私にとって、REBEL FAMILIAという音楽は緊張を強いられる音楽である。得体の知れない何かが自分の精神の一番深いところを揺り動かしてくるような、そんなともすれば凶器に成り得るくらいの危険分子を孕んでいる、強い音楽なのだ。ただ、その凶器もめったやたらに暴力をふるうという意味でのREBELではなく、表現する側とその表現を享受する側、両方の人間にとって解放と引き起こす、未来あるREBELであるのではないだろうか。今回、REBEL FAMILIAの1st.アルバムの完成を祝して、HEAVYこと秋本氏に現在のREBEL FAMILIAについてお話を伺った。
(PLEASURE-CRUX 荒木智絵)

------今回のアルバムを聴かせていただいたのですが、とにかくやたら緊張を強いられる印象が先立ったのですが。やたら訴えかけてくる。暴力的な物言いになりますが、これは音楽なのか感情の吐露なのか、判断に困るんですよ。
秋本 俺も気が付けば結構、バンドというか音楽を長いことやっていて。それはレゲエから始まって現在のレベルファミリアに辿り着いたんだけど。最近に関してはまあもう、能書きはいいから音を出してい行きたいんだよ。今自分にとって一番リアルなのは、音っていうのが音を出す人にとってのそのものであって。その音を出す以前の人間というか、全ての人間性だと思う。何を考えて生きてきたのかとか、そういう事を含んだメッセージだと思う。さっきいわれた緊張だとか怒りだったりが俺らの音楽から感じているんだと思うんだけど。その中で、自分がずっと今までREGGAEだったりDUBだったりを聴いてきたり、やってきたのかといったら、初めて自分がREGGAEに出会った頃感じたのは、REGGAEがすごくメッセージの強い音楽だということで。だけど、その時に言葉の意味も判らなければ歌詞の意味も判らなかったんだよ。REGGAEの置かれている状況、ジャマイカの国で生まれた背景だったり状況とか、何も知っていた訳じゃなかったのに、メッセージが伝わってきたり、訴えかけられるものがあってね。リアリティーがあった。だから、作るときにどうこうだとか、俺らが出している音楽がどういうジャンルに括られるのか、含まれるのかということは、俺にはもうなんの意味もなくて。今一緒にやっている、GOTH-TRADっていうパートナーがいるんだけど、あいつの音を聴いたときに、すごくピンと来た。あいつの音に込める感情だとかが、自分のそれにすごく近い方向性を感じて。そういうことがあって、一緒にやっていこうってなったんだよ。
-----そのGOTH-TRADさんと昨年にミニアルバムが1枚リリースされて、それから1年になりますが、その似かよった感情は変わりなく?
秋本 そうだよね。長くやっている内に変わってくる物もあるけど、深くなっていくものもあっただろうね。俺の中にある、REBEL FAMILIAにとってのREBELっていうのは<怒り>だったり<反逆>っていう風に翻訳されることが多いんだけど。俺はとにかく<音で闘っていきたい>という思いがあって。それは、REGGAEっていうのはROOTS MUSICだし、当然アフリカ系ジャマイカ人の血っていうのがあるしね。どんな音楽にしても、ジャンルだったり音のスタイルっていうのはあると思うんだけど、日本でREGGAEをやっていくうちに、どうしてもROOTSの部分じゃなくて、音の側面 だけになってしまう。今まで俺も音の側面からREGGAEを追いつめてやってきたっていう部分もあるけど。それは、<何かを伝える>という部分において、音の側面 だけの追求はでかい壁にぶつかってしまうんだよね。
------リアリティーの剥離ということでしょうか?
秋本 それは、人間から発する物として人間としての通じるものが、自分にとってのリアリティ、現実だと思うんだ。俺がGOTH-TRADとREBEL FAMILIAをやるって言ったときに、大方の人は疑問とともに「合うはずがない」って思っただろうね。今まで二人が辿ってきた音楽が違いすぎるから。そういうことは散々言われたことだけど、俺の中では最初のGOTH-TRADとの出会いからずっと、ジャンルじゃない何かを感じていたんだよね。それは気持ちの一致なんだ。そういう意味では、REBEL FAMILIHAは、俺が今までやってきた音楽とは出だし部分からして違っているんだよね。ジャンルとかスタイルとかじゃない。「何をやるか」って言うよりは、もっと大切な「誰がやるか」って言うことだよね。この1年半、ライブも沢山やってきたし、今回のアルバムの制作なんかもやってきたけど、俺の中にあった絶対的な確信がもう一つの段階、経験を増してより深く強固な表現になったと思う。
-----秋本さんにとってREBELはどういうところで感じることなのですか?
秋本 REBELを何に置き換えるかということだろうけど、沢山あるよね。具体的にいうとさ(笑)。俺もウェイラーズのベースを聴いたときに「なんでこんなに怒っているんだろう」って思った。それは本当もう、初めてREGGAEに接した時でもあったんだけど、今まで自分が聴いてきた音楽と明らかに違う、異質な物に感じた。こんなに真剣に怒っている音楽があるんだということと、当時の俺のようなクソガキが畏れ多くて聴くような音楽じゃないんじゃないかって。例えば、フェラ・クティであるとかを聴いた時も、ナイジェリアがどんな情勢で人々がどんな環境に置かれているのかだとかをきちんと理解していた訳じゃなくても、聴いたときにこれはただごとじゃないっていうのが伝わってきて。目を閉じればフェラ・クティーの一音一音から血しぶきが飛んでくるように、はっきり見えた気がしたしね。DUBって異常な音楽だと思う。DUBには過剰な衝動が含んでいるでしょ。こんな音を出さなくてもいいはずなのに、過剰に出してしまう。だけど今はDUBっていうと普通 の伝える手段に成り下がっている様に思って。街行く人に「DUBって何だ?」って問いかけたら、「なんだか知らないけど、フワフワしているような、気持ちのいい音楽」なんて答えるんじゃない? そんな情況は糞みたいだよな。なんでそう言う音になる必要があったのかっていうことを飲み込んでないし、そこにたどり着いてないんだよ。その、DUBの構造だけを理解して、スタイルとしてやっているから、今みたいな情況になっているんじゃないの? DRY & HEAVYに関してもそういう所に限界を感じてやめることにした。DUBは明らかに衝動なんだよ! そこからでしかDUBは生まれないはずなんだよ。そこからじゃないところ、スタイルだけを真似てやろうとするから甘ったるいDUBみたいな音があふれかえる結果 になるんだよ。DUBは衝動がなければ出さなくてももいい音であり、狂った音でしょ。本当はね。だから、俺はそこに踏み込みたかったんだよ。GOTH-TRADとだったら出来るんじゃないかっていう思いから、一度セッションしてみて。その瞬間からはお互い果 たし合いだよ。お互いが一人でやっている時以上のもの、1+1が2以上, 100にも200にもならないと、俺はやっていても意味がないと思っているから。そこでそのセッションが凄いものになって、俺が誘ったということで言えば、俺はそのような勝負に勝ったのかな。そこからREBEL FAMILIAが始まったわけだから。
------それが一つのREBEL FAMILIAへの衝動だったと。その原動力ということに関しては? REBELへの衝動だとか。
秋本 だから、過去のことそれだけじゃないよ。それだけでずっと音楽が出来るわけないしさ。さっきも言ったように俺はREGGAEやDUBにものすごい衝撃を受けた訳よ。俺は未だに自分のことをミュージシャンだと思ってないし。っていうのは、なんでそこまで俺がREGGAEやDUBに取り付かれたかっていったら、初めて自分の衝動、怒りなんか、どこにぶつけていいのか解らないそういうものを、武器なんかを使った攻撃じゃなくて、託せるのは唯一REGGAEやDUBだった。そういう音楽のベース音が銃に見えたんだよ。そこから始まったんだから。俺の中に解消できない衝動っていうのが最初からあったんだよな。俺の音にのっかているどうしようもない衝動がさ。その中でそういう過去のことだとかがあって、そこへの怒りがクローズアップされているかもしれないけどさ。今出している音にはもっと前からの衝動があって、GOTH-TRADという果 たし合いの出来る相手と一緒にやっているという事も含めて、やっと音がスタートラインに立ったとも言えるんだよな。どこまで自分の真実を通 すことが出来るのかとかは、ミュージシャンである前に人間として当たり前な思考だ、基本的な事でしょう。何に対してもREBELだから何にでも反抗するとかとも違っていてさ。
------それはそうですね。普遍的な事だと思います。
秋本 だからさ、そのREBELって何だ? って問いかけられることが多いけど、そんなことも説明してやらないとダメなのか?! って呆れてしまうよ。俺にとってはREBELは「自由」と同じ言葉じゃないかって思う。何に対しても反抗してやるっていう事じゃ全然ない。自分を主張する自由だと思う。俺はこうなんだ、どんな情況になっても、俺はこうなんだって言えることだよ。だから今回の1枚にしても、俺の全てが詰まっているんだ。DUBのレコーディング仕方って、通 常のレコーディングとは全てが狂っているっていうのがあって。なんか本当に全てをぶっ壊してくれるような、自由っていうかね。ここまで表現するのかっていう。キングタビーとかみてもそうじゃない。「音が歪んでいる」とか言う奴がいるんだけど、今ある日本のレコーディングのスタイルでは出来ないよ。マニュアルを超えちゃっているから。俺にしたら、まだ出し切れない部分があるんだけど。俺らにとって、ライブもこのアルバムもそうなんだけど、一音一音がREBELだと思っている。
------そういう音への姿勢がものすごく信頼出来る所以なんだと思います。それがひいてはリアリティーを感じることが出来るという意味になるのですが。
まぁ、俺が初めてREGGAEとかDUBを聴いてREBELを感じたように、これを聴いて、俺らの音楽には言葉はないんだけど、REBELを拾って感じ取ってくれるファンがいればって思う。俺は本当に俺とGOTH-TRADと一緒にやっている音楽は誰かのためにとやっている訳じゃないから。出さずにはいられないからという衝動だけだよ。理由なんかないよね。別 にここで押さえが聴かなくなって、発狂して叫びだしてしまうかもしれないということと同じ事で。ただ、もし今ここで俺が叫びだしたとして、その叫び声に何かリアリティーを感じた人がいたとしたら、なんていうか、俺としては本望だね。この瞬間に俺がこういう音が出したかったんだっていうことだけ。
-----そういうところでREBEL FAMILIAが成長してきたと。
秋本 この1年半っていうのは俺にとって、音楽の重要度が高かったよ。しかも最初は本当にリアルに音楽に耳を傾けていたファンにしか届かないところで活動していたものが、だんだん今のような大きな流れになってきたというか。俺が今までやった来たことに立ち返ってやって来た実感がある。本当に小さいライブハウスだったりクラブでやって来て。REBEL FAMILIAは去年に12"を1枚しか出してないし、別に情報が大量に出た訳じゃないし、HPがあるわけじゃないし、今回が初めてのアルバムだしね。本当にフライヤーと口コミで広がったのが現状じゃない。だから、本当に音楽に向き合って、音楽に対してものすごく多くのものを求めるファンがいるしね。実際REBEL FAMILIAの音を出すサイドの俺等からしたら、本当に空気の濃いところでやっていて、ぬ るいものをやったら満たされないようなファンがいるがいるんだよ。その反対にこっちがいくらやっても少ししか伝わることのない奴しかいないところでなんかやるつもりは全くないしね。そういう意味で、本当に濃い環境でやって来たからね。現在の音楽産業なんて、本当に嘘くさい奴ばっかりじゃない。本当に自分の耳と頭が研ぎ澄まされていないと、ただ上っ面 の情報量だけで、宣伝におどらされてしまう。そういうシーンじゃないところで俺はずっとやっていきたいよ。


●リリース
REBEL FAMILIA
REBEL FAMILIA
HMS-0038 / 2,600yen(tax out)
OUT NOW

●LIVE INFORMATION
4/12 恵比寿MILK "DUB SCHOOL"
4/26 新宿LOFT "REBEL FAMILIA RELEASE PARTY"
5/2 TOWER RECORDS SHIBUYA STAGE ONE
5/3 大阪CLUB QUATTRO "TAG RAG NIGHT"
5/9 新宿LIQUID ROOM
5/10 横浜BAY HALL
5/31 青山CAY "REBEL FAMILIA & CULTIVATOR DOUBLE RELEASE PARTY"

TOTAL INFO:POSITIVE PRODUCTION 03-5412-8417