結成から十余年、待望の公式音源を遂に発表!!  
eastern youthの二宮友和が本体と並行してこれまで滋味に活動を続けてきたバンド“ひょうたん”が、結成から12年を経て遂に、遂に、初のオフィシャル音源を発表する。昨年、ライヴ会場で無料配布されていたデモCD-R〈宇宙の傍らで〉に魅せられた人ならば必ずや満足するだろう、温かみのある本当にいい歌が揃ったミニ・アルバムだ。  激しく展開するメロディは屈折していながらポップ感に溢れ、酒でノドが焼けたかのような塩っ辛い二宮の歌声と相俟ってとてつもない叙情性をも醸し出す。まるで“ひょうたんで鯰を押さえる”ように、その実体を追えば追うほどぬ らりくらりと遠のいていく彼ら独自の世界。それを紐解くべく、バンド初の公式インタビューをここにお届けしましょう。(interview:椎名宗之)

バラバラな面子の放し飼いが面白い『音楽牧場』
──まずはざっとひょうたんの歴史を振り返りたいと思うんですが。結成は1992年だからかれこれもう12年経つんですね。
二宮友和(g, vo)「そうですね、ええ。最初は奥平と2人で」
奥平厚志(b, cho)「地元の愛媛で、中学生の頃から二宮とバンドを一緒にやってたんです。で、東京に出てきて『また(バンドを)やろうよ』と。しばらくドラムを探していたところに、二宮の家に林が居候でやって来て。ドラムを叩けるって言うから、じゃあやろうよ、と」
──'92年というと、ニノさんはもうイースタンに加入されてますよね。
二宮「そうですね。eastern youthをやり出して半年後くらいにこのバンドができるようになったと思います」
──ニノさん自身、イースタンの時とは随分と勝手が違うと思いますが。
二宮「ええ。ベースを弾く時はしっかり奏でるっちゅうか、そういうことを意識してますけれども、ギターを弾いて唄うのは爆発力じゃないけれど、どんなに抑えた曲でもそういうところにやっぱり意識が行くもんだと思いますね」
──林さんが加入する前は、お2人でどんな感じの音楽をやっていたんですか?
二宮「もっと判りづらい音楽っていうか、プログレッシヴっぽい感じのものでしたね。覚えてるのは、3曲カヴァーしたんですよ。ディスヒートとプライマス、それとキング・クリムゾン(笑)」
──“ひょうたん”を名乗る前、そもそものバンド名が“夏の日の午后”だったんですよね。
二宮「そうなんです、最初は」
──じゃあ、今やeastern youthの代表曲である「夏の日の午後」はここから採られたわけですね。
二宮「そうみたいですね。字がちょっと違いますけど。“夏の日の午后”だと何か抜けが悪い気がしたんですよ。前衛的でもないですけれども、そういうイメージの音楽をやりたかったこともあって、バンド名がピンと来なくなりまして。それで、リアリティのある名前にしようと…」
──“リアリティのある名前”で“ひょうたん”ですか?(笑)
二宮「はい(笑)」 奥平「バンド名を変えても、特に何の支障もありませんでしたね」
──'93年頃から高円寺や新宿でライヴ活動を始めて、プロフィールによれば当時のライヴは「抜けの悪いことこの上なし」だったとのことなんですが(笑)。
二宮「ライヴハウスのブッキングに出ることが多かったですね。引っ込み思案なもんで、いろんなバンドとコミュニケーションを取るのができなくて。趣旨のはっきりしたライヴも自分達ではなかなかできなかったですね。(奥平に)タイプ的にはどんな人達とライヴやってたかな?」
奥平「割と激しい感じの音楽とブッキングされたりしてたような気がする」
二宮「ちょうどアメリカン・ハードコアとかの時期だったし、ミクスチャー寄りのものとか、それにルインズとかちょっとフリーキーなタイプの人達が多かったですね」
──“ひょうたん”に改名した'95年には5曲入りデモテープを制作されてますが、これはどんな感じの音源だったんですか?
二宮「その頃の音源は…今よりももう少し気合いの入った感じだったと思うんですけど(笑)。今度のアルバムに入ってる〈円い月〉も入ってたんですよ。アレンジは全然違いますけど」
──'96年には自主企画ライヴの『音楽牧場』をスタートさせてますね。
奥平「2回ほどしかやってないんですけどね(笑)。親しい連中や自分達が一緒にやってみたい人を呼んで」
二宮「面子はバラバラだけど、その放し飼いっぽいのが面 白いんじゃないかと思って『音楽牧場』って付けたんですよ。一番最初は高円寺の20000Vで、SAP、ONE TRAP、ピラネージっていうまるでバラバラな感じで。その次は西荻窪ワッツで、VOLUME DEALERS、BACKET-T、KILLING JERK。KILLING JERKは漁港のヴォーカルがベースをやってたバンドで。いや、ヴォーカルじゃないや、船長ですね(笑)」
──それが'98年から4年間、なし崩し的に活動休止期間に入ってしまい…。
二宮「ええ、諸々の事情により(笑)」 林 康雄(ds)「僕のほうは子供ができたりとかしていろいろあって…(笑)。お金がどれくらい掛かるかも判らなかったし、“どうしよう、どうしよう”って(笑)」
──活動再開はどんなことがきっかけで?
二宮「…何となく、ですね(笑)。“もっとできるな”って思ったんですよ。イースタンという母体はありつつも、もっと音楽の中に身を置きたいと思うようになって、“もうできません!”っていうくらいできる限りやりたいと思って」 素直になれず天の邪鬼なバンドの個性
──今回発表するミニ・アルバム『ひょうたん』は、活動を再開されてからの曲が殆どですか?
二宮「半々くらいですね。〈僕が笑う向日葵のように下品に〉〈宇宙の傍らで〉〈月のことだま〉がまたバンドを始めてからの曲です」
奥平「持ち曲自体がそんなにないんですよ。だからこのアルバムに関してはやれるものを詰め込んで」
「でも“きちんとしよう感”はこれまでで一番だったんじゃないかな? やる気がないとかそういうんじゃなくて(笑)、引っ込み思案度が高すぎるんですよ。でも今回はようやく人に聴いてもらいたいと思って意識して作りましたね」
二宮「確かにそろそろそういう意識が必要なタイミングではあると思いますね。もう12年も経つし(笑)」
──作曲は全員で?
二宮「曲は基本的に3人で作ってます。誰かがネタを持ってきてくれるって感じですけど。歌詞は僕が書いてます」
──レコーディングはかなり変則的に録られたという話ですが。
二宮「練習スタジオに機材を持っていって全部自分達で録ったんですけど、なかなかこういう性格なもんで、一旦上に重ねるもんだったりの作業が平気で1ヵ月くらい空いてしまったりとかして。アップアップになってましたね」
奥平「最後の〈月のことだま〉以外の5曲は、リズムはその日のうちに録り終えたんですよ。〈月のことだま〉だけはかなり期間が空いてから最近録ったんです」
林「他の5曲を録っているうちは曲として完成してなくて、最後の最後に完成したんで、『じゃあアルバムに入れようか?』って。最初は5曲収録の予定だったんですけど、急遽6曲入りに(笑)」
──噂に違わず、本当にマイペースなバンドなんですね(笑)。
二宮「そうですね(苦笑)。でも、無理矢理状況を追い込むようには心懸けていました」
──誤解を恐れずに言うと、パンクを通過した人、あるいはパンクな心意気を持ち合わせた人が奏でるティン・パン・アレイ的音楽という印象を受けたんですよ。ちょっとフュージョンっぽい佇まいもあり。
二宮「特にティン・パン・アレイ辺りのものを意識したつもりはないですね。それに限らず、特に何かを意識するとかもなくなってきてますし。今まで自分が聴いてきたり通 ってきたものが反映しているとは思うんですけど」
──ドラムとベースの粘っこい絡み合いに、ソウル好きなニノさんの嗜好が出てると思ったんですよ。
二宮「そうですね。スライ(&ザ・ファミリー・ストーン)とかカーティス(・メイフィールド)とかの、あのヤラシイ感じが好きで。ああいうグルーヴを入れたいと思って」
──2曲目の〈潮騒〉に顕著ですけど、メロディの転調、展開の激しさに特徴がありますよね。最終的には“いい歌だなぁ”という気持ちが残るんだけれど、ひねりのあるメロディがフックになっていてクセになるというか。
林「サビが素直すぎる方向に行くと絶対にイヤだなぁって思うんですよ。一筋縄では行かないところがひょうたんの個性なのかもしれませんね」
二宮「余り強引にならないようにはしてるんですけどね。ホントに天の邪鬼なもんで…」
奥平「昔はもっと天の邪鬼だったと思いますよ。それをもうちょっと素直な曲にしようっていうか、もっと皆に聴いてもらえるものにしたいと思ってるところなんです」
二宮「でも、どうしても素直になってしまえないところが今もあると思うんです。その中でできるだけやってますね」
──どれだけ素直じゃなくても、アルバムに収められた曲はどれも恐ろしくキャッチーじゃないですか。
二宮「難解で一筋縄で行かないことをやりたがる傾向が多くてですね、メンバー自身もよく判らなくなってることがあるんですよ。それじゃ聴く人は益々よく判らないだろうし、面 白くもないだろうし。それがあって、もっと音楽的なものをやりたいと思うようになったんですよね」
──結成から12年経って、やっとその境地に達したわけですね(笑)。
二宮「ホントですね(笑)。バンド名を変えた辺りから少しずつそんな感じになっていったんですよ。〈宇宙の傍らで〉はそういうのを意識して作りましたし」
──ところで、アルバムが先行発売されるシェルターのライヴなんですが、持ち曲は足りるんですか?(笑)
二宮「一応、今までに作った曲はまだいっぱいあるんですよ。それをライヴでできるように」
──カヴァーを織り交ぜてみたりとかは? 個人的に是非、キング・クリムゾンをやって頂きたいですが。
二宮「やりたいですけどね(笑)。昔、カヴァーしたのは〈Red〉っていうインストなんですけど」
「初めて〈Red〉の音合わせした時はアゴはずれたよね(笑)」
長森 洋(坂本商店・代表)「じゃあ、シェルターの1曲目は〈Red〉にしようよ」
奥平「インパクトありますよね? (二宮に)やろうよ」
二宮「そんなことしたらブッ倒れるよ(笑)。…まぁ、前向きに善処します(笑)」


★Release

ひょうたん

坂本商店 SAKASHO-20
1,575yen (tax in)

1. 僕が笑う向日葵のように下品に / 2. 潮騒 / 3. 宇宙の傍らで / 4. 通り雨 / 5. 円い月 / 6. 月のことだま
*現時点ではCDはライヴ会場のみの限定販売で、8/26のSHELTER公演で先行発売されます。

★Live Info.
<ひょうたんCD発売ライブ 音楽牧場 〜宵の空、月の声〜>
8月26日(木)下北沢SHELTER
w/ VOLUME DEALERS / Trade Marks
OPEN 19:00 / START 19:30
PRICE: advance-2,000yen / door-2,500yen(共にDRINK代別)
【info.】shimokitazawa SHELTER:03-3466-7430 ひょうたん
OFFICIAL WEB SITE http://www.hyotan.net/