フォーマルながらも新しい3コードのロックンロール  
PATCH、ウエノコウジ、楠部真也による3ピース・バンド、Radio Carolineが待望のファースト・アルバム『Dead Groovy Action』をリリースした。ガレージ、パンク、ロカビリーなどを完全に血肉化した3人が生み出した本作は、めちゃくちゃオーソドックスなのにとんでもなく新しい、ソリッドで刺激的なロックンロール・アルバム。余計なものを徹底的に排除して、好きなことだけをやり通 す。大事なのはそのことだけだと、このレコードは教えてくれる。(interview:森 朋之)

レコーディング前は“何が出るのかな?”って感じ
──『Dead Groovy Action』というかっこいいロックンロールのレコードが完成しましたが…

ウエノコウジ(b)「うん」
──その話をする前に、新宿LOFTの思い出話をしてもらってもいいですか?
PATCH(vo, g)「ハハハハハ!」
ウエノ「LOFTとの付き合いは古いですよ、かなり」
PATCH「デモテープで“昼の部”を落とされたことも話さなくちゃいけない?」
──え、マジですか? いつ?
PATCH「えーと、ギョガンレンズを始めた頃だから、92年とか93年くらいかな。ライヴのやり方も判んなかったんだけど、とりあえずLOFTにテープを持っていって。1ヶ月くらいしても返事がないから、自分で電話したら、『ああ、もうちょっと演奏できるようになってから来て下さい』って言われました。その時は『この野郎、絶対に出てやるもんか!』って思いましたね。まぁ、出ましたけど(笑)」
ウエノ「俺はその頃は、もう出てたからね。それこそピーズとかと一緒に。最近もお世話になってますよ、DJをやらせてもらったりとか。俺なんかは昔のロフトのイメージが強いですけど」
──若い子は西新宿にあったLOFTを知らないみたいですよ。
ウエノ「そりゃそうだろうね」
──楠部さんはどうですか?
楠部真也(ds)「新しくなってから(のLOFT)しか知らないですね。ニートビーツで何度かイヴェントとかワンマンもやらせてもらったり。でも、LOFTのことは大阪にいる頃から知ってましたよ。最初に知ったのは……あの、中学の先輩からBOφWYのテープをもらったんですよ。『BOφWYっていうバンドが新宿LOFTで盛り上がってる』とかって。LOFT以外のライヴハウスはほとんど知らなかったですね、こっちに来るまで」
ウエノ「やっぱり、ライヴハウスっていえばLOFTだもんね」 楠部「俺のなかでライヴハウスっていえば、十三ファンダンゴなんですけど(笑)。今回のツアー・ファイナルもLOFTなんですよ」 ウエノ「あ、そうだ。また飲ませて下さい」
PATCH「なんといっても“ROCKIN' COMMUNICATION”だから」
──(笑)えーと、じゃあ、そろそろアルバムの話をしたいと思います。
ウエノ「そうだよ! LOFTのキャンペーンに来たわけじゃないんだから」
──すいません…。でも、素晴らしいですね、これは。
PATCH「かっこいいですよね」 楠部「俺もよく聴いてますよ。自分が参加してるレコードってあんまり聴かないんですけど、今回はなんかしつこくないっていうか、聴きやすいんですよね」
──すんなり盛り上がれますよね。“聴きやすい”っていったら、A.O.Rみたいですけど。
ウエノ「アダルト・オリエンテッド・ロックですか? 人をボズ・スキャッグスみたいに言わないで下さいよ!」
──いやいや。ウエノさんは聴いてます? このレコード。
ウエノ「キャンペーンとかやってる時に聴いたりするけど。いい音してるなって思うよ」
楠部「いい感じで出来たと思います」
──レコーディングの雰囲気はどんな感じなんですか?
PATCH「“和気あいあい”とやってましたよ。ウソですけど(笑)。レコーディングはガツンとやってましたね。みんな、音楽好きなんだなって思いました(笑)。まぁ、合宿だったからね。短期間でやったのは良かったと思います。全然ダレなかったし」
ウエノ「そのかわり、飲めなかったけど」
PATCH「プロレス見ながら飲んでなかった?」
──“こんなレコードにしたい”っていうイメージはあったんですか?
PATCH「特に何もないですね。逆に“何が出るのかな?”って感じ」
ウエノ「……始める前は、何も考えてないよね。俺のなかでは“鳴ってる音”があったので、そういうふうにはなったと思うけど。もちろん、自分の想像以上のものになった曲もあるし」

3人ともそのままなんだけど、バンドになると面 白い
──アレンジは3人でセッションしながら固めていくんですか?
楠部「そうですね。PATCHさんがリフを持ってきて、そこからみんなで音を出していったり」
PATCH「前にやってたバンドの時はほとんど作っていったりもしてたんですけど、Radio Carolineでは30%くらいしか作らないっすね。後は2人が広げてくれるので。俺が想像してないこともたくさん出てくるので、そっちのほうが面 白いんですよ。俺だったら普通の3コードで終わってしまいそうな曲も、3人でやれば違った感じになったり。そのへんは“さすがリーダー!”って思います」
ウエノ「3コードっていうのは基本にあるんだけどね。何か欲しいなって思ったら加えるし、合わなかったらやめるし。それくらいかな。難しいこと言うと、(PATCHの)頭から湯気が出てくるんで」
──難しいことって?
PATCH「たとえば、『ここ、3音下でハモって』とかって2人が話してたり。俺は“何のことだろ?”って思ってたんですけど、真也は判ってたみたいだから、すごいなぁって思いました」
──ハハハハハ。でも、確かに3コードのロックンロールが基本になってるんだけど、めちゃくちゃ新しい感じもありますよね。どこがどう新しいのかは判んないですけど。
PATCH「そうですね。使い古された言い方をすれば、“最新型”ってところですか」
ウエノ「……言ってることは面白くないけど、言い方が面 白いんだよな(笑)」
楠部「あ、気付きました?」
ウエノ「そういえば、この前も同じようなこと言われましたよ。下北沢にあるライヴハウスの、映画監督もこなす某店長に飲んでる時に言われたんだけど、“3人ともそのままなんだけど、バンドになると面 白いね”って。自分自身のことは判んないけど、みんなが芸風を持ってるから、いいんじゃないかなって思うけど」
──なるほど。Radio Carolineって、もう2年くらいになりますか?
ウエノ「まだ1年半くらいだね。2年にはなってない」
──最初から“この3人でやると、新しいことができるだろう”っていう予感はあったんですか?
PATCH「(ウエノを見ながら)どうですか、リーダー」
ウエノ「(楠部を見ながら)どうですか、リーダー」
楠部「(スタッフを見ながら)どうですか…」
ウエノ「(笑)いや、でも、PATCHがやってる音は昔から知ってるし、ドラムも“こういう感じ”っていうのは判ってたので。最初はもっとラクな感じで…って思ってたところもあったんだけど、実際にやると気合いが入ってしまって、こんなになってしまいました」
──音を出すと、つい…。
ウエノ「やっぱり音を出すとダメだねぇ。笑いながらできないっていうか。オールナイトでスタジオに入って、飲みながら…って思ってたんですけど、つい本気になってしまって」
PATCH「そうっすね。楽器を持ってしまうとね、悲しいかな、バンドマンの血が…」
ウエノ「おまえが言うと説得力ねぇなぁ(笑)」
──バンドマンの血が騒ぐのは、悲しいことなんですか?
PATCH「悲しいですね。もっと“FUN”にできればいいんですけど」
ウエノ「“NO FUN”なんだ? イギー・ポップじゃん」
楠部「ハハハハハ。でも、最初の頃のライヴで、そんなこと言われたことありましたよ。まだ、それぞれバンドをやってる時だったんですけど、レディキャロのライヴを観た人から、“案外、真剣なんだね”みたいなことを言われて。“もうちょっとゆるい感じかと思ってた”とか。まぁ、それはそうだと思うんですよ。他にバンドをやってるんだから、こっちはゆるくてもオッケーっていう。でも、俺らはそんなこと考えてないですからね。ライヴをやると、自然にそうなるだけで」
PATCH「ライヴになると、いかに俺がかっこいいかってことを見せつけてやる! って。そんなこと思ってるわけじゃないけど、そうなっちゃいますよね」

生音で演奏できれば、場所は関係ない
──ただ、“この3人だから盛り上がる”っていうのも、当然あるでしょ? “こいつとだったらバンドがやれる”っていう基準をクリアしてる、っていうか。
PATCH「まぁ、好きじゃないヤツとはやりたくないってだけですけどね。『金になるよ』とか『上手いよ』って言われても、好きじゃないヤツとバンドやってても面 白くないと思うので。最初からバンドをやろうと思って付き合ってたわけじゃないですからね。ウエノさんも、“一緒に酒を飲んでくれる先輩”って感じなので。奢ってくれるし」
ウエノ「そうだよ、おまえ老けて見えるけど、俺のほうが4つも上なんだよなぁ」
楠部「まぁ、知らない人とはできないって断言するわけじゃないけど、気心が知れてるほうが、いいものがすぐにできるやろうし。まぁ、そこまでは考えてないんですけどね。ウエノさんとPATCHさんとは、家も近所やし、普段から一緒に遊んでたりもしたので。ウエノさんには東京タワーに連れていってもらったり」
──東京タワー? 2人で?
楠部「イヤイヤ、2人じゃないですよ(笑)。でも、そういう関係のなかで“時間があれば、音を出そうや”っていうことになったんだと思うし。だから、やっぱり、人ですよね。自分とニオイが似てるかどうかっていうのが、一番大事ですからね。好きな音楽も、まったく同じとまではいかないけど…」
ウエノ「それは大きいよね。同じところがいいと思わないと、バンドはできないから」
楠部「3人とも器用じゃないですから。人に合わせるとかっていうのがなかなかできないんですよ、3人とも。ガーンと音を出して、合うか合わないかってところですよね、要するに。3人で小さいハコのなかで音を出して、曲を作るわけだから。ドキドキしながらやれてるので、いいんじゃないですかねぇ」
──そういう雰囲気がリアルに伝わってくるレコードですよね、『Dead Groovy Action』は。3人が音を出してる姿がイメージしやすいっていうか。
ウエノ「うん、それを目指してるわけじゃないけど、“ミャーン!”ってチョーキングやってるところとか、シンバルを“ジャーン!”って叩いてるのが見えるレコードっていうのがいいと思う」
PATCH「まぁ、バンドが組めて、人前で演奏できて、それだけで最高なんじゃない? おまけにレコードまで出しちゃって。いい人生でした」
ウエノ「もう終わりなのか(笑)」
PATCH「まぁ、心配ですけどね。2人を見てると」
──この先、どうするんだろうって?(笑)
楠部「いやいや、こっちが心配してますよ」
PATCH「そうか。2人はたまにモデルとかもやってるからな。俺が一番マズイのか」
──(笑)で、6月からはツアーがスタートするわけですね。
楠部「そうっすね。3人でツアーを回るのは初めてなので、楽しみです。どうなるかは、やってみないと判んないですけど」
PATCH「ファイナルのLOFT、どうなるかなぁ。サブステージだったらどうしよう? “前売りの状況を見ると、これくらいのキャパでした”とか言われて」
ウエノ「でも、なくはない話だよ」
PATCH「大きいほう目指して頑張るぞ!って(笑)」
ウエノ「悪くないよ、それも。生音で演奏できれば、場所は関係ないと思うよ」
──おー、かっこいい!
PATCH「かっこいいね、ホントに」
──(笑)ツアーでは新曲も演奏するんですか?
ウエノ「やると思うよ。アルバムの曲だけだと、尺が足りないから」
PATCH「俺がアジってもいいんだけどね、30分くらい。国際問題について(笑)」


★Release

Dead Groovy Action

TRIAD/Columbia Music Entertainmnet
COCP-50790
2,800yen (tax in)
IN STORES NOW

★Live Info.
<Radio Caroline Plays“Dead Groovy Action”>
2004年7月8日(木)新宿LOFT Radio Caroline (one man)
OPEN 18:30 / START 19:30
PRICE: advance-2,800yen / door-3,300yen(共にDRINK代別)
【info.】shinjuku LOFT:03-5272-0382

6月21日(月)広島ナミキジャンクション/6月22日(火)福岡DRUM Be-1/6月24日(木)京都磔磔/6月25日(金)大阪十三FANDANGO/6月26日(土)名古屋ell.FITS ALL/6月30日(木)仙台JUNK BOX/7月2日(金)札幌ベッシーホール/7月5日(月)郡山#9/7月6日(火)新潟JUNK BOX
【total info.】VINTAGE ROCK:03-5486-1099

Radio Caroline OFFICIAL WEB SITE http://columbia.jp/radio-c/

Radio Carolineさんから素敵なプレゼントがあります!