●1ヶ月の3分の1はロフトにいた
──今年はARB活動25周年記念として、まずはライブハウスツアーが始まりますが、これはどういう経緯で決まったんですか?
凌 ARBを再開して5年目なんですけど、これまで全国でホールツアーを3回やって、それとは別 に「ROCK OVER」というタイトルのツアーを九州と四国でやったんです。それはライブハウスを中心にイベントや学園祭を回ったものなんだけど、昔からどんなところでも場があればやりますという気持ちは変わらない。特に今年は25周年なんで1本でも多くライブをやろうと思ってます。
KEITH 何十年ぶりかで行く所もあるよね。
凌 近郊の都市はだいたい回っているけど、ライブハウスではやってない場合もあるから。
──大きなホールとライブハウスとの違いはありますか?
凌 基本的に違いはないよね。
──ライブハウスだと楽屋が狭いとか、いろいろ不便も多いと思いますが。
KEITH でも出発点がそこだから。
凌 昔のロフト(註:西新宿にあった頃のロフト。65坪だった)でさえ全国を回ってきた後で行くと「あれ、広いなあ」と思ったから(笑)
KEITH 楽屋なんかないところもあったしね。
凌 まあ、僕ら十年かかって武道館のライブができたんだけど、その時思ったのは「変わりはないな」と。もちろん十年かかって辿り着いたという意味はあると思うけど。ARBが再開して、なぜROCK OVERみたいなことをやろうと思ったかというと、ひとつには昔からつきあいのある九州のイベンターの方が言ったことで、今の音楽状況に疑問があると。それは、昔、ビラ配りから始めて、少しずつ大きくなって、今はドーム級のアーティストの仕事もやるようになった。でもイベントをやってる意味がわからないと。昔は、東京から来るバンドを九州で迎えて、ミュージシャンとも話し、ファンとも交流があった。でも、今はドームでやって、ライブが終わるとミュージシャンも帰っちゃうし、ファンも散り散り、なんにも音楽を題材にしたコミュニケートがないじゃないかと。それはイベンターだけじゃなくて、僕らも感じたことで、なんか音楽が他の商売と同じものになってしまったなあと言うことです。
──それは凌さんが、1998年にARBを再開して最初に感じた不満でもありますね。
凌 不満というよりもガックリきたね。音楽だけは大丈夫だと思ってたのが、7年間でそうなっちゃったかと。でも、かたやインディーズ・ブームみたいのがあって、若い人達がメジャーに媚びずにやってる姿はいいなあと思うんですよ。僕らは基本的にはライブハウスもやるし武道館もやる、イベントに呼ばれたら出る、それが普通 だと思ってます。
KEITH 最近は、ライブ終わった後に残ってみんなで話すことが少ないって言うよねえ。
凌 なんか俺達ずーといたような気がするけどね(笑) ファンもスタッフも関係なく飲んでるでしょ、そのうち宴会芸が始まって、ケンカがあって、朝方になるとそのまま寝て・・・1ヶ月の3分の1ぐらいいたんじゃないか?(笑)
KEITH 他のバンドのやつもいっぱい来てたからねえ。アナーキーとかルースターズとか必ずいたし。
凌 ジュンスカの和弥とかまだ中学生で観に来てたけど、ある時僕らが飲んでたら後ろから「凌さん」って声かけてきた。「何?」って言うと「僕もバンドで歌ってるんですけど、凌さんマイクかぶせて歌いますよね? あれいけないんじゃないですか」って言うんだよ。それで「あ、そう、ごめんね」って言って飲んでたら、また来て「凌さんやっぱり、あの癖やめた方がいいですよ」って言うの。「うるせえ、お前早く帰って寝ろ!」って(笑)
──打ち上げのエピソードはあげればきりないですよね。特にKEITHさんは。
KEITH え? 俺はおとなしくしてたけどな(笑)
──今回のツアーでも打ち上げはやるんですか?
凌 その日に移動がある時はできないけど、まあ、ロフトはやるでしょう(笑)

●一番怖いのはみんなが無思想になること
──ロックという表現はとても自由であるがゆえに、混沌の中でこそ輝くものだと思うんです。でも、今の日本を見ていると、特に権力は混沌を許さず規制をどんどん強くしていこうという方向にあるような気がします。
凌 今回のイラク戦争でもはっきりしたと思うんだけど、あれだけ世界的な世論が反戦を訴えたのにもかかわらず、戦争を押しきったというのは、もうくるところまできてるなあと思うね。ただ、何を歌っても戦争が起こるんだから、もうこんな無駄 なことをするのはやめようというのではないと思うんです。歌い続けるしかない。まあ、僕らはずっとやってきたことだから、特別 に何かをやるってものでもないですが、今まで以上によりストレートに歌っていくしかないかなと。
──80年代に社会的なメッセージを歌うとなぜか社会派バンドのようなレッテルを貼られましたが、今、ピースパレードに行くような子達にはむしろ普通 に受け入れられると思うんです。
凌 一番怖いのはみんなが無思想になることですよ。考える前にいつの間にかいろんなことが決められてしまうという状況が。別 に戦争の分析をしたり研究したりしなければ戦争について何も言えないことはないと思う。僕は三歳児でも言えると思うんです、「戦争はいけない」と。黒田征太郎さんが「戦後なんか一度もない」と言っているように、今回のイラク戦争でまた戦争が続いてしまったということですよね。
──昨日、有事法制が衆議院で可決されましたけど、議員の90%が賛成したというのは何なんでしょうねえ。ある種絶望的な状況というか。
凌 一つには民意が低いからだと思うんです。じゃあ、それを上げるために、学校じゃなくて、親じゃなくて、何があるんだといったら、それはロック・ミュージックのようなものだと思うんです。僕がまさにそうだったから。学校からも親からも教わらないことをジョン・レノンから教わったし、ロックはそういう所に位 置していた。ロックさえもがそれをやらなかったら、民意が上がっていくチャンスなんてなくなってしまいますよ。
──『HARD-BOILED CITY』のライナーノーツで花村萬月さんが「俺が十五歳のとき、ロックは歌謡曲ではなかった」と書いていますが、やはりロックは特別 なものだということですよね。
凌 60年代以降、日本にもいっぱい本物のバンドが出現したと思うんです。サンハウス、めんたんぴん、センチメンタルシティロマンス、憂歌団、サウス・トゥ・サウス、外道…、それを日本の音楽業界が大事にしなかった。あるいは芸能界的なものとしてしか扱わなかった。僕は、ラブソングを歌うことと同じように、普通 の生活の中のワークソングや戦争のことを歌ってきたつもりなのに、なんでそれが特別 扱いされるのかわかんないですね。萬月さんも多分ロックがすごい好きなんだろうけど、あのぐらいの人だと今の日本のロックバンドの多くがロックじゃないと感じるんでしょう。
──でもロックにできることはまだある?
凌 そう。ロックにできること、俺達にできることをもう1回見つけるしかない。今振り返って思うのは、25年間、俺達は間違ってなかったと、そういう気はしますね。まあ売れなかったけど(笑) 少なくとも、ARB KIDSと言われる人達は、そういう良識、まあ学校で教わらないようなモラルを持っているんじゃないかなと思う。僕らは別 に思想を押しつけるつもりはなくて、自由に受け取ってもらっただけなんだけど。
KEITH 戦争が悪いってことはみんな知ってるんだろうけど、難しい言葉でごまかされてるだけじゃないかな。大事な所を出してないよね。

●人が歌える、口ずさめるような残る歌
──ライブ・サーキットの他に、今年はどんなことをやりますか?
凌 夏のイベントはいくつか出れそうですね。あと来年初頭にはホールツアーもあります。もちろん新しいCDも作ります。
──ARBはずっと社会や権力に対する怒りを表現してきたし、それはロックの本質でもあると思うんですが、今の時代、怒りを表現するのはすごく難しい気もするんです。例えば、怒りをそのままストレートに出すことがたんなる暴力にしかならないとか。
凌 確かに昔を振り返ると、ARBは「怒り」が8割9割だったんですよ。それは時代の流れはもちろんあるけど、ロックの定義は昔から変わってないと思うんです。例えば、反抗とか反発。でも、今の21世紀が持ってるパワーは確実に変わった。じゃあ、なんなのかと言ったら、多分怒りだけじゃないと思うんですよ。同じテーマを歌うにしても、もしかしたら怒りじゃない所から歌った方がお客さんにもっと届くかもしれない。僕ら昔は怒りしかなかったからそれをガンガンぶつけたんだけど、それは80年代のミートの仕方だったかもしれない。もちろん本質として、なんでこんなに物事が先走って決められるのかという怒りはあるんだけど、表現としてそのまま出してしまうとちょっと届かないんじゃないかなという気持ちはある。ARB再開後、いろんな音楽を聴いてよく思うんだけど、例えば女性のソロシンガーの歌、それもミディアムな曲の方が、よっぽど力強いとか凛々しいとかロックだなと思う瞬間があるんです。もし言霊というものがあるとしたら、声そのものが意志を持った強いものであれば、カッコつけて激しくやってるロックバンドよりよっぽどロックだと思う。怒り、不満をオブラートに包むんじゃなくて、表現の仕方をどうすればより人に届くかだと思うんですね。
KEITH やっぱりメロディと詞が大切じゃないかな。メロディと詞ががいい歌は今でもずっと残ってるよね。
凌 人が歌える、口ずさめるような残る歌を作っていきたい。特に今の時代はリズムが重視される傾向があるけど、僕は人が音楽に求めるものってやっぱりメロディだと思うんです。
──確かに、ビートルズもストーンズもいいメロディは残りますよね。特にストーンズはあれだけ長くやってるわけですから。悪口言う人もいますが。
凌 でもね、ストーンズの悪口言う人のどれだけが凄いのかっていったら、俺はいないと思うよ。実際、ロックンロールショーかもしれないけど、時代を経てあれだけのお客さんを楽しませるっていうのはさ、他にないよ。まして、オピニオンリーダーとしての存在となったら、ビートルズ、ストーンズ以降あれほどのものはないよね。
──では、ARBもストーンズまではいかないかもしれないけど、今後もずっと・・・・
KEITH いや先はわかんないから、ストーンズみたいにがんばるかもしれないよ(笑)
──ロックを一生やるしかないって感じはありますか?
凌 周囲が見るロックの概念が変わってきてるのは事実としてあって、もし今自分たちがやっている音楽がロックじゃないと言われたとしたら、じゃあ、ロックという言葉は使わなくていいですってなるかもしれない。でも、俺の中でロックの本質は変わらないから、たとえそれが古いと言われようが俺にとってのロックをやっていくしかないと思う。


●Live info.
<ARB 25th Anniversary LIVE CIRCUIT IN KANTO>
2003年6月21日(土)新宿LOFT ARB
OPENING ACT: NEW ROTE'KA
OPEN 17:00 / START 18:00
PRICE: advance-5,000yen (+DRINK)
【information】shinjuku LOFT: 03-5272-0382

ARB 25th Anniversary LIVE CIRCUIT〜IN KANTO〜
■6月1日(日)川崎CLUB CITTA' OPEN 17:00 / START 18:00 TICKET: \5,000 (+DRINK) OPENING ACT: Bivattchee
■6月7日(土)市川 CLUB GIO OPEN 17:00 / START 18:00 TICKET: \5,000 (+DRINK) OPENING ACT: 仲野 茂&ドレットノート
■6月13日(金)熊谷 VOGUE OPEN 18:00 / START 19:00 TICKET: \5,000 (+DRINK) OPENING ACT: WONDERS
■6月14日(土)前橋 club FLEEZ OPEN 17:00 / START 18:00 TICKET: \5,000 (+DRINK) OPENING ACT: 野狐禅
■6月19日(木)横浜 7TH AVENUE OPEN 18:00 / START 19:00 TICKET: \5,000 (+DRINK) OPENING ACT: バーガーナッズ
■6月27日(金)宇都宮 VOGUE OPEN 18:00 / START 19:00 TICKET: \5,000 (+DRINK) OPENING ACT: マカロニ コンプレックス
■6月28日(土)水戸 LIGHT HOUSE OPEN 17:00 / START 18:00 TICKET: \5,000 OPENING ACT: 怒髪天
【total information】HOT STUFF PROMOTION: 03-5720-9999

CROSS SUPPER SATURDAY Presents "ROCK IS HAPPY"
■7月12日(土)福岡DRUM LOGOS OPEN 17:00 / START 18:00 TICKET: \5,000 (+DRINK)
*入場整理番号付
【information】DRUM LOGOS: 092-751-3811

■ARB OFFICIAL WEB SITE http://www.arb-tamashii.com/