昭和77年如月☆スペシャル師弟対談


長谷川裕倫(あぶらだこ)
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増子直純(怒髪天)





ジャンルを超越し、清濁を併せ呑み込み
邁進する音の新世界

 パンクという枠組みに寄り掛かることなく、常に既存の概念をブッ壊して前へ前へと突き進み、長きにわたり特異な存在感を放ち続ける2つのバンド──3月に待望のワンマンを控えるあぶらだこと、今年も精力的にライヴ活動を展開する怒髪天。あぶらだこを「アイドル!」と公言してはばからない怒髪天の増子直純が、敬愛する長谷川裕倫とご対面!  18年越しのあぶらだこへの想いの丈を熱く語る増子兄ィに対し、徹頭徹尾低姿勢でひたすら恐縮しまくる裕倫さん。当代きっての両ヴォーカリストによる含蓄ある至言を聞けるなんざぁ、こいつは春から縁起がいいや!(text:椎名宗之)

●怒髪天を観て「取り残されたのは僕らだった」って…

──あぶらだこのライヴのある所には必ずその姿を目撃されてる増子さんですが(笑)、知らないファンもいると思うので、増子さんがいかにあぶらだこから影響を受けているか、まずその辺りから訊かせて下さい。
増子 そりゃあもう、計り知れないね。アイドルだからね。
──一番最初にあぶらだこを聴いたのはいつ頃ですか。
増子 高校生かな。ソノシートのやつ。ウチのメンバー4人中2人…俺とシミ(清水泰次/B)だけど、それぞれにあぶらだこのコピー・バンドをやってたくらいだからね。なかなかいないよ? 正味な話。
──シミさんが怒髪天加入前にやってたゼラチンっていうバンドが、もろにあぶらだこから影響を受けてるバンドだったそうですが。
増子 すっごい、もろ! 物凄い影響受けてたよ。シミなんか、ベースなのにステージで一番前に出て、裕倫さん気取りだったから。しかもあんまり弾いてないし(笑)。シミを怒髪天のメンバーに入れるって時に、その基準のなかに「あぶらだこが好き」っていうのはかなり大きかったから。
──割と重要なポイントだったんですね。
増子 “割と”っちゅうか“かなり”重要。やっぱり好きなものの根っこが一緒じゃないと一緒にできないから。
──増子さんがあぶらだこのコピーをやってたのは、怒髪天の前のバンドですか?
増子 そうね。凄いよ、もう。頭もガッツリてっぺんだけ残してね、顔も白塗りしたし。札幌にいる頃って写真がなかなか届いてこないでしょ? 雑誌の記事とかが。で、何かで写真を見た時に、印刷の状態が悪くて何着てるか判らないんだよ。だから似たようなものを探して着るっていうさ。
──妄想ですね(笑)。
増子 そ、妄想! 「札幌であぶらだこといえば俺でしょう!」っていうくらい。札幌はね、意外と情報は早かったんだけど、映像と絵が見れないっていうのがあって。音源も、1枚入ってきても、その次のがなかなか入ってこないとかさ。高校の時、車高を落とした族車で、カーステであぶらだこをガンガンかけて札幌の大通公園で流してたから(笑)。友達と2人、モヒカンでね。頭おかしい(笑)。当時だったらディスコとかかけるような時代に、ガッツリあぶらだこですから! 窓全開で。学校の校内放送でもガンガンかけましたよ。「これは聴いてもらわないとダメだ!」と思ったもん。あれによってね、俺の人生こんなふうになってしまったから。もう裕倫さんに責任取ってもらわないと(笑)。
長谷川 (照れ笑)
──裕倫さんは以前から怒髪天はご存知でしたか?
長谷川 えーと、あのー、『極東最前線』のアルバム出ましたよね? あれで初めて知ったんですけど。凄くいいなと思いました。
増子 裕倫さんに褒められると恥ずかしいな。「思いました」なんて言われると恥ずかしい(笑)。
長谷川 怒髪天のアルバムは大体聴いてます。あの、最近出たのはかなり…。
増子 ちゃんと聴いてくれてるなんてねぇ…。去年は初めてライヴでも〈スペシャ列伝〉で共演できて。エッグサイトでやったやつ。もう、17年来の夢だったから…。
長谷川 怒髪天のアルバムで「サンセット・マン」っていう曲があるんですけど…あの曲が凄い僕好きなんですよね。
増子 や〜褒めてもらっちゃって…。凄く嬉しいね。
長谷川 歌詞も、曲も、自然な感じがして…凄く勉強になりました。
増子 いやいや〜。
長谷川 あと、この間ワンマンで、ON AIR WESTでやったですよね。あそこで観た時も、あの曲ちょっと静かな曲なんですけど、何か振りを付けて歌っておられて、それが凄い「あ〜、いいな」って思って。やっぱり怒髪天ってバンドはこういうのかなと思って…。その前に去年のシェルターで一回観たんですけど、その時と全然、バンドから出る覇気っていうのがね、違うんですよ。…で、何かやっぱり、「取り残されたのは僕らだった」って感じがして…。
増子 そんなことないですよ!(笑) 何を言ってんですか!(笑)
長谷川 いや、本当に。本当に凄い、良かったですよ。
増子 バンドやってて、裕倫さんに褒められるとは思ってもなかったよね。非常に嬉しい! 特に裕倫さんは音楽に対して凄いピュアな人だから、そういう人に褒められるのは本当に嬉しいし、照れくさいよね。
──また「サンセット・マン」は増子さんご自身にとっても非常に思い入れのある歌ですよね。
増子 そうね。あれは活動停止の時に作った歌だから。メンバーと自分を取り巻いてた状態を歌詞に込めた歌だから。
長谷川 何かああいう曲って、よく切ないとかって感じるじゃないですか。そういうのは俺は感じないんだよね。凄い何か前向きな感じがしてね。凄い新鮮な感じがしました。あと、「愛の嵐」も好きですね。
増子 褒められると何て言えばいいのか…。裕倫さんと知り会えたのは、東京出てきて良かったと思う大きなことのひとつだね。

●メイン・ストリートではない
 カウンター・カルチャーとしてのパンク

──増子さんがあぶらだこを生で観たのはいつ頃なんですか?
増子 〈極東〜〉の時。やっと観れたの。それまでは自分のライヴと当たったりして何だかんだで観れなかった。昔の音源がCD化になった時、ライヴをまだやってるのを知って、シミと「絶対行こうぜ!」って話になって。
長谷川 俺が怒髪天を初めて観たのは、〈極東〜〉でやった時で。増子さんが、PAの上で歌っててね。
増子 ははははは。
長谷川 「ああ、こういう音楽表現もあんのかな」と思ってね。最初、その前から「(PAの上で)歌う」って言ってたんですよね。「まさか歌わないだろう」って俺は思ってたんですけど、本当に歌ったからね。ビックリしちゃってね。
増子 「行けるとこまで行ってみます」って。シールドが届く限り。
長谷川 最初、絶対やんないと思ってたんだよね。それを本当にやったから、「こういう表現もあったんだなぁ」と思ってビックリしちゃってねぇ。
増子 じゃあ今度裕倫さんも、客席の真ん中にマイク立てて歌ってもらって(笑)。観てぇ! お客さんが笑えない状況になってるとこ観たいよね(笑)。裕倫さんってやっぱり迫力あるもんね。背高いしね、スラッとしてるし。ダンディな感じ。裕倫さんは立たせたらカッコイイからねぇ。
長谷川 いやー、俺なんかダッサイですよ、あんなの。古臭いですよ、あんなの。自分のライヴ映像とか、見れないもん、恥ずかしくて。
増子 それはね、俺も見れないっすよ。
長谷川 もうとにかくダサイって感じで…。恥ずかしくて見れないですよ。
増子 いや、あれはカッコイイですよ。肝据わってて。男!っちゅう感じで。…こんなお互い向き合って褒め合ってどうすんだ? っちゅう話あるけどね(笑)。
──裕倫さんのヴォーカル・スタイルは、初めから直立不動ではなかったんですよね?
長谷川 違いましたね。昔は結構、マイク・スタンド持って歌ってました。
増子 あれもね、真似しましたよ。東京からダビングされてきた、裏ビデオみたいになったビデオを何回も見てね、「ああ、こうやって動いてるんだな」って。ダビングされすぎちゃって、(画面が)真っ白なの。何映ってるか判らない。あれ、メンバー一人くらい変わってても判らないよ(笑)。
──怒髪天があぶらだこから直接影響を受けてる部分はどんなところでしょう?
増子 コーラスかな。合いの手とかね。あとね、精神的な部分が大きいね。非常にシニカルなところとか。そこは一番シビレたところだから。日本人でいて良かったなと思うことのひとつだね、あの歌詞が判るのが。俺らがメジャーに行ってどうこうってなった時に、自分のなかで最初の指針になったバンドなんですよ、あぶらだこは。あぶらだこがメジャーから出した最初のアルバムを聴いて、それまではメジャーに行くとダメになるって風潮だったけど、違うんだなと。ちゃんとできるんだな、と思った。それは、メジャーへ行って変わってしまった本人が弱いんだなって。確固たるものがあってメジャーに行くんであれば、今まで以上のことができるんだぞ、って如実に伝わってきた。まぁ、今の時代はメジャーだのインディーだのって余り関係ないけどね。でも、あぶらだこはその布石を作った先駆者だから。木のジャケのメジャー盤が出た時、いいスタジオで録って、ドラムの音とかがいい音で聴けるっていうのがリスナーとして単純に嬉しかった。「これだ!」って思った。
──本当に、あぶらだこみたいなバンドって他にいませんよね。
増子 ない! 世界でもないよ。しかも恐ろしく支持されてるからね。昨日もWhat's Love?っていう歌謡スカ・バンドの子と話してて、凄いあぶらだこが好きだって。意外なところにまで支持されてるよ。支持されないわけないもんね。
長谷川 いやー、本当に、有り難いです。
増子 ははははは。裕倫さんに「有り難い」なんて言われると(笑)。やっぱりね、昔からやってるバンドって数はいるけど、ちゃんと進化してて、長くやってる意味のあるのってなかなかいないでしょ? 新しいアルバム聴いて、「あららららら!」って新しいページめくった衝撃に震えるようなね。それがあぶらだこにはある。本当にある! これね、バンドやってる人ならなおさら判ると思うんだけど、これがいかに凄いかってことなんだよね。俺らもそうなんだけど、音楽的には決してパンク・ロックというジャンルじゃない。だけど「パンクって何か?」っちゅうと、メイン・ストリートじゃないところの、カウンター・カルチャーであるっていうのがパンクなんだよ。だとすると、あぶらだこはそこを通って、様式美と全く反対のところに行くところがやっぱり凄い。
──確かにあぶらだこも怒髪天も、単純なパンク・ロックとは違いますもんね。
増子 そう。パンク・ロックといえば8ビートで、ドゥタドゥタドゥタドゥタ…っていうのがパンクかっていったら、それは昔のメタルと一緒。それは様式美だと思う。今あぶらだこが好きっていう人は、俺から見て賢いっていうか、あらゆる物事をきちんと冷静に判断できた上であぶらだこに熱狂する人が多いでしょ? それってスンゴイと思う。非常に希有。

●「難解だ」って言われること自体が難解だ!
──今では裕倫さんのご自宅に押し掛けてお付き合いをできるようにまでなって。
増子 本当に有り難い。音楽が好きっていうのはもちろん大前提としてあるけど、裕倫さん自身が好きなんだよ。人間的に凄く面白くて、非常に魅力がある。この間ね、酔っぱらった時に話したことだから裕倫さんは覚えてないかもしれないけど…。
長谷川 全く覚えてないですね。
増子 「曲を作っていく上で何をすべきか?」ってことで、「曲を聴いたお客さんに衝撃を与えたりとか、ビックリさせることが音楽の目的ではない」と。「いい曲を作ることの境界の違いはそれぞれあると思うけど、衝撃を与えるとかショッキングであるってことに重きを置いて曲を作るべきではない」って話をして。ホンットその通り! 非常に勉強になった。かなり酔っぱらってたけど(笑)。ちゃんとメモしとこうかなと思ったけど、手がもう震えちゃって(笑)。
──裕倫さんは酔うとどんな感じになるんですか?
長谷川 酒癖、ホント悪いんですよ。
増子 いやいや、裕倫さんは酒癖悪くないって。
長谷川 酒呑んだら、夜とか翌日はもう凄い苛まれてます。
増子 裕倫さんと呑んでて、ヤだなって思ったこと一回もないもん。ホンット面白いから。でもね、裕倫さんがどのくらい面白いかは雑誌とかインタビューでは絶対言わない! それは本人と友達になった俺の特権だから! もしこれを読んでる人でその話を聞きたいなら、裕倫さんと仲良くなるしかない(笑)。裕倫さんと呑みながら話してると、あぶらだこの歌詞にシニカルな部分やちょっとコミカルな部分とかが何で出てくるのかがよく判る。裕倫さんそのまんま。
──あぶらだこって「難解だ」とかよく言われますけど、裕倫さんの人柄がそのまま出てるだけなんですね。
増子 そう。裕倫さんがこの間言ってたけど、「歌詞や曲が『難解だ』と言われるのは不本意だ」と。「難解なつもりで作ってないし、自分をそのまま出してるだけだから、これが難解だったら、『難解だ』って言われること自体が難解だ」って。なるほどな、と思ったね。
長谷川 …生意気なこと言って、スミマセン!
増子 ははははは。いやでもね、受け取り側の音楽に向かう姿勢が出来てないとあぶらだこは聴けない。「理解できないものは嫌い」っていう浅はかな器しかない奴には聴けないと思う。裕倫さんって音楽に対して凄い純粋だからね。今まで会ったなかで誰よりも純粋だと思う。
──あぶらだこの曲の構成って凄く複雑だから、物凄い練習量だと思うんですけど。
増子 いやもう凄いでしょ。あの構成にも意味がちゃんと見えるっていうか、必要性がある上での複雑さっていうか。「難解に聴かせてやろう」って作ったものはすぐ判るからね。必然性の上でああなってる。それが凄いんだよね。俺は音楽に関してはそんなに詳しくないけど、あぶらだこにはやっぱり考えさせられる、感じ入るところがたくさんあるから。
──あぶらだこは今、ワンマンに向けてリハを詰めてる状況ですか?
長谷川 はい。練習ですよね。週一でやってます。
──今度のワンマンは昔の曲も結構やりますか?
長谷川 いえ、しません、そんなに。
──新曲はどうですか?
長谷川 新曲もそんなにやんないですね。
増子 「新曲やるよ!」って言っておいたほうがいいんじゃないですか?
長谷川 いや、やんないから。あ、やるか、ちょっとは。
増子 あぶらだこのワンマンの日、俺ら名古屋でツアー初日なんですよね。余りにもショックでね。NAHTとMOGA THE \5とやるんだけど、もうね、セイキ君(NAHT)と2人で首の骨折れそうだったもん。ガァク〜って。知ってれば絶ッ対ずらしたのに。だってワンマンでしょ? 「これ観ないでどうすんのよ!?」って感じでしょ? じゃ、この日の名古屋はヴォーカルなし、ってことで(笑)。NAHTもね(笑)。あ、シミもいないから(笑)。

●裕倫さんは山奥にいる面白い仙人!?
──自分より年上に裕倫さんみたいな方がいると、元気出ますよね。
増子 うん。しかもね、裕倫さんってしっかりしてんの、非常に。あぶらだこを聴いても判るように、ムダがない。それは凄い尊敬する点だよね。いい加減な人間じゃない。俺なんかかなりいい加減だから。
長谷川 いや、そんなことないですよ。いつも人に気を遣ってね…。
増子 いよいよ嫌になったら全部ブン投げて、独りで旅に出るような男だから、俺は(笑)。
長谷川 だけど人に気を遣うの凄いからね…。
増子 それはでも、好きな人にだけですよ。嫌いな人には気を遣わないで手を使うから(笑)。魅力のある人間ってなかなかいないよね。ライヴ観るだけじゃなく、どういう人なのか知りたいなと思うような人って。何年かに一人くらいしかいないよ、ホント。家まで行こうって思うような人は。酔っぱらっていろんな話を聞きたい。自分の家に帰ってちょっとニヤニヤ思い出し笑いしたり(笑)。
長谷川 ホント楽しいからね。
増子 裕倫さんって、俺にとっては山奥とかにいる面白い仙人に会いに行く、っていう感じ(笑)。裕倫さんの言ってることは、その時に判らないことでも、何日か経ったら「そうか!」と思うことがある。物凄いピュアだし、凄いシンプル。あぶらだこのすっごい好きなとこはいっぱいあると思うし、そっから何を得るかって人それぞれ違うと思うけど、俺はそういう裕倫さんの人間としての魅力が源になってる部分はある。やっぱりあぶらだこを好きでいて良かった、これに尽きるね。例えば、こういう対談しててさ、気難しいイメージでいこうと思えば誰でもそういうふうにできるわけじゃない? だけど裕倫さんはそうじゃないから。それが凄い。自分のイメージをバンバンぶっ壊すっていうのがすべてのことに表れてる。大体、曲中に“ニャ〜”なんてないから(笑)。
──曲中の合いの手は、アドリブはないんですか?
長谷川 曲を作る時に特にそういうのも全て考えてるから。だから、即興で何か言ったりするのはないです。
増子 だからドリフ型なんですよ。きっちり構築されている。お笑いでもそうなんだけど、笑わせる側が笑っては笑わせることはできない。泣かせる側が泣いてはいけない。これ、大前提。それをきちんと体現してる。やっぱり凄い。毎回ライヴを観に行って凄いから。頻繁に観に行けるようになって、頻繁に行っても凄いっちゅうのはなかなかないよ。そして、裕倫さんとお客さんとの間に慣れ合いがない。
──聴くほうも真剣ですもんね。
増子 そう。真剣に聴かざるを得ないところにちゃんと導いてくれるからね。
長谷川 いや〜、怒髪天も、お客さんがやっぱり音楽を真剣に聴いてるんですよね。「ただノるばっかのお客さんかな?」とか思って行ったんだけど、それは違ったね。みんなじっくり聴いてるんだよね。
増子 有り難いことだよね。感謝の気持ちだね。裕倫さんもこの間言ってたけど、「感謝の気持ちがないとダメだろう!」って。それぞれのバンドによってお客さんとの関わり方ってあると思うけど、あぶらだこはベストな形に持ってってるっていうのが素晴らしい。だっていいんだもん、凄く。
 裕倫さんから学ぶところは物凄く多い。どんどん進化してるから。長くバンドをやってると、「ああ、あの頃がバンドのピークだったな」なんて思ってる人が結構多いと思うけど、あぶらだこにはそれがない。常に前を向いてるから。
──あぶらだこも怒髪天も、“代表作はネクスト!”みたいなところがありますよね。
増子 それはね、裕倫さんから学んでるところが凄く多い。俺が考える芸術家論っていうのは…“無頼”っているでしょ? 昭和の文豪とかに。無頼タイプじゃなければ芸術家じゃないのか? って言ったらそうじゃない。絶対違う。ある意味凄いまともだし、ある意味凄く狂ってる。凄くいろんなものを孕んでるからこそ、魅力がある。それが正しいか正しくないかっていう判断基準の、もっと上にいる人だから、裕倫さんは。そういう人って本当になかなかいないよ?
長谷川 いえいえいえ…。
増子 何だか俺ばっか喋っちゃって。
長谷川 (小声で)いえいえいえ…。(と、困った顔をする)
増子 ははははは。そんな顔しないで下さいよ(笑)。
──じゃ最後に、今度のライヴへの抱負を聞かせて下さい。
長谷川 …頑張りますんで、来て下さい。
増子 俺もそう! 俺も頑張りますんで来て下さい! 裕倫さんが「頑張りますから来て下さい」っちゅって「行かない奴いんのか!?」っちゅう話だよね。しかもかわいいセリフでしょ、「頑張りますんで来て下さい」なんて(笑)。非常にピュアなんですよ。ここで「俺のやることは判る奴だけ判りゃいいから、観たい奴は勝手に来れば?」くらいのこと言ってもおかしくないのに、そうじゃないっちゅうとこがやっぱり凄いよね。紳士だからね。優しいんだもん。
──今日はどうもありがとうございました。
増子 (裕倫さんに向かって深々と)ありがとうございました!
長谷川 (深々と)こちらこそ、どうもすいませんでした、今日は。
増子 いやいやいやいや(笑)。全然すいませんじゃないです(笑)。