バンドの在り方を再確認した重要な到達点  驚きの作品が届いた。ZEPPET STOREの7th Album『BLACK BERRY BED』。結成10年を迎え、彼らに何があったのか…原点である全編英語詞による今作、無駄 なものを一切削ぎ落としたシンプルな楽曲群が収められている。決して派手なわけではない。じわじわと身体に染みこみ、気が付けば浸透しきっている。まさに現在のロック・シーンの中で唯一無二の存在に到達したと言える『BLACK BERRY BED』、この力作に込められたZEPPET STOREの真実に迫る。(interview:加藤恵美子)

キーワードは“自分を見直す素直さ”
──今作、全編英語詞ということで初期ゼペットを彷彿とさせますね。作り始める前の心境と作品が出来上がった今の心境に何か違いはありますか。
木村世治(vo, g)「原点回帰っていう意見はよくもらうんですけど、実は前作『SLICK』のほうがより原点回帰っぽかったんですよ。前の事務所から独立して、自分達でゼロからやり始めたっていうアルバムだったので、メンバーの意思の疎通 を図る為に話し合いも凄く増えたし、スタジオを決めるのも、エンジニアを決めるのも、弁当の手配をするのも、何から何までメンバーだけでやったんです。今作はその延長の中で作ったので、その流れで原点回帰第2弾みたいな感じですね(笑)。手応えとしては前作ともちょっと違う…音のテイストとかは大して変わっていないんですけど、聴こえ方は大分違うなっていうのはありましたね」
──あえて英語詞にしようとか、メンバー内で事前に打ち合わせをしたんですか。
木村「そうですね。前作に英語の曲を3曲入れた時の手応えと、ライヴでの盛り上がり方が大きかったんで。ウチのバンドは英語詞のほうが盛り上がるんですよ。それもありつつ、(全編英語詞は)久し振りっていうのが一番デカイかな」
──確かに新鮮で、且つ自然な感じがしました。
木村「素直な今の気持ちで曲を作ってみたら英語のほうがしっくりきた、みたいな感じですね。実は単純な発想なんですよ(笑)」
中村雄一(b)「日本語に関してはある意味、バンドにとってチャレンジだったんですよ。メンバー全員が洋楽を聴いて育ってきた連中なんで、英語のほうが実はすんなり馴染むんです。日本語でも恰好いいロックを作りたいっていうのはあって、でも裏を返せばどこかで無理をしていたのかもしれませんね。そう考えると、今作は最初に作ろうと思ったイメージをそのまんま完成形にすることができましたね」
── 一番、無理のない形ですよね。
木村「日本語の時には多少…ムキにもなっていましたからね。英語で『恰好いい』って言われていたのに、日本語になった途端『ちょっと違う』っていう声もありましたから。そこをどう打破して恰好いいものにするかが、作品を作るごとにテーマだったりして。詞を伝える重要性っていうのが判ってきた時だったので余計に。そんな状況だったので、どっちも大事にしようとして、カップリングの曲では英語でやってみたりとかしていたんですけど。まぁ、そんなこんなで久し振りに英語でやりましょうって感じです(笑)」
──まさに自然な流れですね。
木村「そう、メンバーの誰かがポロっと言ったんだよね。『今回、英語でやってみない?』って。で、『俺も実はそう思ってたんだよ』みたいな。そういうのがあって。事務所も新しく入って環境も変わるし、いいタイミングかなって」
──アルバム一枚を通して、すんなりと自分の中に入ってきたんですよ。トータルの完成度が高くて、でも難しいことを考えなくていいっていうか。
木村「リピートしやすい、何度も聴けるアルバムだとは思っているんですけどね」
中村「それは多分、自分達がそういうふうに海外の音楽を聴いてきたからだと思うんですよ。当然ネイティヴじゃないし、カッコいいと思っている曲の詞を100%理解しているかっていうとそうじゃない。ただ聴いた感じのニュアンスだったり、雰囲気だったりが『恰好いい』って素直になりますね。それを今回、自分達の作品で作れたっていうのは嬉しいことでしたね」
木村「アナログの時代の…昔の音楽の聴き方ですよね。例えば、4曲目を聴きたいんだけど、でもアルバムの頭から聴かないと何だか気持ち悪い、みたいな。それでやっとB面 をひっくり返して『来た来た!』みたいな(笑)」

自分達ができることをやるしかない
──ああ、その聴きたい曲に至るまでのダイナミズムみたいなものってありますよね。それと同じ匂いを今作から感じました。
木村「曲の並びには凄く神経を使いましたね」
中村「ただ、曲に関してはほぼ決め打ちだったんですよ。逆に削ろうかっていう意見もあったんですけど、削れなかった」
木村「それくらいこの12曲がメンバー全員の中にあった。どうしても削れなかったんです」
──曲の長さにもこだわったんですか。
中村「結果、たまたま短い曲が多かっただけなんですよ。それも前回からの流れなのかもしれませんけど。ギターの赤羽根(謙二)から『この曲、ギターのソロとか要らないよね?』みたいな発言もあって、無駄 なものはアレンジの段階で削って。だから曲を長くしたっていうのはあるけど、短くしたっていうのはないですね」
木村「シンプルにはなっていますね。あれこれ考えて曲を作るのではなくて、感覚のみで勝負しているところが最近は多いんです。これまでは凄く凝り固まった作り方をしていて、とにかく詰め込めるだけアイディアを詰め込んで、レコーディング技術を駆使してやっていたんですが、若干それが行き過ぎた感もあって。一斉に音を出した時の一番気持ちいいアレンジとダイナミズムっていうのは、やっぱりバンドの基本ですよね」
──音を付け足すことは意外と簡単なことですよね。でも削ぎ落としてシンプルにしていくのは難しい。ギターのソロをなくしたりだとか、曲のツボを押さえて魅力的な曲を端的に作れるようになったっていうのは、今までの下地があったらこそだと思いますけど。
中村「そうですね。当然、やりこんだ時期もあったし、でもそれがなかったら今のスタイルにはなってなかったかもしれないですね」
木村「“人に歴史あり”って感じですね(笑)」
中村「前回くらいの作品から『これ、同じことを前にもやったよね?』っていう基準値をなくしたんですよ。作り手の側としては、以前やったことは余りやりたくないんです。こういうパターンの曲は前にもあったからもういいや、みたいな。そういうのも一切なしで、曲が出来た時に恰好よかったらそれでOK、みたいな感じでしたね」
──去年からたくさんのライヴをやる中で得たライヴでの臨場感みたいなものが、本作の曲に反映されているようにも感じますが。
木村「ベーシックなところですね。ライヴとレコーディングの表現方法は大して変わらないですから」
中村「一時期はイヴェントとかで、良いライヴをやってお客さんを持っていかなきゃとか、他のバンドに負けちゃいけないとか変なプレッシャーがありましたけど、最近は自分達のスタイルを突き通 しています。『自分達ができることをやるしかない』って。そういう気持ちの整理もできるようになりましたね」
木村「うん、確かにそういう部分では余裕ができてきたよね」

新たな可能性への選択

──そういう吹っ切れ具合の直接のきっかけみたいなものって何かあったんですか。
中村「前作を作ってから事務所を離れて、メンバーだけになって初めて気付くことが多かったんです。今まではスタッフ任せにしていたものが、1〜10まで全部自分達で考えなきゃいけない状況。マネージメントの会社を辞めた時に、選択肢が実は2つあったんですよ。マネージメント事務所に入るか、自分達でやるか。それも1つの賭けだったんですけど、『新しい事務所に入ってそこのやり方でやっていっても、それじゃ今までと余り変わらないんじゃないか?』って思って。その選択は今、考えてみれば正しかったですね」
木村「それも全部、音楽に跳ね返ってきたのかもしれませんね」
──それと、バンド本体が良い状態にあってガッチリ固まっているからこそ、木村さんのhurdy gurdyや柳田(英輝)さんのDRYASDUST等、個々の活動も活発なんでしょうね。
木村「それは独立してから生まれた感覚なんですけど、メンバーバラバラで動いたっていうのは結成10年以来、初めての試みだったんです。4人とも『良い経験だった』と同意見で、戻ってきてバンドやったら『やっぱりバンドは良いなぁ』ってなりましたね。特に俺なんて1人だったから。ドラムもベースもキーボードも全部を自分一人でやってたから、家から1週間出ないこともあったし(笑)」
中村「たまにこっちからメールして『どうなのよ?』って訊くと、『今日は誰とも口をきいてない』とか返事があったりして(笑)」
木村「そう、3日間、誰とも話をしなかったこともありましたから(笑)」
──『BLACK BERRY BED』が瑞々しい力作に仕上がったのは、4人個々の活動から新しいものを吸収し、刺激を受けたことがバンドに上手く反映された結果 なんでしょうね。
中村「再確認ですね。“ゼペットってこうだった”っていう。僕はプロデュースとかもやったんですけど、結局、プロデュースって依頼されたアーティストをどうやって良い位 置、状態まで持っていくかって仕事じゃないですか。それをやってみて、自分のバンドはメンバー自身でそれができているんだなっていうのが見えましたね」
──ホームグラウンドを離れて初めて自分達のことを客観視できた、と。
木村「うん、凄くいい経験でしたね。そんな経験を活かしてゼペットとして今回こういうアルバムを作れたことが嬉しいですね」


★Release

BLACK BERRY BED

ROLLICK/PRHYTHM PWPC-1011
3,150yen (tax in)
9.22 IN STORES

★Live Info.
<ZEPPET STORE Organize Event -ROLLICKAHOLIC!! Vol.5->
10月9日(土)下北沢CLUB 251
w/ monoral / fade
OPEN 18:30 / START 19:00
PRICE: advance-3,000yen / door-3,300yen(共にDRINK代別)
【info.】CLUB251:03-5481-4141

<VERY BERRY TOUR>
10月21日(木)心斎橋BIG CAT/10月22日(金)広島ネオポリスホール/10月26日(火)名古屋ell. FITS ALL/10月28日(木)新潟JUNK BOX/11月1日(月)札幌ベッシーホール/11月3日(水・祝)HOOK仙台/11月19日(金)恵比寿LIQUID ROOM

ZEPPET STORE OFFICIAL WEB SITE http://www.zeppetstore.com/


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