爽快感と共に押し寄せる高揚感と骨のある音。そんなサウンドが響くpuli(プーリー)の楽曲は、いいメロディに歌を乗せながら、聴くごとに新しい発見を届けてくれる。元papillonのARO AOSHIMA(Vo/G)、元skinny dipのATSUSHI FUJIMOTO(Vo/B)、KOICHI HORIKAWA(Vo/G)に、前ドラマー脱退後、元CAPTAIN HEDGE HOGのYUICHIRO OKUWAKI(Dr)が加わり現在の4人となった彼ら。振り幅が広いのに芯のある曲、ポップな外観に彩 られた曲、メロディの可愛らしさが雰囲気に表れた曲、変則的なリズムも細かなフレーズも、すべて“納得”した上で奏でられているから心地いい。(interview:高橋典子)

犬を取るかバンドを取るか悩んでる(笑)
――初めは別々のバンドだったそうで?
青島「お互いバンドをやってて、それがなくなり一緒にやり始めたってだけなんですけど。もともとバンドで知り合いになって、音楽もよく知ってたし、ジャンルも離れてなくて一緒にやる機会も多かったんで。一緒に企画をやってたのはもう6〜7年前」
――バンドがない間も曲作りはしてたんですか?
青島「そうですね、ちょこちょこと。すぐ行けるようにはしておこうと思ってたんで」
――出会ってからpuliというバンド名に?
青島「puliって名前は、ライヴをやるってなった時に、名前がなくちゃしょうがないんで決めました。プーリーは犬の種類の名前で、ハンガリーの牧羊犬なんですけど、全身がドレッドなんですよ、ボブ・マーリィみたいな。僕、まず犬が凄い好きで、犬を取るかバンドを取るか悩んでて(笑)。まぁ、今も悩んでるんですけど……」
――両方取ったみたいな形になりましたね〜(笑)。結構犬に詳しいんですか?
青島「結構詳しいんですよね、マニアックな犬はたくさん知ってますよ。まぁ、家で飼ってるのはチワワですけど(笑)」
奥脇「ポピュラーな犬だね(笑)」
青島「最初、図鑑で見て“何だこれ?”ってプーリーって犬が凄い気になって。一見したいなと思って家の近くの“わんにゃんワールド多摩”って所に行きまして、プーリーに会ってきたんです。館の人と“凄いですねぇ”って話してたら、“いや、もっとロックなヤツがいたんですけど、名古屋に移動になりました”とか言われて(笑)」
奥脇「犬が!? 左遷!?」
――移動してしまうんですか?
青島「移動があったみたいです(笑)。あと僕、猫が大好きなんですよ。子供の頃から飼ってた猫がプリって名前なんですよ。……もうお判りですよね(笑)。そんな感じです」

曲を集めて、そこで出来るイメージのほうが大事
――結成してから、ここ2年くらいの出来事を振り返ってみるといかがですか?
青島「結成から1年経ってシングル出して、さらに1年経って今回のアルバム出して、全体としては普通 には流れてると思うんです。音楽的変化というよりも、また違う曲をやったって感じですね。シングルも今回のアルバムもどっちもいいんじゃないかと。逆にアルバムを聴いてシングルを聴きたくなってくれる人が多くいればいいかなと」
――今回は青島さんの曲が多めですが、最初に曲を聴いた時はどんな印象でしたか?
藤本「すぐイメージが出来る時と、そうじゃない時がありますね。でも基本的にはメロディにガンと来るものがあるんで。最初ギターのリフだけ付けていこうってところだけやってると、どうメロディが乗るのかとか思いますけど、そこに音を足して歌うとやっぱりメロディが強いんで、それだけで“いいね”って思いますね。そこからどんどん曲の雰囲気を作っていくとイメージが付いていって」
――アルバムの予想図はあったんですか?
青島「前の音源を出した時から次はアルバムをやりたいと思ってたんですけど、イメージは特に持ってなかったですね。自分達の曲を集めて、そこで出来るイメージのほうが大事だなと思って。最初からコンセプトを決めてやるほど上級者じゃないし、そこまで音楽を知らないと思うんですよ。テーマは“死と喪失”とか(笑)、そういうのはないですね。そこで出来たものがすべて」
――今回そうやって作っていくうちに、見つけたものってなんですかね?
青島「たくさんあるんですけど、どうなんですかね。それじゃ、端から1人ずつ」
堀川「………………」
青島「ちょっと、放送事故起こっちゃうよ(笑)」
堀川「持ってくる曲持ってくる曲がいいんで、そういうところはライヴでも良さを出せるように……」
――12曲みんな良いですもんね。この12曲は厳選してって感じですか?
青島「まぁ、300曲くらいの中から〜(笑)。いや、持ってる曲全部ですね。最後は“足んねぇ、足んねぇ”って言って一生懸命作って。レコーディング前に“11〜12曲は録ろう”って決めてて、自分の中でも12って数字があったんですよ。でも、入れようと思ってた曲を数えてたら13曲あって!!(笑) だから1曲削りました。13曲の中から12曲を抜粋して……」
奥脇「かなり厳選してね(笑)」
――(笑)並びは悩みました? けど、1曲目はもうコレだ!って感じの曲ですよね。
青島「曲順は結構悩みましたね。1曲目はこれだろうって決めてましたけど、1しか決まってなくて……。1、2、3はインパクトというか元気のある感じの曲を、自分達の好きな愛着のある曲が2曲目とかで、だんだんだんだんバンドの芯とか自分達の本当にやりたいことをやった感のある曲を、中盤に入れて。まぁ、……あとは惰性で(笑)」
――そんな〜。でも前半って初めて聴く人にはアピールするところですもんね。
青島「そうですよね。試聴機で聴く時も1曲目から聴きますし」

何かポンって来るのはたぶん一瞬の出来事
――曲を作るパターンとしては、どんな感じが多いですか?
青島「ひたすら時間をかけますね。どんくらい寝ないかってとこです。考える時は考える。“作ろう”と思っても出来ないじゃないですか? 何かポンって来たものがあってからで、それはたぶん一瞬の出来事なんですよ。だからそこからどんだけ寝ないかですね(笑)。最後のほうなんて、まぶたにマッチ刺してやってますよ(笑)」
藤本「何日間か寝てないだけだもんね(笑)。ただ起きてるだけ」
――(笑)詞の内容的にはどんなことを描いて歌ってるんですか?
青島「特にそんなに強いメッセージはあまり用意されてないですよ。洋楽とかでも音が格好良ければ対訳とか見ないんで。対訳見てるよりも、集中して音を聴いてたほうがいいなって思っちゃうから。でも詞を書くのも嫌いじゃないんで、言いたいことは言ってますけどね。メロディに合わせて自分の気持ちをそよ風に乗せて……、あとから乗っけていく感じのほうが歌は聴きやすいんじゃないかなと思うんで」
――洋楽でも、よく歌詞や意味を判らず歌ってることってありますもんね。
青島「中学の時、BOφWYとか“ワイセツなうなじが〜♪”とか大きい声で歌ってましたからね(笑)。別 に歌なんだから恥ずかしいことだとも思わないし。詞がどうのこうのじゃないですよね。詞も楽器の一つっていうか、洋楽育ちの人ってそうだと思うんです」
――曲を作ってる時に、頭の中のイメージでは最終的な完成の音まで鳴ってるんですか?
青島「ある程度のところまでは鳴ってますけど、それぞれ自分が演奏するわけじゃなく演奏する人の色になるんで、そういうのも計算してですね。例えばドラマーの味とか、そういうところまで計算してやれればいいかなと思いますけど、なかなか。まずは自分の考えが先行しちゃいますね」
奥脇「“こういうのはどう?”って流れが上手くいくようなフレーズを聴かせるんですけど、“絶対ドラムはこのオカズで”って言うんで、“あ〜そう?”って聞いて。何回かライヴをやると、結局全部俺のオカズになってますけどね(笑)。結局手癖なんで」
青島「今“あ〜そう?”って言ってますけど、実は“ASS HOLE”って言ってますからね(笑)」
藤本「何だよ、すげぇ仲悪いな〜。そんなひでぇこと言ってたんだ(笑)。悪いなこの人〜」

明るいわけじゃないけど、これはこれでポップなんだな
――レコーディングの雰囲気などは?
青島「結構飛び飛びだったんで、部分部分で録る日が分かれてたんですよ。ドラムとベースは時間なかったんで、仕事って感じで、職人ズボン履いて“やればいいんだろ!?”みたいな感じで(笑)」
奥脇「ハイネックの着てね、チョッキ着て(笑)」
――あははは! 歌入れとか他は順調だったんですか?
青島「雰囲気的にはこんなもんかなって。何日かに分けてまとめて録るのは初めてだったし、アルバム作るのも初めてだったんで、結構こたえましたね、精神的に」
奥脇「え〜? 歌入れとか楽しそうに、スタジオに住んでやってたじゃん!」
青島「レコーディングはもちろん楽しいんだけど、休む間もなく大変だったじゃん! 歌録りの時は泊まって出来る所だったんで、友達呼んで酒飲んで楽しかったんですよ」
――レコーディングが飛び飛びで、気持ち的には大丈夫でした?
青島「今思うと逆に良かったですね。リズムを録って、まだ自分の時間があるからその間録ったのを聴いてまた考えられたり。ギター録っても、歌録りになってもう1音加えたいとか、後からどうしても出てくるものなんで。長い期間があると、録ったものを考え直したり出来るし、いいなと思いました」
――そういう面で利点があるんですね。事件は起きました? 一番ひどかった事件は?
青島「事件は起きっぱなしでしたね。それは誌面 では言えるようなことじゃない(笑)」
――じゃあ、一番面白かった系の事件は?
藤本「puliのレコーディングは、初めからギターとヴォーカルに時間をかけたいなっていうのがあったと思うんです。僕はベースですけど、自分のパートで時間を使うよりは、ギターとか歌で時間を使って録っていったほうが絶対面 白いだろうなって。その間僕は別にギターを弾いたりはしないんですけど、一緒にスタジオにいて出来ていく様が楽しかったですね」
――タイトルの『repaint our dwelling』の意味は、“棲み家”って捉えていいんですかね?
青島「dwelling自体が住宅なんですけど、ハウスとかとは違う貧相な住宅というか。高価じゃない長屋みたいな感じで、上流階級ではない都営アパートみたいなのだと思うんですよ。それが結構自分達に合ってるのかなっていう、被害妄想的な“所詮俺達なんて”っていう(笑)。妙に親近感があるというか。素材はそのままで、それをリペイントしてる“良い貧相な住宅”。それを良く見せようよっていうポジティヴな感じはありますね」
――あぁ〜!! なるほど。元のいいものは残して、さらにリペイントですもんね。
青島「そうですね、……そうっすかね?(笑) 解釈は人に任せちゃってるんで。よく映画とかでもラスト・シーンの解釈が人によって違うのってあるじゃないですか? そういう意味で、自分ではそこまで大きな意味を持たせてないっていうか。あるっちゃあるけど、お任せしますっていうほうがいいかなと」
――今作が完成して、改めて聴いてみた感想ってどうですか?
奥脇「僕がこのバンドに途中から入って、初めと今では自分の中でイメージがガラッと変わったんで、やってみて“このバンドはいいんだな”って感想を持ちましたね。録ったら自分の予測してたものよりさらに完成したものが良くなってましたし」
――ちなみに以前までのイメージはどんなだったんですか?
奥脇「加入する前までは、このバンドは暗くて何か凄く複雑に聴こえたんですよ、展開とか曲自体が。メロディは凄くキャッチーでポップなんだけど、イメージが暗かったというか。今も明るいわけじゃないけど、これはこれでポップなんだなって凄く思いましたね。観てるお客さんは、俺が加入する前のイメージと同じかもしれないですけど」
――なるほど。バンドって常にレコーディングやライヴ・ツアーの繰り返しだと思うんですが、その間も曲を考えてる感じなんですか?
青島「出来れば常にやれればいいですよね。やってはいるんですけど、なかなか(エルヴィス・)コステロが舞い降りてこないんですよね(笑)。この間はポール・ウェラーが来てて“Just take one step”が出来て。ポール・ウェラーとコステロが同時に降りてきたんですよ!」
藤本「“コンバンワ〜”って!?(笑)」
一同「(爆笑)」


★Release Info.

repaint our dwelling

MISLED/3P3B Ltd.
MSLD-1 2,100yen (tax in)
IN STORES NOW

★Live info.
<repaint our dwelling TOUR>
11月27日(土)下北沢SHELTER
w/ COMEBACK MY DAUGHTERS / SLIME BALL
OPEN 18:30 / START 19:00
PRICE: advance-2,000yen / door-2,300yen(共にDRINK代別)
【info.】shimokitazawa SHELTER:03-3466-7430

<repaint our dwelling TOUR>
11月6日(土)八王子RIPS/11月19日(金)名古屋HUCK FINN/11月20日(土)十三FANDANGO <OTHER LIVE SCHEDULE> 10月17日(日)大阪 LIVE SQUARE 2nd LINE/10月18日(月)名古屋 APOLLO THEATER

3P3B Ltd. WEB SITE http://www.3p3b.co.jp/

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