あの天衣無縫の国宝級レーベルが遂に復活!
 1992年末にここ日本で、世界的に見ても極めて個性的なレーベルが誕生した。ZKレコーズのバックアップのもと、谷口 順(GOD'S GUTS, U.G MAN, We are the world, Screwithin)がディレクターとして携わったレスザンTVがそれである。BEYONDS(のちにfOULへ)、bloodthirsty butchers、GUITAR WOLF、DMBQ、ロマンポルシェ。、DEW UNDER、FRUITY(のちSCHOOL JACKETSを経てYOUR SONG IS GOODへ)……レスザンTVが輩出してきたバンドはいずれも鎬を削るかのように強烈な個性を「これでもか!」と残し、シーンにその名を刻んできた。20世紀に入り、レーベル機能停止を余儀なくされていたそのレスザンTVが遂に今年再始動するという話を聞きつけ、レーベルの主宰者である谷口氏を緊急直撃した。(interview:椎名宗之)

>レーベル制作は最高に楽しい
──遂にレスザンTVとしての活動が再開されるわけですが、今回リリースされるオムニバス『TOMODACHI IJO KOIBITO MIMAN TV IKA』が出る噂は結構前からありましたよね。
谷口 そうですね。去年くらいからバンドには声を掛けてたんですよ。ECDの音源なんかは一年前にはもうもらってて、それからちょっとゴタゴタしてたというか。要するに、今までレスザンってレーベルを僕がやってるって言っても、実質的には何もしてなかったんですよ。文句を言うくらいのことしかしてこなかったんで。それでZKレコーズの井手(宣裕)さんから思いきり怒られまして(笑)、これは自分で(レーベルを)やれってことだなと受け止めて。それで今回はミュージックマインに協力してもらったんですけど、今回も自分ではほとんど何もしてないんですよね(笑)。ただ、ちゃんとレーベルをやろうとはいつも思ってて、周りの皆様にもいつもご迷惑を掛けっぱなしなので、しっかりやろうと思って始めたんです。始めざるを得なかったというか。
──必要に迫られた部分もあったんですか。
谷口 ええ。もうレスザンをなくすわけにはいかないので。レーベル自体はずっとあったんですよ。ただ、今までは制作の仕事を全く判ってなくて、今回一から勉強するつもりでやらせてもらったんですけど…制作、最高です(笑)。本当に楽しいですね。「今さらか!」って感じですけど。
──『TVVA』(ch-1)が1992年発表ですから、それから10年経ってようやく制作らしい仕事をされた、と(笑)。
谷口 そうですね。遅いですよね(笑)。
──じゃあ、これまでの谷口さんの仕事は、ご自身のアンテナに引っかかるバンドを見つけ出して「あとはよろしく!」みたいな感じだったんですか?
谷口 いや、もっとひどいですよ。前は制作って言っても「レコーディング行きましょう!」「アルバム、イイっすねぇ! ピクチャーにしましょう!」とか勝手に決めて、録音の上がったものを「ハイッ!」って井手さんに渡すだけでしたからね。そりゃ井手さんも怒りますよね(笑)。ただ、バンドのチョイスに関しては、自分のバンドのメンバーや友達から「こんな恰好いいバンドいたぞ」って情報をもらってライヴを観に行ってみたり、僕一人じゃなくてみんなでやってる感じなんですけどね。
──今回のオムニバスは、“2003年型『TVVA』”といった趣もありますね。
谷口 そうですね。そういう感じでやらせてもらいました。初心に戻ってというわけではないんですけど、曲順も『TVVA』のようにアルファベット順にしたり、ジャケットも自分が考えたようにしてみたり。最初はもっとバンド数も少ない、ド渋な感じにしようと思ってたんですよ。でも今回は「自分でレスザンをやるぞ!」ってことで、もっとパーッとしてたほうがいいかな、と。オムニバスを作るのはやっぱり楽しいですね。ある程度予測してそれぞれのバンドに振るんですよ。「このバンドは直球のハードコアで来るだろう」とか、「グッとテンポを落としたので来るんじゃないか?」とか、「絶対とんでもないものを持ってくるだろう」とか、そういうのでバランスを見てやってますね。それぞれの反応も様々で、「自分的にラヴソングであればOKなのか?」とか、「タイトルに“LOVE”って入ってないとダメなのか?」とか、「ポップでメロウなものじゃなきゃいけないのか?」とか、みんな結構面 白がってやってくれたり。そういうのが僕は好きというか、レスザンらしいかなと思って。

>どうせやるなら周りをビビらせてやろう
──今回、なんでまた正面切ってラヴソング集をコンセプトにしたんですか?
谷口 よく駅で売ってる1,000円CDにラヴソング集みたいなのがあるじゃないですか。ああいうのを最初はイメージしてたんですよ。「間違って誰か買わないかな?」くらいに思ってて(笑)。でもどうせやるならカヴァーじゃ面 白くないし、それはナシにして、全曲書き下ろしにしてもらおうと。
──アルバムに参加されているのが、一見ラヴソングと縁遠い方々なのが面 白いなと思いましたが(笑)。
谷口 そうですよね(笑)。ヨウちゃん(吉村秀樹/bloodthirsty butchers)みたいに「ラヴソングどう?」って訊いたら「ラヴソング? あるよぉ!」みたいな人もいれば、本当かどうか判らないけど「ウチの曲は全部ラヴソングだから!」みたいな人もいて、面 白かったですよ。みんな他の面子を意識してというか、オムニバスに音源を入れるとなったら周りをビビらせてやろうと思ってくれてたと思うんですよ。VOLUME DEALERSに至っては、GOING STEADYのメンバーが一言「ズルイ!」って言ってますよ(笑)。VOLUME DEALERSのベースの野田(宣孝)君が結婚しまして、その式場で野田君の妹さんがVOLUME DEALERSの曲をピアノで演奏したんです。それをビデオから起こしてそのまま収めたんですよ。本人も「この際、飛び道具を使わせてもらう」って言ってましたけど(笑)。
──かと思えば、谷口さんのU.G MANは軍歌のようなかなり異色のナンバーですが。
谷口 最初はゴスペラーズみたいなアカペラにしようと思って(笑)。例によってスタジオへ入るまでは何も決まってなくて、「アカペラなら早いんじゃないかな?」と思ったんですよ、歌詞さえあれば。カワナミ(ユウジ)さんは歌詞を書き溜めてるだろうし、サラサラと書いてくれれば何とかなるかなって。でもそれが全然出来なくて、結局ああなっちゃったんですよねぇ。ハモらないから輪唱にしようかと思って…。ちょっと右寄りに聴こえますかね? でもあれはユニティの歌ですから。このアルバムに収められた曲はどれも素晴らしいですよ、U.G MAN以外は(笑)。
──こういうオムニバスだと、特にトン平&ビショップは活きますね(笑)。
谷口 最高ですね。ビショップの娘さんが「トンコツ!」って言ってるし、彼の奥さんがフルートを吹いてます(笑)。思いきりファミリーですね。
──そのトン平&ビショップやEVIL SCHOOL、IC-40、1などの別名義ユニットも含めて、よくこれだけの面 子が揃ったなと思いますよ。
谷口 そうですね。ヨウちゃんも、ブッチャーズが忙しいだろうと思って最初は頼んでなかったんですよ。でも、このオムニバスの話をどこからか聞いたみたいで、「誘ってくんないみたいだなぁ」と話してるのを人づてに聞いて(笑)、急いで電話して。ヨウちゃんにはマスタリングの時にも立ち会ってもらって、いろいろアドバイスしてもらったり。ちなみにヨウちゃんの曲はマスタリングの朝に出来上がったみたいですけどね(笑)。最初はコンピュータで作るらしかったんですけど、マスタリングの前日に電話したら「思いきりコンピュータがブッ壊れた!」って(笑)。「これはもう生で録るしかないだろう」ってことで楽しみだったんですけど、凄くいいラヴソングですよね。

> 一本芯が通った“レスザンらしさ”
──これまでにレスザンTVから出たカタログを見て思うのは、ジャンル不問で一見バラバラなんですけど、どこか一本芯が通 ってますよね。その“レスザンらしさ”みたいなものって何なんでしょう?
谷口 よくそう言われて凄く嬉しいんですけど、最近思いました。全部恰好いい! 一言で言うならそれですね。とことん恰好いいってことじゃないですかね。
──それはひとえに谷口さんのアンテナに引っかかるか否かに係っていると思うんですが。
谷口 だけど、自分のアンテナなんて室内アンテナよりタチが悪いですよ。いいものを見極める力が全くないですもん。アンテナも全然張り巡らせてないし…張り巡らせてないというか、誰だって恰好いいバンドの噂を聞いたら観に行きますよね。その程度ですよ。
──うまく表現できないんですが、“レスザンっぽさ”ってありますよね。 谷口 それは好み云々じゃなくて、音楽の作り方としてあると思うんですよ。何て言うんですかねぇ…きっとみんなタチが悪いんじゃないですかね、一人一人が(笑)
。それが音にもクドく出て、複雑にぶつかり合って。それはあるかもしれませんね。
──以前、谷口さんは「レスザンTVとは“自分自身のことのみに異常にこだわるバンドをリリースするレーベル”」と仰ってましたよね。
谷口 それ、自分でも言ったの忘れたし、凄く恥ずかしいんですけど、「それ自分だろ!?」って感じですね(笑)。まぁ、最終的に音のなかにどうしても自分が出てしまうというか、その姿勢をピュアに追求してるからこういうふうになるんじゃないですかね。そういうのはすぐに判りますね。音を聴いても判るし、人柄や活動の仕方とかを見てもね。
──今後リリースしていきたいアイテムは?
谷口 出したいのは一杯ありますよ。EVIL SCHOOLのアルバムとか、BREAKfASTの次のアルバムとか。U.G MANとIDOLAのスプリットやScrewithinの音源も出したいし。
──Screwithinは、STRUGGLE FOR PRIDEとのスプリット以外に音源はあるんですか?
谷口 録音はしてあるんですけど、宙ぶらりになってて。それは何らかの恰好いい形で出せればと思ってるんですけどね。
──U.G MANみたいに『Screwithin Classics』として出すとか(笑)。
谷口 ああ、それもアリですね(笑)。
──あと、凄く些細なことなんですけど、『TOMODACHI IJO KOIBITO MIMAN TV IKA』の品番が“ch-50”で、estrella20/20の『AM』が“ch-81”、ECHOの『VICTOR FOUR』が“ch-82”じゃないですか。この番号の開きは何か意味があるんですか?
谷口 オムニバス作品だけ10番台、20番台、30番台…と頭を全部空けてあるんですよ。オムニバスが今回で5枚目ということで“ch-50”なんです。本当は10タイトルに一つはオムニバスを作りたかったんですけど、全然追いついてないんですよ(笑)。オムニバスのアイデアはいろいろと溜めておいたんですけど、余りにくだらなすぎて…。バンドのジングルだけを100個くらい集めて作るとか(笑)。
──『鹿コアオムニバス』(ch-10)とか、結局何だったんでしょうか?(笑)
谷口 あの面子もよく判らなかったですよね(笑)。当時“ローファイ”と呼ばれるものに対する回答のつもりで作ったんですけど…全然違いましたね。
──ライヴ音源や未発表曲を出していたZKレコーズの“ブラッディ・バタフライ”のように、秘蔵音源を出すヴィジョンはないですか?
谷口 ああ、それいいですね! ありがとうございます。やります。考えておきますよ。とにかくレスザンは犯罪を犯してでもこれから続けていきますから(笑)。■■


Live info.
〈Less than TV TOUR 2003『アバンチュール』〜Less than TV「TOMODACHI IJO KOIBITO MIMAN TV IKA」(LOVE SONG Comp.) + estrella20/20「AM」+ ECHO「VICTOR FOUR」CD発売記念〜〉
2003年2月28日(金)新宿ロフト
銀杏BOYZ(ex. GOING STEADY)/ロマンポルシェ。/U. G MAN/EVIL SCHOOL/ECHO (from 横須賀)/estrella20/20 (from 静岡)/IDOL PUNCH (from 岡山)/KIRIHITO/ECD/BREAKfAST/nemo
OPEN 18:00/START 18:30
PRICE:ADVANCE-2,500yen/DOOR-3,000yen (共にDRINK別)

レコ発ツアー“Less than TV TOUR 2003『アバンチュール』”
◆3月1日(土)横須賀かぼちゃ屋
ECHO/estrella20/20/STRUGGLE FOR PRIDE/U.G MAN/ELCAMINO53/KABOCHACK
◆3月2日(日)難波BEARS
ECHO/IDOL PUNCH/EMI CRAINA/JET-LINERZ/etc...
◆3月3日(月)岡山ペパーランド
estrella20/20/IDOL PUNCH/JET-LINERZ/etc...
◆3月4日(火)四日市ROCK ON
estrella20/20/PANTHER/SSTKCQ/JET-LINERZ/etc...
◆3月6日(木)静岡SPIRAL MARKET
estrella20/20/ECHO/STRUGGLE FOR PRIDE/KABOCHACK/We are the world
◆3月8日(土)仙台バードランド
ECHO/U.G MAN/EGO/etc...