今年の4月でフラワーカンパニーズは結成15周年! ということだったんですが、6月に行われたワンマンでのMC“もう15周年って言うのはやめる” という言葉もあったように、記念に囚われることなく進み続けるフラカン。ツアーに次ぐツアーの中で生まれたニュー・アルバム『世田谷夜明け前』という傑 作も出来上がったばかりの彼らに、(まだ10月ですが)今年の5大ニュースを挙げて頂きました。今年だけでもかなり仰天なエピソードの数々が! (interview:和田富士子)

1. 8月27日 クラブチッタ流血ライブ

マエカワ「まずは、なんと言っても8月27日のチッタの流血ライブでしょ」
鈴木「それさえも忘れてたよ、俺」
──昨日のことは、去年のことですね(笑)。流血、見た目が相当すごかったと伺ってますが。
マエカワ「強烈だったよ。お客さんの引き方とか、あれが当たり前だもん。“大丈夫、大丈夫、痛くないから”ってあんな顔で言われても……」
鈴木「“血が出てるってことは大丈夫だから”って言ってんだけど、引きまくってる(笑)」
竹安「血がね、ダラーッていうよりはプシュって吹き出してね」
──うわー……。
小西「この歳になると誰かが怪我をして血が出るっていうのを見ることがなかなかないから。すごい久しぶりに血を見た感じ」
マエカワ「フラカン15年の歴史で救急車に運ばれたのは、大阪のイベントの時に俺がステージから落ちたのと、これで2回目。大阪も本番だったけど怪我し ているのを見たのは裏方の人とかだけで。でも、今回は舞台の上だし、お客さんが見てるじゃない。ライブ中になんか血が出とったから、これけいくんだなと 思って演奏中見に行ったら目の上がぱっくり三日月に割れておったから、うわ厳しいなって思って」
──でもライブは最後までやったんですよね?
マエカワ「やったよ。もう苦笑いだけど。まぁ、ほんとに無理だと思ったらもちろん辞めとったけど」
鈴木「誰かスタッフとか止めに来たら辞めてたと思うけど、誰も何も言わないし、横で笑っているしさ(苦笑)。“あ、じゃこれはこのまま続行するんだな” と思ってやったんだけど」
──さすが(笑)。でも、なんか生きてるって感じがしていいですね。ちなみに曲は何だったんですか?
マエカワ「『深夜高速』。“♪生きててよかった”だよ。上手く出来とるでしょ?」
鈴木「サビの途中で切れて。演出みたいでしょ?」
マエカワ「演出だと思った人もおるんだよ。そんなベタな事はさすがに俺らもやらんし」
──いやいや。でも無事で何よりでした。

2.4月29日 “鈴木圭介生誕35周年記念”ライブ
マエカワ「4月29日の名古屋のライブ“鈴木圭介生誕35周年記念”これはすごかった。もうフジロックのグリーンステージでやってもいいくらい。(うつ みようこ&)YOKOLOCO BANDやって、斉藤(和義)くんやって、俺らやって。で、けいくん・斉藤くん・ようこちゃんっていうのもやって、最後全員でセッションしたの。最後の セッションがほんと素晴らしかった。お客さんの顔も、出演者の顔も、多分最高の顔だったんじゃないかっていう。このままこのバンドで全国ツアー出れたら いいのにっていうくらい」
竹安「人前でやっているというよりステージ上が楽しくてね。演奏しているのを本当に心の底から楽しんだっていう」
マエカワ「もうその道で俺らが思う最高の人なんだよね。ただの友達とかじゃなくて、プレイヤーとかシンガーとしてのさ。だからやっとって楽しいしさ。途 中で一回弾くの辞めたくらい(笑)。人も多いし、音も多いじゃん」
竹安「ツインドラムがあって、キーボードもあって、ようこちゃんがコーラスとって。何しろすごかったよ」
マエカワ「15年やってるけど多分一番いい企画だったと思うよ。いろんな企画やって大成功だって思うのも沢山あったけど、その中でもこれはダントツだね」 鈴木「セッションって今までももちろんノリノリで楽しくやったやつもあれば、実は半分嫌々出たやつもあるし、居づらーい時もあった。でもこの時は久々に セッションで楽しい感じでね。他のメンバーも気を遣わない人だったし。これはすごく楽しかった」 マエカワ「で、たまたま名古屋におったニートビーツのメンバーも最後入ってきたりね」
──盛大なお祭りだったんですね。
竹安「休憩なしで4時間にわたってね」
──4時間!!
鈴木「これがあったから、もう15年気分がないんだよ。出し切っちゃった」
マエカワ「そうだねー。15周年っていうことでは、その前のシェルターと名古屋が15周年の特別 なライブに考えとったから」
鈴木「名古屋っていうのが、ミソだね。15年っていうのがあって名古屋なんだけど、まぁ普通 だったら東京でやるじゃん、これ。これを名古屋でやってるっ ていうところが」 マエカワ「いち地方でやっちゃうっていう。別に名古屋が実家だからっていうそういうことでもなくてね」 鈴木「そういうことを東京だけでやるとは限らない」
マエカワ「常々ね、東京に住んどきながらさ、東京集中は──まぁいいんだけど、もっとね、地方にいろんな楽しいことが散らばった方がいいなって。なかな か行きにくいところもあるけど、でもそういうところにいって、活性化させていった方が発見もあるからね。こんな小っこい街だけど、人が来るんだな、盛り 上がるんだっていうのがあったらやっぱり行った方がいいよね」
3. 15周年記念DVD『フラカン・ビデオ・クリップ集』発売
マエカワ「初めてだね、クリップ集が出たのは。すごい見とったよ。夜中いつもパソコンの前でレコード聴いとるんだけど、飽きてきたら、ちょっと見ようか なと。やっぱり好きな『ああ今日も空振り』だよね」
──あぁ(笑)。って笑って返事しちゃいけないですよね。
竹安「いやいや笑ってもらわないと」
マエカワ「やっぱあれ見たら、自分らのバンドのことを深いなぁと思うよ。別 に深いのがいいかは知らんけど」
竹安「『夜明け』とかはかっこいいのに、その振り幅がすげえなって」
マエカワ「結構やりたかったことだったり、時々やりすぎたこともあるんだよね(笑)。でも、今見るとすごいなって、それだけしか感想がないわけ」
──みなさんはいかがですか?
小西「時間が経ったからね、素直に面 白いと思っているんだけど。でも、『空振り』は終わってすぐ後悔しとったような気がする」
鈴木「これは後悔したよ」
小西「でもさ、メイクされてた時はこうメガネ掛けたりとか……」
鈴木「やっている最中はノッてたんだよ。終わった瞬間にもう、ガクっと来た」
小西「あれ2本撮ったじゃん。多分疲れとるのもあって」
マエカワ「そうそう、午前中に『冬のにおい』を撮って」
小西「だから意識が半分飛んでいくところで、だんだんすごく面 白くなって。でも今だから余計面白い、心から笑える」
──では、一番お気に入りのPVをお一つずつ挙げてください。
マエカワ「『NUDE CORE ROCK'N ROLL』が一番いいんだけど、PV集に入っとるなら懐かしさも踏まえて俺が一番面 白く見れたのは『最高の夏』。あの当時は全然好きじゃなかったんだけ ど、あの忙しい中、暑い中でよく撮ったなっていう思い出も含めて。みんな私服着て自然な感じでやっとるから、それがよかったなぁ」
竹安「俺は『ヒコーキ雲』。あれは2日かけてやっていたからね。ロケ現場も千葉の方にいったり、多摩川に行ったり。その合間の天気が気持ちよかったの と、規模が大きいからスタッフもものすごいいるわけで。その時に“なんかエライことになってきたな”っていう責任感っていうか重大さがあって。そういう 意味もあってすごい印象深い」
小西「やっぱりライブのビデオが好きだから最近のになるんだけど、でもこの先も絶対ないだろうってところで『LOVE ME DO』のスーツ姿。ライトショーみたいな絵も綺麗だったけど、その当時って衣装を用意してもらっていたから、その中でも着れてよかったなと」
鈴木「俺は『東京タワー』。新しいのがいいからね。『深夜高速』はまだあんまり見ていないんで」
──いや、あのDVDはほんといろんな意味でかなり楽しめますね。
マエカワ「あれはトクだよ。ほんと宝物になるよ。95年から03年までの人間の移り変わりもね。私服着てる時も結構あるけど、人に着せられたりというの もあって。どうやって成長したのかっていうのも、退化(笑)っていうのもよく見えるよ」
4. 『深夜高速』、会場限定から店頭販売へ
マエカワ「これが評判良くて、15年目にして自信が(笑)」
──いいリアクション来てますね。
マエカワ「売れる売れないは別 にしても、ライブでやったときのリアクションとか、人から聞く感想とか。新しいものがいいっていうのを取っ払っても、今ま でなかった感じだよね」
──単純に『東京タワー』が出たときは、どのセットリストの中でも『東京タワー』が一番輝いて聴こえたんですよ。でも『深夜高速』が出てからは『深夜高 速』が一番よく聴こえる。それがフラカンのすごいところだなって個人的には思ってて。
マエカワ「そうなんだよ。いいところに気が付いたね(笑)。トラッシュ・レコードから出した『真赤な太陽』『発熱の男』『東京タワー』『深夜高速』っ て、出た時に自分らの押したい曲が一番リアクションいいんだよ。それがズドンとストライクにいくっていうのは嬉しいよね」
──ライブ見てて、別に他の曲が響かないとかそういうワケじゃなくて。
マエカワ「昔の曲もいいのはもちろんあるんだけど、最近の方が単純にいい曲なんだよ。もちろんいい演奏が出来るようになったのもあるだろうし、前より説 得力がある」
──CDもいいんですけど、ライブだとまた印象が違うんですよね。
竹安「今はテンポが速いからライブ向きとかじゃなくて、スローテンポでもライブ映えする曲が何曲も続いているしね。そういう意味では今一番いい時期かも」
小西「例えば、ライブで10曲あるうちの『深夜高速』だけに力を入れようとかそんな風にはならなくて。ただやっぱりダイレクトに伝わってくる評判がいい と、もっとよくしてやろうと絶対に思うわけで。でもそれはすごく意識的にやっていることではないと思うけど」
鈴木「これね、俺は単純に自分の中では一番新しいやつが好きだから、『深夜高速』の後にできた曲の方が好きなんだよ。だから今はアルバムの中の曲が一番 好きだね。でもそういうのがずっと続けばいいなぁって。“一番新しいのが一番好き”。時間が経つと、新しいとかなくなってくるから、冷静に選べばもしか したら古い曲が一番好きっていう可能性もあるんだけど、現時点では一番新しいのが作った気持ちも高揚している──それがあるうちはまだいいんじゃないか な? アルバム作った時でさえも前の曲が好きっていうのは、そうなるとちょっとやだなって感じがするな。なんかもうちょっと先を見ていたいね」
──あぁ、確かにそうかも知れないですね。
鈴木「あと、どっちかっていうと『深夜高速』は初めての人にぱっと聴きの即効力があったっていうのが嬉しいかも。今まで聴いてきたお客さんがっていうよ りも先に初めての人の方が食いつきが良くて。それで、もしかしてこの曲評判いいのかなって徐々に上がっていったから」
マエカワ「イベントでの評判もよかったし、イベントライブをたくさんやるようになったからかも知れないし。いろんなことが相乗効果 で」
鈴木「今までの人はもちろん聴いていて欲しいんだけどさ、新しいところにいってる感じっていうのがワクワクするんじゃない? そういう人たちに伝わった ら……まだ伝わるのかと思うと嬉しい」
5.ニューアルバム『世田谷夜明け前』堂々完成

マエカワ「これが全13曲だけど、45分台という。昔から、曲が沢山入っとっても短く収められたらいいなと思っとったことがやっと現実に出来たかな。別 に曲をわざと短くしたワケでもないし、短い曲ばっかり選んだワケでもないんだけど、結果 的にこうなったのがちょっと嬉しいな」
──新しいアルバムが出来てどうでしたか?
鈴木「いいですよ、すごく。アルバムの出来もそうなんだけど、何しろ、時間がない中でやり遂げたっていう。これだけの曲を録った中で一番短い期間で仕上 げなくちゃならないっていう事情もあったので」
──フラカンは曲があるからアルバムにしようじゃなくて、ここにアルバムを出すから曲を作るんですよね。
鈴木「そうじゃないと曲作らないよ」
マエカワ「俺らは1st2nd以外は全部そうじゃないかな」
鈴木「普段から思いついたり、いい曲出来たなっていうことはまずないから、俺は。形が見えた上で、よし次のアルバムはこうだっていろいろ考えてやるタイ プ。詞とかも普段からいろいろ考えて書き留めるとかないから」
マエカワ「鈴木の性質上、新しいもの好きっていうのがあるから、例えば半年かけて100曲作っても、残るのが後半の20曲になっちゃうんだよ。そうなる と前にすごくいいのがあったとしても、それが残らん場合があって。だから最近は短い期間でドンって作って、そこでいいやつをって」
──だから新鮮な感じでリリースされるんですね。
鈴木「どんどん曲を作る人もいれば、その期間だけ集中して──普段は閉じていて、吐き出し口がないわけ。普段吐き出すことってライブくらいでしょ。ライ ブのMCとちょっとしたコラムとかそれくらいしか考えることないから、あとはもう受け入れるだけで。テレビ見たり映画見たり、音楽聴いたり。全部情報を 受け入れて──それでなにげに遊んでいるような毎日の中でかき回されてて熟成されたものが、アルバムを作らなきゃっていうときにぱっとひらいて。これが 多分俺の一番いいサイクル」
──それが一番やりやすかったりするっていう。
マエカワ「そうだね、特に最近自由度が余計増したじゃんね。自分らでやっとるから、ライブやりてぇなって言うときは新曲のことも考えずにとにかくライブ だけやったり。今のこういう作り方がいいのかもしれない」
──今回のアルバムはトータル性っていうより1曲1曲立っている感じがして。
マエカワ「そうそう、60年代、80年代のアメリカとかイギリスのシングル全盛期のそれを集めたアルバムのような感じがするんだよ。そういう意味ではカ ラフルな感じがするんだよね」
──聴いてて聴きやすいんですけど、明るいんですけど──めちゃくちゃ暗いですよね?
鈴木「どっちだよ(笑)」
──いや、あの明るくて聴きやすいって思うんですけど、何度も聴いていくと暗いかもって。
鈴木「そうか?」
マエカワ「やっぱり暗いんだよ、鈴木っていう人間が(笑)。あれだよね、暗い明るいっていうのがいい悪いでもないんだけど、表裏一体しとるよね。そのへ ん鈴木圭介節が炸裂しているよね」
鈴木「ぱっと聴きこれ、ポップじゃない。ポップって言葉もなんだけどさ(笑)」
──ええ、ポップな印象ありますよね。で、歌詞をいただいたので見ながら聴いていたら、あぁ〜と思って。
マエカワ「やっぱりって(笑)」
鈴木「まぁ、それはしょうがないよね」
──いやいや、でも、それも魅力ですから(笑)。

──と、5大ニュースで進めてきましたが、まだ今年もありますので、残り2ヶ月についても少し。
マエカワ「もちろんシェルター2daysでこの5大ニュースを塗り替えるライブだよね。ここの2daysは新旧多いめちゃくちゃ久しぶりにやる曲もある し、新しい曲もやるから。2daysにするっていうのはやっぱりやりたいことが多いから。シェルターは楽しみです」
──シェルター後の予定はいかがですか?
マエカワ「残り2ヶ月はシェルターから始まってのツアーしかないからね」 鈴木「レコーディング終わったから、この新曲をどう転がしていくか、それが楽しみだね」
マエカワ「そうだね。やっぱり今聴いてみて、ライブではここをこうしようとか自分でもあるし」
鈴木「まだ生まれたてだから、立ってないからさ。それをちょっとずつこう一人立ちさせていかなくちゃ行けないわけじゃない? そうするとこう、曲の特性 がそこでやっと分かるっていう」
マエカワ「お客さんの反応もあわせてね」
鈴木「ライブでこいつは輝くんだなとか」
マエカワ「いまいちだなとか(笑)」
──この子供達をどうやって育てていくかっていう。
マエカワ「それが楽しみの一つだね」
鈴木「人前でこいつはきちっとやれるやつなんだなって」
──楽しみですね。では残り2ヶ月と来年3月までが15周年ということではありますが……
鈴木「15周年(笑)。長いなぁ〜」
マエカワ「それよりも来年はね、一応、フラカン全員“年男”っていうのを売ろうかな」
鈴木「同い年だから」
──いいですね、ネタが尽きなくて(笑)。
マエカワ「来年はそれで売ろうと思うから、それも書いておいて(笑)」
──はい。来年は年男として。
マエカワ「なんか祭りがあると思うから。酉繋がりで」


■Release info.
フラワーカンパニーズ
『世田谷夜明け前』
TXCA-12 / 3,000yen(tax in)
2004.11.25 Release


■Live info.
10月24日(日)・25日(月)
下北沢SHELTER
OPEN 19:00/START 19:30
PRICE:advance-3,000yen / door-未定(共にDRINK代別)
※24日・25日通し券 5,500yen(共にDRINK代別)
【info.】下北沢SHELTER : 03-3466-7430

10月12日(火)仙台クラブジャンクボックス/10月14日(木)札幌ベッシーホール/10月16日(土)青森サンシャイン/10月17日(日)秋田 DRAGON DINNER/10月18日(月)盛岡CLUB CHANGE/10月30日(土)大阪十三ファンダンゴ
【フラワーカンパニーズ OFFICIAL WEB SITE】 http://www.flowercompanyz.com/


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