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ロフトで働くスタッフはもちろん全員音楽好きですが、ロフトの店員みんなが好きなバンド──それがこのレンチです。ニューアルバム「bliss」も最高傑作な仕上がりとなっており、6/16のロフトワンマンはレンチの新たな歴史を綴る重要なライブとなるでしょう。では、ライブの前にまずはインタビューをどうぞ。 (interview:加藤梅造) |
| ●ライブは空気感を出すこと ──今回のアルバムは僕の周りでは非常に評判がいいですね。これは当然のことかもしれないけど、アルバムを出すごとにハードルが高くなっているような感じもしますが? シゲ いや、逆に自分たちの囲いがとれて自由になっていくような気がします。やりたい音に近づいている感覚ですね。まだ辿り着いてはいないけど。 松田 ハードルがあがっているかどうかはわからないけど、自然な感じになってますね。前の方が気負ってたかもしれない。 シゲ まあ無茶なことしてたよね。でもそれはそれでOKで、あれがあったから今があると思うし。 ──方向性を見失うようなことはありませんか? 松田 方向性を見失うことはないけど、人間的なぶつかり合いはありますね。 シゲ 2ヶ月に1回ぐらいは(笑) でも、まあいたって平和ですよ。 ──動員もだんだん増えてきて、6月はいよいよLOFTワンマンということですが。 シゲ すごい嬉しいですよねえ。 松田 そうとうかけてジワジワと確実にきましたから(笑) ──レンチは音楽好きの間では1stの頃から非常に評価が高かったんだけど、それが一般的な層にどこまで広がっていくかっていうのが、ひとつの見所だったと思うんですよ。でもレンチ自身はあまりそいういうことは気にしてなさそうですよね。 坂本 まあそんなには気にしてなかったけど、でも昔よりはベクトルが外を向いてるような気がしますね。昔の方がストイックだったかもしれない。お客さんと盛り上がりたいという意識は今のほうが強いです。 ──レンチの場合、そのストイックさゆえに、逆に客側は盛り上がるみたいなところはありましたね。あんまり煽られたくないみたいな。 シゲ ライブハウスで演奏するっていうのは、空気感を出すことだと思うんです。そういうところでもうOKだから、必要以上のアウトプットっていうのはあんまり好きじゃないですね。強引に煽るんじゃなくて、もっと自然に一体となって上に(盛り上がって)いくもんだと思うから。 ●偶然性とかエキサイティングなところを求めていきたい ──レンチは当初から、ブルースやレゲエなどの影響が色濃く反映してましたが、最近はポピュラーミュージックだけでなく、もっと音楽以外の影響が大きいような気がします。 シゲ まあ単純にそういうのが好きというのがあるんですが、自分達が造る側になってやっていくと、もっと偶然性みたいなものを大事にしていると思うんです。 坂本 最初の頃は、いろんな音楽をミックスしようという意識があったけど、ここ何年かは、あまりそういうことを意識しないでも4人でやれば自然とこういう音になる感じですね。 ──一般的なミクスチャーってもっと原型がわかりやすいと思うんですが、レンチの場合はそんなに単純じゃないというか。 シゲ そういう意味でいえばもうミクスチャーではないと思う。もっと偶然性とかエキサイティングなところを求めていきたいし、そこがなくなっちゃったら自分たちがつまんないですね。 ──偶然性というのはどういう時に生まれるんですか? シゲ かみ合わせですよね。こういうフレーズの時にこう弾いてきたか、じゃあこう歌ってみようという。そこにうねりが出てきた時ですね。 坂本 それってお互いのバックグラウンドが自然に出た時のフレーズがかみ合った時だと思うんです。 ──そのバックグラウンドが音楽だけにとどまってない感じがするんです。そういう意味ですごい開放感があるというか。 シゲ 開放しないと大変なことになりますからね。閉じこめるとヤバイですよ(笑) 松田 自分にインプットするものにロックというこだわりはないですが、やってることはまぎれもないロックだと思うんです。 坂本 それがロックだと言いたいとこもありますよ。根源的なロックというか。 ──ロックの根源というよりは、音楽の根源にまでいってる気がするんですよ。たぶん音楽は大昔に宗教的な儀式から生まれたと思うんですが、レンチの音ってそういうとこまでイメージできるんですよ。音楽以前というか。 シゲ まああんまりそういうところまで意識しちゃうとヤバいところにいっちゃいますから。そろそろ人を隔離しようとか(笑)。自分たちの中の喜びの儀式という感じはしますけど、結構紙一重なところだから。 ──確かに紙一重だと思うんです。ただ、日本って宗教的なものを表現するのがすごい苦手だと思うんです。本来宗教は崇高なものだと思うんですが。 松田 もっと単純なものだと思いますね。 坂本 そういう意味でウチらがやってる音楽ってすごく単純だと思うんですよ。 シゲ だから狙ってないですよ。ことごとく。レコーディングしてる最中って真っ白になって造ってる。出来上がってから聴いてみて、ああこうなったのかと初めてわかるみたいな。 ●スピリッチュアルな事っていうのは普通だと思う ──僕は、レンチの場合、レゲエやダブの影響っていうのが非常に重要だと思っているんです。やっぱりジャマイカの音楽のアプローチって、ラスタファリズムが根底にあるせいか、日本人とはちょっと異なるところがありますよね。パワーの出し方とか。 シゲ ダブのアプローチって結構ピンとくるものがあるんですよ。ダブってフロムジャマイカなんだけど、イギリスとかヨーロッパでさらにミックスされてて、自分たちがバンドに持ち込んでくる手法に近いものがある。 ──まあ、もちろん日本人がレゲエをやるときにJAHってわけにはいかないと思うんですが、ラスタファリズムの自然崇拝っていうところにおいては、通底するものがあるんじゃないかと思うんです。 松田 間接的な影響はあると思いますよ。やっぱりそういうアティテュードのある音楽って好きだし、聴いてみたら根が深いものだったとかいうことは多いですね。 シゲ たまたま書いた詞とかが、気づいたら似ていることもありますね。 ──シゲさんの書く詞って、あまり日常的なことではなくて、たとえば昨日のデートについてとかそういうのじゃないですよね。 シゲ まあ実際はデートもするんですが(笑)、わざわざ詞にすることでもないなって(笑)。でも、レンチの詞は自分の中ではけっこう現実的なことなんですよ。 ──時間的にも精神的にも非常に広がりを感じる詞だと思います。 シゲ 何時間でも妄想に漂えるというのはありますね。 ──詞を書くときってそういう時なんですか。 シゲ うーん、やっぱり頭の中を泳いでないと。でも、それってリアリティがあるんですよ、自分の中では。スピリッチュアルな事っていうのは、普通だと思うし。普通に世の中は面白いし、神々しいと思う。自然に感じたものを書いてるだけですね。 ──「あるがまま」というフレーズがよく出てきますよね。あと「太陽」というのもキーワードになってると思いますが。 シゲ それは超シンプルですよ。晴れてる日は気持ちよくて、太陽がカーっと照ってると気分が高揚して落ち込んでる時救われたりとか。あと言葉の遊びっていうのかな、太陽があって花があって、それをかけて自分がどう思うかと。それを楽しんでる自分もあるし。 ──昔の短歌にしても漢詩にしても、自然と自分との関わり合いみたいなところをよく歌ってますよね。レンチの詞ってそういうものと非常に近いと思うんですよ。 シゲ そうかなあ・・・そうかもしれない。俺、旅に行っても、寺とか見るより、自然を見てる方がいいアドレナリンが出るんです。だから詞の興味もそういうところにいってるのかもしれない。 |