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| 「なんだい!なんだい!『親孝行』なんてタイトル、、、『孫』って演歌がヒットしたからその柳の下の二匹目のドジョウを狙ったキース初のCDかね?」という先入観を持って聴いたキースのソロアルバム「親孝行」は、ナントものすごい傑作だった! ロックの現場から離れていた私を久しぶりに感動させてくれたこのアルバムにキースの底力を見た気分だ。みんなも騙されたと思って絶対聴いてくれ!(年寄りの言うことは聞くものだよ) (TEXT:平野悠/ロフト・オーナー) |
| 11月20日、激しい雨が横殴りに吹き付ける午後3時、かの有名なARBドラマー・キースがルーフトップのインタビューのため編集部に訪れた。当然インタビューは若いARBファンの音キチの奴がやると思っていたのだが、「やっぱり、ここは平野さんがやらなきゃ!」という編集部の意見であった。 「馬鹿言っているんじゃないよ! 俺はまだこのできたてのCDすら聴いてないのにインタビューなんかできるわけないではないの」と言い張ったのだが、みんな恐れ多くって、何が恐れ多いのか知らないが強制的に私がやる羽目になってしまった。第一いつも寡黙であまりしゃべらないキースのインタビューなんて、、と戸惑いの中で雑談的に行われた。 インタビューは「親孝行」のCDを聴きながら行われた。しょっぱなから不思議な感じのサウンドが流れ「仁義なき戦い」のテーマ曲にドラスチックな石橋凌のメッセージの朗読(?)が始まる。そしてSION、原田芳雄、宇崎竜童、藤井一彦、柴山俊之、ebi、Shy、仲野茂、MAGUMIのボーカルが続く。 「うん、この音かっこいいじゃない」と私。 「そうでしょ、みんなそれぞれが個性を持って、自分が一番だという音を出しているでしょ。だから、ほら、この伸一のギターなんて、ちょっとロックを聴き込んだ人なんかすぐわかるでしょ。ほら、ここで貢のベースがうなっている、、」とキースが嬉しそうに言う。 「そうだね、もう人生にそれなりに居直っている、おれは好きなことやるんだい!っていう感じがするね、で、キースがこのCD製作で一番気を使ったことって何?一番伝えたかったことっていうのかな、、」 「俺の専門はドラムじゃない、俺は全曲ドラムで参加しているんだけど、ドラムスってボーカルを生かすことが主題だと思うんだ。だから、強くたたいたり、ゆるやかにしたり、それぞれの曲でメンバーは違うけど、みんなロックの黎明期から音楽やってきて、自分の生き様にオーバーラップしていて、自分の曲で無い物を懸命にうたっているでしょ。みんなそれぞれのスタイルがあって、それをどう生かせるかって事が一番苦労したね」 「すごいですね!!サウンド的にもすごくかっこいい! 元々演歌の曲もロックに聴こえる、僕絶対このCD買おう!」とカメラマンの梅造も興奮している。 「うん、演歌だろうがグループサウンズやフォークでも、いい詞があってここに参加してくれたメンバーが勝手にサウンド作ると本格的なロックになってしまうんだよね。基本は演奏する人がちゃんとロックを知っていて演奏すればもうそれはロックなんだと思う」 「みんな肩の力が抜けて、本当に楽しそうにやっているね。売れる売れないを気にしないでやるとこれだけ自由なロックになるっていうことを証明した感じだね」私もすっかりこのCDのカッコよさにノックアウトされてしまった。 「このサウンド聴いていると、それぞれのパートの人たちの顔、姿が浮かんできますよね。これ、ミキオさんのキーボードでしょ? ライナーノート見ないで出す音もわかるっていいですね。」と梅造。 「いや、俺の新発見はebiの歌がこんなに説得力があるとは思わなかったな。奴は女にもてて腹がたつけど音楽はやっぱりすごい! あれ!ここで幸也のギターが入ってくるかね、、これぞロックだね」と私。 「かっこいいね!竜童さんの唐獅子牡丹か? ところで原田芳雄さんってこんなに小林旭に似て唄うまかったのかね?これはやばい!話が尽きない」 「昔はこういう人たちが、いつもロフトの打ち上げなんかでわいわいやっていて、突然セッションなんか始めることがよくあったじゃない? それがもうみんなじじいになってしまって、それぞれの生活に戻ってしまっているわけ、それが、このCDの話を持っていくと一発返事で自分のスケジュールをキャンセルしてまで駆けつけてくれた。本当にうれしかったし、スタジオは毎日お祭り騒ぎで、やはりロックの現場ってこうだったらいいなと思ったね。」 本当に、本当におべんちゃらの嫌いな私は、ミュージシャンのインタビューなんか大嫌いなはずだった。しかし、このインタビューのおかげで、私は「親孝行」のCDと出会うことが出来た。今日家に帰って晩酌をやりながらこのCDを聞こうと楽しみ思った。 それと、このCDを企画に乗せたレコード会社のディレクターはえらい! 若い子からオヤジまで楽しめる作品に奔走してくれた関係者に感謝したいと思った。、、これ本音だよ、まじで、、、。 |