インビシブルマンズデスベッド

混濁の夜に鳴るロックと云う名の狂気の沙汰

 まずそのバンド名からして圧倒的に規格外。愛してやまないロックへの熱い契りを時代錯誤とも思えるほど頑なに貫き通 し、迸る狂気は破天荒極まりない未曾有の自棄糞ライヴとして発露。どろりとした妖気とマグマのような爆発的熱量 に衝き動かされたファンも確実に急増中、遂には今年の<FUJI ROCK FES.>への参戦決定と、ひたすら調子に乗り続けるインビシブルマンズデスベッド。とかくVo&Gのデスベッド一人にスポットが当たりがちな彼らの、メンバー全員へのインタビューを緊急奪取! 自らの確固たる信条に裏打ちされたそのビッグ・マウスぶりは実に頼もしい限りである。(interview:椎名宗之)

今は他に大したバンドいないからね!(断言)
──ジム・モリスンの命日にリリースされるシングル「16秒間」、1曲=43分18秒という実にインビシらしく型破りな出来ですね。
デスベッド(Vo&G) 曲の長さに俺たち的には違和感を覚えていないというか、気にも留めていないというか(笑)。演奏する時の勢いをそのままに…そういうのが好きだったんで。それを表現できればと。前半部分は元々構築されてた楽曲を演奏して、後半部分はセッションをずっと続けてるんですけど。
──曲はいつも通りデスベッドさんの作詞・作曲ですね。
西井慶太(B) 最近は(デスベッドが)カッチリ曲を持ってくるケースが余りないんで、デスベッドが言っていることを体現するのが難しい部分は正直あります。個々でそれぞれ構築していく感じですね。
デスベッド まぁ、最初はコードで説明して、納得する前にフレーズを作らせたりするのが最近多いからね(笑)。
武田将幸(G) 「こういう感じ」って言われればそういう感じに弾くし…。それに近づけられるようにはやってますよ。 デスベッド 昔はよく家でデモ・テープを作ってきて、それをメンバーに聴かせてたんです。最初はやっぱり伝わりにくいんで、自分でドラム叩いてベースとギターを弾いて。今回の「16秒間」はそのやり方でしたね。結構昔の曲なので。
──なぜに“16秒間”なんですか?
デスベッド 一瞬でもないし、ちょっとした時間があるわけでもない。時間を数えると長く感じて、でもイメージ的には一瞬のような。「“16秒間”というなかで自分が感じたこと」っていうのを曲にしたんです。
──デビュー曲の「デリー」から一貫した曲の在り方もそうですけど、「16秒間」のプログレ的な長さや、前のシングル「踊るオンナ」は敢えて7インチ限定で出したりと、どれも規格外の痛快さを感じますね。 デスベッド そうですね。世に出すものは自分たちのイメージを完璧に表現しきるものでなきゃ、やる意味はないんで。
──「踊るオンナ」をアナログ限定で出した理由は?
デスベッド やっぱり……変わってるから(笑)。何回かレコーディングして聴いてみた時に、CDよりもカセットテープに入ってる音質のほうが良かったんです。
──ライヴでのブチ切れたステージ・アクトや衣装もそうだし、そういうアナログ志向も併せて、いわゆるオールド・スクールな王道ロックの記号が点在してますよね。
デスベッド ロック・バンドってそういうものだと思ってるし、ライヴハウスっていうのはああやって激しくプレイする所だと思ってるし…。よく軟弱なポップ・グループみたいのが地下のライヴハウスで演奏してること自体、俺たちには凄い違和感があるんですよ。別 にライヴハウスでやんなくてもいいんじゃないか? って。
宮野大介(Ds) ライヴは集中してないと自分たちでも訳が判らなくなりますから(笑)。意識してやらないと息が合わなくなる。
──この間の『FACTORY』でも客席に布団を思いきりブン投げてましたもんね(笑)。
デスベッド ああいう部分を期待して観に来てくれるのもいいと思います。精神が高揚して絶頂に達する感じとか、観る側も好きであってほしいです。
──一番影響を受けたバンドってどの辺なんですか?
デスベッド 歌はジム・モリスン(ドアーズ)に習って、ギターはシド・バレット(ピンク・フロイド)に習って、パフォーマンスはジミヘンに習ったっていう感じです。
宮野 僕もディープ・パープルとかレッド・ツェッペリンとか、地方でロック・バンドをやる人間が最初に聴くような音楽を聴いてましたね。ガンズ&ローゼズとかモトリー・クルーとかメタルも聴いたし。そういうよくありがちなのを通 過してきました。
西井 僕が最近よく聴くのは村八分とかザ・フーとか…昔のサウンドのほうが分厚いような気がするんですよ。敢えて目標としているベーシストを挙げるなら、未来の自分ですね(笑)。
武田 勘弁してほしいって感じ(笑)。僕も影響を受けたギタリストっていうのは別 にいないんですよね。特定に好きだったバンドっていうと中学生くらいまで遡っちゃうからね…。目標とするバンドもいないし。
デスベッド まぁ、今は大したバンドいないからね!
西井 最近出てるバンドって何かしら欠陥があるような感じがするしね。
デスベッド どのバンドを観ても“俺たちならこうする!”って瞬時に出てくるから。だからこそ俺たちはこのバンドをやってるんですけど。
──じゃ、割と皆さん音の趣味は近いんですね。 デスベッド 僕がメンバーに強制して「これを聴け!」っていうのもあるから(笑)。
西井 でも例えば、レコーディングで「こういう曲をやりたい」って時にそんなCDがあるとヴィジョンが見えやすいんですよ。
デスベッド そうそう。「じゃあピンク・フロイドの『○○○』を聴いてみてよ」みたいな。でも、それ聴いて余計混乱するよね(笑)。 僕らの音楽を聴くのに体力を使ってほしい

僕らの音楽を聴くのに体力を使ってほしい
──9月には遂にフル・アルバムをリリースされるそうですが、どんな仕上がりになりそうですか?
デスベッド “あおっぽい”感じですね。
──草冠の付いた“蒼”ですか?
デスベッド いや、“青春”の“青”です。「デリー」とか、あの当時の曲をもう一度レコーディングしてみたんです。今はその辺の曲を余りライヴでやってないんですけど、いい曲がたくさんあるんで。
──まだ成熟しきってないこその良さが滲み出た感じが。 デスベッド そうですね。今も断続的にレコーディングしてます。もうすぐ出来ますよ。
──アートワークもまた一貫したイメージで? デスベッド ジャケット周りは、写 真のチョイスも文字も全部自分でやってるんですよ。自分が恰好いいと思っていることを出しきるとああなるんです。でも今度のアルバムはまた違う感じにしようと思ってます。
武田 見てのお楽しみということで。
──ストライカーズとチャイナチョップとの合同企画<ダンス狂イ>をシェルターで定期的に行われてますが、普段は両バンドと交流があるんですか?
デスベッド はい、たまに。基本的に他のバンドとの交流はないですね。この2バンドは対バンすることが多くて、各バンドのヴォーカルと3人集まって呑むことはたまにありますけどね。
──対バンして刺激を受けることありますか?
武田 滅多にないですよ。“負けた!”とは一回も思ったことはないし。
デスベッド そりゃまぁ、部分的に“恰好いいんじゃない?”っていうのはあるけど…。個人的には54-71とか好きですけどね。
西井 ライヴハウスに出てるバンドのレヴェルで刺激を見出すのは難しいですね。
デスベッド 札幌から出てくる前は、東京のライヴハウスはスターリンとかドロドロしたようなバンドがもっとたくさんいるのかな? とか、自分が想像していたロックの世界がそこに在ると思ったんですけど、意外とそんなこともなくて。他のバンドのライヴを観てると、“何に憧れてこの人ステージに立ってるのかな?”と思いますよ。さっぱり判らない。僕らはやっぱりロックに憧れて、心底好きだからこそこうしてやってるわけで。自分のなかで少しずつロックの世界が広がっていくと、周りのものが凄く色褪せて見えるんですよ。それに対する焦燥感を感じたりしますね。ロックが好きな人は、真実のロックを聴いてほしいです。インビシブルマンズデスベッドは真実のロックをやってますから。
武田 「16秒間」にしても、今度のアルバムにしても、今まで出してる音源にしても、聴くのに体力を使ってほしいですね。聴いたあとに疲れてほしい。
西井 音源も勿論聴いてほしいですけど、やっぱりライヴを一番に観てもらいたいです。一人でも多くの人に。
宮野 熱いロックを体感できれば旨いビールが呑めると思うんで(笑)。もう夏だし(笑)。
──ちなみに、夏場もラメのシャツにパンタロンでライヴをやりますか?
宮野 Tシャツ着たりとか?(笑)
デスベッド それは絶対にないです! そんなのねぇ(笑)…僕らの美意識に反しますから。■■