ZOO JAM Tokyo Session スペシャル対談!!


▲ズボンズ(ドン・マツオ)/▲ オーサカ=モノレール(中田亮)

6月24日、新宿ロフトにてZOO JAM Tokyo Session開催決定!今回はグルーヴ感溢れるライブが人気の9ピースFUNKY SOULバンド、オーサカ=モノレールが登場。待ち遠しいステージセッションを前に、ズボンズのドン・マツオとオーサカ=モノレールの中田亮による夢の対談が実現。お互い初対面 でありながらも、途切れることのない怒涛のトークセッションが今、始まる。(interview:森朋之)


オーサカ=モノレールはすごく良かったです(DON)

DON 最初にオーサカ=モノレールを見たとき、ちょっとビックリしたんだよね。
中田 あ、ホントですか。
DON どういうバンドかっていうのも知らなかったんだけど、すごい楽しめた。バンドとしての完成度も高いし。俺が見たときは「ホット・パンツ(・アイム・カミン、カミン、アイム・カミン)」ではじまったんだけど、なんていうかな、カバーをやってても、ダメなもんはダメだしね。俺はストーンズが好きだけど、ストーンズのカバーバンドなんか見ても、むしろ殴り倒したくなるから(笑)。JBもすごく好きだから、適当なことをやられても楽しめないはずなんだけど、オーサカ=モノレールはすごく良かったです。引きつけられました。
中田 ありがとうございます。
DON 解釈の仕方っていうのもあるじゃない。譜面をそのままなぞるんじゃなくて、フレーズに収まりきらない鋭利なものを感じたんだよね。
中田 まあ、「ブラック・ミュージックやってます」なんて言ってもーー実際、そう言ってるんですけどーーだから、どうした?ってところがあるじゃないですか。
DON そうだねえ。
中田 じゃあ、何やねん?って言われたら、よくわからんけど、一生懸命やるしかないなっていうか。そういうもんだと思うんですよね、僕らの場合。 DON ヒップホップ以降だと思うんだけど、ファンキーなフレーズとかファンキーなビートっていうのは、かなりカタログ化してると思うんだよね。それを使ってファンキーっぽい音楽を作るのはさほど難しいことではないと思うし。でも、ファンキーってことを演奏できちんと表現してるものっていうのは、俺はほとんど見たことがない。まあ、ボビー・バード(全盛期のジェームス・ブラウンの音楽的パートナーとして有名)のライブを見たときも、「うーん」って思って、途中で帰っちゃったけど。
中田 あれ、家族でやってるんですよね。ドラムが息子で。
DON あ、そうなんだ。
中田 そうなんですよ。で、僕がひとつ思うのは、ブラック・ミュージックっていうのもどんどん変わってるじゃないですか。ボビー・バードのライブとかでも、息子たちは自分らのええ感じで楽しんでるんだと思うんですけど、僕にとっても「もうひとつだな」って思って。それは何やろう?って考えたりもするけど…。
DON まあ、わかんないけどね。俺もJBの最盛期を実際に体験したわけでもないし、レコードだとかぼろい海賊版のビデオとかで判断するしかないんだけど、まず、若いよね、俺らの好きなJBは(笑)。あとは、人種差別 されてるよね、とりあえず。あのナイフみたいな動きのなかには、白人に媚びる部分とすごい怒りが混ざってるんだと思うんだよ。「こうやればウケるだろう」っていうのもあるし、一方には、差別 に対する怒りがある。それがものすごい緊張感を作ってるだろうなとは思うよね。まあ、JBはもうトシだし、昔のああいう感じを求めるのは無理だと思うけど。
中田 そうですね。ただ、1年くらい前に、チャック・ベリーとジェームス・ブラウンがいっしょにライブをやったことがあって。
DON ああ、あったらしいね。
中田 その演奏が良かったか悪かったかはええとしても、ふたりとも、ホンマにええトシやないですか。チャック・ベリーなんか、76才とかでしょ。そういう人が、わざわざ日本に演奏しにきてるわけですよ。別 にやらなくてもいいじゃないですか、そんなこと。
DON そうだねえ(笑)。
中田 金だってあるだろうし、やる必要ないと思うんですよ。そんなん逆に命が縮まるだけで、やらんほうがいいんやないか?って。それでもやるっていうのは、「このおっさんら、本気やな」ていうかね。もしかしたら、やめるタイミングを失ってるだけかもしれないですけど(笑)、これはすごいなあって思いますよね、やっぱり。この人には勝たれへんなって言ったら負けだから言いたくないですけど、「何やろう? これは」とは思いましたね。たぶん、(音楽を)やめちゃったら、「俺は何をする人やろう?」ってなるんでしょうね。
DON 普通のことなんだろうね、やり続けることが。
中田 けっこう普通に歌えてたんで、びっくりしましたけどね。まあ、途中でトイレに行ったりはしてましたけど(笑)。
――ズボンズもオーサカ=モノレールも、そんな感じですけどね。「なんでここまでやれるんだろう?」っていう。モノレールは、制服まで揃えちゃったりしてるし。
中田 いや、僕はそんなに臨機応変なほうじゃないし、それしか知らないので。服とかも、普段はぜんぜんカッコイイものを着てるわけじゃないから、「制服でも着とこうかな」ってことで。ださいですからね、僕らは。まあ、普通 は私服ですよね。私服って言い方もあれですけど(笑)。
DON 私服のオーサカ=モノレールっていうのも、想像できないもんねえ。
中田 絶対、かっこ悪いですよ(笑)。ズボンズは、私服派ですよね。
DON 私服派(笑)。まあ、ロックバンドだからねえ、ズボンズは。モッズスーツとか着るのも、ちょっと違う感じだし。
中田 でも、考えてみたらあれですよね、いまの若い子って、そういうことも上手ですよね。バンドのやり方にもいろいろあるけど、デザインされるべき最終到達点があって…。
DON それに合わせて、こういう服を選んだりとか?
中田 そうそう。そういう人が多い気がするなあ。違うかな。
DON まあ、ビジュアルが重要っていうのは、完全に刷り込まれてるとは思うよね。まず見た目が大事なんだよっていうのが、当たり前になってるっていうか。それはビジュアル系のバンドだからってことじゃなくて、すべての人に対して言えることだと思うけど。若い子は、こぎれいにしてるよね。
――ヒップホップをやってる人も、ファッションには気をつかってますよね。
DON 昨日もね、金のネックレスとかして、ブラッキーな格好をしてるカップルがいて。ああいうのは何だろうね。別 にラッパーってわけではないだろうし。
中田 ついに日本にもヒップホップが浸透したってことですね。おめでとうございます!(笑)。いや冗談。や、でも、めっちゃ広まったのはホントですよね。それがホントにヒップホップ的であるかどうかは、また別 の話ですけど。だって、10年くらい前まで、ラップやってるなんていったら、ギャグでしたよね。
DON そうだね。
中田 この前、親戚のおじさんと話してたんですよ。その人は高校の先生なんですけど、「中田君はあれか、ラップか?」って言われて。
DON ハハハハハ!
中田 つまりね、いまはラッパーなんですよね。その人は別に音楽に詳しいわけやないんですけど、高校生の間では「私の彼氏はラッパーや」とか「DJやってんねん」っていうのが、ステイタスになってるらしくて。それはけっこう、衝撃でしたけどね。「そこまでいってんねや!」っていう。ただねえ、ヒップホップでもソウルでもそうですけど、ブラック・ミュージックという、もともと日本には根ざしてないものをやるときの大義名分として、「日本にヒップホップを普及させよう」とか「ソウルを普及させよう」とかって言ってる人がたまにいてはるわけですよね。それはね、僕は絶対ちゃうと思ってて。
DON そうだね。
中田 第一、絶対に普及しないでしょう? だって、日本中のおじいちゃん、おばあちゃんがブラック・ミュージックが好きになるわけないんやから(笑)。だから、広めることなんか目的じゃないんですよ。じゃあ何でやってるかっていったら、さっき(DONが)言ってはったことだと思うんですよね。つまり、ウケたいって気持ちと「ここを抜け出してやる」ってフィーリングがごっちゃになってる、そういうエネルギーが爆発して生まれてきた音楽を聴いてね、「おおー!」って思うわけですよ。で、「自分でやることによって、もしもそんなことになったら最高やな」ってところでやってるんやなって。
DON うん、うん。
中田 言葉はチープやけど、反抗心っていうか、この状況をどないかしようっていうパワーというか。日本みたいに「ぬ るま湯」って言われてる国におっても、問題点がちゃんと見えてて、「どうにかしたい」って思ってる人はいっぱいいてるしね。そういう人らといっしょにやっていけたら、それでええんやろうなって思う。だから、いま、ヒップホップなりR&Bなりが広まってる状況っていうのは、あまり関係ないですよね。
DON 関係ないよね。たとえば、知り合いで「俺はロックを流すためにラジオ局を作った」って人がいて。その人は、「俺はロックを広めるためにがんばった。日本の音楽もだいぶ変わっただろう」と言うんだけど、まったく変わったとは思えないよね。ラップをやる人も増えたんだろうけど、まあ、変わってないと思う。いずれにしろ、あんまり幸せな感じではないね。
中田 昨日まで韓国に行ってたんですけど、あっちも似たような感じでした。
DON あ、そうなんだ。ヒップホップとか流行ってそうだけどね。
中田 そういうことをやってる人に会ったんですけど、彼らが言ってたのは、ヒップホップは芸能界っぽいと。アメリカとか日本で流行ってて、それはイケてるものとされてるわけですよね。もちろん、ホントにかっこいいことをやってるヤツもおるけど、全体的なイメージはそんな感じで。だから、日本と同じような状況ですよね。R&Bにしても、誰かを売り出すための道具になってるだけだと思うから。まあ、そのなかでも100人にひとりくらいは、ポンと芽が出る人もいるかもしれないけど。
DON 広がる必要もないって気もするけどね。もちろん、ブラック・ミュージックとかロックが広まって、みんながそういう音楽をいいって思ってくれたほうが、収入は増えるかもしれないけど。その程度の願いはあるかな。
中田 いいですね(笑)。

殺されないようにがんばります(笑)(中田)
DON オーサカ=モノレールは、ふだんはどんな感じでやってんの?
中田 大阪にいるときは、定期的にクラブ・イベントをやってたんですけど、それは去年まででお休みしてて。だから、最近は夜中にやることが少ないですね。クラブ・イベント自体が、下火になってきたのかもしれないけど。ふだんは、ライブハウスって感じですか?
DON いまは、そうだね。
中田 日本中、あっちこっち行くような。
DON まあ、そうでもないけど。でも、演奏するのはとにかく楽しいから、俺としては1日でも多くステージに立ってたいんだよね。ステージに立ってない日は、ムダな気がする。ただ、いまは、ファンキーな感じではないけどね。
中田 曲はどういうふうに作ってるんですか? やり方はいろいろあると思うんですよ。たとえば簡単なメロディとかベースラインがあって、それに沿ってやっていくとか…。
DON えーとね、わかんないんだよね。説明しがたいというか、あんまり考えてやってないから。スタジオに入るときも、まったく何も決まってないことが多いし。そうだなあ……まず俺がワッと弾きだして、それにみんながどう反応するかで、曲になるかならないかが決まるっていう感じかな。そのまま30分やっても何も生まれなかったら「ダメだね」ってことになる。で、何かが出てきそうなときに、それをどうつかんでいくかっていう。おそらく、それが俺の役割だろうね。だから、知らないメンバー同士でも、1時間くらい音を出してたら、曲を作るってことはできると思う。いま、ズボンズとは別 に「FUTURE JAM」っていうのをやってるんだけど、それは、まさにそれなんだよね。客がいる前で、知り合いといっしょにステージ立って、そこで何かが起こるかっていう。
中田 なるほど。おもしろそうですね。
DON おもしろいよ。この前は、(元)くるりのドラムとDMBQの増子君、あとは俺とズボンズのベースだったんだけど、決めごとは作らずに、自由に音を出していく。「いま、凄く良かった気がするから、ホントはどうだったのかなあ」って思ったりして。ズボンズも、けっこうそんな感じかな。もちろん、うまくまとまっていけばいいなっていうのもあるだけど、演奏して演奏して演奏して、その果 てに何があるかっていうのを見たいって気持ちもあって。「俺は、神に近づけるんだろうか?」って感じかな。
中田 音楽っていうのは、なんかわからんけど、ふたつあると思うんですよ。こうやって(と、ピアノを弾くマネ)、「ここのコードはこうで、フレーズはこうで」ってやってくのと、とにかくグワーっと音を出していくのと。僕は、絶対に後者のほうだと思うんですよね。お客さんが聴いておもしろいかどうかは別 の話ですけど、それが純音楽なんじゃないかなと。大昔の人がガンガン太鼓をたたきながら「朝ですよ〜!」って知らせてたのに近いというか。たとえばね、「マイルス・デイビスが新しい音楽をいっぱい作った」ってよく言われるけど、それを誰がやってたかっていったら、バンドのメンバーがやってたわけですよね。別 にマイルス・デイビスが…
DON 譜面を書いてたわけじゃないから。
中田 そういうことですよね。バンド・メンバーが反応しあって、インプロビゼーションをやったわけで。僕らにしても、ショーアップしてダーン!とやりたいっていうのもあるんですけど、やっぱり演奏に没頭いてるときがいちばん楽しいですから。
DON あのさあ、今度、オーサカ=モノレールに出てもらう「ZOO JAM」っていうのは、ジャムをやるのが前提で。モノレールがやって、ズボンズがやって、最後はジャム・セッション。
中田 あ、そうなんですか。はよ言うてくださいよ(笑)。
DON そこで何をやろうか考えてるんだけど。どうしたもんかねえ?
中田 まったく何も決めず、いきなりやりましょうって感じですか?
DON まあ、それだと俺たちにはかなり簡単なんだけど。もしくは、あらかじめグルーヴのもとになるようなものを渡しておいて、それに沿った形で考えてきてもらうっていうのもあるけど。それは、好きなほうでいいよ。
中田 たぶん、後のやり方のほうがいいような気がしますね。でも、いっしょに何かやるっていうのは、いいですね。
DON そうだよね。ほら、イベントなんかに出てもさあ、楽屋でちょっと話をするくらいで、いっしょに音を出すってことはほとんどないじゃない。俺はさあ、ミュージシャンの話を聞くだけじゃなくて、その人のやってる音楽に対して、自分がどういう反応をするかってことに興味があるんだよ。実際に音楽をやった上での情報交換というか。それを、ステージの上でやりたい。そういうことが少なすぎるから。
中田 そう思います。
DON たとえばジミヘンだってさ、デビューする前には毎晩のようにジャム・セッションをやってて。そこで腕も鍛えられるし、知り合いも増えるってことがあったわけだよね。いまでも欧米では、それは普通 のことであって。ただ日本ではなかなか…。俺としては、その日その日をスペシャルな感じにしたいからさあ。「そのときにしか見られない」っていうのが大事で、そのためにライブをやってるんだから。ただレコードを再現するためにやってるわけじゃないでしょ? 
中田 そうですね。何かハプニングみたいなものがないと、腐っていきそうですよね。
DON そうそう。刺激っていうのは常に自分のなかにあるわけじゃないから、外からの異分子っていうのも必要で。それが入ってきたときに、何が起きるかっていう…。まあ、何も起こらないこともあるけどね。ただ、俺たちもそうなんだけど、同じようなことばっかりやってると、だんだん客の反応のほうにフォーカスしちゃうってことがあって。自分たちがどんな音を出せてるかってことと、客の反応は、本来、別 の話じゃない。でも、同じメニューをこなしちゃうと、そうなっちゃうんだよね。若いときは演奏できればそれでいいのかもしれないけど、俺たちもそんなに若いわけじゃないし、やり方も変えていかないと。それに、ジャム・セッションってやっぱりおもしろんだよ、肌を合わせるというか、試合みたいな感じで。じゃあ、やってみますか?
中田 はい。殺されないようにがんばります(笑)。


●ライブ

ZOO JAM Tokyo Session
2003年6月24日(火) 新宿ロフト
OPEN 18:00/START 19:00
YEN 3300/3800(1DRINK代別 \500)
ADVANCE LOFT-発売中/PIA-発売中/LAW-発売中

ズボンズ
6 月18日 大阪十三ファンダンゴ
7月10日 京都MOJO
7月11日 大阪十三ファンダンゴ(ZOO JAM Osaka Session)

オーサカ=モノレール
6月27日 韓国・ソウル「TEATRE CHOO 秋」B1F
7月5日 新宿LOFT

ズボンズ オフィシャルHP http://www.five-d.co.jp/zoobombs/
オーサカ=モノレール オフィシャルHP http://www.rdrecords.com/monaurail/