今年1月の渋谷O-Eastのワンマン後、活動休止をしていたHIGHWAY61がついにメジャーデビューシングル『POWER TO LIVE』をリリース。そして活動再開。バンドを始めて以来、初とも言える長い休暇を経て、シングルを制作するにあたり、彼らはどんなことを思っていたのだろう。これから行われるツアーに向けての意気込みを含め話を伺ってきた。(text:やまだともこ)

●本当の意味で、自分自身に向き合えた充実した時間
―――1/17に渋谷O-Eastで行われたワンマン後、しばらく活動を休止されていたんですけど、みなさんその間どんなことをされていたんですか?
鞭(井上鞭 / Vocals&Guitars) それぞれの旅に出ていました。何かが変わるんじゃないかってところで、リズム隊の渡邊と勝(薬師神勝 / Vocals&Drums)がアメリカに行ったりして。
―――地元のライブハウス見たりとか?
渡邊(渡邊大顕 / Vocals&Bass) そうですね。僕の場合一ヶ月半ぐらい行ってたんですけど、最初は言葉も通 じず、ハリウッドのライブハウスに行こうとしたらあまりの怖さに行けなかったとか(笑)。そのライブハウスが繁華街からちょっと離れた場所にあって、昼間に一人で行ってみたら誰もいないんですよ。見える世界はコンクリート、コンクリート、コンクリート。それでロスは諦めてニューオリンズに行って、ドラムの勝くんに会って素晴らしいストリートミュージシャンを見つつ。HIGHWAY61なんでHIGHWAY61号線を辿って、何もないこれまたどこを見ても、道、道、道。で、シカゴ行ってニューヨーク行って。いい音楽にも出逢いましたし、どうしようもない言い方をすると一皮剥けたかなって言うかんじですね。
―――バンドを始めてからこれだけ長期の休みっていうのは初めてですか? やっぱり一度リセットするという意味でもこの時間は必要だったってことですね。
堀井(堀井与志郎 / Vocals) はい
―――その間堀井さんはどんなことをされていたんですか?
堀井 渡邊くんとは対照的に、ほとんどどこにも行かずに自分の精神世界を漂っていました。そこはとても寒くてイガイガしてるというか、花一つ咲いていないような、そんなところでした。
―――その充電期間が終わってから、今度の『POWER TO LIVE』を作られて、一皮剥けたところはありました?
渡邊 はい。今まで感じたことのなかったかんじというのかな。そういうものをすごくこの曲が与えてくれましたね。見たことのない世界。聞いたことのない音。感じたことのない感じ。すごい、いいポイントを迎えたなと。
―――今回、シングルというのもあると思うんですけど、疾走感というのがあると思いますね。以前と比べると勢いがあるというか、前作はパンクだったんですけど、もっと明るくパーティっぽいイメージ。より大きなロックという感じがしますよね。
 4年かけて、よけいなものをいっぱいしょいこんでしまったっていうのがあって、行き先もわからない電車に乗ったまま行ったり来たりしてて、ハタと気づいてそうじゃないなって。残ったモノを寄せ集めて一個にしたときにガツンってやれるんじゃないかな。
―――今までの活動が当然ありつつも、一回ぶっ壊してもう一回浮き出るのはこういう音ですっていうのが出てますね。見直す事ができたっていう意味でいい充電期間でしたね。
堀井 今までの人生の中でも1、2を争うくらいのすごい素晴らしい、とても貴重な経験であったことは間違いないと思う。そういう経験というのは現代の人はあんまりなく過ごすと思うし、本当の意味で自分自身に向き合うことが出来る時間というのが果 たしてあるのかなぁと思いますね。
―――自分を見つめ直す作業って言うのはなかなかできないですよね。
堀井 でも、時代が変わってきてて、誰もひとつのところで一生ここでやってくんだなんて思ってる人いないじゃないですか? ってなったときに、自分にとって生きるということはなんなんだっていうのに本気で若いうちから向かい合っていかないとダメだと思う。
―――今回メジャーデビューっていうところと個性的なA&Rのnamijinさんとの出会いはけっこう大きいんじゃないですか?
堀井 そうだね。でも、もう何年も前から出逢っていて友達だったんだけど、ひとつのことを一緒にやろうぜっていう風な関係の上で新たに出逢ったのは大きいかもしれない。

●精神世界のぶつかり合い
―――ところで、1曲目の『POWER TO LIVE』ですが、「生きていく力」が強調されているんですけど、堀井さんにとって生きていく力となってるものってなんですか?
堀井 これを書いてるときはね、生きていく力を失っている人が書いたわけだから、その時はそれを本当に全身でほしがってる人だと思うんだ。
―――本当の魂の叫びってことなんじゃないですかね。
堀井 本当によけいなものを捨ててどうしても捨てきれないものだけしか残ってないんですよ。という意味では、やっぱり俺達がやろうとしたことはブルースなんだなって思ったし、ソウルミュージックなんだなとも思った。
―――でも、ちゃんと1曲の歌として出来たときはポピュラリティーがあって、そこもすごく大事だしちゃんとしてますよね。レコーディングはスムーズにいったんですか?
 曲作りの上で、音を出すまでの精神世界のぶつかり合いというのが非常に困難を極めていて、まずかなり話し合いをしましたね。現段階でずれてるとこを確認しようって、それさえやれば音出すだけだし。技術的なことを言うと、今回から4人で「歌う」っていうスタイルじゃなく、4人の「魂の叫びをぶつけていく」っていうのをやりたいなと思ったんですよ。
―――ということは、今まではあまり話し合いとかなかったんですか?
 レコーディングするたびに話し合いはあったんだけど、その時点で話し合ってたことも全体の行く先を見てないままの話し合いだったから、そういうものではなく今回から完全に行き先を決めた上で話し合いをするっていう。一番実となる話をしましたね。
堀井 本当にひとつのことを成し遂げようとしたときにね、もっと人間としてどういう風になりたいかっていうところをとことん見つけた上での回答でなければ、そこに引かれたレールはすぐ折れるよね。今は自分たちでただ一点に向かって行くレールを引いてる最中だから、本当に精神的にも肉体的にも己の全てをかけて協力して作っていく道だと思ってやっているので、強い線路をもっているバンドになりたいな。今って敷いてある線路があって、どの線路にしようかなって言うやつばっかりじゃない? かつての俺もそうだったし。そうじゃなくて出発点で4人の力を合わせる事ができたならば、伝説になれると思います。ということをものすごい限られた時間の中でやろうという決意はあるので、俺達が向かって行く先にかすかでも光を感じる人がいたならば一緒にやりたいなと思うし、同じようなことを考えている人がいたとすれば僕らの力を貸したいなと思うし、貸して欲しいなと思います。それはなるべく誰にでもわかる言葉で説明できたらと思うし、そういう歌も歌いたいなと思うし。と今は思っています。
―――この3曲の中に多くのメッセージが含まれているという感じですね。
堀井 この歌の中にも僕たちが思っている歌いたいことの一番原液というか、日本酒でいうところの大吟醸というか(笑)。現状で一番いい3曲がのってるんですよ。
―――では、2曲目の『NO MORE TEARS』は、さっきで言う過去の自分に対することを歌っている内容という気はしたんですが。
堀井 そうですね。もう大丈夫だよなんて言ってないもんね。自分と向き合って自分の為に戦うならばっていってるから。強い歌だと思います。
―――オトシマエは自分でつける的な。なんだか曲の感じもメンバーさんの感じも変わりましたね。やりたいことがより明確になったからだと思うんですけど。曲を聴いてもブレがないというか。
堀井 10年ぐらい前に「針の穴を通すように一点に向かっていけ」ってアドバイスされたことがあって今でも覚えてるんですけど、ようやくこの言葉の意味がやっとホントにわかったなって。これからも作品以上の決意もあるしね。
―――ほんとにこれからですよね。このシングルができてここからどういくのかってことですよね。これだけいいものができたら次はアルバムでさらにいいものを期待してしまうんですが。
 濃密な曲を並べたいなぁ。アルバムを出すごとにやっぱファーストが良かったって言われるから、それをちょっとなんとかしたいですね。常にガチンコで作る。口で言うのは簡単だけど、それぐらい一日一分一秒を無駄 にできないって考えているんで。
堀井 大事なことは長生きすることではないと思ってるからね。すばらしい人生を送ることだと。

●音楽は肉体で感じるもの
―――ところで、今回ツアーに何カ所か回られるんですが、それはどんな気合いでやっていこうと思ってますか? …薬師神さん。
堀井 おっ、何気にファーストトーク。
薬師神 ふっていただいてありがとうございます。今日は波に乗れなくてどうしようかと思っていました。どんなライブという質問の前に、言いたいことがあるんですけど…。僕は本当にまだまだ若輩者でありまして、26年しか生きてない子供のような大人だと思うんですが、今までに数限りない、大小限らず多くの嘘を吐いてきて、大嘘つきであります。これからは絶対に全ての嘘と戦いたい! という意味で、これからのライブ『POWER TO LIVEツアー』は嘘をつかずに…。(胸に)魂の叫びとかあるけど、「どうぞ!!!!!!!!!!!!!!!」とそのまま伝えます。どこも通 過しない。通過したら汚れてしまうもの。そういうライブにしたいですね(全員爆笑)。
―――…今の一言を聞いて、ますますこのツアーが楽しみなりました(笑)。
 PV撮影中に堀井くんはマイクをまっぷたつに折りましたね。 堀井 あれビックリしたね〜。
―――すごい気合いですね。では他のみなさまも意気込みを。
堀井 も、もうまさるくんについていきます。
―――あと、こないだロフトでやったHIGHWAY61のイベント「ウッドストック的祭り」は?
堀井 今後、予定としてはまだ決まってないんだけどめちゃくちゃやりたい。具体的なプランはこれからですけど。HIGHWAY61のファンの人だけではなくて、全ての音楽というか、システマチックな世界に生きてる全ての人に送りたい。俺達もシステムの中に生きているんだけど、システムが持ってるつまらなさというか、驕傲さというかその中で生活している全ての人に訴えかけたいな。それが新しい世界への扉になるといいと思うし。
 うちら自身4年間かけて、音楽業界という縛りにどんどん縛られていって、CDはこれぐらいのサイクルとか、どんどんそういうことがつまんなくなっちゃってきてて、一回そういうのをとっぱらったところで、自分らで地に足のついたイベントをやりたいなと思ったんです。それでストリートに立っていた素晴らしい人たちを堀井くんがたくさん呼んでやってみたんです。
―――なるほど。でも、あれぐらいライブに勢いがあると、体力的にもすごいんじゃないですか?
堀井 あの。初めて告白させてもらうんですけど、プロボクサーを目指してます。ただ、30歳までにプロテストを受けなきゃならないのに、あと半年しかないんですが…。
―――えっ? 本当ですか? でも、そこで基礎体力をつければライブもかなりいいかんじになるんじゃないですか。
堀井 だから逆にパンクをやってたころは肉体的にも精神的にも限界までやってたけど、考え方そのものが変わったかな。つまり、体を使うという意識が全く変わった。ボクシングっていうのもあるし、そうじゃないこともあるけど、いろんな経験を合わせて、肉体を使うことと、生きることということはすっごく関係があることに気づいた。この世界で生きていくのは明らかに頭の中で生きている人が多いよね。自分もそうだったし。音楽でとってもいいのは肉体で感じることが一番僕たちにとったら喜びを教えてくれるんだなぁ、好きだなぁって思ってます。
 そうだね、心じゃなくて肉体で楽しんで欲しいですね。


Release info.

HIGHWAY61
POWER TO LIVE

WPCL-10112 / 1,050yen(tax in)


Live info.

POWER TO LIVE TOUR
8/1(Sun) 名古屋E.L.L.
8/4(Wed) 原宿アストロホール
8/10(Tue) 岡山クレイジーママ 2nd ROOM
8/12(Thu) 大阪 アメリカ村DROP
8/19(Thu) 水戸ライトハウス
8/20(Fri) 高崎club FLEEZ
8/27(Fri) 熊谷VOGUE
8/29(Sun) 川崎クラブチッタ
問合せ:HOT SUTUFF 03-5720-9999

official site:http://www.hw61.com/

HIGHWAY61のみなさんから素敵なプレゼントがあります!