1枚目の1曲目と2枚目の最後で繋がってる
――前作『tiger style』を振り返るといかがでしょう?
渡邊 忍「まぁ、いい意味でも悪い意味でも危なっかしいなって(笑)」
山下潤一郎「いいアルバムだなって思って、今でもちょこちょこ聴きます」
一瀬正和「“これがASPARAGUSですよ”みたいなのをちゃんと提示できたんで、次もやりやすかったですね。いろんな面 でいいアルバムなんだろうなって思います」
――今作は曲よりアルバム・リリースの話が先にあったと伺ったのですが。
「このアルバムを出すって決まってから気合入れだしました。でも曲を溜めておくよりも、追い込まれる自分が好きな感じがあるんで。これでアルバムの話がなかったら曲もまだちょっとしかなかったかもしれないし、時間は関係ないですね」
――体質的に追い詰められて力を発揮するタイプなんですか?
「そうですかねぇ。本当はテンパるし嫌なんですけど、もしかしたらそのほうが合ってるのかもしれないって思いました」
――さて今作『KAPPA I』『KAPPA II』は2枚同時発売で、合計22曲も収録ですが、制作期間はどれくらいだったのでしょう?
「まぁ、締め切りまでに(笑)。それこそ20歳頃に作った曲もあるんで、それ考えると制作期間は年単位 になっちゃいますね」
――コンセプト・アルバムではないと紙資料にあったのですが、全曲が出来上がってから2枚に振り分けた感じですか?
「そうですね。レコーディングではこれはどっちっていうのは決めないで、22曲いっぺんに録って後で曲順を考えました」
――他にも曲をたくさん作って選んだ感じですかね?
「いやっ、まぁ、50曲くらいあってそれをどんどん捨てていって……」
潤一郎「ブブッ!!(笑)」
「うっちょ〜んみたいな(笑)。22曲ギリギリです。……カツカツでした」 一瀬「パツンパツンです(笑)」
――(笑)まったく一緒の時期の作品2枚ってことは、その振り分けも難しくなかったです?
「どちらも1曲目は決めていたんですよ。だから曲順はその1曲目からの流れで決めていった感じですね。一応2枚で1枚ってイメージがありつつも、セカンドとサードだし。だから1枚に対しての良い流れを組めればと思って決めてましたね」
――2枚同発だとよく「こっちが好き」とかありそうですけど、今作は『I』もアルバム、『II』もアルバムって感じがすごくします。
「両方流れるようなイメージを持ってますね。要するに1枚目の1曲目と2枚目の最後で繋がってるって感じですね」
――タイトルもそうですもんね。『II』の〈ENDING〉は、いい意味で終わりっぽくない曲調ですし。
「そうですね。タイトルは〈ENDING〉ですけど、むしろあれも始まりみたいなプロローグ的な感じですね」
――アルバムの頭にも戻れるし、さらに次の作品にも繋がるような……。
「知らない間にそういう感じになってました(笑)。あんまり意図してやってないというか、流れですね」

完全にメロディ重視 “テンパリを越えた後の安らぎ”
――曲についてなんですけど、やっぱりどんな場面でもメロが立ってますよね。勢い、スピードばかりを優先すると、よく暴れる為の曲みたいなものになる場合ってある気がするんですけど、そうじゃなくやっぱりメロ。
「完全にメロディ重視ですよね。曲を作る時も、ギターでポロンポロン弾きながら鼻歌で歌っていく感じなんで、要するにリフとか伴奏の感じだとかは後で考えますね。それよりもメロが良い感じの流れでできたら、逆に後はどう料理しても多分いいものになるんじゃないかなと思って。よくカヴァーとかありますけど、それはやっぱ元がいいから何をどうやっても格好いいんですよ、そういう感じです。メロとコードの流れ、AメロからBに行く流れ、Bからサビに行く流れ、そういうのですよね」
――曲はどんな時に作ることが多いですか?
「まぁ、追い詰められた時に作ります(笑)。たま〜にフッと浮かんだりすることもありますけどね。だいたいそういう時は誰かの曲だったりしますね(笑)。“あ〜、パクってた”って。ギター持って作るぞってなれば、そういうのも敏感に感じ取るんですけど、歩いてていきなり“おっ! これきたっ!”って思う曲ほどパクってますね。まぁ、たまたま街で流れてたんでしょうね(笑)」
――流れてた曲の続きを作っちゃったり(笑)。あと今回『II』の〈NAP〉が日本語曲になってますね。
「それがさっき言った20歳前半の曲ですね。昔、ベースの潤くんと4人編成でバンドをやってて、前やってたCAPTAIN HEDGE HOGのもっと初期の頃で、その頃はまだ日本語でやってたんですよ。その頃の曲で、たまたまライヴの空き時間に潤くんとちょっと歌ってたらドラムの一瀬が“それいいじゃん”って。かといって、間違われないでほしいのは、このアルバムに曲が足りないからじゃなく純粋にアルバムに入れたかったんですよね。日本語に思い入れがあるわけでもないし、日本語詞に挑戦しましたみたいな変な気負いもないし。ホント流れですよね」
一瀬「スタジオで聴いて、もう“すげぇいいな”って思いましたね。忍が作ってくる曲は、いつも“いいな”とは思うんですけど、それはまだ荒削りというか。でもできてる曲を潤くんもハモって歌われると、良いに決まってるじゃないですか。メロとコードの感じがすごい綺麗で、やってないのはもったいないなって」
――日本語って判らないくらいですし、アルバムの流れをまったく乱さないですもんね。英詞曲は初めから英語を頭で考えるんですか?
「曲が先で宇宙語で歌って、詞はそれからですね。まぁ、15歳くらいまでずっと海外に居たんで、その流れが……(笑)」
一同「あははは(笑)」
「うっちょ〜んみたいな(笑)。ま、嘘ですけどね。辞書見ながら頑張って奮闘しております」
――結構な労力って感じですか?
「そうですね、やってる時はもう相当ゲッソリしてましたけどね。でもやっぱり人間って追い詰められるとできるんだなって思いますよ。追い詰められた時に、ホントにすんごいテンパっちゃったら多分できないです。“テンパリを越えた後の安らぎ”みたいな、そういう時に何か見えてくるんですよね。まぁ、例えるならば“スピードの向こう側”みたいな感じですよ(笑)」
――へぇ〜(笑)。何が越えさせるんですかねぇ。
「何ですかねぇ? 心の中のドーパミンか何かが出てくるんでしょうね」

曲の雰囲気で熱いものを感じてほしい
――詞の内容なんですが、自分の半径何メートルの出来事だったり、遠くで起きてる現実を描きながら実はそれは身近なことにも近く感じさせたりして……。
「最終的には身近なことに持ってくるって感じですかね。かと言って詞に対してそんなに思い入れを持ってないんで、その時の曲のイメージだったりペンを持った時の自分の気持ちの流れだったりですね。実は僕には“俺のメッセージを聞いてくれ”みたいな熱いものはあまりなくて、むしろ曲の雰囲気で熱いものを感じてほしい。自分で洋楽を聴いて“これ熱いわぁ〜”と思っても、それは詞の内容じゃないから。その何かすごい……“何か”じゃないですか。それですよね」
――洋楽の“うわっ”ってくる独特なあの感じがありますもんね。アレンジとかもサビの前に音を抜いていってサビでコーラス全開になったり、流れは流れてるんですけどすごく引っ掛かりがありますね。
「曲を格好良くするには難しいことをしたり考えてやったりするより、ちょっとしたシンプルなことでその曲は自然と良くなるだろうって。シンプルなことっていうのはあんまり考え込まないことだったりするのかもしれないですし。ただ“ビヤ〜”っと垂れ流しにやるんじゃなく、一滴一滴にしてみたり放水したり散布したりとか、水の放出の仕方を勝手に選んでたって感じですね」
――それがセンスですもんね。今作『II』の〈I KNOW EVERYTHING〉と〈LOCAL TRAIN〉は山下さん作曲ですが。
「やっぱり俺の中にないものだったんで不思議ちゃんですよ。サビメロとか最初覚えるの大変でしたね。自分の曲とは違いますし、“なんじゃこりゃ?”みたいな(笑)。ほんと不思議ちゃんというか、モダンチョキチョキズみたいな、そういう感じでした(笑)。……言わんとしてるところは伝わると思うんですけど」
――そのニュアンスはなんだかよく判りますね(笑)。そしてコーラスも綺麗。
「それは2人の内側から出てくる白血球の量 がすごいんじゃないですか?」
――また分泌系だ(笑)。レコーディングは順調でしたか?
「結構淡々と、良いことも悪いこともねぇみたいな(笑)。ま、音源ができたことは良いことなんですけど」
一瀬「普通だったね(笑)。みんな風邪もひかず体壊さなかったのは良かったね。そういった意味で順調でした。 忍、元気だったよね?(笑) 歌すげぇ調子良くて」
「そうですね、やっぱりテンパリの向こう側に行っちゃってたんで(笑)」
一瀬「格好良かったなぁ、忍。“ヒト”じゃなかったよね……」
「ヒトゲノムみたいな(笑)。……まぁ、3人ともそうだったんですけど、完全にヒトを超えて、……“カッパ”になっちゃったの!! そこでこのタイトル。気づいちゃったの(笑)」
――繋がりましたね(笑)。完成していかがですか?
潤一郎「すんなりって感じでしたね。一番最初の弾き語りのイメージをバンドでそのまんま綺麗に整えて、曲がることなくできました。そのままで良かったんだなって思います」
一瀬「似てるバンドはそんないないんじゃないかなって。変な曲の幅の広がり方とか、自分たちのオリジナリティは確実に出せてるし、ASPARAGUSの雰囲気を出せたからいいんじゃないですかね。後はライヴをもっと見てもらいたいですね」
――今後についてお聞かせ下さい。
「自分の中で向上したいのはあるんですけど、それは技術的なことですね。強い野望があるわけじゃないんで、曲作れたり、CD作ったり、ライヴやれたりっていう環境がいつまでもあったらいいですね。……あとはそうだな、パン屋さんになりたいですね(笑)」


◆RELEASE  
KAPPA I (2nd Album)
STACKERS/3P3B Ltd.
STKS-3 2,300yen (tax in)
KAPPA II (3rd Album)
PIZZA OF DEATH RECORDS
PZCA-22 2,300yen (tax in)

◆LIVE  

<ASPARAGUS BKTS TOUR>
6月10日(木)名古屋HUCK FINN
(GUEST BAND:NOT REBOUND)
OPEN 18:30 / START 19:00
PRICE: advance-2,000yen / door-2,500yen(+1DRINK)
【INFO.】HUCK FINN:052-733-8347
6月11日(金)難波BEARS (one man)
OPEN 18:30 / START 19:00
PRICE: advance-2,000yen / door-2,500yen(+1DRINK)
【INFO.】BEARS:06-6649-5564
6月12日(土)下北沢SHELTER (one man)
OPEN 18:30 / START 19:00
PRICE: advance-2,000yen / door-2,500yen(+1DRINK)
【INFO.】shimokitazawa SHELTER:03-3466-7430

<SET YOU FREE vol.120〜lostage "P.S. I miss you" レコ発>
7月21日(水)下北沢SHELTER
w) lostage / SOME SMALL HOPE
OPEN 18:30 / START 19:00
PRICE: advance-2,000yen / door-2,300yen(+1DRINK)
【INFO.】shimokitazawa SHELTER:03-3466-7430

<KAPPA TOUR>
8月20日(金)横浜 CLUB24/8月21日(土)千葉 LOOK/8月22日(日)水戸 LIGHT HOUSE/8月24日(火)郡山 CLUB #9/8月25日(水)宇都宮 VOGUE/8月27日(金)金沢 VANVAN V4/8月28日(土)富山もみの木ハウス/8月29日(日)長野 JUNK BOX/8月31日(火)新潟 JUNK BOX mini/9月1日(水)仙台JUNK BOX/9月3日(金)弘前MAG-NET/9月4日(土)秋田Club SWINDLE/9月6日(月)札幌 BESSIE HALL/9月10日(金)名古屋 APOLLO THEATER/9月11日(土)大阪十三 FANDANGO/9月12日(日)岡山 PEPPER LAND/9月14日(火)高知 CARAVAN SARY/9月15日(水)広島並木 JUNCTION/9月17日(金)佐賀 GEILS/9月18日(土)長崎 STUDIO DO/9月19日(日)博多 VIVRE HALL/9月21日(火)京都 WHOOPEE'S/9月23日(木)四日市 CHAOS/9月24日(金)豊橋 LAHAINA/9月25日(土)沼津 VARSAL/10月1日(金)町田 PLAY HOUSE/10月2日(土)熊谷 VOGUE/10月3日(日)高崎 club FLEEZ/10月10日(日)渋谷O-East

【TOTAL INFO.】3P3B Ltd.:03-5738-9388

3P3B Ltd. OFFICIAL WEB SITE http://www.3p3b.co.jp/