ライヴ・バンドとしての自覚が増え、より直線的に
──この2年間にいろいろありましたねぇ。まずあらきゆうこ(Dr)さんが脱退して。
来門 そう、いきなり辞めちゃったねぇ、ゆうこさん。
SENSHO 1500 いきなりだったねぇ。
来門 突然「話があるの」って。俺それまで全然知らなくて。「えぇー?」って(笑)。
──でも、そこから智恵子さんの加入まで、すぐでしたよね。
来門 そう。智恵とは5〜6年前からの知り合いで。うちの義理の姉ちゃんとバンドやってたんですよ。すごい力強くてカッコいいドラム叩くと思ってたから。
SENSHO 1500 で、ゆうこさんがコーネリアスのツアー・サポートでいなくなる時は智恵がサポートしてくれてたし、じゃあ智恵にはこのまま叩いてください、と。
来門 それまで智恵、パチンコ屋のMCだったからね(笑)。「7番台出ましたぁ、ありがとうございます」って。フリースタイル(笑)。
──素朴な疑問なんですけど、ドラムが女性っていうことにこだわりがあるんですか?
来門 いや、気にしてなかったんですけどね。
SENSHO 1500 来門が暑苦しいからヤだって言ってたんじゃん(笑)。
来門 そうだっけ(笑)。でも女性男性関係ないし、智恵のドラム見てファイヤー感じたから。あと、アンバランスな感覚も好きなんですよね。女性なんだけどすっげぇハードなドラム叩くっていう。それってカッコいいし。
──確かに。で、当然ドラムが変わればグルーヴも変わりましたよね。簡単に言うとロック感がよりはっきり出てきたような。
来門 ゆうこさんの時って、ブレイクビーツを外さないんですよ。一個一個が重くて。でも智恵はちょっと走るんですね。それがすごい情熱的で、歌もすごい乗せやすいし。だから智恵が入ってから加速した感じ。
SENSHO 1500 どんどんライヴしていくうちに、ライヴ・バンドとしての自覚が増えてきて、初期衝動的なものに逆に向かっていったというか。もちろんロック的なものは好きだったから、もともと素養としてはあったんでしょうけど。ライヴやってくうちにバンドに目覚めて、より直線的になったっていうか。(ブレイクビーツの)再生ボタンなんて押してらんねーぜ、みたいな。
来門 前はその、同期ものがみんなをつなげてたけど、みんなで曲を作るようになって、ハートでロックするってところでつながれたというか。 SENSHO 1500 逆にそうなることで、一人一人の自覚は出てきたよね。
──はい。そしてアルバムなんですが、はっきり言っちゃうと、ベタであるくらいにストレートな作品だなって思ったんですよ。

来門 ベッタベタだよねぇ(笑)。
──もうタイトルからして(笑)。
来門 うん。もう“ELECTROCK!”って、ほとばしるパワーを撒き散らす感じで。 SENSHO 1500 突然夜中に来門から電話かかってきて「“ELECTROCK”でどうかなぁ?」「あぁ、いいんじゃない?」「判った! ツー、ツー、ツー……」って(笑)。
──このストレートさを出すにあたって、一番ポイントになったところって?
SENSHO 1500 「月風のサムライ」ですね。これ一番最初に録ったんですけど、6人全員で一発録りだったんですよ。その印象がすーごい強くて。だからきっかけとなった曲。
来門 Takutoっていう俺の友達、JPCバンドってやってるんですけど、彼を呼んで3人でMCやったらすっごい調子よくて。3テイクぐらいでばっちり。
──その勢いのままできちゃったような?
SENSHO 1500 そうですね。出始めたらもうバーッと出てきちゃって。子供っぽい遊び方だとも思うけど、ほんとクリックも聴かずにライヴそのままでやってるから。
来門 でも遊びだけじゃなくて、「ストレートメッセンジャー」とか、ほんとシンプルなものもあるし。
──この反戦ソングは、いち早くダウンロード配信してましたよね。
来門 そうですね。やっぱ理解できねぇものは理解できねぇし、同じ思いをしてる人もきっといるはずだから、その突破口を。有事法制とかもめちゃくちゃじゃないですか。みんな考えてるのに誰も言わないから、じゃあ俺行きます! って。そこにみんなが付いてきてくれたら、もしかしたら奇跡が起こるかもしんない。そういうのを信じて。ボブ・マーリィーとかも音楽でずっと奇跡を起こしてきたのに、それをいきなりアメリカの政府が潰しちゃったじゃないですか。それはダメだと思って、もっかい音楽で立ち向かっていきたいですよね。暴力じゃなくて、音楽で。
──実際の反響も大きかった?
SENSHO 1500 直接誰かとそういう話になったってわけではないんだけどね。でも、一日のダウンロード数とか見てたらね、反応あるって思えるし。
来門 LAで録音したから、この曲、アメリカでも唄ってきたんですよ。で、ミックスしてくれた人が「アメリカじゃ、今こういう反戦ソングは唄えない。お前ら日本語で何言ってるか判んないけど、とりあえず気持ちは伝わってきた」って。「日本のお前らみたいな奴がそういうことを唄ってくれ、俺も戦争は反対だ」って言ってくれたんですよ。

マイク一本で修羅場を渡る“サムライ”
──うん、伝わる曲ですからね。ただ、さっき奇跡って言いましたけど、そう簡単に世界は変わるものじゃないってことも自覚してるみたいですね。
来門 そうっすね。壁は高いですよね。全然高いと思うし、難しいことはよく判らない部分もあるじゃないですか。戦争ってほんと、知れば知るほど根が深くて。だから俺らはもしかしたら表面 的に言っちゃってるのかもしれないけど。でもまぁ、一国民として言わしてくれ、みたいな。石原都知事、銀座で戦車のパレードはやめてください!
SENSHO 1500 ……いきなり言うねぇ(笑)。
来門 まぁでも、時代の背景には常に音楽ってあるじゃないですか。ドアーズとかもヴェトナム戦争の時に唄ったし。だから時代とは向き合っていきたいですよね。「ラヴ&ピース!」って言ってるだけじゃなくて。
──そういうグローバルな視点を持ちつつも、日本のことについてもよく唄ってますよね。
来門 うん、侍。その、さっき話したJPCバンドっていうのが、自分たちのことを“Nu江戸スタイル”って言ってるんですよ。唄ってることもすごいカッコよくて、それに魅せられたところもあって。(「月影の侍」で)Takutoをフィーチャリングできるんだったら、やっぱ侍のこと唄おうと思って。やっぱ俺も半分の血は侍だから──判んない、農民だったかもしんないけど(爆笑)、でも俺は侍でいたいって思うから。侍って刀一本で修羅場を渡っていったんだし、それだったらバンドも一緒かなって。マイクは刀、みたいな。
──江戸といってもいろいろあるけど、何を指して江戸のスタイルなんでしょう?
来門 やっぱりね、今はペラッペラな人が多いじゃないですか。感情的なことにしても、ものつくりにしても。江戸ではひとつひとつ、命込めて作ってたと思うし。やっぱ江戸の文化ってすごいと思うんですよね。人が生きてる。だからバック・トゥ・江戸みたいな。
──来門さんはハーフだし、純日本人じゃないからこその日本史観、みたいなものがあるのかな。
来門 そうっすね。あとやっぱ留学してて、日本人っていうと絶対“サムライ”って言われるじゃないですか。「ニンジャ、サムライ、フジヤマ、ゲイシャ」みたいなね(笑)。外に行って改めて日本ってものを見た時に、ほんと侍ってかっけぇなぁって。シンプルに思いますからね。いち男として、熱いし、義の心を持ってるし。だからそういうカッコいい侍を描いてみたくて。で、それが集まった時にこのジャケットにつながるっていうか、“惑星の戦士”になっていけばいいかなって。
──このジャケットに描かれた人のこと?
来門 そう。これは“ウォーリアーズ・オブ・ザ・プラネット”って名前で、ロックの神様なんですよ。「ELECTROCK」っていうのはこいつの必殺技で。これ、友達に描いてもらったんですよ。プロ・スノーホーダー兼漫画家なんですけど、音聴いてもらって、こんな感じでお願いしますって頼んで。こいつがもう、このアルバムの表れですからね。宇宙を股にかけて、風を起こしてパワー集めて。レペゼン風力発電。「電気を大切にね!」みたいな(笑)。
──ははは。これは野暮な質問ですけど、そこまでのポジティヴィティというか、エネルギーの原動力って、何だと思います?
SENSHO 1500 うーん、やっぱりポジティヴなぶんだけネガティヴな部分もあるんだけど、別 にネガティヴを自覚しながら曲書いてるわけでもないしね。
来門 あと、自分がそうありたいと思うからですよね。ポジティヴに生きたいし、家族を守りたいし、仲間を裏切らないためだし、そういう自分を維持したいから。やっぱネガティヴな方に転がるのって簡単だと思うんですよ。ポジティヴを維持する方がよっぽど難しかったりして。でも俺は絶対ポジティヴでありたいなって思うし。
──お話を聞いてて思うのが、音楽の力ってものを、100%無邪気に信じているんだなぁってことで。
来門 いやもう完璧に信じてますよ。パワー・オブ・ザ・ミュージック! ボブ・マーリィーもそう言ってたし。
SENSHO 1500 やっぱ音楽聴いてなかった時がないですからね。それによって何か与えられたことも多いわけだし。 来門 すごいっすよ、音楽の力は。武器であり愛であり、って感じだよね。
──実際にこのアルバムが日本全国に届いたら、何かが変わると思いますか?
来門 そうですね……判んないなぁ。難しいけど、でも、「ストレートメッセンジャー」とかに共感できる人が多ければ、さっき言った奇跡は起こるかもしんないし。突破口は開いていきたいですよね。
SENSHO 1500 何かを感じ取ってほしいですからね。何を感じ取ってもらってもいいんだけど、そこからライヴに足を運んでくれたら最高かなって。
来門 ね。盛り上げますよ。一緒にロックしようぜベイベー、みたいな(笑)。日本中を沸かしますよ。もうほんと、いいアルバムになったんで、これ聴いてみんな、命の迸りをあげてください! ■■


Release
ELECTROCK
FLCF-3976 / 2,940yen (tax in)
IN STORES NOW

Live info.
◆Warriors of the planet tour '003
10月2日(木)鹿児島SR HALL/10月3日(金)福岡Be-1/10月8日(水)岡山ペパーランド/10月9日(木)松山サロンキティ/10月10日(金)広島ナミキジャンクション/10月12日(日)大阪CLUB QUATTRO/10月16日(木)新潟JUNK BOX mini/10月17日(金)金沢VAN VAN V4/10月19日(日)名古屋ELL/10月22日(水)仙台 JUNK BOX/10月23日(木)青森Quarter/10月25日(土)札幌KRAPS HALL/11月2日(日)東京SHIBUYA-AX
◆9月6日(土)多賀城市民会館小ホール『荒吐宵祭』(前夜祭)
◆9月13日(土)恵比寿みるく『風の人 "KOONI"』
◆9月23日(火)タワーレコード渋谷店B1F「STAGE ONE」(インストア・イヴェント)

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