2001年9月11日の米同時多発テロ以降、「正義はアメリカにあり」と言わんばかりの強引な世界戦略を進めるブッシュ大統領。オサマ・ビンラディンをかくまっているという理由でアフガニスタンに爆撃を行いタリバン政権を打倒したブッシュは、今度は標的をイラクに絞った(そういえば、アフガニスタン攻撃の目的であるビンラディンの捕獲・殺害は一体どうなったんだ?)。しかし、攻撃する理由が曖昧で、当初は「テロリストと繋がりがある」と説明していたのが、ほとんど支持を得られないとみると、今度は「大量 破壊兵器を製造している疑惑がある」として国連安保理にイラクへの無条件査察を承認させた。しかしその一方で、最近、核兵器開発を認めた北朝鮮に対しては、外交的に解決するとしてイラクのように攻撃する構えは見せない。こうしたアメリカのダブル・スタンダードな姿勢に対し、アフガン攻撃は渋々承認していた国々も、さすがにイラク攻撃には反対している。朋友イギリスのブレア首相すらも最近はブッシュの傲慢な態度に難色を示しているという報道もあるほどだ。結局、ブッシュの狙いは、宿敵フセイン政権を打倒して、イラクの石油を支配することとイスラエルを守ることにあるのは見え見えなのだ。

 しかし、このようにアメリカが国際的に批判されている中、日本は相も変わらず曖昧な立場で、アメリカに言われるままイージス艦を派遣し、さらに有事法制までも成立させようとしている。軍事的に暴走するアメリカにあくまで追従しようとする日本。はたしてこの状況は、私達国民が望んでいるものなのだろうか?

 2003年1月18日、アメリカのイラク攻撃に反対する平和集会「World Peace Now 1.18」が世界各地で行われた。これは、国際A.N.S.W.E.R.(Act Now to Stop War & End Racism 戦争を止め、人種差別を無くすために今行動を)連合の呼びかけで開催されたもので、アメリカ、日本を始め世界25カ国以上がこの日、平和のためのアクションを起こした。

 日本では北海道から沖縄までの全国各地で集会が行われた。最も規模の大きかった東京の集会は、アムネスティ・インターナショナル、ピースボート、日本消費者連盟など多くのNGOや団体・個人の手で行われ、会場の日比谷公園には7000人の人が集まった。

 正午から始まった小音楽堂でのピースコンサート、日比谷・銀座でのピースパレード、そして大音楽堂でのピースラリーには、実に様々な種類の人達が集まった。思い思いのメッセージを書いたプラカード、横断幕、旗を掲げる人達、着ぐるみやコスプレなどでアピールする人達、楽器や太鼓を鳴らして自由を歌う人達、オーソドックスなアジ演説やシュプレヒコールを叫ぶ人達、そこにはある種混沌とした解放感が漂っていた。この混沌こそが、国民を画一化し、一丸となって戦争に向かわせようとする国家権力に対する、明確なNOの姿勢ではないだろうか。国家は民衆のためにあるもので、国家のために民衆があるのではない。国家はいかなる国の民衆をも殺してはならない。フセインのためでなく、イラクの罪なき民衆のために、世界中の民衆が連帯したのだ。

 私はパレード中、このムーブメントは絶対に終わらせてはならないと思った。世界中が平和になる日なんて本当に来るのかどうかわからないけど、それでも平和な世界をイマジンするしかない。それだけが、このクソまみれの世界を未来につなげる唯一の方法じゃないだろうか。13年前に死んだJAGATARAの江戸アケミのフレーズが頭の中をリフレインした。

今が最高だところがって行こうぜ ──つながった世界(JAGATARA)



こうした平和集会のライブには欠かせない、沖縄のエイサー隊。迫力ある太鼓と踊りは当日の寒さを忘れさせる程だった。 ピースコンサートのトリをつとめた、PANTA with SKI(制服向上委員会)。意外な取り合わせに見えたが、よく一緒に活動しているとのことだ。
日比谷野外音楽堂には数千人が集まり、たくさんの旗がはためいた。 様々な国の人達がパレードに参加しました。 個人情報保護法案拒否!共同アピールの会とロフト連合。悪の枢軸ではなく、悪法の枢軸を撃てとアピール。
 
塩見孝也氏も興奮して思わずアジ演説を開始。これぞオールディーズ。 当日、イラクから帰ってきたばかりの、反戦ストリッパー沢口友美ちゃんもパレードにかけつけた。  
San Francisco Washington DC 着ぐるみのクマは子供に大人気。

 アメリカでの集会は、ワシントンDCで50万人、サンフランシスコで20万人という圧倒的な規模で、ベトナム反戦運動以来最大の反戦デモになった。ブッシュ政権はアフガンとの戦争によって人気を回復したと言われているが、これだけ多くのアメリカ人がイラク攻撃に反対しているというのは、私達にとっても非常に心強い。  60年代にLOVE&PEACEを生みだした国の意地としても、なんとか今回のイラク攻撃を食い止めてもらいたいものだ。 (写真は、在米のオオタケマサヒロさんのものです)