自分で自分を待望してしまいました(笑)
――5年振りのソロ・アルバムをリリースされましたが、この中に収録されている曲はいつ頃から書き溜めていたものなんですか?
「厳密に言いますと、2000年から2003年くらいの作品が主ですね」
――では、新たにこのアルバムに収録する為に書いた曲っていうのはありますか?
「〈サヨナラホームタウン〉というインストの曲は急遽、書いたものですね。まず、昔からある楽曲を吐き出さないことには、どんどんウチの押し入れに溜まっていく一方なので(笑)」
――アハハ(笑)。ご自身の解説の中でも書かれてましたが、1曲目の〈ミスター・フィーリン・ファイン〉は “戻ってきたよ”というような内容の曲なので、その曲も最近、書かれたのかなぁって思ってたんです。
「結構、そうでもないですね。その曲は2〜3年くらい前に書いたもので」
――あ、じゃ、その頃からご自身の中でもそういう想いがあったんですか?
「そうですね、やっぱりある曲を書いていても、“このアルバムには向いてないな”って引っ込めちゃうことが割とあるんですよね、バンドでやっている場合には。だから、自分で自分を待望してしまったと(笑)」
――でもこの曲を聴いて、私は本当に「お帰りなさい!」って思いました(笑)。
「あっ、有難うございます(笑)」
――それに1曲目なので、尚更そういう気持ちが強いのかなとも思ったんですが、やっぱり1曲目に持ってきたっていうのは、そういう気持ちもあったんですか?
「そうですね、割と(笑)。景気良いかなぁと思いまして」
――あの、私はホフディランを、ごめんなさい、余り聴いたことがなかったんですが、こういうテイストの曲もあるんだなぁって思って、意外な反面 、面白いなぁとも思いました。
「あ、そうですね。結構、最初に出たイメージが良かれ悪しかれ“のんきな”とか“ほんわか”とか、“ほのぼの”とか言われてまして(笑)、それはもう、ある一面 に過ぎない感じだったんですよね。だからこういう曲はゴロゴロあるみたいなグループだったんですよ。けど、世に出る時…タモさんの『ミュージック・ステーション』とかに出る時はほんわかとした曲をプッシュしてたんで(笑)、日本中のお茶の間では“ほんわか”が浸透する訳ですね」
――なるほど(笑)。確かにそういうイメージは強いですよね。ご自身では、そういったイメージを持たれることについてはどう思わていましたか?
「“あ、面白いなぁ”と思ってましたよ、そのギャップが」
――“嫌だなぁ”という感じではなかったですか?
「あんまり言われ過ぎるというか、一時期“フォーキー”という単語が持てはやされてましたよね。それは抵抗ありましたけどね。“フォーキーってなんだ?”っていう。“フォーキーの中核”みたいに言われてまして、まぁそれで、……稼ぎましたけど(笑)」
――アハハハ(笑)。あと私、ワタナベさんご自身を“猫みたいな”っていうイメージがあって。
「あっ、そうですか(笑)。声が?」
――声も雰囲気も。人って、猫系と犬系に分かれるじゃないですか。
「あー、犬は獰猛ですからね(笑)」
――あと、ミステリアスな感じも猫っぽくて。
「ミステリアスな部分は大事ですね。大事にしなくてもミステリアスになっちゃうんですけど、僕の場合(笑)」
――あんまり多くを語らないイメージもありますよね。
「そうみたいですね。語りまくってるつもりではいるんですが。相棒(小宮山雄飛)にすらあまり、多くを語っていなかったような…」
――でも、何も喋らなくても通じ合ってるような感じですよね。
「そうですね、正にそういう関係ですよ。もし、向こうが何か言ってきたら“いちいち言葉で言うなよ、判ってるよ、そんぐらい”って。向こうもそうだろうしね」

ライヴは“ベスト・オブ・ワタナベイビー”な選曲で
――凄く理想的な関係ですよね。…それではアルバムの話に戻りますけれども、この『ベビースター』というタイトルはどういう感じで付けたんですか?
「まず、“好かれたいなぁ”と思ってたんですよね。それで、“キャッチーで愛されやすいようなタイトルが良いなぁ”と思いまして。…あの、おばあちゃんとかがね、僕のことを“この人、ベイビーさん”って紹介されると、“ベビーさん、ベビーさん”って言うんですよね(笑)。普段“ベビーさん”って呼ばれる機会がなくて、それが“キャッチーだなぁ”と思いまして(笑)。例えば、『ベイビー・イッツ・ユー』とかだと普通 なんですよね。『試験管ベビー』とか『ベビースター』とかそういう単語が良いなぁと。『試験管〜』のほうは、最近そういうバンドがいそうじゃないですか。で、『ベビースター』のほうが声に合ってるなぁと、それだけなんですけどね(笑)」
――なるほど。でも、このタイトルは凄い合ってるなぁと思いました。それで、この作品は11曲収録されていますが、〈サヨナラホームタウン〉は、先程も仰られましたがこのアルバムの為に書かれたインストで。何故、インストにしようと?
「あのねぇ、それはちょっといやらしい話なんですが。アルバム全体の分数がちょっと短かったんですよ。それで、2千幾らの値段を付けて売る以上ね、やっぱり40分は超えなきゃなぁって思ったんですよね(笑)」
――アハハハハ(笑)。
「で、何故インストをわざわざ収録したかと言うと、そこが僕の、オトナのいやらしいところでして。“これを上手くやれば、インストの仕事が来るんじゃないかなぁ”って、それだけなんですけどね(笑)」
――ホ、ホントですか?(笑)
「CMの仕事とか来たら良いんじゃないかなーって(笑)」
――アハハ(笑)。それで、この曲は引越しをされる前に書いたとか。
「ええ、まだ(引越しは)出来てないんですけどね(笑)」
――あ、そうなんですか(笑)。カーテンを開けて作ったみたいなことが解説にありましたが、やはりその窓から見える風景に影響を受けたりっていうようなことはありました?
「あ、ちょっとありますね。インストを書こうと思って書いたことがなかったので、“インストってどうやって作るんだ?”みたいな(笑)。なので、その日のムードを利用して書きました」
――そのインストを書いた時間帯って、夕方ですか?
「夕方ですね」
――そんな感じします(笑)。では、初めて作ろうと思って書いたインストを聴いてみた感触はどうでしたか?
「“これはモノになるのかなぁ?”ってことをずっと思ってましたね。何しろ、自宅でチューニングもせずに、適当に録ったものをスタジオに持って行って、どう料理するかっていう感じだったんで。でも、いろんなアレンジを施した結果 、最初のラフ・ミックスが一番良いなって」
――あ、そうなんですか。凄い!
「(笑)だから雑ですよ」
――そんな(笑)。またインストを作ってみたいっていうことは?
「そうですね、インストも悪くないなっていうか。とにかく、歌詞と声と歌い方がクローズアップされ過ぎてますんでね、それ以外の、楽器のプレイヤーとしても自分をクローズアップするのは楽しいな、という発見はありましたね」
――なるほど。これって、引越しをする前提だったからこのタイトルを付けたんですか?
「そうです。で、次が〈昼夜逆転〉という曲になるであろうということが大体、決まってまして。で、字面 を見ると“逆転サヨナラホームラン”に見えるかなぁと」
――あ〜、………(困惑)。
「ふふっ(笑)。最後の最後に勝っちゃう、みたいな(笑)」
――あー、えっと、凄く良い意味ですね(笑)。
「まぁ、駄洒落です、ね(笑)」
――フフフ。えっと、今回、サード・クラスが参加してますが、元々仲良しだったんですか?
「えっとね、結構、最近ですね。彼ら、特にリーダーのはかまだ君がホフディラン時代から聴いて下さっていたようで。で、今年の1月にイヴェントに誘われて初めて一緒に演奏して、それがドンピシャでね。余りに気に入っちゃって。それで、“コーラスやってもらえませんかねぇ?”って下手に出てお願いしたら“出て良いんですか!?”って」
――そうなりますよ! だってファンだったら、どんなことがあっても優先しますもん。
「なんかそんな感じだったみたいで(笑)」
――サード・クラスのメンバーにしてみたら本当に幸せな出来事だったと思いますよ。そして、この作品のレコ発ライヴが大阪・名古屋・東京でありますよね。東京は新宿ロフトで行われますが、ロフトでライヴを演られることは、ファンの方々にしても感慨深いものがあると思うんですけれども、ご自身はどういった印象がありますか?
「まず、思いのほか人が入る場所なんで、それが心配だから“大丈夫なのか?”という議論を交わしましたけどね(笑)。その反面 、毎月プラスワンでもやってるもんですから[註:『風雲!ビートルズ大学』に宮永正隆氏と共に出演中]、自分の庭みたいな感覚もあるっていう、何とも不思議な感じですね」
――では最後に月並みですが、ファンの方々へメッセージを頂けますか?
「今回の作品は、バンド・サウンドではないんですよね。自分一人で演ってるような曲が結構、ございまして。要するに、ギターの僕とベースの僕と、ヴォーカルの僕とコーラスの僕がプレイしてる訳じゃないですか。それで、“僕って良いバンドだなぁ”と(笑)。“タイム感とか呼吸がバッチリ合ってるなぁ、コイツら”っていうところが伝わればなぁと思いますね。ライヴは、サード・クラスと一緒なんですけど、以前のレパートリーも演っちゃおうかなと思ってるんですよね。だから割と、“ベスト・オブ・ワタナベイビー”というような選曲にするつもりなので、面 白いと思います。それから、今回、新レーベルに移籍して心機一転、非常に楽しんで仕事をしてるので、この、無理せずに心から楽しんでいる雰囲気を、僭越ながら分けて差し上げたいと思っております(笑)」


●Release info.

ベビースター

ジェネオン エンタテインメント
GNCL1006 2,730yen (tax in)
IN STORES NOW

●Live info.
<ベビースターツアー2004>
2004年6月10日(木)新宿LOFT
ワタナベイビー
OPEN 18:00 / START 19:00
PRICE: advance-3,500yen / door-4,000yen(共にDRINK代別)
【info.】FLIP SIDE: 03-3470-9999(平日 11:00〜18:00)
6月3日(木)大阪バナナホール/6月4日(金)名古屋ハートランドスタジオ

ワタナベイビー OFFICIAL WEB SITE http://www.aloha.co.jp/NEO_ALOHA/html/ARTIST/BABY.htm