ABNORMALS

結成以来初のワンマンが2002年前半の活動総決算!

 昨秋リリースされたアルバム『SYMPATHY』でパンクの域に留まらない幅広い音楽性を獲得し、新境地を見せつけたABNORMALSが、意外にも結成以来初という待望のワンマン・ライヴを下北沢シェルターにて行う。「今年はとにかく前向きに行きたい!」と語るMUROCHIN(ds)とCOMI(vo)の2人に今回話を訊いたのだが、バンドの在り方を至極冷静に俯瞰せんとするその視座に感服した。「バンドを長く続けようと思ってやってきたわけじゃないんですよ。長く続けることによって得るものが凄く大きかったんです」という語り口には、長きに亘りバンドを続けてきた者にしか判らない独自の矜持が感じられる。14年間の歴史の重みは伊達じゃない。(interview:椎名宗之)

自分たちからもっと働きかけをしていきたい
──6月28日にシェルターでワンマン・ライヴが行われますが、意外なことにこれが結成以来初のワンマンなんですね?
MUROCHIN 完璧、初ですね。俺は生まれて初めてですね。
COMI 僕も生まれて初ですよ。
MUROCHIN “やりてぇなぁ〜”とは思ってたけど、なかなか機会がなくて。去年の暮れにメンバーが集まって、「来年はやるぞ! やろう! 一生懸命やっていこう!」と。で、自分たちで企画をやろうと色々話し合って。他にどのバンドに出てもらうかなぁってあれこれ考えたんですけど、この辺でいっちょワンマンをやりたいな、と。そういう決意の表れで。
──このワンマンは今後、ABNORMALSのシリーズ・ライヴみたいな感じになるんですか?
MUROCHIN うん、そういう風に俺はしていきたい。そんなに頻繁ではないにしても、「企画はやってます!」っていう感じは出していきたい。それで観に来てくれる人が増えたり、徐々に広がっていけば嬉しいですし。
COMI 何か働きかけてる感じがするじゃないですか? 最近そういうことを余りやってなかったんで。働きかけみたいのをしてたほうが、自分らにとってもきっといいし。
──当日は入場者全員にプレゼントが付くそうですが、これはまだ現段階ではシークレットですか?
MUROCHIN それはまだシークレットでいきましょうか?
COMI もう決まってはいるんですけどね。
──ワンマンに行った人にしか判らない喜びがあると(笑)。
MUROCHIN そうですね。
COMI 沖縄と北海道には卸すつもりではいるんですけどね。
MUROCHIN マジかよ、お前!?(笑)
──また、ワンマンと同じ日に限定のライヴCDがBOX仕様で発売されるそうですが、これは過去のライヴ音源からピックアップしてのものなんですか?
MUROCHIN いえ、違います。録音時期はごく最近のものです。
COMI メンバーが替わったじゃないですか。そのメンバーが替わる前の曲もたまにライヴでやってたりとかしてて、音源では違う人が弾いてたりするから、それを整理するという意味ではないですけど、最新のものに直してやろうかなと。それと、演奏力みたいなものが徐々に揃ってきたところで、昔の曲を今の感覚でやってみたらどうかと。本当はもっとアレンジを一杯加えてみたい気もしたんですけど、時間がなくて(笑)。ダラダラやってたらこういう感じになりました。まぁでも、バンドを長いことやってる割には曲がそんなに知られてないですしね。 MUROCHIN アルバムの枚数も少ないしな。
──今のメンバー構成が鉄壁の布陣だからこそのライヴ音源発表なのかなと思ったんですよ。
COMI (少し間を置いて)…最強ですよ! 最強、最強(笑)。
MUROCHIN まぁ俺は、途中から入ったんで。
COMI いや、“ザ・ベスト”ですね! ……そう言えば昔、『ザ・ベストマガジン』って雑誌あったよね?
──女優さんが横ッ面から水を浴びてる表紙の?(笑) また随分と昭和なエロネタですね。
COMI もうないのかな?
MUROCHIN 俺、中学の時見てたけど。結構持ってたなぁ…。
──このCD BOX、ライヴ会場、通信販売、一部店舗のみの限定発売っていうのがマニア心をくすぐりますよね。
COMI 基本的には数にこだわったわけではないんですよ。ライヴ・アルバムっていうことで、ひとつにはクォリティの問題があって。あと、いろんな要素を詰め込みすぎて単価が高くなってしまったのもあるし…。まぁ、好きな人にだけ渡ればいいかなと。
MUROCHIN コレクターズ・アイテムみたいなところも多少ありますね。
COMI 今、情報が非常にしっかりと行き届いてますよね。それを見越してというか、そういう情報が果 たしてどれくらい浸透しているのかというリサーチの意味もあります。勝手に買われて勝手に聴かれてるって、今はまずないじゃないですか。こっちで全部管理するなら数も決まってるし。さっき言った働きかけっていう意味では、自分たちで全部やったほうがいいかなって。捌くのにそんなに大変な数じゃないっていう尺度もあるし。…まぁ、単純計算ですよ。
MUROCHIN 単純計算なんだ?(笑)
──でもこれ、すぐに捌けちゃうんじゃないですかね?
MUROCHIN 捌けりゃあ言うことないですね。
COMI パッケージが本当にかわいいんですよ。自分たちの言ったことが割とそのまま反映されてるんで。結構面 白いものになってると思いますよ。
──去年の秋に『SYMPATHY』がリリースされて、割と間もなくこうしてライヴ音源が出て、ファンとしては嬉しいですよね。 COMI そうですね、新曲も入れるつもりではいるし。次に繋げるという意味でもやりたいなぁと思って。

エンターテインメントとしての責務を全うしつつ、面白いものを提供していく
──じゃあ、今年のABNORMALSはかなりアッパーな勢いで突き進む、と。
COMI うん、できればアルバムも録りたいなぁなんて思ってるから。新曲も“こういう感じで行く!”みたいなのは頭の中にもうあるし。ただその出し方とか、どういう通 路を使っていくのかみたいな部分はちゃんと整理しないと、これからアルバムを出すに当たっては難しいような気はするな…。
MUROCHIN 今年は、ライヴも地方を回るつもりだしね。今まではそんなに地方には行けなかったから。
COMI まぁ、何を尺度に「(地方へ)行っていない」のかっていうのがあるけどね。僕らがバンドをやり始めた頃のスタンスとしては、これが普通 かななんて思ってるんですよね。地方も含めてツアーを精力的にこなしてるバンドがある一方で、僕らみたいに全然回ってないバンドもあって。インディーズであるところを考えると、これくらいがやっぱり丁度いいかなとは思ってるんですよ。ただ、自分たちができることはもうちょっとやっていこうと思ってるんで…。
──比較の問題ですよね。ライヴの回数を減らす代わりに、一本一本のライヴの集中力を高めるっていう考え方も当然あるわけで。
COMI 地方のライヴハウスの通り一辺倒な経営のこととかを考えると、自分たちのライヴで赤字になった場合はハイ・リスクになるわけだから。僕はそういうところで自分を傷つけたくないんですよね。それを巧くやれないと…これからやっていく上で重要な課題であるから、それはきちんと考えたいんですよ。細かく地方を回ることは大切なことだけど、宣伝とかを考えるとどうしてもハイ・リスクかなと。もっとネットワークを広げて、地方にもちゃんと広告ラインを引いて、お膳立てが出来た状態で行くのがベストだと思ってますね。そのためにインターネットとかを活用したりね。ライヴが盛り上がると言っても一日限りのパーティーだから、小さなサークルだと思うんですよ。だからそれがちゃんと出来てる土地にしっかりと行って、しっかりとしたライヴを観せて、っていうほうが確実で、僕らのスタンスとしては一番肌に合ってますよね。
──極めて合理的ですね。
MUROCHIN そうしていかないと潰れちゃうものもありますからね。
COMI そうなんですよ。“無理を通せば道理が引く”ってわけじゃないですからね、こればかりは。
MUROCHIN だからこそ、いい感じに回れる所は回って、今から回れるようにしていきたいし…そういう意味でもライヴ音源を聴いてもらって、ライヴに臨んでくれると嬉しいですね。
COMI 単純にツアーを回るとバンドの技術が上がるっていうのはありますけどね。量 をこなして、いろんなライヴを経験することは絶対に大切なことですから。…まぁ、これは一杯ツアーをやっているバンドに対しての庇護ですけど(笑)。
──ライヴで培った技術なり経験を、レコーディングに持ち帰って反映させる部分もあるでしょうし。 MUROCHIN レコーディングはライヴと違って、身を削ってる思いが強いですね。ライヴで身を削るのとはまた違う、もっと辛い感じが…。精神的に参る時もありますしね。音楽をやってる人は皆そうだろうけど。
COMI レコーディングっていうのは一箇所の場所にずっと居て、何かしらの目標を作るっていう作業ですから、目標に如何に到達できるかっていうか、自分自身に対してどのレヴェルでOKサインを出すかがどうしても厳しくなりますよね。ライヴの場合は良くも悪くもそれ一回限りだから、思いきりやることもできるし、考え抜いてやることもできる。その時々のテンションに合わせてやることが可能ですけどね。ただ今回の場合は、さっきも言ったように音源がライヴですから、“録るライヴ”をやるっていう感覚が少しあって、割と丁寧にライヴを進行したようなところはありましたね。それと各会場の設備も違うから、最終的にひとつの作品としてまとめる時に音のバラつきをなくそうという配慮もあったりして、かなり神経質になった部分もありました。
MUROCHIN とにかく去年のミーティングから「やろう!」っていう勢いがずっと持続してあるんでね。今年は本当に楽しみにしてほしいですよ。若者みたく、そんなにガーッと行く感じではないですけど(笑)。2002年前半の総まとめみたいな意味合いが今度のワンマンであったり、ライヴ音源であったりするので。
──お2人が信条とする、ライヴに対しての心得みたいなものはありますか?
COMI そうですね…その時々の自分のテンションを如何に大切にステージで出すか、っていうことですかね。
MUROCHIN いい時は別に問題ないと思うんですよ。でもお互いの感情の行き違いがあったりとか、気分が今ひとつ乗らない日とかがやっぱりあるんですけど、そういうのを俺はステージで出したくないんですよ。それは心掛けてるな。ライヴはやっぱりお客さんありきのものだしね。そこら辺は気ィ付けて、いいライヴをやろうと。途中で諦めたりしないし、うん。
COMI その日の自分の性格みたいなものが巧く曲に表れればいいと思うんですよ。要するに演劇で言うと“役の角を取る”っていうか。そのために必要なのって、その日の自分の雰囲気だと思うんですね。それは服装もそうだし、喋りもそうだし…。だからそれを巧くやれるのがプロだと思うんです。今MUROCHINが言った「お客さんに観せるもんだから、負けない!」っていうのは必須条件としてあるんですけど、もっとその進んだ形を出していきたいんです。
──たとえば今、対バンをしてみたいバンドっていますか?
MUROCHIN 今? う〜ん……ダムドかな(笑)。でもどうなんだろうなぁ…今までも全然畑の違うジャンルの人たちと一緒にライヴを企画したりもしたんですけど、イマイチ不発に終わってるんですよね。
COMI 昔から、自分たちで対バンを選んだりするのが余りないんですよね。僕ら自身が企画するよりも、僕らを気に入ってくれるバンドが呼んでくれて出ることのほうが多かったですから。
MUROCHIN でもやっぱりダムド(笑)。来日するなら一緒にやりたいなぁ。
COMI 確かにそれはやりたいな。今のダムドと。
MUROCHIN まぁ今度のシェルターは、俺らはベストのものを出していくんで、それを観に来てほしいです。
COMI 今は正直言って、何かを言えるほど自分の中で固まってなくて…。いろんなバンドのワンマン・ライヴを観てたりはするんですけど。とにかくエンターテインメントとして預かる責任感を感じつつ、面 白いものを提供したい…それだけですね。それで面白く演出できなければマズイと思うしね。