孤高の吟遊詩人が再びTHE MOGAMIと組んだ会心作を発表!

 待ちに待ったSIONのニュー・アルバム、鉄壁のバンド“THE MOGAMI”とのレコーディングによる作品『ALIVE ON ARRIVAL』が6月25日に遂にリリースされた。前作同様、各々メンバーによるアレンジ、さらに今回は斉藤ネコ編曲によるストリング・セクションとセッションを行うなど、前作よりさらに充実した内容になっている。静かな語りの中にも随所に笑い話を挟んでくるSIONさんにアルバムの製作秘話を緊張しつつも伺いました。(interview:梶川功一/photo:Chisako.Y)


生きて着くぜ、生きて到着するぜ
──まず、今回のアルバム・タイトル“ALIVE ON ARRIVAL”の由来についてお聞きしたいのですが。
「生きて着くぜ、生きて到着するぜ、生きてそこに行くぜ、みたいな感じかな。25年くらい前の、スティーヴ・フォーバート(1978年にデビューしたミシシッピ州出身のシンガー・ソングライター)という人のアルバムがこのタイトルだった。当時、ボブ・ディランとかを教えてくれた先輩が『SIONに顔が似てるぞ』って教えてくれて。で、今回タイトルの話になった時、なぜかこのタイトルが頭に浮かんで。何でやろね。タイトルを無理に横文字で付けようとしたからやろうか(笑)」
──今回もTHE MOGAMIでのレコーディングですね。
「前回のアルバムを作った時点で、次もTHE MOGAMIで行こうかなぁって。ここ3年ぐらいカチッと今のメンバーでやり出して…いいんですよ。腕が良くて、個性的な顔して、気立てもいい人たちなんてそうはいないんだよ。で、前回いい感じにできたから、これはもう他のメンバーがイヤじゃなかったらオレの音楽をやる真ん中にいてもらいたいと思って。今回は1曲MOGAMI以外でやっているんだけど、そういうのはそういうのでありで、オレの中ではやっぱりTHE MOGAMIが真ん中にいてもらいたいと……好きなんだね、嫌いだけど(笑)」
──音楽的に絶対の信頼があるんですね。
「『ええやん』って言える人と言えない人とやっぱりあって、“そうじゃねぇんだけどなぁ”っていう時は『そうじゃねぇ』って言うでしょう? だけどその“そうじゃねぇ”って事実より、それをやってしまったその個性が勝つんだよね。だったらいいじゃん! っていう気にさせてくれるのかな、みんな」
──アレンジを前回同様メンバーに振り分けるやり方でレコーディングをやったそうですが。
「普通アレンジというと汲み取り過ぎるぐらい汲み取ったり、かなり決めてくる人がいるけど、誰かに任せるというような大まかなアレンジもあるわけですよ。オレらぐらいの年になると、みんな意地悪するわけでもなく“きっとこうなんだろう”とか“もしズレていたらこっちじゃねぇのか”とかサッと支える人がいたりするからね」
──信頼があるから任せられるんですね。ところで松田 文さんがバンマスでMOGAMIをまとめてるという感じなんですか?
「まとめるも何も、どうもこうもね。『じゃあそういう感じで“送信”!』って言うからね、もう“送信”されたらみんな『ハーイ』って感じ(笑)」
──誰にどの曲をアレンジしてもらうかはどうやって決めてるのですか?
「唄を何曲か持って行って、EMIのディレクター達とツル(鶴山欣也/SIONマネージャー)を交えて、まず“この曲をレコーディングしたい”というのから始まって、その次がアレンジで、“この曲はこの人でしょう?”とか、そんなに外れることはなく自然と割り振りがイメージされる感じ」
──メンバーで唯一、池畑(潤二)さんのアレンジした曲はないんですね。
「今回池畑さんは別のバンドでハワイか何かに行ってらっしゃってたからねぇ。畜生(笑)。そんなこんなで、時間も取れんかったし。次はまた頼もうと思ってるけど」
──SIONさんは曲作りをどこでやってるんですか?
「全部、家。使い方がよう判らんMTR(笑)に簡単なバッキングを入れて、あとはギターを何本か入れて…結構ソロ巧いからね、オレ(笑)。しびれるヤツを一杯入れとんやけど。(細海)魚は判ってくれるんだよなぁ。『かっこいいー!!』って(笑)」
──今回の曲はいつ頃作られたのですか?
「今回のは去年のアルバムの唄を書いてる時に、書いてたら面白くなってそのアルバムとは関係なく書き続けてたのが結構あって。それとあとは去年の11月とか12月」
──レコーディングは毎日“店長制”(アレンジする人が店長)でされていたそうですが、どんな感じで行われたか聞かせて下さい。
「これまでのレコーディングは、楽器のチェックができた時点でその日の店長がアレンジしてきた曲のテープをみんなで聴いて、そこで初めて譜面 が渡されて…2回やった頃にオレがスタジオに行く。で、オレが行ったらもうブースに入っちゃって本番になるから。でも今回はね、もう前もってみんなアレンジしたのを聴いているはず。っていうか、聴きたいという人がいて。だけど、多分オレ間違ってないと思うけど、まず聴いているヤツはいねぇ!(全員爆笑) 何か“みんなどういう案配にしてるんだろう?”って見たかっただけで…つうことはいつもと一緒か」
──SIONさんは基本的に一曲一回しか歌わないんですか?
「そのつもりで歌ってる。もちろん自分もみんなも、“もう一回かな?”っていうのはあるけど」
──各メンバーのアレンジなのですが、細海 魚さんの場合はプリプロの時点でいつもそのまま出荷できるレヴェルだと聞いたのですが。
「もうしびれるよ、本当に。歌はまだないじゃない? だけど、嬉しくなる。聴いてて歌いとうなる、自分で。あとは、こう来てくれたら、“オレちょっとこれ書き直してぇなぁ”って気持ちになる。何かこう、あの塊がダーンって来ると“ウワ!”ってなる。歌は書いた時点でレコーディングするまでは止まってるんだけど、一瞬この音のところまで行きたくなるんだよね。実際に〈はじめまして〉は変えた」
──それは凄いですね。そんなプリプロを作る魚さんは繊細な方なんですか?
「もちろん繊細だけど、魚はMOGAMIの中で一番男らしいと思う。華奢に見えるけど胸毛が凄い(笑)。いやそうじゃなくて、ホント、ぶっとい男だよ」
いいこともイヤなこともあるけど、捨てたもんじゃないよ
──これだけ個性的なメンバーだと、それぞれアレンジのやり方に違いがありますよね?
「みんな色々個性的だよね。松田さんはもう全部自分でする。魚はリズムの音、特にタイコの音にかなり神経を使って…あとはもうあいつのテープを聴いたらら“みんなこんぐらい行かなアカンやろな”とかあるから。井上(富雄)はみんなの意見を『そうやね、そうやね』って割と聞くけど、芯は曲がらんね。(藤井)一彦は『先輩達、もう一回いいっすか?』って聞いて、みんなから『エーッ』って言われる(笑)。でもあいつが入ってきてみんないい影響があったと思う。まず、オレが渡したデモ・テープに普通 アレンジだけするのに歌入れてきたヤツ初めてだったから(笑)。それがまたええんよ」
──最終日には全員でギターを持ち寄ってレコーディングしたそうですね。
「その曲(M-12〈ここからさ〉)は一番最初からあって、ライヴでももうやってたんだけど、なぜかバンマス発言権か何か知らんけど(文さんが)『一番最後にやりたい』とかなって。『その日は一日欲しいなぁ』とか何とか…。まぁ、早い時間から呑みたかったんやろうけど(全員爆笑)。その時に『ギターある人はみんな持ってきましょう』ってなって。何が面 白いって池畑さんがおかしいんよ。もう早い時間からブースの外のところで足なんかこうやって…『持っちょったら馴染むもんかね?』って。それがね、似合わんのよ(笑)。こんなにギター似合わん人見たことないというぐらい(笑)。で、ギター2本持ってきてて、『どっち弾くん?』って聞いたら『やっぱギルドやろ〜』って、面 白かったぁ(笑)」
──MOGAMI以外のプロデュースの曲には、斉藤ネコさんアレンジでオーケストラとレコーディングされたそうですが。
「24人? オレは弦のことよう判らんけど、何か一杯おった。最初ね、ディレクターの沖田がこれ(M-11〈お前が好き〉)を聴いた時に『これは弦でやりたいな』って言って。『できるんなら面 白いね』ってなってね」
──それが一発OKで録ったと聞いたのですが。
「そう。コケたら一遍に迷惑かける人数が違うやん? 何か昔、NYに初めて行って訳が判らんでレコーディングした時の微妙な緊張感にちょっと似てた。そんなとこがオレのスレてないところやね(笑)。ホント面 白かった…。全部弦で穏やかに大きくやるからってROCKができないわけじゃないっていうのも判った」
──漠然とした質問になりますが、今回のアルバムのポイントは?
「まぁ、毎回そうかもしらんけど、いいこともイヤなこともあるけど、捨てたもんじゃないよ。明るい方へ行ったほうがいい、っていうね…。基本的に相変わらずオレ、“誰かに向かって”っていうのは余りないからね。自分がそうあろうって、一生懸命そっちに向かっているのかもしらんけど…。よくね、『SIONさんアレだよね。好きな唄歌って、食えて呑めたらええんやもんね」ってよく言われるんよ。別 にそうでもねぇ。売れたら越したことねぇんだもん。ねぇ? “ダセェ”と思ってやってないから。少なくとも音楽やっているヤツはみんな自分が一番かっこいいと思ってやってるわけだから。“売れてたまるか!”ってヤツはおらんと思うよ(笑)。オレなんか大喜びだよ。だからそのためにどうこうする教室があったら行きたいけど(笑)、まぁ行かんだろうけど。自分を好きでいようとか、まだ行こうじゃねぇかっていうアルバムなんだ、結構毎回毎回。それが聴く人の唄になるかどうかは別 なんだけど、合う人はきっと合う(笑)」
──タイトルにあるように「生きて着くぜ、生きて到着するぜ」に行き着くと。
「生きてそこに行くぜい、だよね。それがだから売れるぜ! ってところではなくて…余りガキみたいなこと言うなよって言われるかもしらんけど、“そこってどこ?”ってなるけど、それがないとね……」
──気が早いですが、次回作の予定などありますか?
「今の時点だと、この流れも面白いと思うし、あと、今回ネコさんが参加したみたいに他の参加とかあるかもしれんし、今のところでは決まってないね。一個終わるからね。次やりたいんだよ。これを本当に“もうこれでいいよ”っていうものは作れんのよ。オレ、根気ねぇし。だからレコーディングもパチッパチッとやって“いいんだよ”って、いいんだよ。…ってこう、下りるわけじゃないよ。“すげぇな!”っていう瞬間でパーっとハマった時がすべてで、それでずーっとやってきたから。気になるところはあるよ。それはあって、“じゃ次はこうしよう”ってなる」
──近いところで新宿LOFTでのライヴが決まりましたが。
「どうしたもんかなぁ。MOGAMIのメンバーはみんないろいろ忙しいみたいだからな。どうするかっていうのを(演奏)持ち時間で相談して終わろうか(笑)」
──んー、やっぱりメンバーのスケジュールを合わせるだけでも大変なバンドなんですね。とにかくライヴハウスでSIONさんが観れる貴重な一日、楽しみにしてます。そして8月31日には野音がありますね。
「頑張ります(笑)。踊りまくりたい人、ワーっとやりたい人は前で。ゆっくり聴きたい人、子供とかおる人は後ろで、今回席が分かれてるようなので」
──8月31日だと暑くなりそうですね。
「暑いねぇ。全員水着やね(笑)。レコーディング中にね、池畑さんのスケジュールで合わんかったことが多くて、ハワイ行っとって、そしたら気使ってみんなにアロハ・シャツ買ってきてくれて(全員爆笑)。何か微妙にみんなの個性に合わせて。それがあの人らしいんよ。オレのブースに行くとオレのブースにたたんで置いてある。ちゃんと置いてあるんよ(さらに爆笑)。やるやろ? モテるはずだ。それ着て出ようか? 全員で(笑)」
──最後にメッセージがあればお願いします。
「今回、最近ない音、弦の1曲が入っとるだけで、両方立つからおもしれぇなぁと思ったんだけど。毎回言うこと同じやけど、聴いて欲しいなと思う」
──ありがとうございました。ライヴ楽しみにしております。■■


Relase

ALIVE ON ARRIVAL
東芝EMI TOCT-25048
3,059yen (tax in) / OUT NOW

1. キャスト/2. お前はどこだ/3. はじめまして/4. 低い空/5. ガラクタ/6. 日の当たる場所へ/7. 程遠く/8. ある休日/9. 11月の空に/10. すばらしい世界を/11. お前が好き/12. ここからさ

THE MOGAMI
◆松田 文(Electric & Acoustic guitar, Banjo, Mandolin)
◆池畑潤二(Drums, Percussion) 【JUDE HP】http://www.sexystones.com/jude/
◆井上富雄(Electric bass) 【ROCK'N'ROLL GYPSIES HP】http://www.universal-music.co.jp/rrg/index.html  
NEW ALBUM『I (FIRST)』  
初回限定盤(DVD付):UPCH-9059 / 3,360yen (tax in)  
通常盤:UPCH-1253 / 3,059yen (tax in)
◆細海 魚(Acoustic piano, Organ, Accordion, Fender Rhodes)
◆藤井一彦(Electric & Acoustic guitar) 【THE GROOVERS HP】http://www.thegroovers.com/
Great Eida Strings (Strings) SION (Vocal, Harp)

Live info.
<スペースシャワー列伝 第二十八巻・夏企画〜男吼〈おとこなき〉の宴〜>
2003年7月11日(金)新宿LOFT
SION / The ピーズ / 野狐禅
司会:増子直純(怒髪天)&南 謙一(宙ブラリ)
OPEN 18:00 / START 19:00
PRICE: advance-3,000yen (+ONE DRINK) / door-3,500yen (+ONE DRINK)
<SION TOUR 2003 夏>
【出演】SION & THE MOGAMI(Vo: SION / G: 松田 文 / Dr: 池畑潤二 / B: 井上富雄 / Key: 細海 魚 / G: 藤井一彦 from THE GROOVERS)
◆7月31日(木)大阪バナナホール
OPEN 19:30 / START 20:00
PRICE: advance-5,000yen (+ONE DRINK) / door-5,500yen (+ONE DRINK) I
NFORMATION: サウンドクリエーター 06-6357-4400
◆8月1日(金)名古屋ボトムライン
OPEN 19:00 / START 19:30
PRICE: advance-5,000yen (+ONE DRINK) / door-5,500yen (+ONE DRINK)
INFORMATION: ジェイルハウス 052-936-6041
<SION-YAON 2003 with THE MOGAMI>
【出演】SION & THE MOGAMI(Vo: SION / G: 松田 文 / Dr: 池畑潤二 / B: 井上富雄 / Key: 細海 魚 / G: 藤井一彦 from THE GROOVERS)
◆8月31日(日)日比谷野外大音楽堂
OPEN 17:00 / START 18:00
PRICE: advance-5,500yen / door-6,000yen (全席指定)
INFORMATION: ホットスタッフ 03-5720-9999
◆SION OFFICIAL WEB SITE http://www.interq.or.jp/rock/sion/