国境を超えた“SESSION”を経て、更なる世界標準へ──!! 
 NICOTINEが、約2年振りとなるオリジナル・フル・アルバム『SESSION』を完成させた。アメリカ・パンク・シーンの重要バンド“THE VANDALS”のギタリスト、ウォーレン・フィッツジェラルドをプロデュースに起用、LAでレコーディングされた本作はまさに世界標準、バカみたいな言い方だが、“うわ、これって洋楽じゃん! アメリカの音じゃん!”と叫びたくなるような仕上がり。三線を取り入れた「太陽〈ティダ〉の樹の下で〜THE TREE OF THE SUN」、先行シングルとしてリリースされた「PREJUDICE」に加え、「REMEMBER」「ENJOY PUNK ROCK」「PUNK ROCK RADIO」などの人気曲を収録、さらに初回盤は彼らの全PVを収録したDVD付き。めちゃくちゃゴージャスなこのアイテムによって、NICOTINEはさらに活動のペースをスピード・アップさせることになりそうだ。パンク・ロックへの限りない愛と質の高いサウンド・メイキングは、まさに全ロック・ファン必聴!(interview:森 朋之)

LAで痛感したレコーディング作業の差異
──今回のアルバムはLAでレコーディングされたということですが。
YASU(Gt)「そうですね。4月と5月の2ヶ月、アメリカに行ってました」
──そもそも向こうで録ろうと思ったのは、どうしてですか?
HOWIE(Vo)「理由はふたつあって。ひとつは、ホントにそういう音…NICOTINEとしての作品をアメリカの音で録りたいってこと。もうひとつは、向こうのやり方を盗みたいってことですね。過去に1回、アメリカ録音してるんだけど、その時に比べて機材とかも進歩してるからね」
──機材とかも違うんですか?
HOWIE「違いますね。もちろん同じものもあるけど。ヤマハの10M(ヤマハのスピーカーNS-10M)もあるしね。ヤマハの10Mって、環境問題で生産中止になって(註:材料の特殊パルプ材料が環境問題で入手困難になった)、日本ではヤフオクでも手に入らないんですよ。機材だけじゃなくて、録音の方法も日本とはかなり違うし」
YASU「1日スタジオに居るだけで、凄く勉強になるよね」
──なるほど。でも、ホントに音がいいですよね、このアルバム。「うわぁ、外国のバンドの音だぁ!」って思いました。なんかバカみたいな感想ですが。
YASU「(笑)でも、音はいいよね。向こうでレコーディングして良かったな、と」
HOWIE「スタッフが全員あっちの人だから。たとえばドラムのチューナーも、GREEN DAYとかBLINK182とかやってる人だから、当然、そういう音にチューニングされるし」
NAOKI(Dr)「新たな発見がたくさんありましたね。“こういうチューニングにすれば、こういう音がするんだ!”っていう。向こうの人のやり方を学びつつ、今度は自分達でも工夫しながら取り入れて。チューニングだけじゃなくて、たとえば、スネアの上に紙を1枚置いて…」
HOWIE「おっと、それ以上は極秘だね(笑)」
NAOKI「(笑)じゃあ、ここまでで。でも、ホントにちょっとしたことで、大きく変わるんですよ。凄い微妙なことなんですけどね」
HOWIE「それが知りたい人は、SKY RECORDSまでデモ・テープを送って下さい。ウチでアルバムを作れることになれば、その技術が判ります」
YASU「ハハハハハ!」
NAOKI「でも、ホントに勉強になりましたね。マイクの立て方にしても…」
HOWIE「ただ、普通のレコーディングしかやってない人は、受け入れられないかもしれない。日本だと“絶対やっちゃダメ”ってこともやってるから。それをバンドが受け入れられないと、向こうでレコーディングしても、結局は日本の音になっちゃうんだよね。それほど革新的だと思うよ、アメリカのレコーディングは。タムのなかに水を溜めて、パンパンにしてから叩く……って、そんなことはやらないけど(笑)、それくらい、“え、そんなことやっちゃうの?”ってことばかりだから」
──今までのアルバムの音には、満足してなかった?
HOWIE「や、それはないですね。出来上がった時は満足してるんだけど、すぐに“次は、こういう音で録りたい”っていうのが出てくるんですよ。『SESSION』の音にしても、もう既に満足はしてないです。それはナゼかというと、向こうで学んだことを自分達だけでやってみて、できちゃったから。自分達ではできない、っていうのがいいんですよね。できちゃうと、もう面 白みがないっていうか」 初めて外部プロデューサーを起用した意図 ──なるほど。今回は、初めて外部のプロデューサー(ウォーレン・フィッツジェラルド/THE VANDALSのギタリスト、プロデューサーとして活躍中)を起用していますね。これは、演奏に専念したいと思ったから?
YASU「うん、それもありますね」
HOWIE「あとは、プロデューサーを立てることで、自分達の実力以上のものが出せるんじゃないかっていう期待、ですよね。ホントに期待以上のものができたので、満足してます」
YASU「なんかね、客観的に聴けるんですよ、今回のアルバム。他のバンドを聴いてるような感じの曲もあるし。エンジニアとかプロデューサーに任せた部分が大きかったからだと思うんですけど」 HOWIE「次の作品からは…っていうか、既にそうなってるけど、プロデューサー選びから始めることになると思う。自分達の好きな音で録ってくれるプロデューサーを選んで」
YASU「俺達は楽曲を用意するだけ。レコーディングもサクッと終わらせて、あとはプロデューサーのマジックで作品にしてもらうっていうか」
──それはもう、洋楽の作り方ですよね。
HOWIE「うん。レコーディングだけやって帰ってきて、向こうでTD(トラックダウン)とかやってるうちに、こっちで新しい曲を作る。そういうのがいいなって」
──恰好いいですね、そのやり方。今回のプロデューサーは、どういう経緯で起用することになったんですか?
YASU「もともと知り合いだったっていうか、“WARPED TOUR”に出た時、カナダでVANDALSが出てて。前回の(アルバム)『SCHOOL OF LIBERTY』をベースのジョーに送ったら、凄く気に入ってくれたんだよね」
HOWIE「で、ジョーに“プロデューサーを紹介してほしい”って言ったら、何人か候補を挙げてくれたんだけど、そのなかにウォーレンがいて」
──プロデューサーとのやり取りは、どんな感じだったんですか?
HOWIE「やり取りなんかないですよ。挨拶くらいかな。おはよーとか(笑)。なんていうか…彼の頭のなかには、作品のゴールがしっかり設定されてるんですよ。レコーディングしてる時には(その曲がどういう仕上がりになるかは)全然判らないんだけど、出来上がった時に、“あー、なるほど”って思う。だから最初の2〜3日は、“こっちも言いたいことは言ったほうがいいよな”って思ってたんだけど、そのうちに“今日は何を食べようかな”とか、そういうことばっかり考えてました(笑)。心配してもしょうがない、最終的にはカッコ良くなるんだから、っていう」 FULL(Ba)「こっちはただ、演奏するだけ」
YASU「あとは機材の写真をこっそり撮ったり(笑)」
HOWIE「感覚的には、映画作りに近いのかな。今撮ってるシーンが、最終的にどうなるかは判んないじゃないですか、出演者って。でも、全部撮り終わって、つながってみたら、“あー、なるほど”って思う。そういう感じですね。エディットも含めて、僕らがいないところで進んでたから」 YASU「最初は不安もあったけど、アメリカはやっぱりロックの本場だから。ラジオから普通 に音の太いロックが流れてるからね。それと同じクオリティのロックが作りたいって思うよ、やっぱり。日本に帰ってきて、こっちで流行ってるものを聴くと、なんか違和感があるんだよね。あっちで、低音がガーンと出てる音の太いロックを聴いてると」

多彩なゲストが友情参加した豪華な“SESSION”
──今回はゲスト陣も豪華ですよね。VANDALSを始め、NEW FOUND GLORY、GUTTERMOUTH、HOME GROWN、DEATH BY STEREOのメンバーが参加してて。
HOWIE「ゲスト・ミュージシャンは最初から予定してたわけではなくて、YASUが友達のミュージシャンと電話で話してるうちに“明日、来るって言ってるよ”“あ、判った。オッケー”って感じで」
──曲に関しては、どんな反応なんですか?
YASU「“いい”って言ってくれましたね。ウォーレンがさ、必ず『ティダ』(『太陽〈ティダ〉の樹の下で〜THE TREE OF THE SUN』)を聴かせるんだよね」
HOWIE「“これ、面白いんだよ”って言いながら」
YASU「そう、さも自分が考えたかのように(笑)」
HOWIE「でも、『PREJUDICE』が一番反応あったかな。“やられた!”っていうか、“この曲は、どうやって書いたんだ?”とか訊かれて」 NAOKI「あと、どんどんアイデアを出してくるんですよ。“ここにこんなコーラスを入れようよ”とか」
──NICOTINEの曲が好きなんでしょうね、かなり。
YASU「っていうか、友達だから(笑)。でも、パンク・バンド同士だったら、お互いにそうするのが当たり前だし」
HOWIE「こっちに来たら面倒みてやろう、っていうのがあったみたい。車もわざわざ日本車なんだよね。“ミツビシ〜!”とか“トヨタ!”とか言いながら、日本車で乗り付けてたから」
──なるほど。まさに“SESSION”って感じですね。
HOWIE「このタイトルはね、マスタリングのスタジオで、お腹が痛くてトイレに行った時に思い浮かびました。スタジオって結構警備が厳重なんだけど、スタジオに入ろうとすると、必ず“何のセッション?”って訊かれるんですよ。あっちって、“レコーディング”って言葉は使わないんですよね。みんな“セッション”って言ってて」
──日本で言う“セッション”とは、意味合いが違う?
YASU「日本で“セッション”って言うと、“共演”って感じになるのかな。向こうはね、人が集まって何かをやると、わりと何でも“セッション”って言うんですよ。こういう取材とかも“セッション”って言うんじゃないかな」
HOWIE「PVの撮影も“セッション”だし」
YASU「で、今回のアルバムはホントにいろんな人が参加してるじゃないですか。ウォーレンはもちろん、たくさん友達が来てくれて。だから、“セッション”って言葉は合うんじゃない? って。ふさわしいタイトルだと思いますよ。今までみたいに自分達だけでやってたら、“セッション”って感じじゃないから」

先入観(PREJUDICE)なしに聴いてほしい
──楽曲的にも、新しい要素が感じられますよね。三線が入った“ティダ”もそうだけど、ハードロック・テイストの曲や、バラードっぽい曲もあったり。
HOWIE「それは結構言われますね。第三者が聴くと、“広がりがあるな”って思うみたい。本人達は、勢いのあるパンク・アルバムができたって思ってるんだけど」
──あ、そうなんですか。僕は個人的に「MY SONG」って曲がグッときました。
YASU「お! 歌詞がいいでしょ?」
──いいっすね。パンク・ロックが好きで、パンク・ロックと共に生きてきたNICOTINEの10年が凝縮されてるような…。 HOWIE「…これねぇ、船橋競馬場で書いたんですよ」
全員「ハハハハハ!」
HOWIE「競馬が終わって、馬が調教されてるところを見てたんです。夜中っていうか、朝の3時とか4時くらいにガンガン走らされてて。それを見てて、“こういう日の目を見ないところでトレーニングして、やっと晴れ舞台に立てる。ウチらもそうなのかもなぁ”とか思って」
NAOKI「まぁ、馬みたいなもんかもしれないですね。耐えて耐えて、勝ち抜いていくわけでしょ、バンドも?」
HOWIE「いくら素質があっても、下積みは必要だし、練習もしなくちゃいけないし」
──英語も決して難しくないし、歌詞を聴いて「いいな」って感じる人も増えそうですよね。
HOWIE「でもね、英語が判んない人は、あんまりグッとこないみたい。“もっと速い曲やれ!”とかって人も多いから(笑)。英語の歌詞ってだけで、“判んない”って思っちゃうみたいですね。先入観…“PREJUDICE”があるからダメなんじゃない? もちろん、(歌詞を)聴いてもらえれば嬉しいし、歌詞が判るように作ってるんだけど…“ちゃんと読んでくれ!”っていうのは押し付けだしね。まぁ、それぞれ楽しんでくれればいいですよ。俺達だって、普通 にプールとかで掛かってる音楽に対しては、歌詞の内容までは聴いてないから。“いい感じだねぇ、気持ちいいねぇ”ってだけで。もともとTPOに合ってるほうが好きなんですよ、音楽って。夏祭りだと、やっぱり和太鼓だし。いくらパンク・ロックが好きでも、“スキー場では、広瀬香美でしょう!”とか」
──(笑)でも、しつこいようですけど、「MY SONG」はNICOTINEの新しい代表曲だと思いました。“バンドを結成→いきなり渡米”ってところから始まって、自力で現在の状況を作ってきたNICOTINEにしかやれない曲だと思うし。
YASU「うん、そうですね」

これがメジャー・ファースト・アルバムって感覚もある
HOWIE「そういえば、出たことあるんですよ、新宿LOFTのオーディション」
YASU「出たね。もう10年くらい前になるのかな?」
HOWIE「当時のLOFTは、オーディションではなかなかオッケー(合格)を出さなかったみたい。でも、オーディションの時に頑張ってお客さんを呼んだら、“意外といいね!”って言われて。だけど、すぐにオッケーじゃないんだなっていうのが判りましたけどね。“毎回、これくらい(客を)集めないとダメ”って言われましたから(笑)。でも、結構好きだったんですよ、オーディション。オーディション雑誌とか買ってたし」
YASU「インディー・レーベルってもんがなかったからね、当時。英語(の歌詞)でやっていくのは難しいだろうなって自分達でも思ってたんだけど、やっぱりCDは出したいじゃない? で、メジャーのレコード会社にテープを送ったりしましたね」
HOWIE「CDを出したいと思ったら、メジャー・デビューを目指すしかないって感じだったよね。アマチュアかプロか、って世界。ハイスタが出てくるまでは、完全にそうでしたね。でも、オーディションを受けて合格して、CDを出す直前になって、“やっぱり日本語じゃなくちゃダメ”って言われたり。あと、“この曲はいいから、全部こういうタイプの曲にしてくれ”とか」
──そんなこと言われちゃうんですか。
YASU「今は違うと思いますけどね。で、まぁ、“出してくれるところがないんだったら、自分達でやろう!”ってことになったんですけど」
──「PREJUDICE」には“みんなが俺の悪口を言うんだ”って歌詞がありますが、ここには当時の恨みなんかも…(笑)。 YASU「いやいや、その時のことは全然何とも思ってないですよ(笑)。今はもう、どんどんポジティヴに進んでいかないといけない時なんで。あんまり昔を振り返ってもしょうがないし」
──失礼しました。『SESSION』の初回盤にはDVDが付いてますが…。
YASU「これは凄いですよ!」
──NICOTINEの代表曲のPVが14曲に加え、LAレコーディングの様子も収録されていて。
HOWIE「だから今回のアルバムは30曲入りですね、実質的に。ちなみに『FITNESS DAYZ』には“なかやまきんに君”が出てます。彼もかなりアメリカンですよ。“出てほしいんだけど”って直接電話したら、その場で“オッケーです!”って言ってくれたから」
YASU「ライヴにも出てくれたよね。結構テレビに出るようになってから携帯にかけたら、通 じなかったけど(笑)」
──(笑)まぁ、“なかやまきんに君”君の話はさておき…。
HOWIE「だから、とにかく他のバンドがやらないことをやりたいんですよね」
YASU「このDVDの企画はなかなか実現できないよ。レコード会社をまたいだ企画なので」
HOWIE「文句を言う人もいるんだろうけどね。“ライヴ映像をもっと入れろ”とか(笑)。でも考えてみたら、やりたいことは全部実現できてるな、今回。アメリカでレコーディングできたし、先行シングルも出せたし、DVDも付けられたし」
──アルバムも最近のベスト的な選曲で、“また、ここから新しいNICOTINEが始まる”って感じですね。
YASU「うん、今までのはインディーで、これがメジャー・ファースト・アルバムって感覚もあって。これからまた、面 白いことがいろいろできそうだなって思ってます」
──年内には新しいツアーもスタート。
YASU「秋には学園祭に出つつ、ツアーは12月4日、千葉LOOKから。4月までで、180本くらい?」
NAOKI「いやいや、そんなに多くないでしょう」
YASU「1日2回やらないとダメですね、モーニング娘。みたいに(笑)。まぁ、50本くらいかな? 『SESSION』の初回盤を買って、ツアーに来て下さい」 HOWIE「ツアーのなかでもいろいろ新しいことを考えてるので。絶対楽しいと思いますよ!」


Release info.

SESSION

SKY RECORDS/WARNER MUSIC JAPAN
【初回限定盤】WPZL-30023〜4 / 3,360yen (tax in)
【通常盤】WPCL-10128 / 2,625yen (tax in)
2004.10.06 DROP!!
*初回限定盤は全ビデオクリップ14曲完全収録+LAレコーディング風景オフショットが収録されたDVD『V-SESSION』とのスペシャル・パッケージ!

PREJUDICE
【NEW MAXI SINGLE】

SKY RECORDS/WARNER MUSIC JAPAN
WPCL-70022 1,050yen (tax in) / IN STORES NOW


Live info.
<NICOTINE SESSION TOUR with DONUT MAN>
12月4日(土)千葉LIVE SPOT LOOK/12月5日(日)郡山HIP SHOT/12月7日(火)横浜CLUB 24/12月9日(木)熊谷VOGUE/12月11日(土)甲府KAZOO HALL/12月12日(日)静岡SUNASH/and more... 
*このツアーは4月まで続きます!!
【info.】SKY RECORDS:047-460-4051

<OTHER LIVE SCHEDULE>
10月15日(金)CLUB CITTA' 川崎/10月31日(日)工学院大学八王子キャンパス学園祭/11月6日(土)浜大津B♭/11月13日(土)小倉Bagoo/11月28日(日)沖縄・宜野湾 HUMAN STAGE『ヘッドロックナイト VOL.21』

NICOTINE OFFICIAL WEB SITE http://www.skyrecords.co.jp/nicotine/


LOFT PROJECTトップへ戻る←→ROOF TOPトップへ戻る