筋少〜特撮と時代を超えてなお現役アーティスト、そして文筆活動と多岐に渡る才能を発揮している大槻ケンヂと、♪S・A・G・A佐賀!でお馴染みのベースを持った一匹狼、バンド少年でもあったはなわによる注目のイベント「日本を佐賀県にしてしまえ!」。元々音楽雑誌の対談がきっかけで今回のイベントが決まったこともあり、テレコを回した途端二人の会話は次々広がり、大槻ケンヂ著「リンダリンダラバーソウル」の話から、葛藤、さらには日本のスティング!?話まで。ライブを前に多忙なお二人の貴重なお時間を頂き、再び対談が実現しました!(interview:和田富士子)

バンド少年VSバンド少年
大槻 じゃ早速「リンダリンダラバーソウル」に感動した話から。
はなわ くそ感動しましたよ。
大槻 くそ感動した?!
はなわ これはほんとに、今まで僕が読んだ本の中で一番感動しました。
大槻 え、本当?
はなわ 本当です。これ(テープ)回ってますか?
──回ってます、回ってます。
大槻 回ってますよね、これで回ってなかったら、怒っちゃうよ(笑)。
はなわ 僕、実はあんまり本って読まない人間でして。「リンダリンダラバーソウル」を友達からずっと借りてたんですけど、ちゃんと読んでなかったんですよ。で、この間頂いたんで、じゃ読んでみようと読んだんですけど──まったく本を読まない男が2日で読んでしまいまして。
大槻 それは、アナーキーのドラムの息子さんも同じ事を言ってた。俺、お母さんにほめられちゃったもん。「息子が本を読んだ」って。
はなわ そうなんですよ。で、CDのプロモーション活動で名古屋に行ったんですよ。その移動中に読んでて、帰りの新幹線で涙うるうる来ちゃいまして。バンドブームはかすかに知っているくらいなんですけど──これ失礼なんですけど、勝手に自分とリンクさせて読んでしまいまして。
大槻 いや、それは結構嬉しい。
はなわ 今のお笑いブームというのは、あの頃のバンドブームの1/100くらいなんですけど、オンエアバトルとかの流れもあって、自分が他の芸人さんと比べたら運良く多少知っていただけるようになって。それでこの本に妬みとか嫉妬とか、今後どうなるんだろうと途方に暮れているところとかあるじゃないですか?そういうの見ているとほんとに“一番読まなきゃいけない時期じゃないかな”って。
大槻 じゃあ、10年後に書いてよ、お笑いの「リンダリンダラバーソウル」(笑)。
はなわ あははは。それは勝手思ってたりしたんですけど……。
大槻 で、ちなみに誰を妬んでたの?
全員 爆笑
はなわ いやいやいや(苦笑)。実際僕の周りにそんな奴がいたら「あのやろうー」って思うかな──うらやましい、っていうか実際才能があるやつはアホほどいるんですけど、きっかけというのがない。そこで僕はCDが出せたんで、もし自分が普通 に漫才とかやってたら「あいつは歌なんかでいきやがって、今後どうなるんだよ」っていう風に思ったりするんじゃないかなって。
大槻 逆に今妬まれている気はするの?
はなわ うーん、どうなんでしょうね。でもその辺はもう関係ないと思ってやってます。
大槻 でも今、大変でしょう。何がなんだかっていうスケジュールでしょ?
はなわ それはもう……仕事の意味がわからない。
大槻 仕事の意味がわからない?!入社3ヵ月後の新入社員みたいだな。なんで俺は働いているのかなって(笑)。
はなわ ほんとにそんな感じですよ。例えば「さんま御殿(TV番組)」とかすごい先のことだと思ってたものが急に出させてもらったりとか。この間まで“あんな所に出れたら何喋るんだろう”って思ってたのに、こんなに速攻なんだなと。
大槻 そんなバカな?!っていう仕事とかも入ったりするんでしょ?
はなわ そうですねー。今、「トレジャープラネット」というディズニー映画の名誉宣伝部長っていうのをやっているんですよ。で、“俺かよ!?”と思いまして。
大槻 デートに行くような映画の宣伝部長?!訳がわからない(笑)。
はなわ ディズニーなんであんまり変なこと言えないですけど、これにはびっくりしまして。歌を作ってくれっていうんですよ。でもそれをはなわに言うって事は、ディズニーの文句を言ってもいいのかなと……よく分からなくなりまして。で、はじめはそんな感じの歌を作ったんですけど、さすがにそれはまずいなっていう風な判断を。
大槻 超却下でしょ?ディズニーはめちゃくちゃうるさいっていうよ。
はなわ なので、結局すっごいまじめな、すっごい普通のいい歌を作ったんですよ(笑)。
大槻 いい歌作っちゃったの?それもどうなのよ〜、微妙だなー(笑)。でもこれで、それこそ「リンダリンダラバーソウル」の中に出てきたような「これで俺はいいんだろうか?」っていう悩みがちゃんと出てきたんだ。
はなわ ええ(笑)。で、僕、電気グルーヴも大ファンなんですけど、あんまり詳しく知らなくて。それでたまたまナゴム好きな人にナゴムレコードのMDをいろいろ作ってもらって聴いたんですよ。(ナゴム時代の)大槻さんの歌詞とか見ると、これやってたんだったらメジャーになってからのジレンマはすごいんじゃないかと……。
大槻 それはねー。だって、俺「ドリフター」っていう曲で「仲本工事の奥さん死んだ〜」とか歌ってたんだよ。
はなわ 爆笑
大槻 それでやっぱりメジャーに行ったら、わりといい人キャラになっちゃって。そうすると悪いこともいえないし、怖いし、どうなんだろう?って。今はもうどうでもいいやと思ってるんだけど、やっぱ当時はありましたよね。でも、いい話だなー、ディズニーのタイアップでいい歌作らないといけないっていう。“俺ひよったんじゃないか?”ってパンクスが悩んだりするっていう時でしょう?いいなぁ、それ(笑)。
はなわ もうそっちに行くしかないわけで。だったら、めちゃめちゃくさい歌を作ろうって感じでしたね。

いろんな人の評価ってあるよね
大槻 いろんな人の評価もあって
──週刊文春の近田春夫の「考えるヒット」っていうの、読んだ?
はなわ 人に聞きました。
大槻 「はなわのベース&ボーカルはスティング以上!」日本のスティング!
全員 爆笑
はなわ びっくりしました、それには。
大槻 もう寺尾聰も越えたでしょう。スティング越えたら、あとはポールマッカートニー。日本だといかりや長介くらい。
はなわ ほんとビックリしますね、いろいろ。
大槻 でも、ベースピック弾きだよね?「考えるヒット」には指弾きのってあったから。
はなわ 僕、ピック弾きしかできないです。
大槻 近田春夫さんもちゃんと見てないなと。でも、街歩いていてもめんどくさいでしょ?
はなわ 最近それはやっと出てきましたね。
大槻 とんでもない人とかいない?いきなりおばさんに囲まれて「サインしてよ」ってサインした後に「コレなんて読むの?」とか「あんた誰?」とか。平気でいうでしょ。あと、飲み屋でねーちゃん連れてる怖そうなオヤジが突然箸袋持ってきて「これにサインしてくれよ」とか。そういうのはないの?
はなわ あははは。あ、でも結構そういうのはありますね。一時期気持ちよかったんですけど。
大槻 さすがにちょっともう、やだなってところでしょ。
はなわ そうですね、それは正直ありますね。よくここ(髪のてっぺん)を触られたりする。で、やっぱ感じるのはですね、昨日も熊本のショッピングセンターでやらせていただいたんですけど、3000人くらいですか?
マネージャー 5000人。
大槻 5000人来たの?!熊本のショッピングセンターに。すごいねー。じゃ、熊本中からきてるんじゃない?
はなわ そうそう、そうなんですよ。そこでたまたまスピーカーが割れちゃってお客さんに聴こえなかったみたいで、会場がザワザワザワザワしてて。そうするとネタをやっていても面 白くないと言うか。要はテレビとかでブームになっているんで「あいつ今日見ておくか」みたいな感じで来てくれてる──ま、それだけでもありがたい、贅沢な話なんですけど、これはちょっとなぁと。
大槻 すごい!ほんとバンドブームの頃にバンドマンがみんな思ってたことみたい。そうなんだ、今ちょうどそういう時期なんだ。じゃ、テツ&トモもそういう時期なのかな?
はなわ テツトモさんとかもそうなんじゃないですかねー。
大槻 ゲッツの人(ダンディ坂野)とかも。
はなわ ゲッツもそうだと思います。いっつも思いますけどね、はなわをこうやって見に来てくれてるけど、これテツトモでもゲッツでも来るんだろうな、もしかしたらテツトモやゲッツだともっと来るんじゃないかなとかそういうことばっか考えてるんですね。
大槻 俺も、“今日は筋少でこんなにきたけど、これたまでもいっぱい来るんだろうな”って思った!十数年前を思い出しますな。
はなわ ジュンスカイウォーカーズ、Xとかもすごかったですよね。僕らすごい小規模ですから、あんなに大きくないですけど、“品川庄司と一緒に出たら、品川庄司の方がすごい人気あるしなー”とかですね。

対談がきっかけで対バン決定
──今回、対バンをされるきっかけっていうのは?
大槻 「uv」というというロック雑誌で対談コーナーがあって(そこで対談)。ちょうどロフトを押さえていたので、ぜひやろうよっていう話になって。そしたら一瞬でチケットもソールドアウトで。
──はい。ありがとうございます。
はなわ こちらこそありがとうございます。まじでビックリしました。
大槻 新宿ロフトに出たことはあるんでしたっけ?
はなわ 僕は2回くらい出させてもらってるんですよ。1回普通に対バンで僕1人で出て。それとTake2の東さんが昔小滝詠一って言っていう大滝詠一のパロディをやって、ニッポン放送の高田文夫さんのラジオから「冷麺で恋をして」っていう歌を出したんですよ。その時僕がベースを弾いて、ロフトのライブにも出させてもらったんですよ。
大槻 他のライブハウスではあるんですか?
はなわ たまにライブハウスでやらせていただくことがあってですね。やっぱライブハウスは面 白いですから。お笑いとは全然違いますよ。お客さんも一緒に楽しんでくれているっていうか、ちゃんと聴いてくれている感があって。我々のファンは“笑わせろー”って、それしかないんです。だからメロディーなんかどうでもいいし、要するにキーが外れててもどうでもいいんですけど、音楽のライブだとコードが──僕はほとんど一緒なんですけど、そのコード一つで笑ってもらえるんですよ。それがすごいなと思って。お笑いだとそんなの全然気付かないですから。そういえば、フェルナンデスが最近ベースを送ってきてくれまして。
大槻 あ、まだ送ってくれるんだ。いっぱい送ってくれるでしょ?じゃ、もうはなわモデル出来た?
はなわ それをZO-3ベースで作るってことになりまして。
大槻 だって今までフェルナンデスじゃなかったんだよね?
はなわ 違いましたね。で、今はフェルナンデスを使ってるんですけど。ビックリしたのはフェルナンデスさんからもらったやつを初めて使って、テレビで歌ったんですよ。いきなり弦が切れまして。
大槻 弦切れしたらどうするの?
はなわ 滅多なくて、この間初めて歌っている最中に切れたんですよ。しかもテレビで。逆にウケたんでよかったんですけど。一応高いコードの方でなんとか歌って。こことここが同じ音ですよっていうのを、少し前に覚えたんですよ(笑)、その技術を知っておいてよかったなと。 大槻 すごい、ロックっぽいじゃない(笑)。で、バンドは組まないんですか?
はなわ バンドは、そうですねー。遊びでやっていただける人がいればっていう感じで。 大槻 やりたいって言う人はライブハウス界隈では、いるんじゃないかな。
──この間プラスワンでお笑いの人たちがやったバンド(4/28「yellow」)みたいなのもあるじゃないですか。ああいう感じのは?
はなわ そうですね。バンド好きな芸人がいっぱいいまして。それで、年に2回くらいみんなで集まってライブやるんですよ。そこでは芸人バンドが5バンドくらいでるんですけど、ベースが全然いなくて。僕は3バンドくらい掛け持ってやってるんです。
──8/12ははなわさんはバンドじゃなくて、ピンで出られるんですよね。
はなわ そうです。
大槻 いいなぁきっと盛り上がりますよ。
はなわ どうですかねー。周りに特撮のファンが結構いまして。やったらビビッて電話かかってきまして、「本当に大丈夫なの?」みたいなことを言われて。すっごい激しいライブをやるよって言われたんですけど。
大槻 でもね、特撮はね、バンドは激しいんだけどお客さんがね ──若い子もいるんだけど、20代後半から下手すると40代中盤までいるから。で、しかも最近ほんと変な客層で、男はそれこそはなわみた いな感じの男の子と、秋葉原系のもさい感じの子が多いのね。女の子はどういうわけかゴスロリってあるじゃない?ゴシック&ロリータ──ビジュアルのファンみたいなああいう格好で来るわけ。それでこんなぽっくり下駄 みたいなのを履いているから、暴れないんだよね、服汚れるから。
はなわ あはははは。
大槻 だから、妙なノリ。あんまり、「うわー」って感じじゃないの。もっと重い感じがあるの。で、意外に特撮ファンはサブカルチャーでいたいっていうのがあって、テレビとかあんまり見ないから、逆に佐賀県の歌とかやるともう、どっかんどっかん、“初めて見た、すごい!”みたいなのがあるかもしれませんね。
──逆にはなわさんのファンが特撮をみたりもするわけですね。
大槻 そうだよね、そういうのももちろんあるしね。いいですね。
はなわ すごい新鮮だと思いますね。
──ところでタイトルはなんで「日本を佐賀県にしてしまえ!」なんですかね。
大槻 うん。それは「日本をインドにしてしまえ!」からとって。「日本佐賀県化計画」っていうのも考えたんですけどね。
──あー!そこだったんですね(気付くのが遅い)。
大槻 べたな感じで。
──ちなみに大槻さんはどこ出身なんですか。
大槻 俺東京。佐賀県行った事ないし。
はなわ あ、ないんですか!ほんとですか。
大槻 あれ……佐賀県……あれ…………あ、ない。
はなわ なんで考えているんですか。
──今、佐賀県ってどこだっけ?って思いませんでした?
大槻 思った。
はなわ あはははは。
大槻 熊本とかは行った事あるからわかるんだけどね。じゃ、今後はコレを機に(ライブ活動も)。

はなわ ほんと、こういうのはぜひやりたいですね。
大槻 スティングともぜひ。
全員 大爆笑
はなわ ほんと申し訳ないですね、それは(苦笑)。
大槻 当日は、特撮で1曲ベース弾いてくださいよ。「アベルカイン」っていう曲がありますので。で、一応一番難しい曲「ゼルダ・フィッツジェラルド」っていう曲もあるんですけど、これをやってもらおうっていう意見も。
はなわ いやいやいや(笑)難しいのは出来なさ加減が。
大槻 佐賀県の歌が浸透しすぎたから、とりあえずチョッパーっていうのは?で、みんながあっと驚いたら今度はフレッドレスベースとかにして、その後スティックベースとかこう、そういう方向性っていうのは。
はなわ あんまり技術を高めちゃダメだっていう意見もすごいあったりですね。
大槻 そうかなぁ。
はなわ でも、僕は高めたいですけど。チョッパーも出来ないんで……。
──では、最後にライブに対する意気込みなどを。
大槻 そうですね、双方のファンが殴りあったりする。
はなわ はははは。
大槻 良くない良くない。やっぱりはなわのステージを見て、これで俺もベースをやろうってこう思う若人がね、増えたら。
はなわ それは嬉しいんですけどね。
大槻 フェルナンデスも嬉しいんじゃない?
はなわ あはははは。
大槻 フェルナンデス丸儲けなライブ。
はなわ ほんと僕ライブは120%の力で。頑張ってやろうと思って。もうほんとに今までない経験なんで。
大槻 じゃ、頑張りましょう。


★Live Info.
日本を佐賀県にしてしまえ!
特撮/はなわ
2003年8月12日(火) 新宿ロフト
OPEN 18:00/START 19:00
THANK YOU SOLD OUT!!
DOOR/未定

【特撮 official homepage】 http://www.prhythm.jp/tokusatsu/
【はなわ 公認応援サイト】 http://www2.ocn.ne.jp/~waizu/menu.htm
※秋にアルバムリリース予定!