ニューロティカ、KENZI&THE TRIPS、元JUN SKY WALKER (S) の森 純太率いるMORI JUNTA SUPER UNIT、ゲンドウミサイル、RADIO HACKER──。小滝橋通 りにあった旧新宿ロフトへ通い詰めた世代にはとりわけ感慨深い顔ぶれによるイヴェントが、初夏のロフトにて開催される。当然の如く我が『Rooftop』はロティカ・アツシ氏より問答無用の取材指令を受け(笑)、かくして“昭和39/40年会”の面 々がBAR THE LOFTに集結。齢40の大台を目前にして今なお混迷のロック・シーンをサヴァイヴし続ける男闘呼達5人衆が語り倒す七転八倒のロック人生、激動の20年!(interview:椎名宗之)

暴走族、ヤンキー…そして長州世代!
アツシ:エ〜今日はこうしてみんなにロフトへ集まってもらいました。初めて会う人もいると思いますが、みんな一癖も二癖もありますので、ケンカなどせず楽しく行きましょう!
──どうぞお手柔らかに(笑)。そもそも今回のイヴェントは誰が最初に声を掛けたんですか?
KENZI:極蔵ですね。
極蔵:確か、みんなで呑みながら話してたんだよね?
タケミ:違うよ。お前(極蔵)から電話かかってきたんだよ、一番最初。
極蔵:ああ、そうだっけ?(笑)
タケミ:“昭和39年会”っていうのを極蔵が考えたんですよ。昭和39年生まれのヴォーカルのバンドを集めてライヴができたら面 白いんじゃないかと。それにみんな今年で39になるし。まぁそのゴロ合わせは後付けなんだけど。
アツシ:それ、初めて聞くんだけどォ。一応事務所の方針で僕達は27ってことになってんだけどォ(笑)。
タケミ:(笑)あの当時、同年代で面白いバンドは一杯いたし、今でも現役で頑張ってるバンドもいるんで、そんな顔ぶれで何かできたら面 白いんじゃないの? っていうのが始まりで。全体的な段取りはアッちゃんにお任せして。
アツシ:僕のロック人生において5本の指に入る仕事だと思う、今回。ホントに長年やってて良かったなって思った。僕は絶対、ゲンドウミサイルと森 純太に接点がないと思ってたのに、こんなに嬉しいことはないよ(笑)。純太も「事務所がOKなら」って即でOK出してくれたの。あれは凄い嬉しかったなぁ。
KENZI:俺も(純太とは)初めてだから。
純太:そうですね。俺は昭和40年生まれなんで一個下になるんですけど。アッちゃんからこのイヴェントに誘われた時、余り面 識もないし申し訳ないなと思いながらも、ちょっとフィールドは違ったけれど一緒に頑張ってきた同じ世代の方とやらせてもらうのは凄くいい縁だなぁと思って。
──じゃあ、みなさん以前から深い親交があったわけでもないんですね。
KENZI:微妙には絡んでましたけどね。
極蔵:タケミなんか、バンドやってる頃は知らないもんね。でもあの頃タケミと会わなくて良かったよ。だってこいつ、空手の師範だよ?
タケミ:ずっと極真空手をやってて。東田(慎二/新宿ロフト店長)は俺の生徒ですよ。極蔵と一緒にライヴをやったことはあるんだよ。たぶん共通 点はトラッシュとかかな。KENZI&THE TRIPSは、俺がロフトで月1で3年やらせてもらってた頃にメジャー・デビューするかしないかくらいで。ジュンスカも勿論メジャー・デビューしてたし。
──ちなみに、みなさんと同世代の著名人というと?
極蔵:ブラッド・ピット。あとトム・クルーズ、キアヌ・リーヴス…。外人ばっかだな(笑)。
タケミ:お笑いだとウッチャンナンチャン。ダウンタウンは一個上。
アツシ:タレントのヒロミが八王子で同級生だった。
タケミ:ヒロミってホントにスペクター(当時名を馳せた暴走族グループ)だったの? 俺、杉並でスペクターやってたんだ(笑)。暴走族全盛だもんね、俺達は世代的に。当時、ニューロティカは修豚(現・30%LESS FAT)っていうギターがちょっとヤンキー・キャラだったね。
アツシ:ヤンキーじゃなくて、あれはトラックの運送屋!
当時は敵意丸出しで口もきかなかった
──〈俺達の時代〉というタイトルはアツシさんが命名したんですか?
アツシ:長州 力がアントニオ猪木に刃向かった時に、前田日明や藤波辰巳とかに「俺達の時代だ!」って叫んだイメージが消えなくて、ちょっとクサイけどこれに決めた。
KENZI:プロレスで言えば長州世代だもんね、俺達は。
──当時はお互いにどんな印象を持ってました?
アツシ:ライヴの共演はたくさんあったけど、あの頃って対バン同士で全然喋らなかったよね。
タケミ:ホコ天とかイカ天のブームが来る前は、ライヴハウスはケンカしに行くような所だった。敵意丸出しで、対バン同士絶対に口きかないっていうくらい。
アツシ:ライヴハウスを楽しい憩いの場にしたのは俺達だよ!
KENZI:うん、マジでそうだよね(笑)。
アツシ:純太にライヴ呼ばれたのはラ・ママが一番番最初だよね。
純太:そうそう。
アツシ:あの時も結構構えて行った。
純太:俺、ニューロティカのこと凄い好きだったから、「ラ・ママのイヴェントに出てもらいたい」って頼んだら、「変名だったら出る、名前を変えないと出ない」って言われて。「じゃ、それでお願いします」って。86年だったかな。
極蔵:凄いイヤなバンドだねェ。「バンド名変えなくちゃ出ない!」なんて(笑)。
アツシ:いやぁ、イケイケだったから、あの頃は(笑)。
純太:KENZI&THE TRIPSもファンだったんで、レコードとか持ってたし…。
アツシ:KENZIのレコ発は2回前座やってるけどね、ロフトで。“負けちゃいけない!”と思って、昔のロフトの楽屋から若い奴を10人連続ダイヴさせて、みんなビックリしてた。関係者も驚いてたね。KENZIも昔は人見知りだったよ。でもマジメなんだよね。凄くシャイだし。
KENZI:まぁいろいろね、10年、20年やってますとね、幅も出てきますわ(笑)。
極蔵:当時、ナンパした時に「俺、バンドやってるんだ」って言うと、女から「KENZI知ってる?」ってよく言われたね(笑)。ああいう時はホンッと情けないよね。
バンドを続けてきたからこそのご褒美
──あれからもう20年近い歳月が流れて、今もそれぞれバンドを続けてこれたのは驚異ですよね。
極蔵:俺はでも、25の時に一回辞めたから…。
KENZI:俺だって一時は休んでたんだよ。ずーっとやってるのはこの人(アツシ)だよ。
極蔵:凄いよね。今またバンドが上り調子っていうのも凄い。
アツシ:僕の話はいいから! 褒められるのに慣れてないからね(笑)。
タケミ:俺はRADIO HACKERを解散したのが28の時で、それからはバンドを離れてプロデュースの仕事のほうに行っちゃったんで…。でもたまたま去年、解散して丸10年経ってメンバー同士で会ったら、「1回何かやろうか?」って話が盛り上がって。で、一度Queでワンマンやったら一応ソールド・アウトして。“何だ、面 白いじゃん!”ってすっかりその気になっちゃって(笑)。
アツシ:一度復活して客が入るとその気になっちゃうよね。
KENZI:RYOTA(THE POGO)が今まさにそれ。
極蔵:(笑)そうなの?
KENZI:この間の〈クソッたれナイト〉でPOGOが復活した時、かなり嬉しそうだったから(笑)。
タケミ:でもやっぱり、バンドをマジメに継続するのって大変だよ。お互い20歳くらいの頃には同級生の奴らがみんなバンドやってたのに、何らかの理由で活動できなくなったなかで、ここまでバンドをずっと続けてるのはやっぱり凄いなって正直思うし、だからこそニューロティカやKENZI&THE TRIPSのライヴ動員がまた増えてるって話を聞くと凄く嬉しい。同世代が頑張ってるのは誇りに思えるよ。
アツシ:僕だって同じ世代の人がCD出したりライヴやってると嬉しいもんね、単純に。「ニューロティカ頑張ってる!」とか言われてもイヤミはないんだよね。さらに思うのは、まぁ休んだりもしたけど、今までバンドをやってきたからこそ、ご褒美にこうしてこの5人で会えたんだなぁって思うよ。
極蔵:うん。続けていればいいことあるんだよね。
KENZI:いろいろあるかもしれないけどさ、音楽を辞めないで、今も“現役”ってところがあるからこうして会えるわけだし、イヴェントもできるし…。音楽を辞めちゃうと、こんな機会もなくなっちゃうからね。だから続けてきて本当に良かったと思いますね。 大切なのは健康管理だ!
──今もライヴ活動を続けるにあたって、何か心懸けていることってありますか?
KENZI:(煙草に火をつけながら)やっぱり大切なのは健康ですね。
──そんな、思い切り煙草を吸いながら(笑)。
タケミ:俺は(空手の)大会出る時に息があがるから煙草はやめてる。
KENZI:確かに、ノドに一番悪いのが煙草なの(笑)。
タケミ:でも、KENZIの歌声は衰えないもんねェ。
極蔵:巧い、巧い。メッチャ巧い!
──酒は控えてるんですか?
KENZI:ちょっとだけですね。ライヴの前の日に控えるくらいです。
極蔵:健康管理は大切だよね。最近走ろうかなぁってマジで思うよ。
タケミ:走ったほうがいいよ。
極蔵:KENZIのライヴ観に行ったけど、バリバリだもんね。“こいつはロボットか!”と思ったもん、ワンマンの時。
KENZI:いや、それはアッちゃんも凄いよ。
アツシ:いやいや、僕は動いてないと「手ェ抜いてるだろ!」って言われるよ。
KENZI:アッちゃんは何か鍛えてるの?
アツシ:何もしてないね。煙草を吸わないくらい。お酒は頭おかしくなるくらい呑んでるけど。
KENZI:でも昔と違うのは、練習をマジメにやるようになりましたね。ちゃんと練習しないとライヴができない。
アツシ:確かにね。昔と違って思考回路が荒れちゃってるから、凄い練習を大切にしてるね。若い時は吸収が早いし、瞬発力もあるし…。そのためのリハビリっていうか、自分の健康のためのライヴがニューロティカっていう(笑)。
──考えてみると、ライヴハウスが最もライヴハウスらしかった時代というか、ライヴでも打ち上げの席でもとことん破壊的だったのは恐らくみなさんが最後の世代ですよね。
極蔵:それはこの人(アツシ)ですよ。相変わらず凄いから。
アツシ:この間、ウチらの打ち上げに130人集まったからね。現役バリバリですよ! だからこの日の打ち上げは、殺人以外は何でもアリで!
一同:(笑)
10年前には思いもしなかった同志的な感情
──当日は全員でセッションとかもできそうですか?
タケミ:(極蔵に向かって)どうなの、リーダー?
極蔵:エッ、俺!?
タケミ:全然そういうヴィジョンないよ、こいつは。リーダーとか、まとめるの面 倒くさいんだから。
アツシ:まぁ、いろいろ銭の問題とかあるから、最後の会計だけはちゃんと来てね(笑)。
タケミ:でも本当にセッションで1曲でもできたら面白いね。
極蔵:そうだねェ! ケントリの「爆竹ガール」やりたいな。ゲンドウミサイルを解散してね、まぁいろいろあったけど、去年KENZIと一緒にライヴやったじゃん? “ああ、帰ってきたなぁ”って思ったんだよ。スゲェ嬉しかったんだ。
KENZI:判るよ。凄く嬉しいよね、当時の人達が頑張ってると。この間、久しぶりにRYOTAとライヴやったでしょ。何かあるんですよね。10年前には思わなかったようなことが、何て言うか、同志的なことって言うか…。
極蔵:KENZIもPOGOも、戦ってたもんね。
KENZI:うん。何かね、あるんですよ、愛が。ちょっと恥ずかしいんだけどね。
極蔵:でも、それはよく判る。
KENZI:そこが今回のポイントじゃないですかね。そういうのが客に伝われば成功かなって思うんだけど。
タケミ:でもアッちゃんも言ってたけど、「オジさん、オバさんしか来ないんじゃないの?」って(笑)。
KENZI:この前の〈クソッたれナイト〉はピーズとPOGOでやったんだけど、確かに世代は高いだろうけど、みんなもみんなで当時に戻るっていうか、気持ちが若いの。全然変わらない。こっちも変わらなかったら向こうも変わらないから。
タケミ:確かにお客さんの年齢層は高そうだけど、若い人達にも観てほしいですね。20歳そこそこの人達って、一連の“青春パンク”もそうだけど、メロコアとかスカコアを聴いて音楽に入ってきた連中が多いだろうから。でも“こういう感じのバンドのほうが全然恰好いいだろ?”っていうのを見せたい、っていうのはある。
KENZI:まだこうして音楽をやり続けてる僕たちみたいなのが現実にいるわけですよ。そこにもう少し目を向けてほしいですよね。業界とか、いろんな部分の人たちが。もっと注目してもらってもいいかなっていうのがありますけどね。ビジネス、ビジネスばかりじゃなくて、実際にいい音楽をやってるバンドは一杯いると思うし。
金を引き出してこのメンツでしゃぶしゃぶを喰らう!
極蔵:まぁ、当日の出順はゲンドウミサイルを是非トップにしてほしいね。
アツシ:エッ、出順はこの取材が終わったらクジ引きで決めるよ?(笑)
極蔵:いや、トップでやって、あとはファンの一人としてKENZIを観たいんだよ。
KENZI:曲のリクエストとかないの?
極蔵:やっぱり「爆竹ガール」だね! 昔ヴァージョンで!
タケミ:RADIO HACKERはこれから練習できっちり仕上げますんで。今のガレージとかロカビリー、ロックンロール好きな奴らには、“俺達が先駆者なんだぜ!”っていうところをちゃんと見せたいですね。
純太:俺はとにかく、この顔ぶれと一緒にやれて嬉しいなぁって感じですね。お客さんも楽しみでしょうけど、やってる側も楽しみなんで。みんな笑って歌ってんだろうなぁ…。
KENZI:俺は、当日はすべてをなぎ倒して、踏みつぶして、最後はKENZI&THE TRIPSなんで! っていう形で終わらせたいと思うので、よろしくです。
──決して同窓会的な意味合いじゃなくて、これからも是非続けてほしいですね、このイヴェントは。
極蔵:そうですね。でもまぁ、忙しい人もいるからね。来年の5月までスケジュールが埋まってる人もいるし(笑)。
アツシ:ライヴはイヴェンターより先に押さえないとね!(笑) 来年はウチらも20周年ですから!
タケミ:レーベルの垣根もあるとは思うけど、いつか〈俺達の時代〉のコンピレーションを作れたら面 白いなぁと思ってるんだよね。アッちゃんは「メジャーのレーベルから出したい」って言ってたけど。レコ発のツアーなんかもやったりしてね。結構面 白いと思うんですよ。
アツシ:そうだね。メジャーから金を引き出してみんなで遊びたい!
一同:(笑)
アツシ:それくらいのご褒美は貰ってもいいでしょ! みたいな。セコセコ少しばかりの金を出して…とかは絶対やりたくない、僕のなかでは。バンドのバック・メンバーは置いておいて、このメンツでしゃぶしゃぶとか食うの!
一同:(爆笑)
極蔵:いいねェ、それ! アツシ:他のバンドの悪口言おうよ、みんなで! 酒の肴はそれに尽きるよ!(笑)■■


◆Live info.
<「俺達の時代」>
2003年7月12日(土)
新宿ロフト
ニューロティカ / KENZI & THE TRIPS / MORI JUNTA SUPER UNIT / ゲンドウミサイル / RADIO HACKER
OPEN 17:30 / START 18:30
PRICE: advance-2,600yen / door-3,100yen(共にDRINK代別)
INFORMATION: shinjuku LOFT 03-5272-0382