キャリア初となる奇跡のライヴハウス公演が実現!!  1981年の結成以降、積極的に欧米へと進出し、日本を代表する存在として、今なお世界的にその名を轟かしているLOUDNESS。数度のメンバー・チェンジもあったが、2000年10月には二井原 実(vo)、高崎 晃(g)、山下昌良(b)、樋口宗孝(ds)というオリジナル・ラインナップが再び集結。全国ツアーはソールド・アウトが連発し、各方面 で大きな話題となった。そんな彼らが何と12月19日に新宿ロフトに登場する。しかも54-71との共演というから興味津々だ。(interview:土屋京輔)



この4人でやる音楽だからこそ楽しい

▲二井原 実の驚異のハイトーン・ヴォーカルは数多くの“二井原信者”を生んだ。


――2000年10月にオリジナル・メンバーが再び集結して、早くも2年ですね。
二井原:うん、アルバムも3枚出てね。ついこの間のような感じもするけど(笑)。
――とはいえ、現在の4人で活動していた80年代の頃とは違った、新しいLOUDNESSといった認知もされてきていると思うんですよ。
二井原:サウンドはモダンな感じの音作りになっているし、曲作りにしても方法論にしても全部、いわゆる80年代的なヘヴィ・メタルという様式美はなくなりましたね。ぼくが脱退して10年の間に、メイン・ソングライターの高崎 晃(g)には様々な歴史があったから、こういう形になったんだと思うんだけど、ぼくはこの4人でやる音楽が楽しいんですね。結果 としてモダンなものであったり、ヘヴィ・メタルであったりするけど、独特のサウンドになる。ただ、ジャンル的なものは個人的にはそんなに気にはしてないんですよ。80年代にぼくらが作ったヘヴィ・メタル然としたアルバムを望んでいた人の期待とは違うものかもしれないけどね。ファンのために曲を書くという面 はあるけど、それよりもメンバーそれぞれがやりたいこと、目指しているところが最終的には音となってでき上がってくる。実際にスタジオの中で、「随分、高崎も変わったんだなぁ」って思うところもありますよ。でも、彼にしても樋口(宗孝/ds)にしても山下(昌良/b)にしても、基本的なアプローチというか、音楽を作る姿勢は昔と全然変わってないし、曲の作り方も昔と同じようにスタジオで高崎がギターを弾いて、ジャムりながら進めていく。ただね、アイデアはまだまだたくさん出てくるんで、次のアルバムはまた全然違う感じになるかもわからないし。予測不可能なバンドなんですよ。
――アイデアが次々と出てくるというのは、2年間で3枚というペースもそうですが、アルバムの内容を見てもわかります。最初の『SPIRITUAL CANOE〜輪廻転生〜』では“復活”を宣言する意味でも、80年代的要素も盛り込みながら今のLOUDNESSを表現し、2枚目の『PANDEMONIUM〜降臨幻術〜』はその“今”をより強烈に発していた。最新作の『BIOSPHERE〜新世界〜』はその延長線上でありつつ、印象は大きく違いますよね。
二井原:うん。今回は曲作りの方法が変わったこともあるよね。『BIOSPHERE』は半分以上が山下と樋口が書いた曲がメインになってて、高崎がギターを弾くことに専念するといったような。非常に新鮮で、面 白かったですけどね。
――むしろその作り方のほうが、再び4人が集まった意味が新たに見出せるような気もします。
二井原:そうだね。それに『BIOSPHERE』を作ったことで、高崎はまた新たなインスピレーションが沸いたみたいで、明日にでも次のアルバムのレコーディングに入りたいぐらいの勢いで盛り上がってますよ(笑)。でもね、凄い音を出しますよ。LOUDNESS脱退以降、ぼくもいろんなギタリストと一緒にやってきたけど、フレーズから何からズバ抜けた存在感があるなぁって、改めて思いますね。高崎 晃というのは天才肌のギタリストだな、アーティストだなと実感させられますよ。
――10月25日に行なわれた渋谷公会堂でのライヴでは、ここ3作からの楽曲が占める割合も高くなってましたよね。セット・リストを考えるのも相当な苦労があると思いますが?

▲その超人的なテクニックで“天才ギタリスト”の名を欲しいままにした高崎 晃。

二井原:バンドの歴史が20年を超えると、2daysとかにしないと難しいですね。たとえばクラシック・デーと最近の姿という分け方をするとか。みんなが聴きたい曲だけをやっても、かなり長丁場になるしね。でも、ハード・ロックで、あの音圧でしょ(LOUDNESSの音の大きさは有名)。3時間ぐらいになると聴いてるほうもやってるほうもしんどいよね。となると、10数曲の中で何を演奏するかだけど、新しい曲と昔の曲のバランスが難しい。だいたい“外せない曲”だけで10何曲ってあるからねぇ(笑)。でも、それだけだとワン・パターンになってしまう。アルバムを30枚とか出してるアーティストはもっと大変でしょうね(笑)。
――ただ、オーディエンスの反応を見ていると、今のLOUDNESSに随分と馴れてきたなという印象がありましたね。
二井原:そうですね。もっとライヴをやれば、さらに反応はよくなると思うんだけど。『SPIRITUAL CANOE〜輪廻転生〜』が出たときに「非常に違和感がある」と言ってた人が、今やあのアルバムが普通 に思えてきていたりするからね(笑)。
――当初は新曲をやると微動だにしないといった様子もありましたよね(笑)。
二井原:今はそういうのもなくなってきてるよね。熟成するんでしょうね。時間がかかるよなぁ、やっぱり。それと中野サンプラザとかでこの4人での再結成のライヴをやったときは、さすがに年齢が上の人が多かったけど、若い人も増えてきましたよね。去年、ANNIHILATOR(カナダのスラッシュ・メタル・バンド)と一緒にツアーをしたときは、若いお客さんにもこういった音楽を好きな人がたくさんいるんだなぁと思ったし。

日本の若手バンドに刺激されますよ

▲山下昌良の堅実かつ極太なベース・サウンドがLOUDNESSのボトムを支える。

――若年層という点で思い出すのが、たとえば、去年は国内でもトリビュート・アルバム『ROCK'N ROLL CRAZY NIGHT』が出ましたし、ここ数年、ヨーロッパのバンドなどがLOUDNESSの楽曲をカヴァーするケースも増えてきました。LOUDNESSの音楽的な影響力を、具体的な形で改めて実感させられますよね。
二井原:どうなんだろう。自分たちではわからないけど、世代的にLOUDNESSを聴いて育った人が前線でバンドをやっているという例は確かに多いですね。「学生時代にLOUDNESSを観た」っていうアーティストが来日したときに対談したり、コンサートに呼んでもらって楽屋でそういった話を聞かされたりはしますね。メールも世界中から届くんだけど、ファンというよりもミュージシャンから来たりする。ありがたいことですよね。20年以上バンドが続いているからこそだと思うんだけどね。振り返ってみると、欧米の観客は毎晩凄まじいものがあった。日本も凄かったけどね。ライヴの本数が多かったこともありますよね。大きなコンサートにも呼ばれたりもしたし。あの時代のうねり、MOTLEY CRUEとかと共に、そのメインストリームの真っただ中にいたということだったんだろうけどね。
――現在も海外からフェスティヴァルへの出演依頼は来てますよね。実現はしませんでしたが、今年はドイツの“ヴァッケン・オープン・エアー”に出演する話も具体的に進んでいましたし。
二井原:うん。ぼくらがヨーロッパとかでやっていたときに観ていた人たちが、今、イヴェントを主催していたりする。オリジナルのLOUDNESSが再び始まったと聞けば、興味が出てくるんでしょうね。ただ、オファーはたくさん来るんだけど、やっぱりお金のかかることだからね。ヨーロッパって、大阪に行くぐらいの予算では行けないから。どうせ行くのであれば、その機会に他のところも廻ってこようと考えるんだけど、向こうにもマネジメントを構えてというようにやっていかないと、なかなか難しいよね。
――かつてはアメリカにもオフィスがありましたよね。
二井原:そうだね。ちゃんとインターナショナルな窓口があったからね。今はないから、最終的な詰めで上手くまとまらない。国内でも今年はもっとたくさんやる予定だったんだよね。ただ、マネジメントやレコード会社が変わったことで、今回はアルバムが出てから1回しかライヴをやっていないけど。でもね、今度はロフトでやるでしょ。すごく楽しみですよ。オリジナル・メンバーでのLOUDNESSが、こういう規模の会場で演奏することってあまりなかったんじゃないかなぁ。普段は照明とかに凝ったりするバンドでしょ(笑)。魅せるというコンセプトで来たからね。
――そうですね。記憶に間違いがなければ、このメンバーで、いわゆるライヴハウスに登場したことは公にはないと思います。

▲一聴してすぐそれと判る“ラウド・ドラミング”を炸裂させる樋口宗孝。

二井原:うん、日本ではないと思う。ファンクラブのイヴェントとか、プレス用のコンヴェンションとか以外はないよね。
――ロフトでLOUDNESSが観られるなんて、最初に話を聞いたときはびっくりしましたよ。LOUDDASS(有名なLOUDNESSのカヴァー・バンド)なら、ここで観たことあるんですけどね(笑)。
二井原:ははは! それはまた凄いなぁ(笑)。でも、12月19日はどんなことになるか、面 白そうですよね。バンドとファンの距離も近いから、凄まじいものがあると思うんですけどね。でも、勝手にステージに上がってくるような人がいたら、俺なんか気が小さいからびっくりして歌えなくなるかもしれないけど(笑)。
――ははは(笑)。当日は54-71との対決といった形態ですから、そういった意味でも新鮮ですし。
二井原:今年の3月にLOUDNESSがクラブチッタ川崎で“LOUD'N FEST”というイヴェントをやったけど(他にBAT CAVE、YKZ、Cloud Nineが出演)、あのときが初めてじゃないかな、コア寄りな感じの今のモダンと言われるような日本のロック・バンドを実際に観たのは。彼らはすごくカッコよかったですね。ぼくらが刺激されますよ。ステージでのアティテュードとかね。逆にエネルギーをもらう感じですよ。

五臓六腑に響き渡る轟音を体感してほしい
――若いバンドを観るときに、かつての自分の姿を思い起こしたりするものですか?

二井原:出してる音とか目指しているところが全然違うし、ぼくにはないパフォーマンスをしてるからねぇ……。音楽的にも今はテンポの速さというよりも、グルーヴといったようなものが前面 に出てきてるでしょ。ただ、あの放っているエネルギーには、きっとかつての自分たちと同じものが出てるんでしょうね。
――LOUDNESSは結成された時点で「世界へ!」という明確な目標がありましたから、確かに活動の仕方が他のバンドとは同次元で語れないところがありますよね。しかも話題だけでなく、メジャー・レーベルであるアトランティック・レコードと長期の契約を締結し、ビルボード・チャートにも登場するといった実績を伴ったものでした。 二井原:そうやねぇ。でも、最近、ぼくらが知らないだけで、海外に出ていってやってるバンドもいるんでしょ。その評判がよかったりとかは聞くんですよ。それがアンダーグラウンドな世界でも、やり続けることは大事なんでね。頑張って欲しいよね。
――THE MAD CAPSEL MARKETSが今年の“OZZFEST”に出演したのは歴史的に大きな出来事ですが、元を辿ると、LOUDNESSの活動がなければ、世界が日本のバンドに目が向けることはなかったと思うんですよ。現実に今でも海外の人と話をするとき、LOUDNESSの名前が真っ先に出てくることは多いですから。
二井原:まぁ、当時はジャズとかフュージョン、テクノでは知られた日本人アーティストもいたけど、真っ向勝負なロック・バンドは全然いなかったからね。珍しがられると同時に高崎 晃なんて尋常じゃないぐらい上手かったし、かなり衝撃的だったみたいだからね。すっごい田舎に行っても声をかけられることが多かったよ。初めて東洋人を見たというようなところでも、LOUDNESSを知ってた。街のミニコミから『ローリング・ストーン』のようなメジャーな雑誌まで、ほぼ取材を受けた記憶があるからねぇ。
――最近はどんな音楽を主に聴いてます?
二井原:演歌以外だったら手当たり次第に聴きますよ。インターネットで世界中のラジオを聴くのが好きでね。ハード・ロックからニューエイジまであらゆるもの。寝るのも忘れてエアチェックするぐらいですよ。気に入ったアーティストはメモしておいて、翌日に買いに走ったりね。あとはいろんなレーベルのサイトでも試聴できるしね。とは言いながら、最近買ったのはU2とNIRVANAのベストなんだけど(笑)。
――当日はどんなパフォーマンスを見せるのか、現時点で考えていることもあります?
二井原:まだ昨日今日聞いた話なんで、具体的なものはないけど、コンパクトに攻撃的な曲を取り揃えて、あっという間に、嵐のように去っていく感じになるんじゃないかな(笑)。多分、ヘヴィな曲が中心になると思うんだけどね。あ、でもわからないなぁ。どっちかでしょうね、クラシック・ナンバーばかりか、その逆か。2時間ぐらいあるといろいろ考えられるんだけど(笑)。
――大晦日にもライヴが予定されていますが、LOUDNESSの近況に関しては?
二井原:その辺はまだ白紙の状態なんだけど、来年の春ぐらいにツアーをやりたいなという話はありますね。アルバムも作ることになると思うんだけど、どうなることやら(笑)。いつもは派手で華やかなライヴをやってきたけど、今回のロフトを機会に、こういった規模の小屋で進めていくというのもありかなと。今は照明とかPAのスタッフも含めて大所帯のバンドだから、その辺もクリアしていかなければいけないけど、その打ち出し方を変えてもいいかなと個人的には思ったりもするんだけどね。そういう意味では今回はいい実験ですね。
――さて、LOUDNESSの名前は知っているけれども、実際にライヴを観たことがない人もいると思います。そういった読者に二井原さんから伝えておきたいことはありますか?
二井原:言葉で音を説明するのは難しいんだけど、五臓六腑に響き渡るような轟音で、足腰立たないようにしてやるんで(笑)、刺激が欲しい人はぜひ観に来てくださいと。ロックの熱いものをお見せしますんで。4人ともキレまくると思うので、かなり見ごたえがあると思いますよ。噂には聞いてるLOUDNESSを(笑)、この機会に体感してもらいたいものですね。
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BIOSPHERE
TKCA-72403 / 2,943yen (tax out)
IN STORES NOW

〈LOFT presents RHYTHM OF FEAR〜LOUDNESS vs 54-71〉
2002年12月19日(木)新宿ロフト
LOUDNESS/54-71 OPEN 18:00/START 19:00
PRICE:advance-4,000yen/door-4,500yen (共にDRINK別)

大晦日イヴェント出演決定!!
〈ROCK LEGENDS COUNT DOWN〉
2002年12月31日(火)東京厚生年金会館
第1部(=SIDE A)20:00 START/第2部(=SIDE B)23:00 START
PRICE:7,000yen(税込・全席自由)

LOUDNESS OFFICIAL HP◆http://www3.live.co.jp/loudness/

profile
1981年5月結成。オリジナル・メンバーは二井原 実(vocal)、高崎 晃(guitar)、山下昌良(bass)、樋口宗孝(drums)。同年11月にデビュー・アルバム『誕生前夜〜BIRTHDAY EVE』を発表。日本国内はもとより世界を視野に据えた音楽活動を展開し、ハード・ロック/ヘヴィ・メタル・ムーヴメントの旗手として絶大な支持を得る。84年には米大手レコード会社のアトランティック・レコードと契約を結び、翌年には名作の誉れ高い『THUNDER IN THE EAST』を発表(オリコン最高4位/ビルボード最高74位)。88年〜93年の間に二井原、山下、樋口が脱退するが、2000年5月にオリジナル・ラインナップで復活。来年2月末には、今年10月に行われた渋谷公会堂でのライヴの模様を中心としたDVDをリリース予定。