BUGY CRAXONE




音楽は可能性、バンドはプライド

----BUGY CRAXONE企画のイベントがSHELTERであったばかりでしたね。
鈴木 ほんと、疲れました(笑)。
三木 今回出来たことと出来なかったことを踏まえつつ、次に繋がればって思っているところ。課題も見えたし、方知的には成功かな。スタートらしいスタートを切れたんじゃないかな。
----それは、年明けということと、BUGYにとっての新しい段階になっているということですか。
三木 そうね。年明け気分じゃなかったんだけど。周りのスタッフにも色々助けてもらいつつも、自分たちの意志を発信するという意味の企画は、初めてだったんですよ。北海道にいた頃は何回かやってはいましたよ。地元のバンドと。それからいったら、今回の企画は何年ぶりなんだろう。4,5年ぶり。
鈴木 いいバンドが沢山いるのに、なんとなく今の私たちがいるシーンってどよんとしている気がするのよ。楽しいんだけど、広がっていかないような。ライブやった、はぁ、それで?!  っていうのイヤだった。自分らもやるんだったら次に繋がっていくような空間を作り出していきたいって思って。自分たちも、お客さんも、出てくれたバンドもその方が絶対にいいでしょ。自分らの力は小さいけれどきちんとロックを鳴らせる場所を作りたかったの。
----今の時期に。
鈴木 デビューして3年で。アマチュアでやっていて、こっちにきてデビューして。ある程度いろんな経験をしていくじゃない。レコーディングして、ライブをやって。去年、関東近郊の小さいところを回って、お客さんが全然いない状況でもライブをやって。そういう武者修行的な事をやってきて、どんな状況でもライブが一番いいんだなって思って。自分たちの初期衝動とかが、また違った意味でわき起こってきたんですよ。それを、ちゃんと出してあげるというか、表現できたらいいじゃん。うちらにとっては、再出発の宣言も込められていたんだよね。
----メンツも自分たちで考えて。
鈴木 そう。だから、空いた時間で、呼ぶバンドを自分たちで見に行って。そうやって一つ一つ組み立てていきたい。
----あぁ、そういう姿勢一つとっても、バンドへの「信頼」に繋がっていくんでしょうね。
鈴木 別に自分たちが何でも出来るとは思っていないんだけど。自分たちでやってみるのもひとつかなって。自分だちで動いてやると、全然得るものが違うから。足りてない所も沢山あるんだけどね。それを次にどう繋げていくかでしょ。
----ライブが一番だって言ってましたが。
鈴木 最近ね。昔は人前に出るのも緊張しちゃってイヤだった(笑)。でもある時、BUGYの音を聴いてくれる人の顔が見えてきて。そういう人の顔が見えると、安心して歌えるようになって。前は、何も分からないまま火事場の馬鹿力でどうにかしちゃっていたね(笑)。
----私の印象だと、BUGYのライブは一つ一つが違っていて。音の揺れ幅が大きいバンドだと。良くも悪くも。その揺れにお客さんも影響されているなぁって。
鈴木 そのときの自分らの持っているもので、精一杯やっているだけだからね。何を狙っているわけじゃなくて。当たり前なんだけど、自分たちが良かったって思っても、お客さんがあんまり乗ってこなかったり。反対もあって。でもね、終わった後に自分らに力が残っていてやり残した感覚があるときが最低。そういう勝負の仕方でライブをやるしか方法が見つからなくて。
笈川 不器用だよね。自分を出すしかないんですよ。
三木 正直にいっちゃう。だから揺れちゃう。
----それがまたひとつの「信頼」なんでしょうね。完成されたライブも必要ですけど、人間が音を奏でている以上、音の揺れで気持ちが引っ張られたりするじゃない。
鈴木 プロ意識、お金をもらっているんだからっていうのも片一方にはあるじゃない。でも、完璧には出来ない自分らがいて。一時期板挟みになった。そのときはずいぶんしんどかった。葛藤して。でも、あーだこーだ言ってもしゃぁない、やるしかないじゃんねって思えてからは、自分のやりやすいように音楽をやっているように思うの。前の方が逆に、お客さんに見やすく聞きやすくするようにとか考えていたと思う。
----自分たちの音のスタイルだったりを見つけて、つかんだということなんでしょうね。
鈴木 周りのひととかお客さんに、最近いいねっていってもらえると、前よりも素直に良かったなぁ、って思えるもんね。
----3rd.アルバムThis is NEW SUNRISEがリリースされたんですよね。コラボレイションが3曲入っていますが、今作はコラボが前提にあったのですか?
鈴木 うん。2nd.で自分たちの骨というか核になるところは突き詰めた感があったんです。なんでも出来るんだなって思える自信にもつながって。その間に曲もたくさん出来上がって。コラボの元になる声が浮かんでいて。他のアーティストと一緒にやる可能性を活かしていかないともったいないでしょ。
笈川 まず、WINOとやって。外川の家に行って作業したんですよ。他のバンドは全然違う角度から切り込んでいったり。そういうのが楽しかったですよね。
鈴木 WINOとのは作った時の気分がすごく込められていて。そのときの気持ちと気持ちがぶつかりあって、生まれた。だから今作ったら全然違った雰囲気の曲になると思う。ミッシェルガンエレファントのチバさんとの曲は、一緒に歌って気分を盛り上げていくというよりは、お互いが見えていた完成形に向かって、どうやって自分たちをだしていくかっていう感じだった。
笈川 audio activeは大好きで。なるべくaudio active色を出して欲しくて、黙って曲を差し出した。
鈴木 そしたら、歌とメインのリフしか残ってこなかった。聴いたことのない音だらけになって帰ってきた(笑)。
三木 この曲だってちゃんとレコーディングしたんですよ。
----それが帰ってきたら、こんな子にっ!! みたいな?
笈川 そうそう(笑)。でも、うちらがやろうとしていたことが、よりいっそう際立って表現されていて、嬉しかったですね。ひりひりする感じと、優しい感じがより一層とぎすまされた感じ。
鈴木 BUGYらしくなった。感動した。
----コラボレイションって片一方のアーティストが勝ってしまっても面白くない。今回の3曲は全て引き分けのような気がしますけど。
鈴木 それは嬉しいね(笑)。ちゃんと己がある人とやりたかったんですよ。友達と何となくやるというよりは。真剣勝負。チバさんにしてもaudio activeにしても仲の良い友達ではなかったんですよ。一から手紙書いて、デモテープ送ってというところからはじめているのね。
----己がある人とのコラボは諸刃でしょ? 穿った見方をする人は絶対に出てくるだろうし。
鈴木 うん。それは最初から分かり切っていたことだから。でもきちんと闘ってみたかったんだよね。そういう人とやらないと意味がないと思っていたから。
----あとは、最初にあったBUGY楽曲に自信がないと、このメンツに声をかけづらいですよね。
笈川 2nd.で自信持てたんですよ。なんでも出来るんだって。その前だったらあり得なかったと思う。
----タイトルにNEW SUNRISEとありますが、全てが輝かしい夜明けでもない気がします(笑)。
三木 そうでしょ、そうなんですよ!! あんまりぴかーっていう感じじゃない(笑)。
----でもやっぱり一縷の望みの光は射している、そんな感じ。
鈴木 This is NEW SUNRISEって、自分らの言葉で言いきることの大切さ。希望って人から与えられるものでもないと思うし。ある日突然神様から何ともなく、神様から啓示をを受けるものでもなく。自分で掴み取る、でも実際は自分の中にある。そういうことだったんですよ、私たちの去年1年は。このアルバムにしても、どうしても欲しかったりやりたかったりしたら、自分の力で何とかしないとダメ。そうじゃないと絶対に手に入らないし。人として生きている限りは、現実世界を生きていかないといけないでしょう。そういう中で私は生きていきたいし、勝ち抜いていきたいから。私はそういうロックをずっと鳴らしていきたいんだよね。
----そういう真理に気がつかなくても、実際は音は鳴らせるんですよね。しかも気が付くか否かで、悩む度合いが違ってくるかもしれない。汗汗することも増えてくるだろうし。
鈴木 そうなんだよね。悩むんだよね、でも悩まないと始まらないし。私は音楽は可能性であって、バンドはプライドだと思っているの。今回コラボレイションだったり、今まではやらなそうな曲だったりに、可能性を広げていったのも、それがバンドのプライドになっていくでしょ。自分の持ち物に還元していくのよ。最近はなんでも、一つ一つがクリアに見えてきて、だから自分たちでイベントを立ち上げて、当たり前にやっていこうって思ったしね。
----可能性を広げるのも柔な事ではないでしょうけどね。
鈴木 でも、全てが何にも考えなくても、流れるように過ぎていっちゃうのは、怖い。そこに自分達が関与したはずなのに、その実感がないのが怖い。自分がここにいるのに。自分がここにいる責任はきっちり果たさないと。人任せじゃ進まないでしょ。
----そういう気持ちの中でリリースされて、どうでしょう。
鈴木 終わった後の感覚も、それまでとは違っているんだよね。それまでは一段落。終わった〜っていう感じだったけど、今回は作っているときに感じていた「走っている感覚」がずっと続いているの。だったらこのまま、このままの気持ちで走り続ければいいんだなって思っているの。
----走る方向が見えたんだ。
三木 方向が見えたというか、俺たちが方向を決めた。つかんだ。
鈴木 走っていくときに見えてくる風景はどんどん変わっていくと思うわけ。だからBUGYもやっている音楽のジャンルも変わるのかもしれない。でも本当は、音楽で何が人に伝わるのかでしょ。そう、何を伝えて、何を鳴らしていくのかを掴んだのかも。後はそのまま走り続けるだけなんだよね。
----今作はコラボ入りという事で際立って、人の目には変わって映るでしょうけど、BUGYにとっては一つの指標となる作品といってもいいでしょうね。
鈴木 それまでは自分の憧れている音だとかバンドに近づこうとして、音を出していたのかもしれないんですよ。でも今は自分たちがはっきり見えて、それを大切にしていきたいんですね。
(interview CHIE ARAKI)