空前絶後の人気を誇る怪物サイト管理人を直撃!

“Webやぎの目”をあなたは知っているだろうか? “Webやぎの目”とは要するに林 雄司さんという全くの一個人が運営する個人サイトで、ゆるい死にそうになった体験談の投稿コーナーとして大ブレイクし、本やTV番組にまでなった有名な『死ぬ かと思った』という投稿コーナーや、多い時には1日に3回も更新される林さんのコラムなど他にもいろんな楽しいコーナーがあるのだが、とにかく超絶な人気で1日のヒット数は何と現在平均3万ヒット(!!!!)なんだそうである。  その“Webやぎの目”林さんがトークイベントとして我がロフトプラスワンでいつも定期的に面 白い企画のトークイベントをやってくれていて、これまたいつもお客さんが入りきれない程の大人気なのだが、今回はそんなサイトもイベントもスーパー人気の“Webやぎの目”管理人の林くんにお話を伺ってその人気の秘密を探ってみることにした。(interview:シンスケ横山)


モテたかったんですかね(笑)。人気者になりたかったんですよ、きっと
──そもそも最初に個人でサイトを立ち上げたキッカケは何だったんですか?
「デジカメを出始めの時に買ったんですよ。それで知人の結婚式の帰りに酔っぱらってなぜかいろんなトイレの写 真をそのデジカメで撮ってて、帰ってその写真見たら面白くて、これはイイ物を手に入れたと思い(笑)、何とかまとめて人に見せられないかなぁって考えて、それで“東京トイレマップ”っていう都内のいろんなトイレの写 真をコメントと一緒に載せたHPを立ち上げたんです」
──へぇ、最初から“やぎの目”じゃなかったんですね。
「ええ。それでその“東京トイレマップ”用に駅のトイレに写真を撮りに行くと、駅のベンチで酔っぱらいのサラリーマンがいつもゴロゴロ寝てるじゃないですか? それも何か面 白いからトイレ撮るついでにいつも撮ってて(笑)、気付いたらそれも写真がたまってたんで、こういうトイレ以外の写 真もいろいろ見せられるサイトを作りたいなぁと思ったんですよ。それで現在の“Webやぎの目”を始めたんです」
──その時に何か目標とするもの、目指す場所みたいなのはあったんでしょうか?
「特別に何か目的とかは考えてなかったです。仕事とも関係ないし、あるとしたら……モテたかったんですかね(笑)。人気者になりたかったんですよ、きっと。昔から友達がいないので、面 白いことを思い付いてもそれを言う相手も機会もなかったんですよね。それでこのオレが面 白いと思うネタや題材なんかを何とか後世に残したいとどこかで思ったんでしょうか」
──ところでこの“Webやぎの目”の“やぎの目”って、タイトルは何か意味があるんですか?
「全然意味ないです。最初は2日間くらい“サロン・ド・林”って名前でやってたんですが(笑)、いくら何でもこれはないなと思って。元々動物のやぎの目が好きだったんですよね。黒目が横に伸びてて凄いヘンで、子供の時に動物園でそれを見てショックを受けて、家帰ってからやぎの絵をずっと描いてたんです。それでサイト立ち上げようと思った時にたまたまその子供の時描いたやぎの落書きが出てきたんで、それを表紙にそのまま張り付けただけなんですよね」

“日常の中で気にしたことないけど、よ〜く考えてみると何かヘン”的なモノに興味がある
──“Webやぎの目”が今みたいな凄いことになったのはいつ頃からなんですか?
「始めた頃からすでに結構人気があったんですが、新たに何かみんなが投稿できるようなコーナーを作りたいなぁと思ってた頃、呑みに行った時とかに一緒に呑んでる人達に『死ぬ かと思った体験ってない?』ってよく訊いてたんですよ。そしたらみんな笑える体験談を話すんで、“これは投稿コーナーで募集するとイケるかな?”と思って作ったらいきなり物凄いことになって。いろんなとこで噂になりだしてあれよあれよという間に本にもなって、TVの番組にもなったりしたから、『死ぬ かと思った』がキッカケと言えばキッカケかもしれません」
──その『死ぬかと思った』コーナーの人気も当然あるとは思うんですが、今や“Webやぎの目”は1日約3万ヒットという、個人サイトとしては空前絶後な怪物サイトになったわけですが、予想とかしてましたか? 前に“2ちゃんねる”の管理人のひろゆきに「“2ちゃんねる”がこんな大騒ぎになると予想してた?」って訊いたら「実は予想してた」って言ってて、“ああ、ちゃんと計算してたんだなぁ”と思ったんですけど、林くんはどうでしたか?
「いや、全然。『死ぬかと思った』が本になってちょっと売れた時も、こんな儲けることとか一切考えたこともないくっだらないことでもお金になるんだって凄い驚きました」
──確かに“Webやぎの目”ってそんな超人気サイトなのに、その中にあるコーナーは、全国のガスタンクの写 真ばっか載せてる『ガスタンク2001』とかですもんね(笑)。
「『ガスタンク2001』は正直最初狙ったんです。確かにガスタンク自体好きなんですけど、ガスタンクの写 真ばっか載せてるHPがあったらキチガイっぽく見られて面白いだろうなというか(笑)、照れないでそんなヘンな写 真ばっか集めてたらそういうヘンなもん好き系の人達からの注目も集めるだろうなぁみたいな感じがあったんです。でも、そのつもりでやってたんですが、オレも途中から何だかのめり込んで使命感にかられて訳判んなくなってきて、仕事サボったりしながらいろんなガスタンクの写 真撮りに日本中旅してまわったり、おかしくなってましたね(笑)。でもそしたら何と『ガス・エネルギー新聞』っていうバリバリ真面 目な業界新聞から“ガスタンクに魅せられた男”というお題目での取材依頼が来たんですよ(笑)。あれはムチャクチャ嬉しかったですね」
──それに全国まわって撮ってきた鳩の写真ばっか載っけた『ハトマップ』コーナーとか(笑)。どっちかっつったら世間的にはつまらない、普段誰も気にもかけないものに林くんはいつも興味を持ちますよね。
「つまんないモノとかもいろいろたくさん集めてみると、だんだん面白い気がしてくるんですよね。まぁそれは端から見れば“あの人だんだんおかしくなってきてる”と思われるだけでしょうけど(笑)。でも考えてみると、鳩とかあんなヘンな目の鳥が街中にうじゃうじゃいるのに誰も気にしてない。ガスタンクもあんなバカでかいものが自分の住んでるとこにいきなりドーンってあってヘンなのに、誰も気にしない。それに駅や街や路上とかで寝てる人は最初からどう考えてもおかしいじゃないですか?(笑) そういう“日常の中で気にしたことないけど、よ〜く考えてみると何かヘン”的なモノに興味があるんでしょうね」

昔から何でもそうなんですが、全体を見れないんですよね
──ロフトプラスワンでも“Webやぎの目”としてイベントを定期的に開催して頂いてますが、それも『いいにおいナイト』とか『デカい頭ナイト』とか(笑)、毎回バカバカしくもテーマとコンセプトありきでやってますよね。
「『いいにおいナイト』とか楽しかったですよね。人には言えない好きなにおいを告白し合う『においカミングアウト』っていうコーナーが人気あって、これも『においカミングアウト』って本にまでなったので、これはイベントで是非お客さんに自分の好きなにおいのするものを実際にロフトプラスワンに持参してきてもらい、オレやお客さんみんなでその場で嗅ぎ合おうと(笑)。それってネットじゃ絶対無理なことなんで画期的だと思ったんですが、自分の使い古したヘアバンド持参してきた女の人や(笑)腐った食べ物持ってきた人とかいて、ロフトプラスワン会場中にいろんなヤバイにおいが充満して大変なことになりましたね」
──毎回林くんはお客さんに何か配ったり、逆に持ってこさせたり、お客さんを確信犯的に巻き込むのがとても上手いですよね。
「前にやった『小エロナイト』とかも、自分だけかもしれないけど“これって何かエロっぽいよな”と思ってるものを投稿で集めて発表したイベントで。お客さんには全員赤ちゃん用の笛を配って、自分がエロいと賛同できるネタの時はその笛を吹いてもらうというかなり頭のおかしいイベントで(笑)、しかもそのネタとかも“ダムの放流の映像”とか(笑)。あれ、“やぎの目”を全く知らない人が見たら絶対キチガイの集会に見えたと思いますよね(笑)。  あと『デカイ頭ナイト』とかは、オレはアタマが凄くデカくて自分のアタマに入る帽子が全然ないから、このタイトルで“デカい頭だとこんなに苦労する”とかのネタ集めると同じアタマのデカい仲間がたくさん集まるかな? と思ってやりました。で、来たお客さんには巻き尺を配ったんで(笑)、会場がみんな一緒に来た友達とか相席になった知らない人同士で互いのアタマのサイズ計り合ったりしてて、凄い笑えましたね。で、オレもこの日までに絶対自分のアタマに入る帽子を見つけようと必死になってあらゆるところを探してて、最後に遂に見つけたのが両国にあるお相撲さん専門の衣類用品店のお相撲さん専用帽子だったんですよね(笑)。  他にも先日の『ブルジョアナイト』とかは、自分が“これはブルジョアだ”と思うネタを投稿してもらって、自分も田園調布に潜入取材しに行ったりして。で、これは当日みんなに是非ブルジョア気分を味わってもらおうと、ドンペリとキャビアを買ってきてお客さん全員に振る舞おうと思ったんですが、当然ドンペリもキャビアもむちゃくちゃ高いんでろくに買えず、ドンぺリは一人コップに2ミリくらい、キャビアは一人一粒でお客さんに振る舞って(笑)、逆にお客さんみんなに自分の貧しさを痛感させて死にたい気分にしてしまいましたね(笑)」
──こうやって聞いてると、ホント社会的には何の意味もメリットも内容もないヘンなイベントなのに、毎回あんなに入りきらない程の超満員のお客さんが集まって来るのは、やはり林くんのその独特のヘンな感性に皆さん共感してるからなんでしょうね。
「感性っていうか、昔から何でもそうなんですが、全体を見れないんですよね、オレ。“小エロ”とか“匂い”とか“デカ頭”とか、見るのはいつも部分だけなんですよ」
──木を見て森を見ないと?
「木すら見てないっつうか(笑)、木も見ずに木の角度ばっか測ってるみたいな(笑)」
──で、そんな“Webやぎの目”の次回のイベントなんですが……。[とオレが言い終わらないうちに目の前にいくつもの訳の判らない測定器具を広げて出す林くん]
「そう!! その次回なんですが、オレ今とにかく何でも計測することにハマりまくってまして! 例えばこれがレーザーで離れたとこでも温度を測れる器具で、これなんかは押すだけで自分とその場所の距離が判りますし、これなんかどんなもんの糖分も計測しちゃうし、あとこれも………」  
……と、この後林くんとオレでありとあらゆる計測器具を使ってロフトプラスワン内のありとあらゆるものを計測しまくり盛り上がるも、周りの人達の目はおかしくなってしまった可哀相な人達を見る白い目に変わっていった。


林雄司・編 / アウペクト・発行
定価:本体1,000円+税
*シリーズ1〜3も絶賛発売中!


■EVENT INFORMATION■
『Webやぎの目の数値化ナイト』
2003年10月4日(土)新宿ロフトプラスワン
【出演】林 雄司(Webやぎの目 管理人)、他
【時間】会場18:00 / 開演19:00
【入場料金】800円(飲食代別)
※先着180名様にオリジナル定規をプレゼント。長さが測れます。測定はセンチに 始まりセンチに終わる。バッヂもプレゼント。