トリックスター【trickster】…(1)詐欺〈さぎ〉師。ぺてん師。(2)神話や民間伝承に現れるいたずら者。秩序の破壊者でありながら一方で創造者であり、善と悪など矛盾した性格の持ち主で、対立した二項間の仲介・媒介者の役目を果 たす。(『大辞泉』より)
 現代日本に現れたトリックスター、時代を笑いで表現する社会派風刺コント集団、THE NEWSPAPER が LOFT/PLUS ONE に登場! 小泉首相、アーノルド・シュワルツェネッガーからジャグリングまでこなす松下アキラさんと、石破防衛庁長官、金正日からパントマイムまでこなす福本ヒデさん、プロデューサーの杉浦正士さんにいろいろ尋ねてきました。(interview:ミヤギツヨシ)

「さくら」を何にしたんでしたっけ? 「サダム」にしたんでしたっけ?
──まずは、ザ・ニュースペーパーがどのような活動をしているのか教えて下さい。
杉浦「一応“社会風刺コント集団”という堅い名前が付いているんですが、要は、ニュースを笑いにする、パロディにするということをやっているのがザ・ニュースペーパーですね」
福本「よくやっているのが政治家の物真似で、それは日本の政治家も海外の政治家もやってます。あと、その時々に流行で起きたこと、山姥ギャルが流行ったら山姥メイクして厚底ブーツ履いてコントしたり、去年だとt.A.t.u.のコントやったりとか。あとは流行歌」
杉浦「音楽モノは暮れにだいたいね、その1年のヒット曲を替え歌でやったり、紅白歌合戦をもじったりするの。去年だと森山直太郎さんの『さくら』をね…」
福本「『さくら』を何にしたんでしたっけ? 『サダム』にしたんでしたっけ?」
杉浦「そうそう、『サダム』」
──サダム・フセインの“サダム”ですか?
杉浦「そうそう(笑)」

予算に合わせて9人でも1人でもやります
──公演はどのような場所でやられてるんですか?
杉浦「場所はね、まずは東京で本公演というのをやるんですね。今度の7月には社民党の三宅坂ホールっていうところでやるんだけど、だいたい700〜800とかの割合大きな劇場でまず本公演というのをやって、それからそれを持って地方を回る、ということですね。あとね、バラ。2人で行ったり1人で行ったり」
──ニュースペーパーをバラして、ということですか?
杉浦「そうそう」
──それは何かそういう形での申し込みがあってやっているんですか?
杉浦「うん、向こうからやってくれっていう、いわゆる営業ってやつ。ぶっちゃけ予算に合わせてフルメンバーの9人でも1人でもやります」
──そこは向こうからの要請に合わせて柔軟に対応してやると。
杉浦「そう。あと向こうからね、『これをやってくれ』ってテーマを与えてくるの。“憲法改正”とか“年金問題”とか。毎回そのテーマに合わせて舞台を作らなきゃならない」 福本「他にも、行った地方の地元ネタコントを作ったりとか」
杉浦「うち、仕事断らないっていうスタンスだから。営業は断らないっていう。どこの誰から来ようと断らない」
──あ、じゃあもしかしたら、全く逆の立場の人たちからそれぞれ申し込まれたりすることもあるんですか?
杉浦「そうそう、あるある」
──そういう申し込みがあっても断らないという。
福本「例えば“憲法改正反対!”ってみんな言ってる集会に行くけど、うちらはそこまで特別 にそんなこと思っていなくて。別に賛成派からも仕事くれば全然やるし、そういった部分での強固なこだわりはないんです」
杉浦「どっちの側にも何か矛盾があるんで。その矛盾をやるとみんな笑うよね。どっちが一方的に正しいということはないんで。どっちにも言い分はあるからね」

小泉さんに会った時は、ニュースペーパーを絶賛されてたらしいんですよ
──今まで、いろんな政治家の方たちと会う機会が結構あったと思うんですけど、その政治家の人たちからの反応ってどういうものがありました?
松下「小泉さんに会った時は、ニュースペーパーを絶賛されてたらしいんですよ」 杉浦「『わかりやすい!』ってね、本当に松下みたいな話し方でね」
──それはいつ頃の小泉さんなんですか?
杉浦「5年くらい前で、首相になる前。まだ、何の存在でもなかったよな。YKK(当時の自民党仲良し3人組、山崎 拓、加藤紘一、小泉純一郎の頭文字を取ってこう呼ばれていた)で反発してるって程度で、YKKの中でも一番大したことなかったな。加藤さんがいて、山崎さんで小泉さんって感じで」
福本「ぱっとしない人でしたよね、あの当時は」
杉浦「そう、全然。まぁね、会った時に今みたいな感じはなかったね。“ああ、小泉さん?”って感じで。“まぁ、付き合わなくてもいいかな?”ってくらいで(笑)」
──他にはいらっしゃいますか?
杉浦「社会党(現 社民党)元党首の土井たか子さんは可笑しかったね。村山富市さん(81代総理大臣)が首相の時、ニュースペーパーで村山さんをやったヤツがいるのよ。それをやった時、土井さんが観ていたの。それで、『そっくりだ!』ってその場で村山さんに電話かけて『あんた、あんたにそっくりな人が出てるわよ〜! 観たほうがいいわよ〜!』って言ってたの。で、後日、土井さんのことをニュースペーパーの渡部又兵衛がやったことがあったの。で、やってたら土井さんが20メートルくらい離れたところにいて。そしたら5メートルくらいのところまで近づいて来て『あんた! 似てないわよ!』って言ったのが可笑しかったなぁ。他の人は『似てる!』って言うんだよね。自分のことは『似てない! 私、ああじゃない!』って言うの。あれは可笑しかったね(笑)」
福本「さっき言ってた2001年の参院選、ニセ小泉が選挙応援に行く先々で土井さんに会ってましたね」
杉浦「そう、とある所でさ、選挙カーの上に2人が一緒に乗ったのよ。そしたらその後、土井さんのところに支持者から苦情の電話がかかってきたんだって。『なんで小泉が一緒にいるんだ!』って(笑)」

ニセモノだとわかってても段々ムカムカしてきて本物に見えてくるっ!
杉浦「でね、歴代首相のね、今ニュースペーパーでは竹下 登さん(74代総理大臣)からやってんだけど、やっぱ小泉さんの人気が一番だね」
──みんなが知ってますもんね。
杉浦「そう、みんな知ってる。今までもそういう人、2人いたんだけどね。1人が村山さんでもう1人が細川護煕さん(79代総理大臣)なんだけど、でもダントツだな、どう見ても小泉さんが」 松下「まぁ、目立ちたがり屋のおかげってのがありますね」
──あの髪型、パーマかけてるって知った時は驚きました。
福本「ねぇ? 天然パーマかと思ったらねぇ、なんであんな変わった頭に。でもあのおかげでアキラさん真似してても遠くから見た人が“あ、小泉首相だ”っていうのがわかりますからね」
──小泉さんの地元・横須賀にある行きつけの店でパーマしてるらしいですね。
松下「あ、そこも行ったことがあるんですけどね、小泉さんの扮装してちょっとビデオに収めようとして、まぁ、行っただけなんだけど(笑)」
杉浦「あと、家の前までも行ったよな、横須賀の」
松下「で、周りを歩いてたらやっぱり近所から窓からみんな出て“あれ?”って見てたんですけどね」
福本「やっぱ本当に似てるから。まぁ、そっくりさんと言われても困るんですけどね。物真似芸人と言われても“そうじゃないのに!”とは思うんだけど、まぁでもそれくらい似てるから。遠くで見てる人なんかは本当に“あれっ?”って思って」
杉浦「おすぎとピーコのおすぎさんが言ってたね。『ニセモノだとわかってても段々ムカムカしてきて本物に見えてくるっ!』って。最近、野次も凄いもんなぁ」
松下「野次、凄いですね。まぁ、公演や営業だと楽しんで野次飛ばす人もいるし、理解してもらってるんですけど、前に反戦運動の集会で選挙カーの上でやったんですよ、大きな駅の前で。そこはちょっと怖かったですね。遠くのほうで物凄く怖い顔で指さして叫んでる人とかいて。どんな人がいるかわからないですからね、街中だと」
杉浦「じゃあ今度さぁ、何人かニセのSPも付けてみたら? ますます本物だと思われてさぁ(笑)」
福本「SPいないっすからねぇ。そうそう、前に本物の小泉さんが渋谷に来た時、アキラさんがニセ小泉になって、選挙カーの上にいる小泉さんにその存在を気付かせようとしたんですよ。小泉さんが“お、俺に似た奴がいる”ってどんな顔するかな? というのをビデオに撮ろうと思って行ったんだけど、それはSPが『何やってんだ?』って来ちゃって。SP怒ってましたねぇ、物凄く」
杉浦「あれさぁ、あれだといけないのかねぇ、バンドだとさ、そっくりなコスチューム着たりとかしてるじゃない? ファンが。それと同じことで来ましたってのは、ねぇ?」
福本「物凄い支持者でファンなんで、っていうので? あ、それいいかもしれないですねぇ。ファンだからコスプレしてます! っていう」

凄い卑猥なこと言うの、首相なのに
──今度プラスワンでやる内容についてですが…。
福本「6月28日ですよね? あぁ、それはもう何をやるかはわからないですね。その時起きてることをやるので、逆に今決まっていたら“古新聞”になってしまうので。まぁ、ニセ小泉は出るだろう、ってことくらいで」
──参院選の真っ最中ですもんね。では、その時一番新鮮なニュースがコントで観られるってことで。
福本「まぁ、選挙でどんな人がこれから出てくるのか。今のところ地味な人しかいないですからね。小粒ですよね。なんか大きいのが出てくればいいですけど」
杉浦「久米 宏さんは出ないのかな?」
福本「ああ、出れば通るでしょうねぇ」
杉浦「絶対通るよな」
福本「絶対通るでしょうね」
杉浦「まぁ、民主党だろうけどな」
福本「そしたら民主党も持ち上げて持ち上げて、すぐ党首くらいなるんじゃないですか?(笑)」
杉浦「大橋巨泉さんみたいになっちゃったりな」
福本「ああ、すぐ辞めて」
杉浦「久米さん、いいタイミングなんだけどな」
福本「選挙は本当どうなるか、ニュースペーパーを観ている人とか、やっている僕らもですけど、選挙が楽しみでいて。誰が出てどうなるとか、僕もニュースペーパー入るまでは考えもしなくて。ニュースペーパー観た人もニュースペーパー観るまで選挙なんて別 にどうでも良かったのが、選挙見てて“あ、ニュースペーパーこれやるかな?”とか思うようになってるみたいですしね。ニュースペーパーを観るとニュースが楽しくなりますね。せっかくのロフトプラスワンですからね、やっぱ脱いだり暴れたりしたほうがいいんですかね?」 松下「脱ぐの大好きだから」
──脱ぐのは全然大丈夫ですよ。
杉浦「前、村山首相の頃、ストリップ小屋でやった公演にニセ村山が出た時、あれは可笑しかったね。ストリップ小屋で総理大臣が演説やるの。で、凄い卑猥なこと言うの、首相なのに(笑)」
──そういうのも、全く何の問題もないですから。とても楽しみにしています。

ザ・ニュースペーパー information

SCHEDULE
6月3日(木)新宿厚生年金会館
6月11日(金)武蔵村山 Aboo
6月19日(土)川崎市溝の口
6月28日(月)ロフトプラスワン
7月2日(金)〜4日(日)ザ・ニュースペーパー本公演 三宅坂ホール

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