「人間にとって一番大切な“喜怒哀楽”をガチコーンと入れたアルバムにしたかったんですよ」

 北海道出身の4ピース・バンド、THE HOMESICKSが7曲入りミニ・アルバム『NO TITLED』をリリース。ザ・ルースターズ、ザ・ブルーハーツを筆頭とする“日本語のロックンロール”を正統に受け継ぐ彼らの楽曲からは、あまりにも生々しい“喜怒哀楽”がくっきりと浮かび上がってくる。ソングライター/ヴォーカルのノザキジュンヤに訊いた。(interview:森 朋之)


 365日、ロックンロールですから
──去年の後半から滅茶苦茶な数のライヴ(年間150本以上)をやってますが。
「あ、はい。そうっすね」
──よくアルバムを作る時間がありましたねぇ。
「えーと、(2003年の)10月から12月まではツアーで、1月に(アルバムを)録って、すぐに次のツアーが始まって……そんな感じですね」
──すごいスケジュールっすね。
「でも、バンドで決めたことなので。365日、ロックンロールですから(笑)。やっぱり、実際に(バンドを)観て、感じてほしいので…」
──ツアーの合間にレコーディングを組めば、必然的に勢いのあるテイクが取れそうですよね。
「そうですね。今回は“いかにライヴに近い音にできるか”っていうことを考えていて。もちろん演奏は“一発録り”だし、演る前にがんがんテンションを上げて、照明も暗くして、ライヴハウスに近い状態でレコーディングしました。俺なんか、裸だし(笑)。とにかく、ライヴにつながるCDにしたいなって思ってたんですよね」
──ライヴの音に近づけるのって、意外と難しいらしいですね。エンジニアのセンスによっても左右されるだろうし…。
「音質ってよりも、ここ(といって胸を指す)じゃないですか? いかに魂を込められるか、っていう。一番大切なのは、そこだと思います」
──なるほど。確かにこのアルバムって、感情がむき出しになってますよね。
「はい。とにかく人にとって一番大切な“喜怒哀楽”をガチコーンと入れたアルバムにしたい……そういうことは考えてました」
──いまの世の中には、喜怒哀楽が足りない、って思う?
「うん、足りないみたいですね。この前テレビを見てたら“感動的なビデオを若者に見せて、どれくらい泣けるか?”っていう番組をやってて。“アホか!”って話ですよね。ビデオを見ることで、わざわざ泣こうとしてるってことじゃないですか。それはやっぱり、喜怒哀楽が足りないからだと思うんですよ」
──そうかもしれないですね。
「僕なんか、しょっちゅう泣いてますからね。悲しい時だけじゃなくて、楽しい時や、嬉しいことがあった時も涙が出てくるので。たとえば、部活とか学園祭とか、みんなで何かひとつのことをやる時って、涙が出てくるじゃないですか。『体育祭で優勝した!』って時とか。そういう涙も、みんなどこかに忘れてるんじゃないですか?」
──まぁ、シレーッとしてますよね。
「そうそう。なーんか、かっこつけてますよね。たとえば普段はイカツイ顔をしてる人だって、嬉しい時もあるでしょ。だったら素直に喜んでいいのに、“いや、俺はこういうキャラだから”って言ったり。そんなのね、おかしいと思うんですよ。“キャラって何だよ? おまえは今、嬉しいんでしょ? だったら素直に喜べよ”って」
──“なんか、つまんな〜い”って感じの空気を変えたい、とか思う?
「そうですね。とにかく俺、ひねくれてるヤツが嫌いなんですよ。素直じゃないヤツ、っていうか。ホントはそうじゃないのに、カッコつけて冷めてるフリをしてるヤツとかね。実際、そういう人も自分の周りにいたし。高校の時は多かったですね、そういう人」
──まぁ、そうでしょうね。
「体育祭とか球技会の時って、そうじゃないですか? “みんなで一生懸命頑張ろうぜ! とことん楽しもう!”って言ってる時に、ふて腐れてるヤツとか。ホントに嫌いなんですよね、そういうヤツ。だから俺、歌を作る時もウソがつけないんですよね。全部そのまま。いちいち説明するまでもなく、歌を聴けば判ってもらえるって曲ばっかりで」
──確かに。1曲目の〈友達のテーマ〉にしても、 「僕は友達が好きだよ」ってフレーズがあったり。
「そうですよね。それはホントに“そのまんま”ですよね」

ライヴには絶対にウソがあってはいけない
──曲を作り始めた時から、そんな感じだったんですか?
「うーん、そういうことを意識してたわけではないんですけど…。ただ、最初から、素直に書いてたような気がしますね。〈友達のテーマ〉もわりと初期の曲だし」
──あ、そうなんだ。
「はい。ただ、なんていうか、一番最初は“どうしてもバンドがやりたい”ってことでもなかったんですよ。高校の時は“バンドを組んで学園祭に出れたらいいな”って思ってただけだったし、そもそも俺、人前に出るのが苦手だったので」
──音楽自体は、聴いてたんでしょ?
「聴いてましたね。最初はパンク・バンドだったと思います。日本のバンドで言うと、やっぱりブルーハーツ。外国だとピストルズ、クラッシュ、ダムド、ラモーンズ……ジェネレーションXはちょっと判んなかったけど(笑)、その辺から入りました。その後、ガレージとかパブロックって言われるものを聴き始めて、それはパンク・ロック以上にグワーッと来ました」
──そこで普通は、「俺もバンドをやろう!」ってことになるわけだけど…。
「そうでもなかったんですよ、それが(笑)。自分でバンドをやろうと思ったのは、高校を卒業して札幌に出てきて、たまたまライヴハウスに行ったのがきっかけですね。そこで観たバンドが、自分に火を付けてくれたというか…。そのバンド、めちゃくちゃ下手だったんですよ(笑)。でも、なんか良かったんですよね。プロでもないし、下手なんだけど、“俺はカッコイイだろ?”って気持ちがすごく伝わってきて。そのバンドを観て思ったんですよね、俺もやれる、って。まぁ、カンチガイですよね(笑)。カンチガイなんだけど、とにかくバンドがやりたくなって。最初は遊びだったんですけど、やってるうちに本気になっちゃって……まぁ、そんな感じです」
──で、曲を作ってみたら“感情全開”だった、と。
「それは、いま考えてみると、自分のなかに溜まってた毒を出してたような気がします。そういう感覚は、いまもちょっとあるんですけど。ただ、毒が溜まってるのは、僕だけじゃないと思うんですよ。それができないから、みんな、キレやすいんじゃないかなって。素直に喜んだり泣いたりしないから、“怒り”の部分だけがでかくなってるような気がする。ちょっと話がズレちゃうかもしれないけど、俺、誰かに殴られても、そいつに向かってピース・マークをする自信があるんですよ」
──普段、喜怒哀楽を出してるから?
「そう。ほんとにね、ほとんど怒らないんですよ。もちろん、バンド内ではいろいろありますよ。もっとこうしてほしい、ってことはたくさんあるので。でも、それってタチの悪い怒りとは違いますよね?」
──そうですね。ただ、いくら自分が感情をむき出しにしても、それを受け取ってくれる“お客”がいないと、辛いですよね?
「あー、そうですね」
──THE HOMESICKSも、最初から客がいたわけではないと思うし。
「うん、実際に“客はひとりだけ”ってこともありましたから。正直、バンドを結成したばかりの時は“客がいねぇなぁ”って考えたこともあったし。でも、いまはそういうことも気にならなくなりました。何て言ったらいいのかなぁ……あの、俺、ライヴには絶対にウソがあってはいけないと思うんですよ。たとえばライヴ中にバッとお客さんを指さしたとしたら、それは単なるポーズじゃなくて、ホントの気持ちが入ってなくちゃいけない。そういうことは、(客が)ひとりでも100人でも同じですよね」
──うーん、すごいっすね、その気合い。
「だから、とにかく何でもいいから、ライヴに来てほしいです。俺たちは絶対にウソをつかないし、心を裸にして演ってる。そういう俺たちを観て、何かを感じてくれたら、嬉しいっすね」


◆Release info.

NO TITLED

Rollers Roll records
RRR-003
1,500yen (tax in)
2004.7.7 IN STORES


◆Live info.
<削ル魂、北国シャウト 〜涙の街からピースマーク〜TOUR>
7月2日(金)郡山CLUB#9/7月4日(日)盛岡club change/7月6日(火)札幌BESSIE
HALL

FUJI ROCK FESTIVAL '04“ROOKIE A GO-GO”出演決定!!
8月1日(日)苗場スキー場/ルーキーステージ【23:30 START】
w/ ソープランド揉美山 / HOLSTEIN / Empty Black Box / 髭

<LIVE TOUR『NO TITLED』>
8月28日(土)札幌COLONY/9月2日(木)下北沢SHELTER/9月4日(土)秋田LIVE SPOT2000/9月5日(日)弘前Mag-Net/9月6日(月)仙台MACANA/9月7日(火)郡山CLUB#9/9月8日(水)水戸club SONIC/9月10日(金)宇都宮VOGUE/9月11日(土)熊谷VOGUE/9月12日(日)大宮Hearts/9月13日(月)高崎club FLEEZ/9月16日(木)新潟CLUB JUNKBOX/9月17日(金)長野CLUB JUNKBOX/9月18日(土)福井CHOP/9月19日(日)富山MAIRO/9月20日(月)金沢AZ/9月22日(水)名古屋HUCK FINN/9月23日(木)浜松STUDIO FORCE/9月24日(金)滋賀B-Flat/9月25日(土)京都MOJO/9月26日(日)奈良NEVERLAND/9月28日(火)神戸STARCLUB/9月29日(水)大阪2nd LINE/10月1日(金)岡山PEPPERLAND/10月2日(土)広島Namiki Junction/10月3日(日)徳島JITTERBUG/10月4日(月)松山SALON KITTY/10月5日(火)高知CARAVANSARY/10月7日(木)静岡SUNASH/10月8日(金)甲府CONVICTION/10月9日(土)横浜CLUB24WEST/10月10日(日)本八幡The 3rd Stage/10月14日(木)鹿児島SR HALL/10月15日(金)宮崎SR BOX/10月16日(土)佐賀GEILS/10月17日(日)長崎STUDIO DO!/10月19日(火)熊本Django/10月20日(水)福岡VIVRE HALL/10月27日(水)下北沢SHELTER【ワンマン】/10月31日(日)札幌COLONY【ワンマン】
*下記HPにてチケット予約受付中!

THE HOMESICKS OFFICIAL WEB SITE http://www.homesicks.info