スピード感は出ないんで」
岡峰光舟(Ba)「ベースも難しかったですね、かなり。力が入ってると、こういう曲は弾けないです」
──テンポの速い曲って少ないですよね、そういえば。
松田「そうなんですよ。多分、根本のところではゆったりとした重い曲が好きなんだと思うんですよね、俺達。ちょっとムリしてテンションを上げないと、ガーッと速い曲はなかなか作れなくて。でも今回は自然とテンポのある曲をやりたい気分になった。そこが今までとは違うところじゃないですか? 速い曲っていっても、『光の結晶』みたいに力を入れまくってる感じでもないし」
──そう、曲全体のヌケがいいんですよね。
松田「ギターもいつもより歪んでないしね」 菅波「うん、歌もそうだけど、バーッと塗りたくっちゃうとスピード感がなくなる……ってことに最近気づきまして(笑)。いくらテンポを速くしても、たるい曲はたるいじゃないですか? 逆にテンポが遅くても、スピードを感じる曲もあるし」
松田「エンジニアも違う人にやってもらってるんですよ、今回。曲調と音がうまく融合できたかな、ってういうのはありますね」

“バンド感”がこれまで以上に強く出た3曲
──今回のシングルは他の収録曲にも“新しさ”がありますよね。まず2曲目の「白い日記帳」ですが、これ、凄いタイトルですよね。
松田「そうですね」
──バンドの許容量がどんどんでかくなってるのかもしれないですね。だって、このタイトル、2年前だったら“なし”でしょう? 菅波「そうかもしれない」
松田「力づくで“あり”にしてる、ってところもあるかもしれないけど。ギリギリですよねぇ」
──まぁ、ギリギリのことをやってるバンドを見たいですからね、こっちも。でもこの曲、「70年代に郷ひろみが出してた曲のカヴァーだよ」って言われたら、思わず信じちゃいそうですねぇ。
全員「ハハハハハハ!」
松田「でも、ホントにそうなんですよ。ちょうどこの曲を作った頃、『青春歌年鑑 1978』っていうCDを聴いてて。'78年って自分が生まれた年なんですけど、凄いんですよ、曲に込められたパワーが。山口百恵の『絶対絶命』なんか、特に凄いですよ。どこがサビだか判んなくて、全部が“キメ”みたいな曲で」
──で、“バンドでもこういう曲をやってみよう”って?
松田「まぁ、俺にとっても結構挑戦……っていうか、“よし、やっちゃうぞ!”っていう感じですね。生半可な気持ちでやってると、後で聴いた時に“さみぃなぁ”ってことになっちゃうと思うので。『白い日記帳』に関しては、メロディとそこから浮かんできた景色、それと歌詞がぴったり合ってたんですよ。これが他の人……たとえばモーニング娘。がやったら、『白い日記帳』っていう言葉も違うふうに聞こえるかもしれないけど、俺らがやることで面 白いものになるんじゃないかな? っていう気持ちもあったし。最初はちょっとためらったけど、“こういうのもアリだな”って。もしかしたら、ちょっとマヒしてたのかもしれないけど」
──(笑)でも、唄う人としてはどうなんですか?
「この恋が燃え尽きて流星に変わるまで」というフレーズで始まる曲っていうのは。
山田「最初はちょっと笑いました。“えーっ!?”っていうのもあったけど、すぐに消化して、“大丈夫、オッケー、オッケー”ってなりましたけど」
──「カラビンカ」も、新鮮でした。ハードコアっぽいギター・リフが炸裂してて。これもライヴでガシガシ暴れられそうな曲ですね。
菅波「そうっすね。この曲のギターは簡単だから、コピーしたら楽しいと思いますよ。実は今回のシングルは、“コピーしたら楽しそう”っていう3曲でもあって」
松田「そこまでコピー・バンドにおもねってどうする?(笑)」
菅波「いや、コピーしやすいってことは、バンド感があるってことだから」
松田「あー、なるほど。そういえば、JUDY AND MARYのデビュー曲って『POWER OF LOVE』っていうんですけど、その時のインタビューで恩田(快人)さんが『“簡単にコピーできる”ってことを考えた』って言ってて。その曲、ホントにコピーしやすいんですよ。で、普通 に聴いてもカッコイイ。そういうシンプルさ、キャッチーさはあるかもしれないですね、今回のシングルには」
──やっぱり『イキルサイノウ』を作ったことによる反動って、大きいのかもしれないですね。
松田「それはありますね」
──その結果、バンドとしての幅が広がってるのはいいことだと思いますが。調子良さそうですよね。
菅波「うん、調子はいいっすよ。いい曲もたくさん出来てるし」


★Release

New Single
コバルトブルー
SPEEDSTAR RECORDS VICL-35708
【初回盤】/ VICL-35709【通常盤】 1,200yen (tax in) / 11.03 IN STORES

◎初回盤特典映像:甦る陽 Live at 日比谷野外音楽堂(CD-EXTRA;DVD『爆音夢花火』未収録映像も加え構成されたスペシャル・エディション)

Live DVD
爆音夢花火
SPEEDSTAR RECORDS
VIBL-178 3,800yen (tax in) / 11.03 IN STORES

◎『夏のワンマン市街戦! 〜夕焼け目撃者〜』at 東京 日比谷野外音楽堂(2004年7月17日)でのライヴ18曲を完全収録
◎同時収録:菅波栄純 監督監修作品『爆音夢芝居』
◎初回生産分限定特典:万能妖怪風呂敷

★Live Info.
11月3日(水・祝)駒澤大学記念講堂『駒澤大学オータムフェスティバル2004』/11月11日(木)なんばHatch『TOWER RECORDS 25th Anniversary LIVE GO! GO! 25th』/11月13日(土)渋谷O-EAST『SHINSEIDO 55th Anniversary J-ROCKイベント“6955”』/11月20日(土)Zepp Tokyo『J-WAVE VIVA! ACCESS“VIVA! LIVE”』/11月27日(土)長野CLUB JUNK BOX『NAGANO CLUB JUNK BOX 5th Anniversary』/12月22日(水)宮崎SR BOX『the night before volcano』/12月23日(木・祝)鹿児島SR HALL & CAPARVO HALL『volcano』/12月31日(金)幕張メッセ国際展示場『COUNTDOWN JAPAN 04/05』
【total info.】SPEEDSTAR MUSIC:03-5775-2163(月〜金 11:00〜19:00)

THE BACK HORN OFFICIAL WEB SITE http://www.speedstarmusic.co.jp/backhorn/


THE BACk HORNさんから素敵なプレゼントがあります!

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