誰もがやりたいであろう、そしてなかなか出来ないストレートなメッセージとストレートなサウンドで活動し続けているストリートビーツがなんと今年で結成20周年を迎える。今も変わらず本来のパンクロック、ロックンロールを体現し続け、熱い活動を繰り広げている彼らに話を伺った。 (interview : 北村ヂン)

──ストリートビーツ二十周年ということですが、OKIさんは最初に組んだバンドがストリートビーツだったんですよね。
OKI そうですね。
──バンドをやるんだったらこの名前で、っていうのはあったんですか。
OKI 18歳くらいの時に作ったんだけど、他は頭になかったですね。まあその時はまさかこんなに長くやることになるとは思ってなかったけどね。
──そこに誘われてSEIZIさんが参加するわけですけど。
SEIZI そうだね、だからオレもずっとビーツだけだし、他の看板を背負った事ないからね。
──何にしてもそうだと思うんですけど、20年間も一つの事をやり続けるって大変な事だと思いますけど。
OKI うん、他人がやった事だったらオレもそう思うかもしれないね。でも自分らに関しては、もうそんなに経ったのかっていうくらいだね。漠然とした先を見てやったことっていうのはなくって、常に目の前の事を見てやってきてたからね。ただ、バンドを組んでそんなに長く続く事ってなかなかないわけで、自分らがここまで長くやれてきたっていうのは、支持して、聴いてくれた人がいたからこその事なんで、それは本当に感謝してますね。
──今回のベストを聴いて思ったんですが、インディーズ時代のすごい昔の曲から、最近のライブで新録した音源まで入っていますけど、その時々で曲調とかは変化してますけど、根っこの部分は変わっていないんですよね。最初から芯の部分にブレがないからこそ、これだけ続いて来たのかなって思いました。
OKI そうですね。まあ、同じ人間がやってるからっていうこともありますけど、取っ替え引っ替え「今度は別 の服を着てみよう」みたいな感じでやらなかったからっていう事なんじゃないですかね。自分らは取って付けたような事をしてこなかったし、したくもなかったから。
──多分そうやってきたからこそ、ビーツの曲は色んな世代のリスナーに響くんでしょうね。
OKI ライブでも十代から四十代まで色んな人たちが集まってますからね。普通 にビーツ結成よりも後に生まれた子とかも来てくれてるしね。今回二十周年を迎えることが出来て、ありがたいのと同時に、誇らしい事があるとしたら、それは今、いい音が出せているという事ですね。それが一番大きいですよ。今がしょぼしょぼになってたら、とてもじゃないけどこんなアルバム出せないですから。
──そうだとしたら新録や新曲は絶対入れないでしょうしね。
OKI ファンの人も、そこを一番喜んでくれていると思うよ。今も元気にやっていて、一番新しい曲と新しいライブがバンッてちゃんと入ってるって事が。ノスタルジーだけで終わっていない、「今」を入れられたっていうのがね。
──それも含めて、これはただ代表曲を詰め込んだだけのベストアルバムじゃないと思うんですよ。きっとメンバー的にも一つのアルバムという認識で出したんだと思いますけど。
OKI そうですね。今回、これを作るに当たってファンの人たちからメールや手紙をたくさんもらったんですが、そのリクエストが、いわゆる代表的な曲にばっかり集中してあとは捨て曲、みたいな感じじゃなく、全曲とまでは言わないけれど「ああ、こんな曲も知ってくれてるんだ」みたいな意見がたくさん来たんですよ。思いがけない曲がフェイバリットだって言ってくれて、それについてのエピソードが連綿と綴られていて…。それって本当に財産だなって思いましたね。全部のリクエストに答えることは出来ないけど、みんなの思い入れや、気持ちは全部受け取めて、収録時間ギリギリまで曲を詰め込みました。バンドとリスナーの人たちと、共に歩んできた二十年間ですからね。もちろんそれぞれの人生なんだけど、その時々で音楽を通 じてリンク出来てきたわけじゃないですか。それをお互いに喜び会える作品にしたかったんですよ。
──それだけ、ダイレクトなメッセージが届くっていうのは、ビーツの曲がたくさんの人の人生に影響を与えてきたっていう証拠でしょうね
OKI そういう意味ではバンドを長く続けてきたことにも意味があるのかなって思いますね。長くやってきた分それに関わる人の数もエピソードも増えるわけだし。それも昨日今日の話じゃないんで、重みもありますしね。中にはもう何年もライブには行けてないっていうような人もいて、例えば子供が生まれたからとか、男だって三十代ともなればなかなか自由な時間もないし…でも今回アニバーサリーっていうこういうきっかけでメッセージを送ってくれた人たちが沢山いて、本当に読んで感動するような長文の手紙とかももらったし。すごくバンドとリスナーとがグッと熱くなれた感じがしましたね。
──ライブとかを観てても、ビーツってバンドとリスナーの関係性っていうのが、とてもいい感じがしますね。
OKI 本当にありがたいお客さんだっていう気持ちは常にありますね。
──MCにしろ歌詞にしろ、上から投げかけてるっていうのではなく、同じ立場に立っての対話って感じですよね。
OKI それはもう、パンクロックの基本だと思うから。とはいえ「みんな一つだよ」みたいな、運命共同体的な幻想を抱かせるのも好きじゃないんで、もうちょっと突き放してるというか、ベタベタしてない関係だと思いますよ。
──個々の思考を促すような…。
OKI そう、「個々の」っていうのは重要ですよね。
──ビーツの曲にはメッセージ性もすごいあると思いますけど、「オレは教祖だぜ、ついてこい!」みたいなノリでは全くないですからね。
OKI いらないですね、そんな物は。ヘドが出ますね。
──ライブも、みんな全然バラバラの格好で来てますし。
OKI バラバラですね、世代も格好も。「スタイル」っていう言葉が好きじゃないんですよ。いわゆるパンクロック的なものとか、もちろんアリだとは思いますけど、みんながみんな同じ格好してっていうのはちょっと違うと思いますね。重要なのはもっと本質的な所っていうかね。レザーが好きなヤツは革ジャンを着ればいいし、会社帰りのヤツはネクタイ締めたまま来ればいいし、若いヤツには若いヤツなりの格好ってあるだろうし、それぞれ自分の服を着ればいいんですよ。
──ビーツからパンクなどに対するリスペクトっていうのはすごく感じますし、例えばジョー・ストラマーからは多大な影響を受けているとは思いますけど、決してその格好をマネしてやっているわけじゃないですからね。
OKI そうですね。マネをしちゃったら、ジョーのアティテュードからはかけ離れちゃうと思うんですよ。自分のやり方でやらないと。
──ジョー・ストラマーと同じ格好をしたらジョーになれるかって言ったら全然違いますもんね。
OKI むしろ逆ですからね。自分もガキンチョの時、ジョーに憧れてブラックテレキャスターを買って、低く構えて、っていう所から始まったんだけど、あとは自分次第。それで今日までやって来たからね。
──クラッシュに影響を受けたテレキャスとレスポールっていう二本のギターが、今では完全にビーツのギターになってますからね。
OKI 今回のジャケットは友達の高橋ヒロシ(漫画家)に「ギターの絵を描いてくれって」頼んだんですけど。それに関してまずみんなに相談したんですよ。「TWO BLACK GUITARSこそがストリートビーツのヒストリーを表す生き証人だと思う。今回はそれをジャケットにしようと思ってるんだけどどう思う」って。そしたらATSUSHIが「すごい! 鳥肌立つよ、見たい」って言ってくれたから。高橋にそういう思いを込めて書いてもらったんですよね。
──ATSUSHIさんとYAMANEさんは、以前は外からビーツを見てきて、今では中に入り込んで一緒にやっているわけですけど、そういう立場から見たこのバンドって、どんなイメージですか。
ATSUSHI 多分、みんなが思ってる通りだと思うよ。OKIさんって常々「ビーツ以外にやることはなんにもない」って言ってるんだけど(笑)、近くで見てて、これは冗談じゃなくて、ホントにそうなんだなって感じるんですよ。それが自分的にもわかっているので、本当にそういう風にやってきた二十年なんだなっていう気がしますね。
──それだけの思いを持ってやっているバンドに加わるっていう事に対してプレッシャーはなかったですか。
ATSUSHI いや、プレッシャーっていうよりはとりあえず嬉しいっていう気持ちの方が先でしたね。「あの曲がプレイ出来るんだ」みたいな。プレッシャーっていうのは入ってからの方が大きかったですよ。…最初は楽しかった(笑)
OKI 最初は!?(爆笑)
YAMANE 自分は入ってからライブまでの期間が短かったんで、最初は大変でしたね。今は段々楽しくなりつつあります。…まだちょっとプレッシャーはありますけどね(笑)
ATSUSHI ビーツって曲がいっぱいあるんだけど、YAMANEはやる予定がない曲でも密かに練習してたりするんですよね。それで「今度はあの曲やろうか」みたいな話が出た時に「よっしゃー!」とか思ってるタイプなんですよ。
YAMANE バンドでやるやらない関係なしに、普通に好きな曲だったら家で弾いたりするじゃないですか。ビーツの曲はホント大好きなんで、やる予定がなくても練習してますし、一回やったらずっと残ってますね。
SEIZI 最初からいたオレが思うには、このバンドのいい所って、例えばベストの一曲目に入っている「BOYS BE A HERO」の頃から「夢を手に入れろ、自分のフォームで」って歌っていて、一人一人が自分の人生を重ね合わせて聴くことが出来ると思うし、一番新しい曲、ベスト二枚目の最後に入っている「拳を握って立つ男」でも「心を折るな、くじけるな」って歌ってて、それを聴く人が自分の人生を顧みれる。そういう普遍性っていうのがテーマにあるんだけど、それをやるのって簡単なようで難しいと思うんですよ。そういう事を最初から自然に出来ていたっていうのが、オレがこのバンドを好きな理由なんですけどね。
──「あるよねー」とか「いいこと歌ってるよ」みたいな共感とも違いますよね。もっと深く心に触れて来る感じというか。
OKI それは、オレの詞が特別な視点や、気持ちで書いたものじゃないからだと思いますね。自分は自分でしかないわけだから、自分以外の何者かになりたいと思ったこともないし、自分以外の何者かを演じてみたこともないんで。18の頃は18なりの、20歳なら20歳なりの、30なら30なりの視点があって、それを自然に歌っているから、誰かの人生の、あるシチュエーションに重ね合わせることができるんだと思うんですよ。それがなければ歌っていうのは意味がないと思うし。どこかの高見から「聴きなさい、君たち」みたいな、そんなもの聴きたくないし、ロックとは真逆な物だと思う。一番嫌いな物ですからね。ビーツでは「オレはこう感じている」っていうことを、ただ歌っているだけで「アナタはどう思う?」とすら聞いていないから。それって共感とは紙一重なのかもしれないけど、明らかに違う物だと思うからね。
──そういう事を無意識か意識的かわからないけど最初からちゃんとやれていた。
SEIZI いつからそうなれたのかはわからないけどね。
OKI ただ、好きなようにやれば、自分たちが好きなようになるだけ。それ以外のことをやらなかったからよかったんじゃないの? そこに自分のやり方とか、自分の信じたものが現れるわけで、さっき芯がブレてないって言ってもらったけど、オレは音楽もそうだけど、それ以外でもそういう人なんですよ。酒は飲む、煙草は吸う! 変えたりはしない!(笑)…頑固なんだよね。ただ一方で「I WANNA CHANGE」っていう歌もあるけど、変わり続けたいっていう思いもあるんだ。矛盾していると思われるかもしれないけど、現状に満足してそこで止まっていたいと思ったこともないんですよ。それは、自分じゃない誰かになりたいっていうんじゃなくて、自分として一カ所に止まらないで、もっと出来る、もっと行けるんじゃないかなっていう意味で。
──ベクトルの方向は同じで、どんどん先に進んでいくというような。
OKI 思うんだけど「今回はこのベクトルでやってダメだったから、今度はあっち行ってみましょうか」っていう人がいるけど、それは自分には理解出来ないですよ。アーティストとしての意味がないと思うし。自分は自分でしかないんだから、自分自身を高めて行きたいし、磨いていきたい。向上心とか、学校みたいなフレーズじゃなくて、当たり前にそれをやっていきたいですね。
──それって当たり前の事なんだけど、やれそうでやれない事ですよね。
OKI そこは格闘だからね。
──そういう意味でストリートビーツって常に日本のロックの流れの中で独特な立ち位 置にいると思うんですよ。バンドブームの頃もそこに乗っかってなかったし、パンクが流行った時もそこに属している感じはなかったし。
OKI うん、…〜シーンとかそういう括りに積極的に入っていきたいと思ったことはないからね。そういう物に属さない、縛られないっていうことこそが、自分の中でのパンクロックと非常にイコールなものなんで。
──パンクから非常に影響は受けているけど、ストリートビーツの事をパンクバンドだって思ってる人って少ないと思いますしね。
OKI 自分らはパンクバンドだって言ってないですからね。もちろんパンクロックが好きなヤツも聴いてくれてるけど、一方でそういう、うるさい音楽を全く聴かない人も聴いてくれてる。だからそういう、いわゆるパンクシーンみたいなものに入りたいと思った事はなかったですね。ただ「レベルミュージック」をやって来たという自負はあるんですよ。今じゃ、パンクって一体何なんだっていうくらい散漫なものになってしまっているんで、パンクロックというよりも、本来の意味でのレベルミュージック。反逆し、行動していく歌を歌っていきたい。それを、今回タイトルに「REBEL SONGS」ってつけた事によって改めて確認できました。
──20年間に渡ってやってきた沢山の曲。それを一言で表す言葉としてピッタリだと思いますよ。
OKI そう行ってもらえると嬉しいです。ストリートビーツやレベルミュージックっていうのが「一つのジャンルだ」とは言わないまでも、他の誰でもない、自分たちはこういう事をやって来たっていうのを表せている物になっているとは思ってますね。そしてこれからもそうやって行けるかな、そういう自負はあります。
──それでは最後に、これから始まる二十周年のツアーと、ファイナルのロフトへ向けての意気込みをお願いします。
YAMANE 今回は結構自分の中で思っている事があるんですが、今まで以上に楽しみたい。それをテーマにしてやろうと思っています。
ATSUSHI 今本当にバンドの周りがいい感じで来ていると思うんで、オレは結構祭りだっていう感じで、めいいっぱい楽しんでいきたいですね。 SEIZI いつも通り出せる物を全てを出すだけです!
OKI 今回はアニバーサリーっていうことでいつも以上に楽しみにしてくれているお客さんもいると思うし、何年か振りで来てくれる人もいると思うし。その中で、今の方が昔より全然格好いいじゃんって思わせたいんで、そういう姿を各地で見せて回っていきたいですね。そしてやっぱり、次のアルバムが楽しみだなって思えるような次へとつながるライブをやりたいですね。やっぱり生まれた街広島と、東京だったらロフトへのこだわりっていうのはあるんで、そこでツアーファイナルをやらせてもらえるっていうのはすごく嬉しいし、それに答えるようないいライブにしたいですね。


◆LIVE
20th ANNIVERSARY TOUR 「拳を握って立つ男」
4月10日(土) 北九州 MARCUS
4月11日(日) 神戸 CHICKEN GEORGE
4月13日(火) 松山 SALON KITTY
4月17日(土) 京都 MUSE HALL
4月18日(日) 豊橋 LAHAINA
4月29日(祝) 長野 Live House J
5月05日(祝) 名古屋 CLUB QUATTRO
5月08日(土) 仙台 CLUB JUNK BOX
5月15日(土) 福岡 DRUM Be-1
5月16日(日) 大阪 BIG CAT
5月23日(日) 札幌 KRAPS HALL .

★結成20周年記念LIVE★
6月12日(土) 広島 NAMIKI JUNCTION
6月19日(土) 東京 新宿LOFT[TOUR FINAL]

◆RELEASE
REBEL SONGS
VICL-61313-4
3570yen(tax in)
NOW OUT