KIWIROLL 心の琴線と涙腺を刺激する迷子たちの「うた」
 噂はもう聞いているだろう。ねじれた轟音と絶叫を轟かせながら、無上のメロディが心の琴線と涙腺を刺激するバンド、それがフロム札幌のキウイロールだ。ブラッドサースティ・ブッチャーズからカウパァズまで続く札幌パンクの血を受け継ぎつつも、誰でもなくどこにもない「うた」のバンドに成長しつつある彼らの2002年は、上京することから始まり、セルフ・タイトルの4曲入りマキシを発表することで無事終了した。そして新年には堂々の自主企画〈迷子の晩餐 vol.6〉も控えている。まだまだ迷子、それでも確実に何かが変わりつつある彼らの現在を直撃した。(interview:石井恵梨子)

特定の層だけに甘んじたくないんです
──昨年は札幌から上京して、環境もガラッと変わり、いわゆる激動の一年でしたよね。
エビナ(Vo) 激動でしたねぇ。全然地上に上がってこないところで、地下で激動してましたよ(笑)。
ナオキ(Dr) とりあえず生活がね。今まで実家だったから、そのへんはみんな大変でしたよね。
エビナ あったねぇ。あとライヴを増やして、月に4〜5回やったぶん、キツかったところもあって。
──月に4〜5回は、増えたことになるんですか?
エビナ そうですね。札幌だったら月1回とか、東京には3ヶ月に1回来るって感じで。たいしてやってなかったんですよ。 オグラ(G) 練習もするようになったからね。 エビナ 倍になったからね。
──へぇ、すごい。
エビナ いや、週1から週2になったっていう。
──………けっこうマイペースだったんですね。
エビナ だからそういう意味では、けっこう適当だったんだよね? それが良くも悪くも作用してるっていうか。今の練習量 も少ないんでしょうけど、俺らにとってはすごい多いんですよね。だから、違いはありますよね。
サンチェ(B) そうっすね。上京した当初はツアー感覚で東京にいた気がするんですけど、それがライヴの本数も増えてきて。次第にライヴに対する完成度というか、より良いものを目指そうって、それを見るようになったのが大きいと思います。
──ライヴに対する考えみたいなものが、多少なりとも変わってきたということでしょうか?
エビナ 自分は変わりましたね。選曲から何から考えるようになったし。歌う、その声も一年前とは違ってると思うんですよ。けっこう(喉を)潰して歌ってて、まぁ今もそこまで変わんないんですけど、なんかやっぱ……旋律がある曲はちゃんと歌わないとダメだから最初のほうに持ってきたり。そういう、ライヴをトータルで考えるようにはなりましたね。
ナオキ 基本的な意識はそこまで変わらないんですけどね。こっちに来ていろいろなバンドを観る機会も増えたし、一緒にやるバンドの影響もありますね。
エビナ 今年はいろいろ挑戦してみたかったんですよ。あるじゃないですか。ハードコア・パンクだのギター・ポップだのメジャーっぽい感じだとかで世界が分かれていくの。そういう世界を頭ごなしに「じゃあやらない」って言うんじゃなくて、一回とりあえずやってみて、ダメだったらやめようって感じでやってたんですよ。
──畑違いのバンドとやってみると、どういうリアクションが返ってくるんでしょうね。
サンチェ その時々によって違うんですけど……中にはまぁ……しょっぱいというか(苦笑)。
エビナ しょっぱいねぇ! しょっぱいの、多い(笑)。
──いい意味で、聴く人を選ぶんだと思いますけどね。不特定多数がそれなりに楽しんで、適当に忘れてしまうような、そういうユルい世界じゃないですから。
エビナ ……そういうところに甘んじたくないんですよ。ホントは全員に伝えていきたいんですけど、どうしても伝わんない時はあって。それは自分らの力量 のなさもあると思うんですけどね。ただ、しょっぱい時は……多かったなぁ(笑)。客と温度差がありすぎるっていうか。
──想像できます(笑)。あれだけの熱量で、ステージでは何も見えてないんじゃないかみたいなテンションだし。だからこそ、今の「ホントは全員に伝えていきたい」っていう発言、けっこう意外なんですけど。
エビナ あぁ、いや、伝えたいですよ。自分を伝えたいっていうか、バンドの全体の世界。それが伝わればいいと思うんですよ。それができれば一番いい。演奏が一番上手とかはあんまり意味ないと思ってて、でも、俺らしかできないことをやりたいし、やってるつもりだし、それが伝わればいいんじゃないかなーって。
サンチェ 実際、聴いてくれる人を無視したことは一度もないんですけどね。
エビナ うん、だったらこんな曲はやってないし。曲がまず生きてるから、そこはエンターテインメントじゃないけど……そういう曲をやってるつもりだから。
──でも聴き手は娯楽性というよりは、むしろ孤独とか痛みを受け取ってるんだと思いますよ?
エビナ あぁー、そのへんはちょっと、最近打破したいんですけどね。……もっとなんか、違う感情っていうか、そういうものを越えたところを表現したいんですけど。だんだん、完成度っていうか、自分らの行きたいところまでは行けてる気はしてるんですよ。
──ステージを転げ落ちて客席の床でも転げ回ってるようなエビナさんが、そんなことを考えているとは正直思ってなかったです(笑)。
エビナ そう言われるとショックだな(笑)。なんて言うんだろう……別にわざと転げたりしてるわけじゃなくて。
──ええ、もちろんそれはわかります。
エビナ ……なんだろ? ……だんだん矛盾してくるんだけど(笑)。たぶん、まだいろんなものを持とうとしてる段階なのかもしれないですね。まだ模索してる。

真っ白な時ほど最高にキレイ
──極端な例ですけど、100点か0点しかないライヴを繰り返すバンドと、常に合格点をビシッと出せるバンド、どちらを目指したいと思います?
オグラ でも、100点って何だろう? って考えちゃうじゃないですか。0点って、ライヴやる限りは絶対出さないつもりだから、0か100かっていう選択肢はないわけで。でも合格点って何だろうなって考えるとまたわかんなくて。やる以上、当然のライヴはしたいと思ってますけど……んー、その質問は難しいですね。
サンチェ 合格点って、もしかしたらそこが0点なのかもしれないし。それ以上を目指そうって思ってるし。それを越えてからこそ、良かったとか、楽しかったって思えると思います。
エビナ だから、周りのバンドとかいいなぁーって思いますよ(笑)。みんな、常にいいから。俺らは波がありすぎる。なんでなんだろう? って思う時あるんですけど。その波の幅がもっと狭まればいいし、常に最高のものをやろうとしてるんですけど、それが気負いになっちゃうとダメだったり。いろいろあるんですよ。やっぱり、いいライヴってあんまり覚えてないことが多いんですよね。何やったか覚えてなくて。冷静でもないけど、心にあんまり邪念がないから、なんか、よく覚えてない方がいいライヴになったりしますね。俺は。真っ白になる感じっていうか。
──うーん、真っ白になって記憶がないライヴと、もう少しエンターテインメント的にちゃんとしたものを見せたいって気持ち、ちょっとズレがありません?
エビナ あぁ、あれ?(笑)。いや、なんだろう……ちゃんとしたいっていうか、そういう真っ白な時ほどちゃんとしてるんですよ。キレイなんですよ。それは俺の思う美しい表現ってことなんですけど。そうじゃなくて「あぁ疲れてきた」とか「あ、音ハズした」とか「みんなボケーッと見てんなぁ」とか。そういうのを感じた瞬間、もうダメになるっちゅうか。
──あぁ、無心になってこそ美しいっていう。
エビナ うん。変なこと考えないで、自分らの曲が、最高に美しい形で伝わればなぁって。それだけですよね。そういうライヴではすごくスッキリできるんですよ。無心な時。いいっすよね。いろいろ、日々の嫌なこととか、全部忘れちゃうような。全部、なんにもなくなっちゃう感じ。そういういいライヴができたら、その次のライヴまでずっと、何があっても俺は嬉しいんですよ。あぁ生きてるんだなっていうか。逆に悪いときは、その間ずーっと嫌な気持ちで、全部が嫌になりますけど。
サンチェ エビちゃんが一番極端なんじゃない?
エビナ うん……でも……そこしかないんで、俺は。ライヴが良ければいいんですよね。結局ショウとか、そういう感じではないのかな。やっぱライヴ。
──文字通り、生、っていう。
エビナ そういう感じですよね。そうありたいです。

──では最後に、1/25のイヴェント〈迷子の晩餐〉についても訊きたいんですけど。
エビナ これは札幌の頃から企画してやってて。3年半くらい前かな。あの、エコーってバンドが札幌に来るって時に企画したのが最初で、その流れからツアーで一緒にやった人とか、あとは当然好きなバンド、自分が見たいバンドを呼んでたんですよ。それをそのまんまこっちに持ってきた感じですね。まぁゆっくり、いつかは定期的にはやっていきたいんですけど。
オグラ あと今回は、GOMNUPERSをみんなに見せたいっていうのはありますよね。カッコいいからすごい見せたいんですよ。
エビナ 札幌界隈ではわりと知られてるんですけどね。俺らのことを好きな人なら、けっこう好きな要素はあるんじゃないかなって。音は全然違うんですけど、すごい、濃い感じのバンドなんで。
──楽しみですね。じゃあ最後に、このイヴェントに少しでも興味を持った人に対して、何か一言お願いします。
オグラ ま、自分たちが好きなバンド、やりたいなって思ったバンドばっかりなんで、面 白いと思います。
ナオキ そうですね。気軽に来てください。ぜひぜひ!
サンチェ 自分たちもすごい好きなバンドだし、一緒にやれることがすごい楽しみなんで。そういう意味では自分らも楽しみたいです。いいライヴにしたいですね。■■


●リリース情報
KIWIROLL
5B RECORD 5B-00 / 1,000yen (tax out)
IN STORES NOW

●Live info.
〈迷子の晩餐 vol.6〉
2003年1月25日(土)
下北沢シェルター
Kiwiroll/nine days wonder/GOMNUPERS (from 札幌)
OPEN 18:30/START 19:00
PRICE:ADVANCE-1,800yen/DOOR-2,300yen (共にDRINK別)

LIVE SCHEDULE
1月10日(金)名古屋ハックフィン/1月13日(月)下北沢クラブキュー/1月26日(日)名古屋ハックフィン/1月28日(火)大阪 新神楽/2月6日(木)渋谷オンエアーウエスト

◆KIWIROLL OFFICIAL WEB SITE http://www.kiwiroll.com