ピールアウトから新作『ROLLS NEVER END』が届いた。 『WILL』から約2年振りとなる今回の作品は、絶え間なく続いたライブの臨場感と、徹底してラウドなサウンドでこの世の緩さを吹き飛ばす勢いを感じさ せてくれる。 2ヶ月連続ピールアウトインタビュー、今月はアルバムプロデューサーでもある、 PEALOUTのオカザキ氏(g,ba)からアルバムの話を中心にじっくり伺うことにした。(interview:和田富士子)

次にやりたいことが明確だった
──前回ルーフトップでインタビューさせて頂いたのが、去年の9月号で。シェルターのワンマン前だったんですよ。ちょうど1年振りです。
「リリースもないのに嬉しかったですよ。去年はライブイヤーと決めて、全く(音源を)作る気がなくて。とりあえずライブを入れるだけ入れるという」
──それで、今年がレコーディングイヤー。
「そうですね、もう去年の秋くらいからかな?なんとなく曲を書き始めてて、ライブでも新曲をやっていたんで、それにどんどん足していくという感じで。実 際構想を練ったのは今年ですね」
──前作『WILL』が出たのが2年前、その間1枚も出していなかったのは意外でしたね。
「本当は今年の春くらいに出したかったんだけど、今思えば2年空いたなって。ただライブはもう抜ける月がないくらいずっと続けていたんで。連続試合出場 みたいな感じでしたよ」
──で、今年に入ってレコーディングと。じゃ今回のアルバム『ROLLS NEVER END』に収録されているのは、その2年の間に作られた曲なんですね。
「うん。でも、実際にライブで試していたのは4曲くらいかな?本当はライブで全部やってからとも思ったんだけど、去年ステージに集中した分、次に何をや りたいかっていうのが明確になってて。ライブあってのバンドだと確認したけど、ライブ用に書くっていうよりもそこで得た気持ちとかテンションとか、空気 だったり景色だったりを曲にしたいっていうのがあったんで、実際、曲作りには時間がかかってしまったんですけど。今回はうるさいというか速いというか ……」
──速い!ですよね。もう速いっていうか!!(興奮)
「(笑)。ツービートは僕にとってはエイトビートと同じように10代から馴染んでいるもので。たまたまピールアウトで10年経って、あぁこういうのをも う一回やろうかなっていう部分はあったんだけど、USハードコアを焼き直ししている訳ではなくて、どっちかというとルースターズの初期とか。近藤が歌う とやっぱりそういうエッセンスが足されるから。アメリカものを意識したとしても、そうならないところは強みだと思っているんですけどね」
──速い曲はテンション的にすごいものを感じたんですよ。で、Webサイトのレコーディング風景を拝見すると、F1並みって(笑)。
「あれね(笑)。実はF1見ながら録ってたんですよ。僕がF1好きで佐藤琢磨がちょうどいい感じだったんで。レコーディングが夜中になっちゃって、本当 はモニターに音録りしている近藤を映してなきゃいけないのに、コントロールルームではF1みながら声だけで“もう一回いってみようか”とか。やっぱり F1より高いテンションでいって欲しいから。でもブースとは目を合わせないでずっと画面 見てた(笑)」
──ちなみにその曲は?
「『響音狂鳴』っていう曲ですね」
──やはり(笑)。F1でしたよ。『響音狂鳴』って言葉は、前回のツアーやワンマンのタイトルにもなっているんですけど……かっこいいですよね。
「これ、ピールアウトってバンド名を漢字にしただけなんですよ。音を鳴り響かせるっていう意味で。最初“響音狂鳴隊”ってしてたんですが、それはちょっ とかっこ悪かったんで(笑)『響音狂鳴』にしたんです。でも僕もまさか近藤がこのタイトルを付けてくるとは思わなかった。この曲は歌詞カードを見ても面 白いんですね。今日は歌入れっていう日、大きな紙に『響音狂鳴』とか書いてあって。すげーと思って歌詞カードみたら、ほとんど漢字に見えたんですよ。 “お、中国進出か?俺ら”と思いましたよ(笑)。まぁ意味は多分通じると思うし、テンション的にいいし、面 白いなぁって」
──で、聴いてると英語に聴こえたり(笑)。すごく気になった言葉だったんですよね。
「去年から出てきた言葉なんで、アルバムタイトルでも良かったんだけど。僕らのロックってやっぱり鳴っているイメージがあるし、聴いている人の気持ちも 鳴っていて欲しいというのは常にあるので、一つのキーワードとして打ち出したい言葉ではありますね」
──レコーディングにはズボンズのピロさんがいらっしゃったそうで。それ以外は3人でがっちりと。
「そうですね。今までいろんな人とやってきて、一回自分らだけでアルバム作ってみるかっていう意見もあって。で、レコーディングしながら 『ROLLS』っていう曲だけは、サンバリズムが基盤になっている曲なのでどうしてもコンガが欲しくなったんですね。そしたら彼が来てくれて。で、この 間の6月のクアトロでもライブで入ってもらって(笑)。それ以外は3人ですね」
──じゃ、ほんとに初のセルフ作品なんですね。
「そうですね、初期のインディーズの頃はそういうのもあったんだけど。これが素っ裸のピールアウトかもしれない。まぁ、3人で出来る自信があったのか な。『WILL』が終わってこれだけ時間が経って、ライブを沢山やってきたっていうところで。プリミティブなところでいくと、手を加えるところが少なく なってくるんですね」
──『サージェント・ペパーズ〜』にいって“ホワイトアルバム”にいってフリ戻しがあるっていうような感じですかね。
「それに近いのかなぁ、っていうとおこがましいんですけど。まぁ、『原始進化』〜『WILL』でいろいろやって、今作で好き勝手やっているっていう。で もわからないですよ、次また全然違っててドラムがないかも知れないし(笑)。どっか飛び出すっていう気持ちは取っておかないと『ニュールンベルグでささ やいて』みたいな曲が出来ないじゃないですか?そういう気持ちは残しておかないとやっぱりバンドは面 白くないですよ」 もっとカウンターを噛まさないとロックはヤバくなってくる
──今回はプロデューサー的視点で見られる部分の方が大きかったんですか?
「そうですね。自分の中で作業している時に分けましたね。プロデューサーとして気を付けたのは歌と全体のリズムの出し方。最近分かってきたんだけど、バ ンドって単純なものでぴったし息が合うと音がデカく出るんですね。だから全員の演奏があうと気持ちいいと。あと、ミュージシャンとしてこだわっていたの はラウドなアルバムに、究極にラウドなアルバムにしたいと思っていました」
──ライブで聴いて、盤になると印象が変わることがあるじゃないですか。でも今回の作品はライブと同じ、とまでは言わなくともすごいライブ感が出てて。 それって、岡崎さんがプロデュースされたということに関係しているのかなと思ったんですけど。
「そうだね。今回はライブに一番近いんだろうね。ライブっぽさで一番大事だと思うのは、歌だと思うんだよね。どのバンドでもそうだと思うけど、ボーカル がどれだけの表現力を持っているのかっていうのが一番だと思って今回レコーディングに入ったので、近藤の歌が一番、いわゆる……光ってみえる、そう聞こ えるところを抽出したくて。僕が思うピールアウトの中で今回の彼の声が一番いいかな、っていう自信はあるんですよ。そこがライブに近いというか、ライブ 感ある表現になるから」
──感情以上のものがモロに出ている歌声ですよね。
「うん、多分ミックスで僕がボーカルをすごいあげたとしても曲としておかしくないんですよ。例えばちょっとテンションが弱かったりするとそれを埋もらせ たりしてバランス取ったりするんだけど、今回はそんなことがなく、ボーカルが一つの軸として成り立っているから、横に楽器があるみたいにね」
──歌を全面に出しつつ、音もって感じで。すごいどっしりくるんですよね。でも、聴いてて単純にかっこいい。
「ズシっと来るっていうのは、ピールアウトのカラーとして言われ続けているから、多分近藤の歌だったり、気持ち的なところだったりあるとは思うんですけ ど。僕も重たいバンドが好きなんだけど、ここまで来たらそういう存在ではありたいと思っていますね」
──ちなみに10年という節目は意識的にあったんですか?
「いや、全然ないんですよ。去年ふと“あ、来年10年じゃん”って気づいて。10周年とか別 に自分はどうでもいい。いいんですよ、ただ積み重ねだから ずっと現在が続いていれば。10年やっているバンドも結構いるから、それは外の人が言えばいいことで。ただあっという間というか、常に一生懸命やってい たから、それの連続なだけであって。」
──いやー、でもやっぱり10年分の音ですよ、これは。
「その重みが出ているのならそれはそれで、いいことだけど」
──こうやって話を聞いていると、生まれるべくして生まれたっていう感じがして、しかもそれがすごく盤に現れているんですが、苦労したことはあったんで すか?
「いや、ないんだよね」
──やっぱり。
「そういうの出ちゃうのかな?」
──私は言葉が見あたらなかったんですよね。余計な言葉がいらないっていうのはこういうことかってすごく感じました。
「そうですね、やりたい曲だから見えているんですよ。頭でやりたい音が鳴っているからそれを具現化するだけだったので、メンバーに指示を出すときもこう いうものがやりたいんだよって伝えられたし。今回のタイトル『ROLLS NEVER END』っていうのは僕らにとって終わらないロックンロールという意味で、ころころ転がっているその気持ちは今のところ止められないというか。いわゆる ロックって形がフォーマットされながらも、時代時代にどんどん転がっていっているから、その大きな流れに僕らは乗っているし、好きでやっているものだか ら、どうしてもタイトルにしたかったんですね。僕らの気持ちというか、打ち出したい部分でもあるんですよね」
──ちなみにジャケはどんな感じになりそうですか?
「ジャケは最高ですよ。ずっとWebのデザインをやってくれているデザイナーの友達がいるんですけど、彼がものすごいデカい壁を作ってそこにペイントし たやつを写真に撮って。それがジャケットになっていてるんですけど、それを拡げると一枚の絵になるという、今までのピールアウトにはあり得ないジャケに なってます。でも音とリンクしているかも」
──リリースが楽しみですね。来月もインタビューを予定しているのですが、言い残したことがあればぜひ。
「今回『ROLLS NEVER END』っていう僕らなりのロックンロールとかラウドな音楽をやっているんですけど、結局もっとカウンターを噛まさないとロックってヤバくなってくると 思うんですね。何かあったらメッセージを直接的に表現する気持ちを持っている人が減っちゃっているのかなっていう気がしてて。音楽って楽しければいいと 思うんだけども、もちろん楽しいは大前提にあって。ロックってやっぱり音だけじゃなくて、そういうバンド側のスタンスだとか、意志だとかメッセージを発 信しているから面白いし、影響されるって僕は思うんですね。だからビースティ・ボーイズ、R.E.M.、Radioheadや清志郎さんとか未だに、あ のスタンスはすごいなとか思うし。そういうのが分かるバンドっていうのはやっぱりいるし、僕はそういう風にありたいなって思いますね。でもロックンロー ル万歳!っと言っていたいのが、この微妙なところではあるんだけど(笑)」


★Release info.

PEALOUT
「ROLLS NEVER END」

POYP-10001 / 2,800yen(tax in)
2004.9.15 IN STORES

 

※緊急決定!!
2曲入りスペシャルリミテッドCD 『ROLLS / NURNBERG(ルースターズ)』 9月2日発売決定!

★Live info.
<ROLLS NEVER END TOUR>
9月18日(土) 下北沢SHELTER
OPEN 18:30/START 19:00
PRICE:advance-2,500yen / door-2,800yen(共にDRINK代別)
【info.】下北沢SHELTER : 03-3466-7430
下北沢シェルターを皮切りに12月まで続きます!

★Event
8月17日(火) 福岡Drum LOGOS (問)092-712-4221 BEA
8月20日(金) 大阪 十三FANDANGO (問)06-6308-1621 FANDANGO

“ミュージシャンが語るビートルズ”presents 「トーキング・ビートルズvol.1〜with ピールアウト」
9月5日(日) 新宿ロフトプラスワン
OPEN 18:00 / START 19:00
PRICE:1,500yen(飲食別)
※前売券はありませんので当日直接ご来場下さい。

【PEALOUT OFFICIAL WEB SITE】 http://www.pealout.jp/